古代ローマより続くイタリア白ワインの代名詞「ソアーヴェ」その特徴とおすすめ10選

2024/05/22

ソアーヴェは古代ローマ時代から続く、ヴェネト州で造られる白ワインです。沿岸のヴェネツィアから西へ、内陸に進んだソアーヴェ村とモンフォルテ ダルポーネ村を中心とした生産地域で生産されます。北側にアルプス山脈の分脈があり、山から流れてくる冷たい風の影響を受け、夏も夜間に気温が下がり、白ブドウの生育に最適な気候です。急激な人気の高まりにより、1960年代に生産区域を拡大しました。その飲み心地の良さから世界中にファンを持ち、キャンティと共にイタリアワインの顔として活躍を続ける人気ワインです。※一部スパークリングワインの生産も行われています。

ソアーヴェに使用される土着品種

ソアーヴェに使われているのは主にガルガーネガ種とトレッビアーノ ディ ソアーヴェ種です。

ガルガーネガ種は、中世からこの土地にずっと根付いてきたブドウでイタリアでも最も古いブドウ品種の一つです。その長い歴史から、様々なバイオタイプとDNA関係にある品種が多数存在していて、交配使用品種としても重要です。シチリアにあるグレカニコは同一DNAを持つ品種ですが、1970年に個別にシチリア州に適応したブドウとして登録されています。生産性が高く、酸をしっかりと保持することができます。余韻には、やや苦味を伴います。
ソアーヴェブドウ

トレッビアーノ ディ ソアーヴェ種は、マルケ州のヴェルディッキオと同一品種としてDNA鑑定されています。ヴェネト原産とする説が有力です。ヴェネトからマルケに持ち込まれヴェルディッキオと呼ばれるようになった様で、ヴェネトでは昔からトレッビアーノと呼ばれていたようです。現在では同一品種として認定されながらも、別々に品種登録がされているように味わいが異なります。高い酸味と華やかさがあり、ガルガーネガ種への補助品種として使用されています。

ソアーヴェの原産地呼称

ソアーヴェの名前が付くワインは主に3つあります。どれも使用ブドウはガルガーネガ種70%以上トレッビアーノ ディ ソアーヴェまたはシャルドネ種30%まで可能です。その他ブドウも5%まで(アロマティック品種除く)加えられます。昔からの特定生産地域内で造られたものはクラシコ(Classico)と表示可能です。

・ソアーヴェDOC
ヴェネトで一番古いDOCです(1968年)。アルコール度数は10.5%以上。スッキリ爽やかなタイプが多いです。スプマンテも生産可能です。秀でた産地としてコッリ スカリージェリがあげられます。ソットゾーナに認定されており、ラベルに表記することができます。※クラシコとコッリ スカリージェリはアルコール度数が11.5%以上、収量など更なる制限がかかります。

・ソアーヴェスーペリオーレDOCG
スーペリオーレに定められた区画内の良く熟したブドウを使用。アルコール度数は12%以上。法定熟成期間は瓶内3ヶ月以上必要です。リゼルヴァの場合は熟成期間が2年以上(うち瓶内3ヶ月)となり、最低アルコール度数も、12.5%以上と上がります。※スーペリオーレに定められた区画は、クラシコの区域とは異なります。協会の調査による、栽培地域の土壌・標高・日照などの結果を参考に、クラシコエリア外の散在する丘陵地の区域(コッリ・スカリージェリなど)を新たに制定。また従来のクラシコエリア内でもスペリオーレには制定されなかったエリアがあります。

陰干しされるブドウ

・レチョート ディ ソアーヴェDOCG
レチョート(甘口)のワインで、陰干ししたブドウを使って生産するので、通常の収穫量から40%程度しか果汁がとれません。熟成期間は10ヶ月以上必要で、レチョートにはシャルドネを使用出来ないのも特徴的です。

ソアーヴェの移り変わり

ローマ時代から愛されてきたソアーヴェワインが、公式な書面に出てくるのは1816年、ブドウ畑の地図がナポレオンによって登録されました。その後も1931年に公式にイタリア国内で高い品質を持つワイン生産地域として、キャンティとともに明確な区画が登録されました。その範囲は現在のクラシコエリアとほぼ変わっていません。そして1960年代に入り、主にアメリカを中心としたイタリアワインブームに乗って大きく輸出を伸ばします。既存のエリア(クラシコ)だけでは生産量が追いつかず、生産地域は、なんと7000ヘクタールまで拡大され、現在では年間約5600万本が生産されるようになりました。
景色

生産量が増えたソアーヴェは、世界中で楽しまれるようになりました。半面、元来のソアーヴェの味わいとは異なるワインが増えてしまったのも事実です。元々のエリアをクラシコと表記し、差別化を図ろうとしましたが、生産者の中には、ソアーヴェとしての括りから自ら外れる者も現れました。

協会とソアーヴェの味わいと品質を追求しようとする一部の生産者との間では、ブドウ樹の仕立てなど収量に関する栽培条件やエリア設定などをめぐっての論争が続きました。近年では、そのような品質志向の生産者団体からの訴えを受けて、2019年にクリュにあたる追加地理的表示が33区域認定され、その品質を保護されるに至りました。

バラエティに富む味わいが楽しめるソアーヴェ

広大な産地から造られるソアーヴェは、様々な味わいを楽しむことが出来ます。ワイン法では一括りとなっているソアーヴェですが、ソアーヴェこそ、生産者の“選択”による造り手の色が出やすいワインではないかと思います。下記には、土壌と収量についての味わいの傾向を簡潔に説明します。

土壌による違い
クラシコ地区は、ソアーヴェ村とモンフォルテ ダルポーネ村の両村に広がる丘陵地帯に限定されています。その多くが火山性の堆積土壌です。生育環境は多様性に富んでおり、区域ごとに特性のあるワインが生まれています。総じて、柑橘系のニュアンスやミネラルを感じます。丘の頂上に近づくにつれ、黒色火山岩比率が高まり、鉱物のニュアンスを含んだミネラルを強く感じることができます。ソアーヴェ村周辺西側エリアでは、石灰石の割合が増え西日の熱を蓄えることなどから、厚みのある果実味を持ったワインが生産されています。

一方、1960年代以降に拡大されたエリアの平野部に見られる土壌の多くが、石灰質を多く含む白い土壌です。フローラルな香りのワインができます。

拡大されたエリアの一部丘陵地帯には、火山性土壌や火山性土壌と石灰質土壌が混ざった土壌となっており、クラシコ地区に類似した傾向が見られます。その多くが、スーペリオーレに認定されました。追加地理的表示にも制定された区域もあります。

モンテフォルテ渓谷一帯は、火山性土壌に粘土が混ざる肥沃な土壌。一般的に肥沃な土地はワイン造りには向かないと言われますが、暑い夏でも粘土が蓄えた水分の影響により、ワインは、フレッシュさをキープします。
収穫風景

収量による違い
ワイン法の規定では1haあたりの収量を規定していますが、1本の樹からとれる房の数に対しては規定がありません。垣根仕立ては、1本の樹からとれる収量をコントロールしやすく、収量を抑えたブドウからは、凝縮した個性を持つワインが生産されています。棚仕立ては、通常1本の樹から多くの房を収穫します。ワインは、フレッシュなタイプが多く見られます。生産コストを抑えられるため、コストパフォーマンスにおいても優秀です。この地域伝統の棚仕立てをペロゴラ・ヴェロネーゼと呼びます。ブドウを日陰に置くことができるので、酸を維持しやすく、酷暑が続く近年、再注目されています。

ソアーヴェと料理の楽しみ方

「ソアーヴェ」の名前の由来は、ローマ帝国衰退後、この地に移り住んだスエビ族(Svevi)に由来するという説が有力ですが、イタリア語でソアーヴェとは、「甘美である」「心地良い」「好感の持てる」などの意味を持ちます。偶然にも、ソアーヴェ地区で造られるワインのイメージとピッタリですね。

魚介の盛り合わせ

スイスイと飲める軽やかなタイプは、食前酒としても万能です。生ハムやサラミももちろん合いますが、魚介料理がお勧めです。ヴェネト州では、干し鱈を使った料理やイカ墨のリゾットなどと良く合わせられているようです。

コクがあり飲み応えのあるタイプには、エンドウ豆やアスパラガスを使ったリゾットやクリームソースのパスタ、鶏や豚肉を使ったメインディッシュともお勧めです。ソアーヴェには様々なタイプがありますが、どのタイプにも共通してみられる飲み心地の良さは、日常的に飲むワインとして優秀です。

ソアーヴェを代表する造り手「イナマ」のベーシックライン“非の打ちどころのない”ヴィン ソアーヴェ

イナマ

ヴィン ソアーヴェ ソアーヴェ クラシコ

ヴィン ソアーヴェ ソアーヴェ クラシコ

ソアーヴェを代表する造り手「イナマ」の顔とも呼べるソアーヴェクラシコがヴィン ソアーヴェです。果実味とミネラル、酸のバランスに優れた「非の打ちどころのないソアーヴェ」として伝統的ソアーヴェクラシコの魅力を発信し続けています。ヴィンテージに左右されない完成度にも注目が集まっています。

ソアーヴェの盟主「ピエロパン」が最高畑でつくるスタンダード ソアーヴェ クラシコ

ピエロパン

ソアーヴェ クラシコ

ソアーヴェ クラシコ

ソアーヴェでもっとも尊敬されている造り手として知られる「ピエロパン」のソアーヴェ クラッシコです。伝統地区の斜面地にある一等地のブドウから造られます。クラシコ地区のミネラル豊富なコクのある味わい。高品質ソアーヴェの代名詞です。

平均樹齢60年以上!三大ソアーヴェ「ジーニ」のベーシックソアーヴェ!

ジーニ

ソアーヴェ クラシコ

ソアーヴェ クラシコ

ソアーヴェの代表的造り手「ピエロパン」、「イナマ」と共に「三大ソアーヴェ」の一角と称される「ジーニ」は、1700年代からブドウ栽培農家としてガルガーネガ種を栽培してきた歴史ある造り手です。このソアーヴェ クラシコは、ベーシックラインながら、平均樹齢60年以上という古樹から造られており、上質な酸とミネラルが調和した上品で深い味わいを持ちます。

近年ソアーヴェの地域において成功を収めている「カ ルガーテ」の凝縮感が魅力のソアーヴェ クラシコ「サン ミケーレ」

カ ルガーテ

ソアーヴェ クラシコ サン ミケーレ

ソアーヴェ クラシコ サン ミケーレ

1986年設立の「カ ルガーテ」。ワインの品質向上には著しいものがあり、近年ソアーヴェの地域において成功を収めている生産者です。ソアーヴェ クラシコ サン ミケーレは、爽やかなソアーヴェらしさが感じられながらもしっかりとした味わい。凝縮度が高くコストパフォーマンスにも優れています。

ガルガネガのスペシャリスト「タメリーニ」のスタンダード キュヴェ!

タメリーニ

ソアーヴェ

ソアーヴェ

ガルガネガしか栽培していない「タメリーニ」は、樽を一切使わない醸造を行い、テロワールやブドウ本来の味わいを追求したソアーヴェの造り手です。厚みのある果実味と穏やかで綺麗な酸。エキス分が凝縮している素晴らしい味わいです。

アマローネの名門ベルターニがつくる“カジュアルに楽しむ”ソアーヴェ クラシコ セレオーレ!

ベルターニ

ソアーヴェ クラシコ セレオーレ

ソアーヴェ クラシコ セレオーレ

ソアーヴェ セレオーレは、なんと1937年に行われたイギリス国王ジョージ6世の戴冠式典の晩餐会にも使われていたという凄い歴史を持つワインです。上質なコクと余韻、ふくよかな味の広がりなど、この価格で驚くほどの完成度の高いカジュアルなソアーヴェです。

ソアーヴェの地で3世代に渡りワイン造りを行う「ファットリ」のピュアでエレガントなソアーヴェクラシコ「ルンカリス」

ファットリ

ソアーヴェ クラシコ ルンカリス

ソアーヴェ クラシコ ルンカリス

「ルンカリス」は、ファットリが造るソアーヴェに求める要素を、バランス良く上品に兼ね備えた逸品。素材を生かす繊細な果実味が魅力です。ブドウと真摯に向き合い、誠実に表現したワインは、どこまでもピュアでエレガント。手間隙をかけブドウの持つポテンシャルを最大限に引き出しています。

生産者共同組合から立ち上がった「テヌータ サンアントニオ」のフレッシュなソアーヴェ「フォンタナ」

テヌータ サンアントニオ

サンアントニオ ソアーヴェ フォンタナ

サンアントニオ ソアーヴェ フォンタナ

ヴェネト州の生産者協同組合の創立者であったアントニオ カスタニェーディ氏が独立。今、注目の新進気鋭の生産者「テヌータ サンアントニオ」。みずみずしい果実味が軽快なソアーヴェ。清涼感のあるフレーヴァーに、適度なボリューム感。綺麗な酸が、口の中をリフレッシュしてくれます。

いち早く有機農法を導入したファゾーリ ジーノのエントリーソアーヴェ「ボルゴレット」!

ファゾーリ ジーノ

ソアーヴェ ボルゴレット

ソアーヴェ ボルゴレット

ヴェネトの地で4世代にわたってワイン造りを続けるファゾーリ ジーノのソアーヴェ ボルゴレットです。有機栽培によって育てられた素晴らしいブドウの瑞々しい果実味は、飲み心地抜群。果実感とすっきりとした酸味とミネラルが優れたバランスの良い味わいです。

ソアーヴェを捨てた英雄、ヴェネト最高峰の白ワインの造り手「アンセルミ」のサンヴィンチェンツォ

アンセルミ

サン ヴィンチェンツォ

サン ヴィンチェンツォ

「アンセルミ」は、ソアーヴェの名前を世界に広めた立役者でありながら、法的に高い収量が許され凡庸なワインが多く醸されることが多くなったソアーヴェの名称が、自身のラベルに書かれること憂きソアーヴェDOCの脱退を決意。“ソアーヴェを捨てた英雄”と呼ばれる造り手です。「サンヴィンチェンツォ」は、ソアーヴェを最も愛する男によるソアーヴェを名乗らない、ソアーヴェへの情熱が詰まったワインです。