世界の名だたる星付きレストランにオンリスト！スペイン最上の原産地呼称DOQプリオラート地区エルモラール村を牽引する「グリフォイ デクララ」突撃インタビュー

二つの原産地呼称DOQプリオラートとDOモンサンにまたがる唯一無二のテロワール！
地元エルモラール村で5世代続く造り手「グリフォイ デクララ」

カタルーニャ州バルセロナから南（西）に車で1時間半の、タラゴナ県プリオラート地区エルモラール村に私たちは拠点を置いています。リオハと並び最上級ワイン産地と言われるDOQプリオラート、それをドーナツのように囲んでいるDOモンサン。その二つの原産地呼称にまたがるのが、エルモラール村です。土壌の条件が特殊で、ここにしかないテロワールがあります。

私たちはそのエリアで、DOQプリオラート、マウンテンワインズという二つのカテゴリーでワインを生産しています。父が起ち上げの時から関わっていたDOモンサンは、2017年に離脱しました。マウンテンワインズは、その後、独自に設立した新カテゴリーになります。

――具体的にどういうところが、“ここにしかないテロワール”なのでしょうか？
まずは、二つの原産地呼称にまたがっていること。標高100～565メートルの急斜面で厳しい地勢であること。年間降水量が200ミリメートル前後で雨がほとんど降らないこと。とても寒暖差があるエリアで、他の地中海気候エリアと明らかに違うミクロクリマがあるということです。

バルセロナと比べて5倍少ない降水量、7度の気温差。山の影響を特別受けるエルモラール村

――どれくらいの寒暖差があるのですか？
冬は最低3度、最高15度。たまに摂氏0度以下になることもあります。夏は最低17度、最高43度です。近くのバルセロナと比較すると7度の気温差があります。バルセロナが35度だとしたら、プリオラートは42度。降水量はバルセロナよりも5倍少ないです。周りを山が囲っていて、地中海の湿った空気を全てシャットアウトします。プリオラートの中でも、エルモラール村だけが特別に乾燥して晴れた日が多いです。

――海は近いけど、その影響は受けないということですね。
高い山に囲まれているため、受けません。地理的にプリオラートは谷なのですが、その中にも小さな山がたくさん連なっています。水不足という問題はありますが、山が雨雲から守ってくれます。また、常に四方から風が吹いているので、病気やカビの被害も起きづらい場所です。他の地域とは全く異なる特別な気候です。

エルモラール村に特化する独自の新規格「マウンテンワインズ」を設立
最も厳格な条件をクリアする高級ワイン産地DOQプリオラートと同等の基準！

「グリフォイ デクララ」は、2017年にDOモンサンを離脱し、独自の規格「マウンテンワインズ」を設立しました。「マウンテンワインズ」とは、プリオラート地方エルモラール村で、山の影響を受ける独特のテロワールを持つ区画から生産されるワインの独自の認証名。スペイン国家認定機関、EUの認証を取得しています。DOQプリオラートの基準がベースとなっており、以下の10の特徴を持つ非常に厳しい規格となっています。
・グリフォイ デクララの自社畑のみ使用
・除草剤、農薬を使用しないオーガニック栽培
・100％手摘み
・土着品種90％以上
・全体の70％以上が樹齢35年以上の畑
・複雑に混ざり合った多様な土壌構成
・テラスと斜面に広がるブドウ畑の半分以上が25度以上の急斜面
・年間200mm前後の降水量、朝晩、夏冬の寒暖差が大きいこと
・100％自社醸造かつ自社瓶詰め
・スペイン国家認定機関の厳しい監査をクリア

――マウンテンワインズは、新しいカテゴリーという解釈でよろしいでしょうか。
そうです。スペインには、DOQプリオラートという国内で最も厳しい規定を持つ原産地呼称があります。プリオラートは知名度も高く、最高品質かつ高級ワイン産地として知られています。マウンテンワインズは、プリオラートの厳しい基準に加え、オーガニックとヴィーガンが付け加えられた独自カテゴリーです。スペインの国家認定機関、EUからも認定を受けています。

――どうしてマウンテンワインズを起ち上げようと思われたのですか？
私はエルモラール村で5世代続く生産者の醸造家ですが、村長でもあります。

――村長!?
はい（笑）。エルモラールは、人口300人の小さな村です。農家を継ぐ次世代が村の外に出てしまって、高齢化と過疎化に悩む村をワイン造りで元気にしたかったのです。先祖代々受け継ぐ畑やブドウ、自然、農業文化、原風景を守るという目的もあり、エルモラール村にこだわって起ち上げました。村の活性化も目標としているので、収穫やワイン造りに関わる人材はエルモラールの人たちです。

――エルモラール村には何社くらいワイナリーがあるのですか？
17社です。二つのDOにまたがる魅力的なエリアということで、スペインの大手や外資系が参入してきています。

――畑は全て自社畑ですか？
そうです。

村の将来を担うグリフォイ デクララに託された樹齢80年を超える古木の畑
――大手や外資系が参入してくる中、畑を所有し続けられたのは5世代続いているからこそですか？
先ほどもお話した通り、以前からエルモラール村は高齢化に悩まされていました。60代でも若手と言われるほどです。2007年頃から、たくさんの方が高齢を理由に「もう畑仕事はダメ」とドクターストップがかかるようになりました。彼らは樹齢80年を超える古樹の畑を所有しており、村の将来を担う若者に畑の面倒を見てほしいという思いがあったのです。

そこで、私たちグリフォイ デクララが彼らと交渉し、40年契約という形で彼らの畑を使用させていただくことになりました。長くエルモラール村に住む彼らは、外資系などにお金を積まれても畑を渡したいと思わなかったんです。村を守り続けたいという思いで実現しました。先ほど全て自社畑と言いましたが、厳密には全体の5％が40年契約のものです。でも、気持ちとしては100％自社畑ですね。

――ロジェールさんは、よくぞ残って頑張ってこられましたね。でなければ、受け皿もなかったと思います。
そうですね。チームや家族のおかげで実現できました。私たちのワインを楽しんでくださるみなさんのおかげでもあります。

世界の名だたる星付きレストランにオンリストする逸品！
5代目醸造家ロジェール氏のワイン解説

ちなみに、このワインは、バルセロナにあるDisfrutar（ディスフルタール）というミシュラン二つ星レストランでオンリストされています。今はなき世界一のレストランEl Bulli（エルブジ）の右腕の方々が起ち上げたお店です。スペシャリテである透明のマカロニのカルボナーラに合わせていただいているんですよ。

そして、カルメ ルスカイェーダさん（世界で最も星を獲得する女性シェフ）のとある記事に使われた写真に、彼女とともに載っているんです。ミシュラン三ツ星シェフにも気に入っていただいています。

DOQプリオラートに新しい格付けができました。1945年以前に植栽された畑（70％以上）で造られた“オールドヴィンヤーズ”（Villes Vinyes）という格付けです。グラン プレディカットは樹齢100年を超えるブドウで造られているので、“オールドヴィンヤーズ”に加えて、樹齢100年の樹を意味するヴィニェス センテナリエス（Vinyes Centenaries）と書けるんです。ラベルチェックも厳しく行われるので、このように書けることは素晴らしいことです。

なかには121年の古樹も使っています。プリオラートエリアで100年以上の古樹を持っている造り手は、今の時点で5社しかありません。マスドイシュ、トーレス、アルバロ パラシオス、セジェール バィ リャック、そしてグリフォイ デクララです。

有名星付きレストランにオンリストしているというフラッグシップ白「グラン プレディカット ブラン」は、熟した果実のリッチで柔らかい味わい。温度による味わいの変化も楽しめ、ロジェールさんは「赤ワインと同じ温度でもいいと思います」と話されるほど。「透明のマカロニのカルボナーラ」とのペアリングに大変興味を持ちました。

「国内外から評価の高い、エルモラール村、そしてスペインを代表するワイナリー」という言葉に対して、ロジェールさんから以下のようなお言葉をいただきました。
「厳しい管理のもと、自信を持ってワインを造ってもダメになることもあります。チームの力で多くのレストランに選んでいただくようになりましたが、造り手として評価を高めても、その評価がいつ崩れるかわかりません。いつも謙虚でいることが大事ですので、謙虚に粛々とワインを造っていきたいです。エルモラール村のワインであるということは、その通りだと思います」

二つとないテロワールを持つエルモラール村の魅力を最大限に引き出す造り手「グリフォイ デクララ」のワインを、ぜひお楽しみください。