セルジオ アルクリはカラブリアを代表する産地「チロ」でブドウ栽培家として最も古い歴史を持つカンティーナです。1948年と1980年、そして2005年にも畑を買い足し、現在は3.75haを所有。平均樹齢は60年のチロの伝統的畑を維持しています。生産効率の良いグイヨに変更することもなく、収量の安定するクローンに植え替えることもせず、貴重な昔のままの「ガリオッポ」を残しています。最も古い区画の樹は収量制限をしなくても1つの樹から3房しか収穫できません。当初はブドウ栽培だけでしたが、1973年に現当主の父ペッペが現在の位置にカンティーナを建てバルクワインの販売を開始。2009年には現当主セルジオとフランチェスコ兄弟がボトリングを開始。栽培、醸造は祖父のやり方と何も変えていません。トラクターも使わず、昔ながらの鍬等の農具を使った手作業でおこなっています。発酵容器も昔の物を大切に使っています。

畑は2ヶ所に所有。チロマリーナから内陸に向かった丘の上で、粘土なので水分を含んでいる赤い粘土質の土地で、貴重な昔のままのガリオッポを栽培。彼等は硫黄と銅以外は何も使用しません。肥料も使わないので周辺の造り手の葉が濃い緑なのに対して薄い緑色。栄養が少ない土壌でストレスを受けながら、根は栄養を探すために地中深く伸ばしています。もう1つの畑は海岸から1kmの平地で毎日海風を受ける区画。ほとんど雨が降らず、湿気を取り除くので病気がほとんどありません。ガリオッポは果皮が弱いので収穫前に雨が降ると割れてしまいます。故に雨が少ないチロとガリオッポは最高の組み合わせなのです。彼等はこの内陸部と海沿いの2つの畑の違った個性のブドウを合わせることで独特の複雑味を出しています。

醸造所は街の中心部、旧市街の路地裏にあります。収穫したブドウは祖父の時代から使っている開放発酵槽に除梗して入れます。 翌日には野生酵母のみで発酵。収穫時期は9月後半とまだ暖かい季節なので、発酵は毎年すぐに始まります。ガリオッポのタンニンはネッビオーロと違い、すぐに抽出されるので、マセラシオンは4日で十分。タンニンが先に出ることにより、ワインを守ってくれます。その後、セメントタンクに移してゆっくり発酵を継続。タンクも昔から使っているもので内側はガラスコーティングしていません。今では生産禁止になってしまったコーティングなしのタンクは、酸素のコンタクトが多くガリオッポのタンニンを柔らかく成長させてくれます。昔は畑に開放桶を置いて、畑で発酵させていました。それほどブドウと環境がワイン造りに向いていて余計な技術が必要ありませんでした。現在でも必要最低限の設備だけでワイン造りを行っています。