トレンティーノ アルト アディジェで土着品種テロルデゴの第一人者として知られるフォラドリが造るフラッグシップ「グラナート」の垂直試飲会(2010、2011、2016)に行ってきました。
今回の試飲会は、現当主エリザベッタフォラドーリさんの息子テオ氏の来日に合わせて3月4日に開催されたもの。偉大な母からバトンタッチされた兄エミリオとともにこれからのフォラドリを担っていくのがテオ氏です。エリザベッタさんから次の世代へと受け継がれ、また変化も見せるフォラドリを感じることができた貴重な経験でした。
平均樹齢80年のテロルデゴから造るフォラドリのフラッグシップワイン「グラナート」。カンポロタリアーノとメッツォロンバルドの2つのエリアに分かれている4か所の畑に育つテロルデゴで造ります。石の多い堆積土壌で昔ながらのペルゴラ仕立てが残っています。発酵は一部全房で大樽開放桶を使用。熟成もオーストリア産大樽で15ヶ月。最もポテンシャルが高いブドウなので、アンフォラ等は使わず、大樽で長く熟成させています。
ペルゴラ仕立てについて、エリザベッタの息子テオ氏は、「ペルゴラ仕立ては、ブドウが育ち始め、樹齢20年ぐらいまでは房を付け過ぎてしまうが、それを過ぎれば凝縮感が高まっていく。つまり、古樹になればなるほど素晴らしいブドウとなるので、将来のことを考えるとペルゴラ仕立てがベストと考えています。母(エリザベッタ)がワイナリーを任された頃は濃いワインを求められていたので、ペルゴラ仕立てをやめてグヨ仕立てに変えていってしまった。これから植樹するならばペルゴラにする。」とのこと。
新しいヴィンテージから試飲しました。
2016年:エリザベッタの息子エミリオ氏(テオ氏の兄)が初めてひとりで醸造したヴィンテージ。母エリザベッタさんに比べてブドウの要素を優しく引き出すようになったので、味わいのスタイルがそれまでのグラナートとは異なる。気候的にはバランスの良い理想的な年。収量も多く、飲み心地の良いジューシーな味わいに。リリース直後から親しみのもてるワインになっている。
2011年:バランスのとれた良い年。冬が早く来たので発酵がなかなか進まなかった。最初は揮発酸もあり心配していたが、最終的には非常に良い出来となった。濃密さとエレガントさが共存。
2010年:グラナート史上最高のでき。10月末から11月の収穫で、例年に比べて遅くなり、時間がかかった。複雑味がしっかりとある、洗練された味わい。2010年は、3日前に抜栓したボトルと、当日に抜栓したボトルを飲み比べしました。当日抜栓のボトルは濃密さが前面に出ながらもエレガントで洗練された印象。3日前抜栓のボトルは、さらに華やかさとやわらかさが加わっていました。
グラナートについてテオ氏は、「グラナートらしさを味わうためには何年も寝かせることが望ましく、そうすることで本領を発揮していくけれどもなかなか自分たちが思うようには飲み手は待ってはくれない。」と言います。また、気候環境の変化について「激しい雨や猛暑などもあり、これからも2016年というヴィンテージのような気候の傾向になっていくだろう。」との意見を語っていました。
「現在、フォラドリが造るテロルデゴには2つのタイプがあります。アンフォラで造る単一畑のものと、複数の畑のものをブレンドするもの。フォラドリとしての伝統とテロルデゴの歴史を表現しているのが後者の「テロルデゴ フォラドリ」と「テロルデゴ グラナート」です。複数の畑をブレンドするということで、自分たちの手を入れやすいとも考えています。
2015や2016年は、除梗したブドウとしていないブドウを交互に重ねて発酵させるセミカーボニック発酵を採用しました。この方法からは軽い仕上がりのワインが得られます。今後、これまで通りに造ると重たいワインになっていくのではないか、という考えからです。2015年と2016年では20%ぐらいこの方法を試しました。
一方、単一畑のテロルデゴは「スガルツォン」と「モレイ」の2つを造っています。この2つは全くタイプの異なるテロワールで、スガルツォンは涼しい土地なので清涼感が感じれられ、モレイは暖かい土地でより重厚感のあるテロルデゴになります。」
明確なコンセプトカテゴリーと4種類のテロルデゴ。トレンティーノの偉大な土着品種のポテンシャルを再認識することができました。