●石灰質土壌がもたらす濃密で豊かな果実味を生かすために樽は控えめ
トスカニー:パッソピッシャーロの特徴について教えて下さい
フランケッティ氏:コントラーダと言うテロワールを生かしたワイン造りをしていることです。エトナには濃厚なスタイルのワインを造る人もいますが、それだと酸化が早く進み長くは楽しめないものになってしまいます。私は2001年からワインを造っていますが、当時はいまに比べて非常に濃かったんです。でも、エトナのテロワールを知り、個の特性を生かすには濃いワインではない、とわかり、今のようなエレガントなスタイルにしたのです。
トスカニー:コントラーダについてもう少しお話しいただけますか?
●最高の条件に恵まれたエトナ山の北側斜面
フランケッティ氏:(絵を描き始める)。見て下さい、これはエトナの北側斜面です。こんな風に噴火に伴って溶岩が流れ、長い年月をかけて冷えて固まります。このような溶岩の地層の区画がいくつもできています。これがコントラーダです。頂上から標高1000mの少し下ぐらいまで溶岩があります。あまり標高が高いとブドウは育ちませんから、ブドウ畑があるのはこの500~1000mのエリアです。
トスカニー:エトナ山は活火山だそうですが、この斜面は危険ではないのですか?
フランケッティ氏:大昔は溶岩が流れてましたが、今はほとんどありません。エトナ山の地形的に見て、溶岩が流れるのは東側になります。そちら側は確かに人も住んでいませんし、畑もありませんが北斜面は危険ではありません。北斜面と言うと一般的にはブドウ栽培に向かないと考えられますが、エトナ山においてはテラス式ですし、天候も安定しているので北側が最高の条件です。
コントラーダを私もいくつか持っていますが、毎年ワインを造っていてコントラーダごとに全く違うワインができるということを発見しました。パッソピッシャーロはいくつものコントラーダをブレンドしていますが、コントラーダごと、すなわちクリュごとにワインも造り始めました。
●トリノーロとは対照的なスタイルのパッソピッシャーロ
パッソピッシャーロ2009を飲みましたが、フランケッティ氏の言葉通り、非常にエレガントで上品。トリノーロの濃厚で迫力のあるスタイルとは本当に対照的。抜栓してしばらくたっていたため、香りも味わいも開き始めていたようで、フランケッティ氏も「開けたてはとても固いですが、このように時間がたっていくと本来の洗練された味わいが出てきます。このワインはもっと年月がたてばたつほど、成長していきます。」とおっしゃっています。
太陽が燦々と降り注ぎ、熱い南イタリアの土地シチリアというイメージとは全く異なるエトナ山。長い歴史の中で形成されていったテロワールを尊重してそれを最大限に引き出そうとしているパッソピッシャーロと、0からテロワールを造りあげたトスカーナのトリノーロ。2つのワインを飲み比べることで「鬼才」と呼ばれる完璧主義者のフランケッティ氏のことを少しわかったような気がしました。

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