2023年10月24日 マティアス イェーガー氏 Mr. Matthias Jaeger
年間1000時間を畑仕事に費やすイタリア屈指のビオディナミスト!自然の潜在力を引き出して最高品質を追求するアルトアディジェの老舗「マニンコール」突撃インタビュー |
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トレンティーノ アルト アディジェ州ボルツァーノ県カルダーロに拠点を置く1608年創業の老舗ワイナリー「マニンコール」。貴族家系のエンツェンベルグ家に代々受け継がれる同ワイナリーは、1991年から引き継いだ現当主のミヒャエル氏により、マニンコールとしてワインのリリースを開始しました。化学肥料を使わない自然に配慮した造りを最重要視し、2004年から全ての畑でビオディナミ農法を行っています。現当主は、ビオディナミ認証機関「respekt-BIODYN」を立ち上げた設立者の1人でもあり、イタリア屈指のビオディナミストとして知られています。その持続可能なブドウ栽培が評価されて、2016年度版『ガンベロロッソ』ではイタリア最優秀エコワイナリー賞を受賞した実績を持ちます。今回は、セールスマネージャーのマティアス イェーガー氏にオンラインでお話を聞きました。 | ||||||||||
1608年創業!貴族一家が手がけるアルトアディジェの老舗 |
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――今日はお時間をいただきありがとうございます。ワイナリーの紹介からお願いいたします。
イェーガー マニンコールは、トレンティーノ アルトアディジェ州ボルツァーノ南に拠点を置く家族経営ワイナリーです。ここはスイスとオーストリアに接している場所で、第二次世界大戦まではオーストリア領でした。アルプス山脈の麓に位置しており、目の前にはカルダーロ湖、背後には1600mほどの山があります。 ――1600m! すごい場所ですね。 イェーガー この地形が特殊な気候をもたらします。イタリアの地中海性気候以上にアルプス山脈の影響を非常に受ける環境です。畑の広さは50ヘクタールです。黒ブドウを植えるカルダーロに30ヘクタール(標高200~250m)、白ブドウを植えるテルラーノに20ヘクタール(標高390~450m)を所有しています。 赤丸がワイナリーの場所 イェーガー マニンコールの歴史は1608年からと古いですが、ワイナリーとしてワインをリリースしたのは1996年のことでした。それ以前は、黒ブドウはカルダーロの協同組合に、白ブドウはテルラーノの協同組合に売っていました。長い間ブドウ栽培家と醸造家として経験を積んできた現オーナーが「自分たちのワインを造ろう」と決断してボトリングに至りました。 ――現オーナーは貴族家系という血筋ですから、昔から優れた畑を所有していたということですね。 イェーガー そうですね。400年以上前から所有していたと思われます。ワイナリーの中心には1608年に建てられた建物があり、その隣の畑の下を掘って新しいカンティーナを2004年に建設しました。3階建(3層)になっており、(ブドウに負担ををかけない)重力システムを採用した醸造設備です。 |
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他生産者より2倍以上の労力を費やす畑作業
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2004年からビオディナミに取り組み、徐々にブドウの品質が向上
――マニンコールは、アルトアディジェの中でもビオディナミの第一人者、リーダー的存在ですよね。 イェーガー そうですね。ビオディナミは何よりも重要視していることで、2004年から全ての畑でビオディナミ農法を取り入れています。 ――ビオディナミの発想に至った経緯を教えてください。 イェーガー 栽培しているブドウが思っているように成熟しなかったりフェノール分が足りなかったりと、思い描いているようなブドウができなかったんです。しっかり成熟させてフェノールもあるような糖の低いブドウを実現するために、ビオディナミに着手してみたんです。当然すぐに結果が出たわけではなかったですが、年を重ねていき「ビオディナミが最も良い結果をもたらす」ということがわかったのです。 ――オーナーのミヒャエルさんの指揮のもと、そういう結果になったのですね。 イェーガー そうです。彼は長い間、専門的にブドウ栽培に携わってきました。ビオディナミ認証機関「respekt-BIODYN」を立ち上げた設立者の1人でもあります。オーストリアを中心にイタリア、ドイツの生産者の32社が加盟しています。 年間1000時間を費やす手間暇かけた畑仕事 ――ビオディナミで具体的に行っていることを教えてください。 イェーガー 牛のフンやブドウの搾りかす、果皮を混ぜたコンポスト(堆肥)を土に撒いています。また、ブドウの樹の間に花や草木も植えています。このように、コンポストの使用や生物多様性を促進することで土壌に栄養分がもたらされ、しっかり成熟したブドウが生まれるのです。 この取り組みを実現するまでに多くの実験をしましたし、畑仕事に対して長い時間を費やしてきました。一般的な畑仕事は1年間に約400時間かけますが、マニンコールは約1000時間に到達するほど手間暇をかけています。それだけ畑への取り組みは重要なことです。 白ワインの発酵は、全て自然によるものです。飲むと感じていただけると思いますが、ミネラルやふくよかさの広がり、タンニンを感じます。これは全て私たちの畑作業によって得られるものです。また、醸造で使用する一部の樽は現地のカルダーロの木を使用しており、地元で完結するようにしています。 |
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マニンコールが単一畑で造る「Heart」&「Crown」シリーズ |
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――マニンコールのワインは、「Hand」「Heart」「Crown」と3つのレンジ(シリーズ)があります。どういう区分けをされているか教えてください。
イェーガー オーナーのエンツェンベルグ家の紋章には、ハートに手を添える絵が描かれています。心から思いのこもった姿勢を表現しています。マニンコールというワイナリー名はその紋章に由来し、3つのシリーズ名もそれらに由来しています。 「Hand」は、若いワインのシリーズ。「Heart」は単一畑で造られます。貴族家系を表す「Crown(王冠)」はHeartと同様に単一畑ですが、より優れた年にしか造りません。本日試飲いただくワインは「Heart」シリーズと「Crown」のマソン ディ マソンです。 テルラーノのアイヒホルンという畑で造るピノビアンコ100%白「アイヒホルン」、歴史あるタンネンベルグの畑で造るソーヴィニヨンブラン100%白「タンネンベルグ」。ピノ ネーロ100%で造る赤ワイン2種「マソン」と「マソン ディ マソン」。ボルツァーノが起源の土着品種ラグレイン100%赤「ルバッチ」。そして、ワイナリーとして初めてリリースした歴史的赤ワイン「カシアーノ」。 白ワインは、ほぼ同じ造りです。熟した後に収穫した後、一晩冷蔵庫で冷やし、翌朝に5、6度で発酵を開始します。9、10時間かけてソフトプレスした後、セメントタンクで一晩寝かせます。翌日1500Lの大樽に入れて自然発酵をさせます。赤ワインも同様に、しっかり熟したブドウを収穫したら一晩冷やして、翌朝4、5度の状態除梗、発酵。その後、熟成に入ります。 微細な環境の違いが大きな個性の違いを生む イェーガー なかでも「マソン」と「マソン ディ マソン」の飲み比べをお勧めします。ほぼ同じ畑で同じ日に収穫し、同じ醸造方法で造られていますが、全く異なるワインに仕上がっています。違いは、標高と樹齢です。マソン ディ マソンの畑は若干北に位置しており、マソンより50mほど標高が高いです(450m)。樹齢は45年でマソンより15年古いです。たったこれだけの差で、大きな違いが生まれるのです。これが自然の力です。 それでは、試飲を始めましょう! |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
イタリア屈指のビオディナミスト「マニンコール」が造る白ワインは、旨みに溢れるクリーンな味わいでした。まろやかな酸と果実が絶妙にマッチした美味しさがありました。赤ワインは、それぞれ品種は違えど、凝縮感と複雑さがありながらも涼しげなニュアンスやフレッシュさが表現されていました。
特に、優れた年にしか造らない「Crown」シリーズの上級ピノ ネーロ「マソン ディ マソン」のポテンシャルには驚かされました。長期間寝かせることで本領を発揮するということでしたが、試飲した時点で、飲み比べをした同ヴィンテージのマソンと大きな違いがありました。今飲んでも大変美味しく、じわじわと広がる酸や旨みが樽由来の風味と見事に溶け合っていました。これから10年後、20年後どんな味わいになっているか大変興味をそそられました。 |
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アルトアディジェの老舗「マニンコール」突撃インタビュー
2023/11/22