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2016年10月28日 カステッロ コッレ マッサーリ社 ルカマッローネ氏
『ガンベロロッソ』2017でトレビッキエリ3本選出!「サンジョヴェーゼの若きファンタジスタ」天才エノロゴルカマッローネ氏
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2003年にピサ大学の醸造栽培研究学科を首席で卒業するやいなや、サッシカイア、オルネッライアと並ぶ3大ボルゲリの一角「グラッタマッコ」の製造責任者として26歳で華々しいデビューを果たしたルカマッローネ氏。彼の細部に至るまでのきめ細やかな仕事は『アルティジャナーレ』(主に芸術や音楽の「作品」に当たる言葉)と呼ばれ、イタリア国内でも非常に高い注目を集めています。ルカ氏が造り上げた「グラッタマッコ」「モンテクッコ ロッソ リゼルヴァ」「ポッジョ ディ ソットブルネッロ ディ モンタルチーノ」が『ガンベロロッソ』2017で3本同時に最高賞トレビッキエリの偉業を成し遂げています!まさに「サンジョヴェーゼの若きファンタジスタ(創造性と機知に富む人)」!才気あふれる若手エノロゴのルカ マッローネ氏にお話を聞きました。 |
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幼い頃アブルッツォで抱いたワイン造りの夢
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出身はアブルッツォ州南部、アドリア海側のキエーティから少し南に下ったサングロ渓谷でワイン好きな祖父が自家用でブドウを栽培、ワイン造りを行っていました。今思えばですが、海に近い立地はボルゲリと似通うものがありました。ですので、幼い頃からワインの中で育ちました。父の代になると質の良いブドウを販売するようになり、自分も「フルタイムでこの仕事に取り組もう」と思い、ピサ大学で本格的に栽培醸造を勉強し、地元に戻ってワイン造りをと思っていました。
「コッレマッサーリ」社との出会い
ところが大学在学中の2000年、たまたま読んだ『ガンベロロッソ』誌で、モンテクッコでワイナリー「コッレマッサーリ」を始めたばかりのスイス人のティーパ氏の記事に目が止まりました。「元々存在していたポテンシャルの高いモンテクッコの地で価値のあるワイン造りをしたい」という考えに賛同、自分も成長したいと思い、すぐにコンタクトを取りました。翌年2001年に学生インターンシップで収穫期に働きに行きました。2002年には別のモンテクッコのワイナリーにも行きましたが、醸造栽培研究学科を卒業後はコッレマッサーリで働く事に決めました。 |
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大学卒業後すぐに3大ボルゲリ「グラッタマッコ」醸造責任者に
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大学を卒業した2003年、ティーパ氏に「サッシカイア」「オルネッライア」に並ぶ3大ボルゲリの一つ、「グラッタマッコ」でワインを造るように命じられました。2002年に購入したばかりの「グラッコマッコ」、しかも収穫の真っただ中でした。特に2003年は酷暑の年で、いきなり「火のような洗礼」を収穫期に受けました。今でこそ話せますが、当時はまさに『KAMIKAZE』のような心境で責任者になりましたよ(笑)
いきなりグラッタマッコを任されました。しかしそこで気づかされたことは、ワイナリーはチームで動くという事です。自分一人では出来ないという事です。グラッタマッコで長年コンサルタントを務める凄腕マウリッツォ カステッリ氏は私にとって「第二のお父さん」のような存在で、多くの事を学びました。
「神の舌を持つ」ジュリオガンベッリに師事
仕事が休みの日には「神の舌を持つ」故ジュリオ ガンベッリ氏の所に出向き、個別にサンジョヴェーゼの歴史、文化の多くを学びました。ジュリオ ガンベッリ氏は常々「サンジョヴェーゼ100%で味わいを表現することが重要」と言っていました。コッレマッサーリでは、「モンテクッコ リゼルヴァ ポッジョ ロンブローネ」でサンジョヴェーゼの味わいの豊かさを表現しています。「グラッタ マッコ」にもサンジョヴェーゼがブレンドされています。平地が多いボルゲリの中で、小高い丘の上に位置する非常に恵まれた畑で、ボルゲリ低地では栽培が難しいとされる高品質なサンジョヴェーゼを栽培、一般的な濃密な味わいのボルゲリとは違い、「グラッタマッコ」にはトスカーナらしいクラシカルな味わいを表現しています。 |
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ありのままのブドウの姿をワインで表現する「アルティジャナーレ」なワイン造り
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Q:ピサ大学醸造栽培研究学科を首席で卒業されたそうですね?
大学はいわゆる「座学」が中心で、理論や最短ルートの解決法中心の講義となりました。実際ワイナリーに出ると、テキストにはない事ばかり起きました。ブドウの状態によって対処が異なるのです。今では教えられた真逆の事に取り組んでいますよ。それは『アルティジャナーレ』(主に芸術や音楽の「作品」に当たる言葉)なワイン造りです。世の中のスタンダードなワイン造りとは必ずしも一致しませんが、より丁寧にテロワールを表現する為、細部にまでこだわり、ブドウのありのままの姿をワインに表現するワイン造りを行っています。
「有機栽培」と「ティネッロ樽」によるブドウへのアプローチ
その為に必要な事が2つあります。一つが畑を全て「有機栽培」にする事、もう一つがトスカーナで伝統的に使用されてきた「ティネッロ」と呼ばれる開放型の木樽の醗酵槽で人の手により注意深くピジャージュを行う事です。エリア毎に割り振られた樽には日々変化するアルコール度数を記載しています。コンピューターではなく人間の五感をフルに使い変化を見極めながら最良の状態で熟成出来るように目を光らせます。
手をかけて醸造する事でテロワールを反映した個性豊かなワインを造る
このような手間をかけなくても、アルコール醗酵を確実に行うには、培養酵母を加えて醗酵を促せば良いのですが、元々ブドウ自身が持っている素晴らしいバランスを崩してしまいます。私たちは自然酵母を使っています。使用にはリスクを伴いますし、常に状態に目を見張らないといけません。このような醸造工程は大学で学ばなかった事ですが、手をかけて醸造する事でテロワールを反映した個性豊かなワインが産まれます。コッレマッサーリだけでも大きく分けて5つ全く異なるテロワールを有しています。つまり、ジャッジしづらい個性のないワイン造りは行いません。2007年からコッレマッサーリ社のチーフエノロゴとして栽培、醸造の全てを統括する立場になりました。 |
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モンテックッコとボルゲリのテロワールの違い
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Q:モンテクッコとボルゲリでのテロワールの違いを教えて下さい。
同じトスカーナでもモンテクッコとボルゲリではテロワールが異なります。降雨量はそれほど変わりませんが、モンテクッコはアミアータ山麓にあるので一日の寒暖差が大きいです。例年9月~10月にかけて収穫を行うボルゲリとは収穫時期が異なり、モンテクッコの方が2週間程遅れます。モンタルチーノの場合は南部と北部で異なります。私達が所有する南部のポッジョ ディ ソットでは例年9月中旬から収穫期を迎えますが、北西分おピアンコロネッロでは例年10月初旬から収穫を迎えます、同じモンタルチーノでも異なるのです。それぞれのテロワールに応じて対応していきます。
Q:近年、重厚なスタイルからエレガントなスタイルに移行するワイナリーが多いように思いますが?
一つ理由を考えるとすると、年々ブドウの樹齢が高まり、ブドウ自体が変化を続けていることが挙げられます。私たちはよりよい形でワインの個性を表現していきたいと思っています。スタイルに対する考え方は様々ですが、例えばピノネーロのようなエレガントさを表現するブドウにはそうしたスタイルがあります。「エレガント」か「力強い」というのはテロワールに基づくものと考えています。素晴らしいワインとはテロワールを表現し、「エレガンス」と「力強さ」の両方が確りと味わいに存在しているものです。
Q:『ガンベロロッソ』2017で3本のワインが最高賞トレビッキエリを獲得しました。その内の一本「幻のブルネッロ」ポッジョディソットについてお聞かせ下さい。
2011年から醸造にあたっていますが、前オーナーのピエロ パルムッチ氏は普段見学することすら許さない方で、初めてカンティーナに入った時は緊張しました。しかしカンティーナの中は印象的でした。例えるならば「エレガントな香り」。素晴らしい香りに包まれていました。カンティーナに漂う底知れぬオーラを感じました。サンジョヴェーゼのエレガンス溢れるポッジョ ディ ソットの味わいはグラッタマッコのような存在で、グラッタマッコはボルゲリにおけるポッジョ ディ ソットのような存在と言えるように取り組んでいます。
いよいよルカマッローネ氏との試飲が始まります! |
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遅摘み完熟ブドウと樽醗酵の豊かな味わい |
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カステッロ コッレ マッサーリ |
イリッセ モンテクッコ ヴェルメンティーノ 2014 |
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標高300メートルの西向きの畑でオンブローネ渓谷から上がってくる海風がやさしく吹き抜ける畑です。有機栽培で育てられた樹齢10~15年の遅摘みにより完熟したヴェルメンティーノ85%とグレケット15%から成る白ワインです。ルカ氏は「ブドウに力があるので木樽を使用しています。豊かな果実感がありながらミネラリーな美しい味わいはテロワールに因る所が大きい」と教えて下さいました。 |
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試飲コメント:完熟したフルーツ香に、カモミールやミネラルの綺麗な香りが重なります。飲むと、遅摘みによる芳しいアロマとミネラル感、バランスを保つ美しい酸味があり、フレッシュで香り豊かな味わいです。余韻も長く、樽由来の円やかな風味と澱と心地よい酸味が続きます。エビやカニといった旨みが強い魚介類、バターを使った白身魚のムニエル等と好相性。 |
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凝縮感とエレガンスに富んだ深みある味わい |
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カステッロ コッレ マッサーリ |
コッレマッサーリ モンテクッコ ロッソ リゼルヴァ 2013 |
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厳選された古い畑で育てたサンジョヴェーゼ80%、チリエジョーロ10%、カベルネソーヴィニョン10%から成ります。ルカ氏は「カベルネソーヴィニョンのみバリックを使います。力強いがすぐにでも楽しめるバランスの良さと味わいの豊かさがあります」と教えて下さいました。 |
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試飲コメント:プルーンやカシスの黒い果実を思わせる力強い香りに、甘草やスパイス、バルサミックなニュアンスが複雑に入り混じります。飲むと骨格の確りとしたフルボディ、凝縮感のある豊かな果実感、イキイキとしたタンニンが見事に溶け合い、エレガントで深みがあり既にバランスが取れています。赤身のお肉のローストや、鹿、イノシシと言ったジビエ料理との相性が良いです。 |
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ブルネッロを思わせる優れた酒質と熟成能力を持つワイン |
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カステッロ コッレ マッサーリ |
ポッジョ ロンブローネ モンテクッコ サンジョヴェーゼ リゼルヴァ 2012 |
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モンテクッコ北部にある単一畑「ポッジョ ロンブローネ」です。ルカ氏は「サンジョヴェーゼ100%で有機栽培で育てた平均樹齢50年のサンジョヴェーゼから造られますので、間引きといった人の手を加えずとも自然と収量が落ち味わい深いブドウが得られます。」と教えて下さいました。 |
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試飲コメント:ダークチェリーやプラム、オレンジピールと杉の木、なめし皮の複雑な香りが入り混じる堂々たる存在感で、ブルネッロを思わせる香りがあります。飲むと凝縮感のある豊かな果実感は厚みがあり円やかな口当たりです。タンニンはスムーズでスパイシーで長く深い余韻が続きます。 |
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ボルゲリ最古のヴェルメンティーノ!素晴らしい調和を成す果実感とエレガントな酸味 |
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グラッタマッコ |
グラッタマッコ ビアンコ ボルゲリ ヴェルメンティーノ 2014 |
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ボルゲリで最も古いヴェルメンティーノの畑で、ブドウの樹齢は20年を超えています。ルカ氏は「このワインには塩味があるのが特徴です。豊かな酸もありまさにテロワールのなせる味です。クリーミーな味わいはバリックから甘味はブドウの糖度由来でバランスを取っています」と教えて下さいました。 |
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試飲コメント:トスカーナの高級リストランテでも使用されている上質な白。熟したリンゴの深み、柑橘の爽やかさ、白い花、ハーブの上品で慎ましやかな印象です。飲むと、充実した果実の厚み、塩味を感じる心地よいミネラルとエレガントな酸味の調和があります。手長海老のグリルや白身魚のムニエル、蟹等、旨みの強い魚介料理、子牛のカツレツ等とは抜群の相性を魅せてくれます。 |
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3大ボルゲリ「グラッタマッコ」のセカンド |
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グラッタマッコ |
ボルゲリ ロッソ 2014 |
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ルカ氏は「グラッタマッコの畑の若い樹齢のブドウの木を使います。野生に溢れるワイルドな味わいです。グラッタマッコには使っていませんが、こちらにはカベルネフランが使われています。スパイシーでミントやメントールのニュアンスはカベルネフラン由来です」と教えて下さいました。 |
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試飲コメント:深みのある、濃いルビーの色調です。味わいの芯の部分には黒スグリを思わせる果実味のしっかりとした軸がありながら、表面に一枚の美しいベールをかけたかのような、しなやかな口当たりが感じられ、細部に至るまで実にエレガントなスタイルで造られています。フィレンツェ風のステーキといった典型的なトスカーナ料理、赤身肉のグリルと素晴らしい相性を魅せてくれます。 |
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「サッシカイア」「オルネッライア」と並ぶ3大ボルゲリ! |
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グラッタマッコ |
グラッタマッコ ロッソ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ 2013 |
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ルカ氏は「グラッタマッコに特徴的な塩味が感じられます。力強さ、タンニンがありながらもエレガンスに満ちた酸味があり、テロワールが見事に表現されている個性豊かなワインです」と教えて下さいました。 |
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試飲コメント:凝縮した果実感とシルキーなタンニンと溶け合い滑らかで深い味わいです。フィニッシュまでの隙の無いきめ細やかな余韻が非常に長く続きます。濃密なスーパートスカンとは一線を画すエレガンスが感じられます。ジビエや猪、赤身肉のローストと合わせると至福のマリアージュとなります。 |
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グラッタマッコが造る典型的なボルゲリスタイルのワイン |
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グラッタマッコ |
ラルベレッロ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ 2013 |
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カベルネソーヴィニョン、カベルネフラン、プティヴェルドの3種から成る典型的なボルゲリスタイルです。全てのブドウを混醸させ早い段階から調和を保ちます。ルカ氏は「ボルゲリの暑さに強いアルベレッロ仕立てで栽培しています個性豊かなワイントなっています」と教えて下さいました。 |
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試飲コメント:豊かなタンニンとイキイキとした酸味、美しいミネラルがボディを確りと支える上品なスタイルが印象的です。典型的なボルドースタイルですが、醗酵から混醸を行っているので、既にバランスに長けています。凝縮された味わいが余韻まで非常に長く続きます。ゆうに15年以上の熟成のポテンシャルを持ち合わせています。 |
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■インタビューを終えて |
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ピサ大学を首席で卒業、26歳で3大ボルゲリ「グラッタマッコ」の責任者となり、10年後には『ガンベロロッソ』2017で彼が造るワインが3本同時に最高賞トレビッキエリを獲得。まさに「時代の寵児」となったルカマッローネ氏。彼の口からは何度も「アルティジャナーレ」(主に芸術や音楽の「作品」に当たる言葉)という言葉が出てきました。時に、造り方のセオリーを超え、「ありのままのブドウの魅力を引き出す」事に精力を傾注する姿はまるでアーティストのようなオーラがありました。楽譜は常に同じだけれども演奏の結果は常に異なる。こだわりと感性を持ってテロワールに結びついた最上のブドウの味わいを表現することができる「サンジョヴェーゼのファンタジスタ(創造性と機知に富む人)」の情熱的な話にただただ引き込まれていくばかりでした。 |
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