イタリアワインを「もっと楽しく」、「さらに身近に」飲んで楽しんで頂きたく、トスカニースタッフが都内各所に出没いたします!
こんにちは!ロッチャです。
今回は トレンティーノで土着品種「テロルデゴ」を世界に知らしめた自然派「フォラドリ」の次男テオ フォラドリさんが初来日され、ワイナリーの哲学についてのお話を伺ってきました!
トレンティーノの自然派「フォラドリ」のワイン造り
ワイナリーはアルプス山脈の南側で平野部に26ヘクタールの敷地でテロルデゴ種をメインに年間16~18万本のワインを造っています。祖父が亡くなり、母エリザベッタは18歳でワイナリーを継ぎました。ドイツ人の父の勧めもあり、この地に育つテロルデゴ種を育てる事を決意します。
ビオディナミは私達にとって「昔の農法への回帰」ではなく「現代的なアプローチ」
フォラドリではビオディナミ農法を取り入れています。単に農薬を使わないということではなく、敷地の1ヘクタールを潰して、野菜、花やハーブを植え、ミツバチや鳥、動植物が集まる環境を造りました。私たちがビオディナミを取り入れてからは生活自体が変わりました。
畑でとれた野菜、穀物を食べ、育ったハーブを調合して農薬の代わりに畑に撒いています。全てが循環するコミュニティに造り替えたとでもいうべきでしょうか。
ですので、ビオディナミは私達にとって「昔の農法への回帰」ではなく畑に関連している全てのエレメントを見直す、とても「現代的なアプローチ」なんです。
常に現代的なアプローチを試みるフォラドリ。早速試飲が始まりました!
マンツォーニ ビアンコは1940年代に産まれた交配品種で、一般的にはブレンド用に使われる特徴の薄い品種ですが、フォラドリでは土地の個性を表現する為に、あえて100%マンツォーニ ビアンコで造っています。トレンティーノで一般的に使用されるアカシヤ樽を使用しています。ミネラルや蜜のニュアンスがとても心地良いワインで、軽めのアンティパストと相性が良いです。(試飲ヴィンテージ2014)
「ノジオラ フォンタナサンタ アンフォラ 」
一方ノジオラはこの地に根付くデリケートな品種で、個性を最大限に表現する為に収穫後皮ごとマセラシオンし、アンフォラ(テラコッタ)で注意深く醸造を行ないます。ブドウ本来のピュアな旨み、透明感がありミネラルを感じます。素材を生かした野菜料理、この季節のホワイトアスパラガス等とても相性が良いです。(試飲ヴィンテージ2013)
スペイン産とグルジア産のアンフォラの違い
ここでアンフォラ(テラコッタ)についてですが、フリウリ等でアンフォラを使う生産者はジョージア(グルジア)産のものを使っています。ジョージアのアンフォラは非常に大きく、割れやすいので地中に埋めないと使えません。そしてワインが漏れるの防ぐ為、内側に蝋を塗るので、使用されるのは蝋の風味に負けない強い味わいのブドウ品種が多いです。
スペイン産のアンフォラはもともと搬送用に使われていたもので、大きいものでも450リットルにしかなりません。フォラドリではスペイン産のアンフォラ90個近くを管理し、地下セラーで埋めずに使用しています。スペイン産のアンフォラは目が細かいのが特徴です。アンフォラを使うのはより純粋にテロワールを表現する為です。ブドウが慣れ親しんだ素材(土)の方がブドウにストレスを与えず、一番許せる素材だと思っています。そして、樽等で味わいが付加されない事、取り込む酸素量に違いがあるからです。
アンフォラ醸造は全て手作業で、大樽での作業と違いデリケートさが要求されます。「それぞれのアンフォラごとにリリースしたいくらいだ」言うほど、壷ごとに様々な個性と異なる表情を魅せてくれます。
アンフォラで醸造された二つのテロルデゴ
スガルツォンは畑の中の葡萄樹の枝の呼び名で、ここの葡萄の枝はとても丈夫で、このあたりの極度に冷涼な気候の中でも健康に成長するテロルデゴ種をスペイン産アンフォラで醸造させます。
スガルツォンは「じゃじゃ馬のような」酸とタンニンがあります。それも本来の個性でイタリアワインらしさがあります。熟成肉等、旨みが凝縮されたお肉料理と相性が良いです。(試飲ヴィンテージ2013)
一方、モレイはスガルフォンを同じスペイン産アンフォラで造るテロルデゴ種のワインですが、味わいに「優等生のような」バランスがあります。一般的にアンフォラで仕込まれたワインは割りと早い段階からアプローチしやすさがあります。土地やブドウの個性が純粋に表現されているからです。
モレイはトレンティーノの方言で「暗い茶色や濃い色」という意味。綺麗な酸味、エレガントさがあり、鶉や鴨といったデリケートなお肉料理と相性が良いです。(試飲ヴィンテージ2013)
トップキュヴェ「グラナート」が使用されたフォラドリ2012年
フォラドリ2012年は色々な畑のブレンドから造られるテロルデゴ100%のスタンダードワインです。2012年はトップキュヴェのグラナートになるはずのブドウが使用されています。2013年からは兄が全ての醸造を行なっています。今香りや味わいが開いていてとても明るいキャラクターです。バランスが良く、タンニン、酸も溶け合っていて心地良い飲みやすさがあり、パスタからお肉料理まで幅広く合わせる事が出来ます。(試飲ヴィンテージ2012)
「テロルデゴ ヴィニェーティ デッレ ドロミティ グラナート 」
グラナートは樹齢80年以上の最良の畑のみから造られます。グラナート1997年がロバートパーカー等に世界的に高く評価されました。しかし、母エリザベッタは毎年、同じようなやり方で濃厚で強いフルボディのワイン造りに疑問を持ち始めます。
それから、収穫量全体の15パーセントのブドウで自然な造り、土地の個性をワインに反映できるように模索していました。勿論セラーの中でのアプローチもそうです。出来上がるワインは、よりナチュラルな味わいに移行しているようです。今では、母エリザベッタは1997年のグラナートの味わいが嫌いなのだそう。
それを契機に生まれ変わったグラナート。グラナートは使い古した大樽で熟成されます。滑らかで力強い。2011年は天候にも恵まれた年です。アンフォラをあえて使わないのは『大樽とも調和できるパワーを持っているし、アンフォラよりもゆっくり熟成する、より呼吸の少ない大樽が最適』とテオ氏が語るように、母親の行動の蓄積がとても良い形で息子達に引き継がれています。(試飲ヴィンテージ2011)
最後に「グラナート2010年」を今日抜栓したものと3日前に抜栓したものを飲み比べました。今日抜栓したものはパワーに溢れ、果実の旨みが前面に出ていました。3日前抜栓でもそのポテンシャルは素晴らしく、スパイシーさや滑らかさが際立っていて、非常に旨味に溢れていました。ピエモンテやトスカーナの銘醸ワインに何らひけを取らない熟成能力を持っています。
久しぶりにフォラドリのワインを飲みましたが、よりエレガントな味わいにシフトしています。
自身の信念を貫くエリザベッタのワインは全てに共通して言えるのが、瑞々しくてピュアでしなやかな味わい。
今後はグラナートもアンフォラで醸造する予定があるそうです。ブレないワイン哲学と進化するテロルデゴの可能性を求め続けるフォラドリ。今後ますます楽しみです!
以上ロッチャの「行ってきました」でした。次回もお楽しみに!