2014年5月20日 フェウディ ディ サングレゴリオ社 Ms. Emanuela Supinoインタビュー

2014/05/20
突撃インタビュー
 
2014年5月20日 フェウディ ディ サングレゴリオ社 エマヌエーラ スピーノさん Ms. Emanuela Supino

フェウディディサングレゴリオの主要ワインの特徴を再確認。最近のワイナリー動向について

エマヌエーラ スピーノさんと記念撮影
カンパーニャを代表するワイナリー、フェウディ ディ サングレゴリオ。カンパーニャの土着品種で造る幅広いラインナップの赤と白たちは、カンパーニャワインを知るのに最適です。今回はジャックセロスとのコラボレーションで実現した瓶内二次発酵スプマンテのドゥブルと、3つの土着品種(フィアーノ、グレコ、アリアニコ)、そしてバジリカータとプーリアで新しく始めたワイナリーついて、エキスポートマネージャーのエマヌエラ スピーノさんと試飲しながら盛りだくさんの内容でお話しいただきました。

ジャックセロスとのコラボレーションでスタートした「ドゥブル」。近年は発泡感をやや強くしてフェウディ ディ サングレゴリオらしさを追及

2000年にスタートしたプロジェクト「ドゥブル」は2004年に初リリースして10年近くたちました。ジャックセロスに協力を仰ぎ、カンパーニャの土着品種で瓶内二次発酵スプマンテを造るという、これまで誰もやらなかったことに挑戦しました。グレコでスパークリングを造る歴史は200年ぐらい前からあるのですが、メトドクラシコ(瓶内二次発酵)で造ったのはフェウディが最初です。セロスはもちろんカンパーニャのブドウでスプマンテを造るのは初めてで、どの品種がメトドクラシコに向いているのかを見極めることから始めました。

セロスは「偉大なブルゴーニュワインに少し泡を入れたいだけ」という考えの造り手です。だからドゥブルも最初はそのイメージが強く、泡の強さも控えめでした。経験を重ねるうちにそのスタイルはフェウディのターゲットとは違うようになり、今は発泡感も少し強くなっています。カンパーニャのスプマンテには厳しい基準はありませんので試行錯誤しながら変えていけたらいいと思っています。

試行錯誤を続けさらなる高みを目指すドゥブルシリーズ

ドゥブルシリーズ

ファランギーナは二次発酵後、澱とともに9~10ヶ月間熟成させて造ります。フルーティーさを保ちつつ、イーストやパンの耳などのニュアンスも感じられます。発泡感もしっかりあります。

アリアニコで造るロゼスプマンテはアリアニコらしい果実味としっかりとした骨格が特徴です。この色はローザアンティーコという色で、この色を出すのにマセラシオンで調整しています。

そしてグレコ。二次発酵後、24ヶ月間澱と寝かせています。色も濃く、香りにも味わいにも複雑味が感じられます。

ドゥブルにするブドウは標高は300~400mで、スティルワイン用のブドウよりも酸が高めのやや早い時期に収穫しています。

コメント:以前のドゥブルに比べ、全体的に発泡感がしっかりとあるように感じる。ロゼは上品な果実味とタンニン、しっかりとした骨格で食事と一緒に合わせたい。3本の中ではグレコが圧巻。熟成感や複雑味があり、発泡感がなくても充分に楽しめる。

フィアーノは南イタリアで最もエレガントな白ブドウ。酸とミネラル感が特徴的です

収穫前のフィアーノスタンダードラインとクリュ「ピエトラカルダ」の2つを造っています。スタンダードのほうは標高200~600mに点在している畑のものを使います。熟す時期が違うので9月から11月にかけて収穫します。

フィアーノ ディ アヴェッリーノDOCGは26のコムーネ(村)で造ることができます。酸が高く、ミネラル豊富で長期熟成のポテンシャルの高い品種です。スタンダードラインの方でもあと3~4年は寝かせていいですし、この前2004年のフィアーノを飲みましたがまだまだ若々しくてとてもフレッシュでした。

ピエトラカルダはワイナリーのあるソルボセルピコの単一畑です。ここは石の多い土壌で、夏の暑さを石が吸収するためその石が熱くなる。そこから「熱い石:ピエトラカルダ」と名付けました。

醸造方法は基本的に2つとも同じですが、ピエトラカルダの方がシュールリーが長く、バトナージュの頻度も高いです。

酸とミネラルが特徴的なフィアーノ

フィアーノ ディ アヴェッリーノ 2012とピエトラカルダ フィアーノ ディ アヴェッリーノ 2012

コメント:どちらも酸とミネラルが印象的。スタンダードの方はフレッシュ感が、ピエトラカルダは上品さ凝縮感が加わる。

 

名前の通りギリシャ由来のグレコは繊細なブドウ。岩が多く、深く根を張る土壌に育つ

収穫前のグレコグレコはとても繊細なブドウです。皮が薄く病気に弱いのでカビなどにも注意が必要です。逆にフィアーノは皮が厚く病気にも強いブドウです。グレコとフィアーノは近いところで育ちますが、土壌が異なります。

グレコ ディ トゥーフォDOCGは8つのコムーネ(村)で造ることができます。グレコと言う名前からわかるとおり、ギリシャから伝わった品種で、1000年以上前の記録が残っているほど歴史があります。

クティッツィはサンタパオリーナにある単一畑で、ピエトラカルダ同様、長めのシュールリーと継続したバトナージュを行って造っています。ピエトラカルダとクティッツィは以前とは全くスタイルが異なります。以前は木樽で熟成させ、重厚感のある味わいを造っていましたが、今は品種本来の特徴を最大限に出すことを第1にし、クリーンな味わいとなっています。


しっかりとしたボディとミネラル豊かな味わいのグレコ

グレコ ディ トゥーフォ 2012とクティッツィ グレコ ディ トゥーフォ 2012

コメント:スタンダードのグレコの方はいきいきとした果実とミネラルが特徴。クティッツィはハーブを思わせる複雑なニュアンスも感じられ、味わいにもよりコクがある。

アリアニコは唯一無二の品種。さまざまなタイプの魅力的なワインを造りだす

収穫前のアリアニコアリアニコは唯一無二のブドウです。長期熟成にも向くタウラージなどはもちろん、若くフルーティーさを楽しめる身近に感じられるワインもできます。

タウラージはカローレ川に面した渓谷で造られるDOCGで、17のコムーネが指定地域になっています。まさに山地に囲まれた場所なので、「ブドウ畑が見えない土地」と言われています。フェウディは300haの畑がありますが、実に390区画に分かれているんです。タウラージ村は標高が450~500mほどですが、タウラージエリアとしてはあまり高くなく、もっと高い場所の畑もあります。

アリアニコは近年、とても人気のある品種となったので造りたいと思う人が増えたのですが、畑を探すのが大変なのでそう簡単には始められないようです。イルピニアエリアは「50年前の農家の姿」と言われていて、それは小さい畑にブドウやほかの果物などいろいろな農作物を造っている農家がたくさんいるからです。そこが現代のピエモンテやヴェネトやトスカーナとの違いです。

若々しいアリアニコ「ルブラート」とタウラージ村近くの単一畑で造る「アリアニコ ダル レ」

ルブラート イルピニア アリアニコ 2012と	アリアニコ ダル レ2011

ルブラートは樹齢が20~25年と比較的若いアリアニコで造ります。醸造はステンレスタンクのみです。飲み心地が良く、デイリーにも楽しんでもらえます。アリアニコダルレはタウラージ村近くの単一畑のアリアニコで、バリックで6ヶ月間熟成させます。イメージ的にはルブラートとタウラージの中間的な存在です。

試飲コメント:ルブラートはイチゴやチェリーの香りがありフレッシュでタンニンは控えめ。バランスのとれたミディアムボディで飲みやすい。アリアニコ ダル レはよりストラクチャーがしっかりしていてタンニンも力強いが渋くなく、心地よい果実味と一緒に楽しめる。

山に囲まれた小さな区画の畑で造るベーシックタウラージとリゼルヴァ「ピアノディモンテヴェルジネ」

タウラージ 2009とピアーノ ディ モンテヴェルジネ タウラージ リゼルヴァ 2008

タウラージは熟成が3年以上、そのうち最低1年は木樽で熟成することとされています。ベーシックタウラージは1年半バリックで熟成させています。

ピアノディモンテヴェルジネはフェウディが一番最初に植えた畑のアリアニコで造るリゼルヴァで、タウラージのトップです。乾燥している土地で、粘土質と石灰質のバランスがとれた土壌でブドウが健康的にゆっくりと熟してくれます。エレガントなタンニンのタウラージとなります。

試飲コメント:ベーシックな方はとてもなめらかで口当たりがよく、驚くほどにスーッと飲めるが最後に力強いタンニンがぐっとくる。ピアノディモンテヴェルジネは香りと味わいに複雑味が加わり、タンニンはとてもエレガント。

カンパーニャだけでない、南イタリアのワイン造りを目指すためのプーリアとバジリカータ

フェウディは「南イタリア」という大きなくくりでワインを造ろうと考えていて、プーリアとバジリカータにもワイナリーを始めています。プーリアはカンパーニャとは全く違う特徴を持つ土地です。暑い気候でアルコール度数の高いブドウができます。その特徴が表れるプリミティーヴォは甘くてフルーティーでスパイシーさもあって、わかりやすく誰にでも好まれるワインとなります。

一方バジリカータもイルピニアとは全く異なります。どちらも偉大なアリアニコができますが、タウラージは休火山で表面は砂質の土壌、ヴルトゥレは活火山で何層にも異なる土壌の層が積み重なっています。

バジリカータには2つワイナリーを持っています。ひとつは「バジリスコ」ともうひとつはバリーレにある小さなワイナリー。樹齢が非常に古い畑もあるし、新しく植樹した畑もあります。

南イタリアの土着品種の可能性をさらに探究するフェウディ

プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア 2012とアリアニコ デル ヴルトゥレ2009

コメント:プリミティーヴォらしい芳醇で柔らかい果実感。たっぷりとした凝縮感でプリミティーヴォ好きにオススメ。アリアニコ デル ヴルトゥレは熟成感があり、かつフレッシュな酸も感じられるバランスのとれた美味しさ。

インタビューを終えて
4月にイルピニアを訪問してきたばかりだったのでタウラージやその周辺の畑のイメージがしやすく、より理解が深まりました。

どのワインも「多くの人に自分たちのワインを楽しんでもらいたい」と言う想いが伝わってくるフェウディのワインは品種の個性も感じつつ、とてもバランスのとれた飲み心地の良いものばかり。このポリシーが一般投票によって決定されるイタリアソムリエ協会のベストワイナリー オブ ザ イヤー受賞につながっているのだと実感しました。

集合写真
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