アパッシメント製法のスペシャリスト「マァジ」社 マルコ ザウリ氏によるスペシャルセミナー
ヴェネト最大の名門ワイナリーでアマローネをはじめとしたアパッシメント(ブドウを乾燥させてより濃密なアロマや味わいを得る)製法のスペシャリスト「マァジ」社から輸出部長マルコ ザウリ氏が来日し、アパッシメント製法を使用した土着品種によるワイン造りについて色々とお伺いしてきました!
ヴァルポリチェッラで初めて設立された歴史あるワイナリー
「マァジ社はヴェローナの街から北に15~20キロ程離れた場所にあります。ヴェネト州は今から2500年も前からブドウ栽培がおこなわれていた歴史のある地域です。現在ではヴァルポリチェッラがヴェネトの代表的なワインと言えます。
ラテン語で「ヴァル」は渓谷を意味し、「ポリチェッラ」は多くのワイナリーを意味します。つまり『多くのワイナリーがある谷』という意味になります。私たちマァジは1772年にヴァルポリチェッラ地区で初めて設立されたワイナリーで、当初からボスカイニ家によって運営されています。
最初に購入した小さな谷にある「マァジ」という畑からワイナリーの名前が付いています。現在で7代目で250年以上の歴史があります。」
「私たちは『Masi Technical Group』を造っています。一人の醸造家に任せるのではなく、畑に詳しい農学者、醸造家、販売マーケティングと各分野毎にチーム体制を執ることで、より高度で安定したワイン造りを行っています。畑はヴァルポリチェッラを中心に640ヘクタールを所有しています。隣の州フリウリには白ワイン「マジアンコ」の畑があります。北部トレンティーノやトスカーナ、国外ではアルゼンチンにも畑を所有しています。」
ブドウ品種毎に用意された12種類のテイスティング
いよいよワインの試飲となるのですが、今回のセミナーは12種類の特別なワインが供出されました。
アマローネに使われる3種のブドウを単一品種毎に飲む貴重なテイスティング
全てワイナリーから特別に持ってきて頂いたもので、ワインとしてブレンドされる前の段階、単一品種毎にテイスティングでその特徴を味わいました。
かつ、アパッシメントされ半乾燥のブドウから仕立てたワイン、フレッシュなブドウから仕立てたワインの比較試飲となりました。モリナーラやロンディネッラ、コルヴィーナはアマローネに必要不可欠なブドウですが、単一品種毎で飲む非常に貴重な機会です。全く異なる個性のブドウ品種であるはずなのに、ブレンドで味わいが見事に纏まる事に何度も驚かされました。
試飲リスト
白
1.ピノグリージョ2015
2.軽く乾燥させたヴェルドゥッツォ2015
3.マジアンコ2015 (1と2のブレンド)
赤
4.モリナーラ2015
5.ロンディネッラ2015
6.コルヴィーナ2015
7.ボナコスタ2015(4.5.6のブレンド)
8.半乾燥したモリナーラ2013
9.半乾燥したロンディネッラ2013
10.半乾燥したコルヴィーナ2013
11.カンポフィオリン2013(4.5.6が70%、8.9.10が30%の同じヴィンテージがブレンドされる)
12.アマローネコスタセラ2011(8.9.10の同じヴィンテージがブレンドされる)
陰干しされたブドウのふくよかさとフレッシュなブドウの絶妙ブレンド
3の「マジアンコ」はフレッシュなミネラル感を持つピノグリージョと、アパッシメント(陰干し)され豊かなアロマとボディを持つヴェルドゥッツォの2つのブレンドが絶妙に絡み合います。数十年に渡る研究の結果、完成されたマァジ社が誇る傑作白ワインです。
7の「ボナコスタ」はフレッシュなブドウだけで造りあげられた飲みやすくドライなスタイルのヴァルポリチェッラです。コルヴィーナ70%、ロンディネッラ25%、モリナーラ5%のブレンドで、これはアマローネと全く同じブレンド比率です。違いはブドウにアパッシメント(乾燥)をかけていないだけです。
マァジが産み出した「ダブルファーメンテーション」製法
11の「カンポフィオリン」は「ダブルファーメンテーション」(二重醗酵)製法で造られます。1964年にマァジ社が産み出した製法です。フレッシュなブドウで醗酵させたワインにアパッシメントをかけたブドウをプレスしてブレンドします。乾燥したブドウの糖分により再度醗酵が始まり、ワインに色合いや芳醇な香り、骨格が与えられます。ブドウのブレンド比率はアマローネと変わりません。異なるのはフレッシュなブドウを70%、アパッシメントされたブドウを30%使います。
12の「アマローネコスタセラ」は100%アパッシメントをかけたブドウのみで造ります。陰干しは100~120日間の行われます。ステンレスタンクで25~26ヶ月間醗酵、新樽1/3、2年目の樽1/3、大樽で1/3で25か月間熟成させ、個性の異なる樽の絶妙な風味をワイン与え、力強くもエレガントで上品な仕上がりを目指しています。
セミナーを終えて
土着品種の可能性にいち早く目をつけ、長年改良を重ね、それぞれに異なる個性のワインを産み出し、かつ国際的なレベルにまで引き上げたマァジ社の高い技術水準に驚かされました。セミナー後に、ザウリ氏に現在のマァジの拘りについてお伺いすると、コンピュータ制御(NASAシステム)で、湿度や温度をコントロールして適切なブドウのアパッシメントを行うほか、全ての畑にはセンサーを導入、一時間毎の気温、湿度、降雨量まで計測し、データを集計している徹底ぶりです。古くからの土着ブドウの伝統を大切にしながらも、地球温暖化や気候変化に伴う、細やかなブドウ栽培へのアプローチ。250年続く名門マァジのアパッシメントへのこだわりがヒシヒシと感じられるセミナーでした。