世界が注目する活火山のワイン生産地「エトナ」その特徴とおすすめ10選

2024/02/21

エトナ産地はイタリア最大の州、シチリア東部にあります。世界でも数少ない活火山の麓にあるワイン産地です。エトナ山は標高3326m。日照量が豊かで、300m-1200m付近の高さに山の周りをぐるっと囲むようにブドウが植えられています。日の当たりにくい北西側のブドウ畑は少なく、ピスタチオの生産地として有名です。

シチリアが誇る世界4大酒精強化ワイン「マルサラ」よりも早い、1968年にシチリアの中で最初のDOCに認定されました。赤、白、ロゼワインの生産が認められており、1200haの畑の中に区画(コントラーダ)が133区画(2022年現在)も細分化されています。この区画に注目し、区画ごとのテロワールの表現したワインつくりも盛んに行われています。

エトナワインの特異性 シチリアとの比較

エトナはシチリアの中での1つのエリアですが、特に突出したワイン産地といえます。イタリア最南部にあり、アフリカに近いシチリアは温暖で日照量も高く、全体的に雨は少なく乾いています。一方エトナは高所にブドウ畑があり、高い日照量がありますが非常に冷涼、昼夜の寒暖差が大きいです。またエトナ周辺では雨が多いので、乾燥したシチリアのイメージから離れています。シチリアでは8~9月に収穫を行うことが多いですが、エトナでは10~11月頃になります。

エトナの火山灰土壌

エトナで最も特筆すべきは、活火山による火山性土壌の存在です。火山灰や礫(石・小石)や70万年前から現在までの噴火が積り固まった堆積土壌など火山性といっても年代も形も様々です。

エトナワインの品種

ネレッロマスカレーゼとネレッロカップッチョの黒ブドウはエトナの土着品種です。マスカレーゼはタンニンが厳格で、色は薄くエレガントな酸やミネラルを持ちます。カップッチョの方がタンニンは柔らかく実直な果実味と色が濃いのが特徴です。かけ合わせて見事に調和がとれた繊細で長期熟成にも耐えうる赤ワインが出来ます。

ネレッロマスカレーゼとカリカンテ

白ブドウではカリカンテとカタラットが有名です。特にカリカンテは非常に酸とミネラルが強く、火山性土壌と相性がよく長期熟成にも耐えられます。カタラットはフレッシュレモンやトロピカルなパイナップルやバナナのような風味を持ち、アルコールが高くなりやすくややボディも厚くふくよかさがあります。2つのブレンドや他の土着品種も混ぜたりしますが、昨今は100%カリカンテで長期熟成に耐えるワインが増えてきています。

エトナに育つブドウ樹の不思議

エトナワインを魅力的にしている要因は様々ですが、この過酷な環境化に耐え育つブドウ樹のエネルギーの影響が大きいです。それを可能にしているのが、アルベレッロ仕立てという伝統的な仕立て方法です。

アルベレッロ仕立て

添え木のみでブドウ樹を独立させ、地表にかなり近い位置でブドウを実らせます。伸びた枝葉は、ワイヤーや支柱を使わずに樹に巻きつけて留めます。上から重ねられた葉は強烈な日光の日焼けから実を守ります。1番自然に近い育て方と言われており、本来ブドウの樹が持つ“樹勢”が強く保たれます。樹齢120年の高齢の樹もエトナでは現役で、フィロキセラの被害を逃れた自根で育つブドウも残っています。

またアルベレッロ仕立てでは機械を用いることができません。そして1本1本の樹が独立しているため、自然と植樹密度が高くなりました。この結果、より質の高いブドウを得ることが出来ました。

エトナでも垣根仕立てで栽培を行う生産者は多く存在します。その中でも人の手がかかるアルベレッロ仕立てを続け、非常に稀有な畑を数多く残す生産者達。今も頻繁に噴火を続けるエトナ山で生きる彼らだからこそ、なせる業なのではないかと思わずにはいられません。

エトナワイン再興の軌跡

エトナワインはDOCに認定されたのは最も早かったですが、世界が注目し始めたのはここ最近の事です。過去にはフィロキセラ被害や、第一次世界大戦の影響で荒廃。シチリアはイタリア国内へのカジュアルワインの産地として歩みを進め、段々畑で作業コストも掛かるこのエトナから離れていく農民が多くいました。その中で唯一、1988年からベナンティだけがエトナの可能性を信じて孤軍奮闘と生産を続けていました。2000年代に入り、ワイン商でバローロを世界に広めたマルク・ディ・グラツィアやアンドレア・フランケッティらがエトナに着目しました。この2人の発信力は強く、シチリアやイタリア国内の大手生産者も次々とエトナに進出しました。

段々畑

更にバルバレスコから、ボルゲリでの世界的大成功を収めたガヤも、グラーチとのジョイントベンチャーで進出を果たしました。世界市場から見るワインのニーズも変わる昨今、凝縮感とエレガントを持ち合わせたこの産地への注目は高まるばかりです。

エトナワインと料理

総じてエトナのワインの魅力は、酸に支えられた繊細さやエレガントさであるといえます。カリカンテ主体の白ワインには、天ぷら、カルパッチョ、焼き魚、貝のワイン蒸しといったお料理と合わせ、まずはレモンやカボスをかけずにワインと一緒に楽しんでみてください。

タリアータ&ボンゴレ

赤ワインですが、マグロのポキや山椒をふったウナギの蒲焼きもおすすめです!果実味があるタイプには焼き鳥や筑前煮、タンニンがしっかりしているものには、タリアータのように赤身肉をさっと焼きバルサミコ酢とオリーブオイルで仕上げたもの。より繊細な味わいのものには、出汁を効かせたお料理を合わせてみてください。困ったときには、万能性に秀でたロゼワインがおすすめです!

「クズマーノ」がカリカンテ100%で造る「アルタ モーラ」 エトナのテロワールを映し出した規範的なエトナビアンコ!

クズマーノ

アルタ モーラ エトナ ビアンコ

アルタ モーラ エトナ ビアンコ

シチリアを代表する生産者クズマーノの「アルタ モーラ エトナ ビアンコ」。エトナのミネラルに富む火山性のテロワールと土着品種カリカンテの個性が見事に表現された見逃せない一本です。ブドウは異なる5つのコントラーダのものをブレンドします。フレッシュでクリーンな味わいです。

老舗ワイナリー「トルナトーレ」が、注目の北斜面カスティリオーネから生み出す素晴らしいエトナビアンコ

トルナトーレ

エトナ ビアンコ

エトナ ビアンコ

1865年からブドウの生産を行って来たエトナの老舗ワイナリー「トルナトーレ」が、カリカンテだけで造る伝統のエトナビアンコです。トルナトーレの畑がある北斜面カスティリオーネ シチリアは、ブドウが熟すまでの時間が長く果皮の成分が成熟。硬質なミネラルがブドウに蓄えられ垂直性の味わいをワインにもたらします。火山岩土壌由来のミネラルと厚みがありシャープな酸味が溶け合い、控えめながら透明感溢れる果実味、塩っぽさを感じる余韻があります。

エトナのテロワールを知り尽くす「ベナンティ」が、樹齢80年越えの極上カリカンテ100%でつくる「ピエトラマリーナ」

ベナンティ

エトナ ビアンコ スペリオーレ ピエトラマリーナ

エトナ ビアンコ スペリオーレ ピエトラマリーナ

エトナを造り続けた「ベナンティ」のフラッグシップワイン「ピエトラマリーナ」です。標高950mのエトナ山東斜面の畑に植わる樹齢80年以上のカリカンテでつくります。この地区は唯一スペリオーレを名乗れる特別な地区です。火山岩と砂質が多く鮮烈なミネラルをワインに与えます。厳格な酸味とミネラルが骨格を造り10年~20年の長期熟成が期待できるワインになります。スペリオーレを名乗れるワインはエトナ全体の僅か0.9%しかありません。

長いワイン造りの歴史を持つカラブレッタ家が、フィロキセラの被害を免れた畑でつくる伝統的エトナビアンコ

ラ カラブレッタ

カリカンテ

カリカンテ

エトナで1900年からと長いワイン造りの歴史を持つカラブレッタ家は、自然な栽培と伝統的な醸造に取り組む小規模生産者です。このカリカンテは、フィロキセラの被害を免れた畑で、アルベレッロ仕立てで栽培されています。骨格を担う豊かな酸とミネラル感、旨みが強くドライな味わい。エトナという特別なテロワールを見事に表現したエトナビアンコです。

北斜面パッソピッシャーロの最高区画を所有「ジローラモ ルッソ」の「エトナロッソ ア リナ」

ジローラモ ルッソ

エトナ ロッソ アリナ

エトナ ロッソ アリナ

スター級の生産者が集まるエトナ北にあるパッソピッシャーロ地区の最も良い畑を所有すると言われているのが「ジローラモ ルッソ」です。元々エトナの地主ですので、最も優れた区画だけ手元に残し、それ以外は他の生産者に貸しています。完熟果実の凝縮感が魅力です。ブドウ本来のポテンシャルの違いを感じるエレガントな味わいです。

クズマーノが高品質コントラーダで造る単一畑のエトナロッソ「グアルディオラ」

クズマーノ

アルタモーラ エトナ ロッソ グァルディオーラ

アルタモーラ エトナ ロッソ グァルディオーラ

シチリア屈指の生産者クズマーノがエトナ北部の高品質コントラーダ「グァルディオラ」で造る単一畑エトナロッソです。熟した果実のほのかな香りに始まり、魅力的なスパイシーさとミネラル感が熟した野イチゴの香り。上品かつコクのある味わいの余韻が長く持続します。細身でクリーンな味わいは、まさにエトナらしいスタイルを表現しています。

「新しい世代のエトナ」として注目を集めるグラーチのベーシックなエトナロッソ

グラーチ

エトナ ロッソ

エトナ ロッソ

エトナの第3世代とも言われる「グラーチ」が造るベーシックなエトナロッソ。ロマネコンティ共同経営者ヴィレーヌ氏が注目し、さらにはアンジェロガヤ氏と共同プロジェクトを立ち上げるなど、話題に事欠かない造り手。エトナ北斜面、パッソピッシャーロ地区とカスティリオーネ ディ シチリア地区に位置する畑のネレッロ マスカレーゼ100%から造られます。上品で伸びやかな長い余韻が感じられます。

高地エトナのテロワールを見事に表現!第一人者サルヴォフォーティが自ら造る「イ ヴィニェーリ」

イ ヴィニェーリ

イ ヴィニェーリ

イ ヴィニェーリ

シチリアを代表するワイナリーのコンサルタントを長年務めたサルヴォ フォーティ氏が2000年に設立したワイナリー。ネレッロマスカレーゼとネレッロカプッチョから成る「イ ヴィニェーリ」は伝統的栽培醸造のスタイルでエトナのテロワールを表現した魅力的なワインです。繊細さと力強さが絶妙に重なり合う何とも言えない魅惑的な香り、無理な力みのないピュアで柔らかいスタイル、味わいは奥深くあくまでエレガント路線です。見事な完成度です。

帝王ガヤの新たな挑戦!エトナの名生産者である「グラーチ」とタッグを組み、ワイン造りの伝統と革新への敬意をこめて造った赤ワイン「イッダ ロッソ」!

イッダ

イッダ ロッソ

イッダ ロッソ

エトナ山が我々の 作るワインのアイデンティティを決定づけ、我々は従う。エトナに魅せられた帝王ガヤとエトナ第三世代と呼ばれるグラーチがつくる「イッダ ロッソ」。熟した果実をしっかりと感じる味わいに、ミネラルや火打石のニュアンス。ブルゴーニュを彷彿させるフィネスとエレガンスを備えています。シチリアの人々がエトナ山を「彼女」を意味するイッダと呼ぶことからこの名前が付けられました。

エトナの名を世界に知らしめたテッレネーレがネレッロ マスカレーゼ&ネレッロ カップッチョで造るリッチな味わいのロゼ

テヌータ デッレ テッレ ネーレ

エトナ ロザート

エトナ ロザート

「バローロボーイズ」で一世を風靡したマルク デ グラツィア氏が、シチリア・エトナ山で自ら経営するワイナリー「テヌータ デッレ テッレ ネーレ」の「エトナ ロザート」です。土着品種ネレッロ マスカレーゼ主体に極少量のネレッロ カップッチョをブレンド。エトナのテロワールが反映された豊かなミネラルと長く続く余韻が印象的で、風味も実に豊かです。