キャンティ クラシコのトップクラス生産者「ロッカデッレマチエ」

2017/05/11
突撃インタビュー
 
2017年4月25日 ロッカ デッレ マチエ社マルコ トーティ氏

僅か40年たらずでキャンティ クラシコのトップクラスの生産者に昇りつめた「ロッカデッレマチエ」

ロッカ デッレ マチエ社マルコ トーティ氏と
ロッカデッレマチエ社は1973年創業と歴史こそ浅いですが、創業以来キャンティ クラシコエリアの素晴らしいテロワールに着目、セラーでの最新の技術革新に取り組む、情熱溢れる若きワイナリーです。「食事に寄り添う自然な味わいのワイン」をモットーに造る彼らのワインはあっという間に話題となり、現在では多くのミシュラン星付きレストランでも引っ張りだこの人気となっています。キャンティが「安ワインの代名詞」とまで呼ばれていた事に危機感を募らせ、ロッカデッレマチエ社を始めとするキャンティ クラシコの生産者たちはワイン法に反旗をひるがえし、サンジョヴェーゼなどの黒ぶどうだけでキャンティを造るという行動に出ました 当然法律的には認められませんが、彼らの熱意は国内外から支持を集め、ついにイタリア政府をも動かし、1996年にキャンティを黒ぶどうのみで造る事を法律で認めさせたのです。それ以降、キャンティ クラシコ協会の副会長、会長職を歴任し自らのワインだけでなくエリア全体の品質向上に尽力しています。わずか40年たらずでキャンティ クラシコのトップクラスの生産者の一つに昇りつめた、まさにサクセスストーリーを地で行くワイナリーです。ロッカデルマチエ社のセールス&マーケティングマネージャーのマルコトーティ氏にお話を聞きました。

カステッリーナ イン キャンティ地区「レ マチエ(Le Macie)」を購入

イタロツィンガレッリ氏「食事に寄り添う自然な味わいのワイン」を造りたい
イタリア映画界の名プロデューサーとして名を馳せたイタロ ツィンガレリ氏は、無類のワイン好きでもありました。彼は友人や家族たちを集めて自宅やレストランでワインと料理を味わうのを楽しみとしていましたが、ことワインについては中々彼が満足できるワインに出会う事が出来ないのを不満に思っていました。 いつしか彼は、自分の理想とする「食事に寄り添う自然な味わいのワイン」は自分の手で造るしかないと考える様になりました。

地図

カステッリーナ イン キャンティ地区「レ マチエ(Le Macie)」を購入
そしてついに、カステッリーナ イン キャンティ地区の一角にある地所「レ マチエ(Le Macie)」の85ヘクタールの土地を購入し、「ロッカ デッレ マチエ」を1973年に立ち上げました。ぶどう畑は当初2ヘクタールのみでしたが、彼はぶどう畑を拡張し、ワイン造りに適したぶどうが収穫できる様になるまでスタッフと共に辛抱強く畑での作業を続けました。

彗星の如く現れたキャンティクラシコの実力派をして注目される
畑を購入して5年後、1978年が初リリースとなった「ロッカ デッレ マチエ」のワインは、当初からその品質の高さが国内外で高く評価され、彼らは彗星のごとく現れたキャンティ クラシコの新たな実力派としてがぜん注目を集める様になりました。彼らはその後急ピッチで畑を拡張して行きます。まずレ マチエの近隣にあるサント アルフォンソの土地を購入、1984年にはリゼルヴァワインを生産するために11世紀からの歴史をもつフィッツィアーノの地所を購入、さらに1998年以降、マレンマ地区のモレリーノ ディ スカンサーノにカンポ マッキオーネ、カーサ マリアという2つの畑を購入しました。

テロワールの尊重と最先端設備による高品質なワイン造り

畑

化学薬品や農薬はほとんど使用しない
「ロッカ デッレ マチエ」の目覚ましい成功は、一方でテロワールを尊重し、そして一方でセラーでの技術革新を通して品質を向上させる事への一貫した取り組みによるところが大きいと言われています。彼らの畑では化学薬品、農薬等はほとんど使用せず、隠花植物による除草や、漢方薬から作られた殺虫剤で害虫を駆除する方法を採用し、またアブラムシ対策についてはチューリンゲン菌を使用した数少ないワイナリーの一つです。

カンティーナ最先端設備の地下セラー
ワインメーカーとセラー管理担当者のチームは、ぶどう畑で行われた厳格な仕事を引継ぎ、果汁を最適な状態で発酵させるための正確な温度コントロールを確実に行なう最先端の発酵設備と、最適な熟成を確実に行なう熟成設備とを兼ね備えた地下セラーで細心の注意を払って仕事を遂行します。またキャンティ クラシコの醸造では柔らかな味わいの為にセメントタンクでの発酵と大樽での熟成にこだわっています。

 

イタリア政府を動かしキャンティを黒ぶどうのみで造る事を法律で認めさせる

ロッカデッレマチエイタリア政府を動かしキャンティを黒ぶどうのみで造る事を法律で認めさせる
彼らは一方でキャンティ・ワインの品質と地位向上にも尽力してきました。 19世紀に時のイタリア首相、リカソーリ男爵によってキャンティには白ぶどうを混醸する事が義務付けられました。そして20世紀に入るとキャンティの人気の高まりと共に、生産エリアが拡張され、薄っぺらな味わいの粗悪な品質のワインも数多く出回るようになり、いつしかキャンティは安ワインの代名詞にまで落ちぶれてしまいました。 こうした流れに危機感をもった「ロッカ デッレ マチエ」を始めとするキャンティ クラシコの生産者たちは法律に反旗をひるがえし、サンジョヴェーゼなどの黒ぶどうだけでキャンティを造るという行動に出ました 当然法律的には認められませんが、彼らの熱意は国内外から支持を集め、ついにイタリア政府をも動かし、1996年にキャンティを黒ぶどうのみで造る事を法律で認めさせたのです。

キャンティクラシコ協会の副会長、会長を歴任
現オーナーのセルジオ ツィンガレリ氏は、1985年よりワイナリーの経営に加わり、1989年に父イタロ氏から完全に経営を引き継ぎました。彼は父同様に常にワインの品質向上に努め「ロッカ デッレ マチエ」の名声を確固たるものとし、キャンティ クラシコ協会の副会長、会長を歴任しています。自らのワインだけでなくキャンティ クラシコ全体の品質向上に尽力しています。

キャンティクラシコ全体で僅か4%のみ!特別な「グランセレツィオーネ」

キャンティ クラシコの最上カテゴリーとして「キャンティ クラシコ グランセレツィオーネ」
2014年2月からキャンティ クラシコの最上カテゴリーとして「キャンティ クラシコ グランセレツィオーネ」が正式にスタートしました。著名なスーパートスカンを産み出すような大きな生産者と違い、少量生産のキャンティ クラシコ生産者にとってこれまでは、どれだけ素晴らしいワインを造っても「キャンティクラシコ」に一括りにされる事が多かったのです。

キャンティクラシコカテゴリー図

キャンティ クラシコ リゼルヴァより厳しい規定
「グランセレツィオーネ」はキャンティ クラシコ リゼルヴァより長い熟成期間、より厳しい規則、キャンティ クラシコとは異なる検査機関で高度な官能検査を経て、ようやく認められます。出来上がるワインは土地のテロワールを表現したものであり、より複雑で優雅、バランスが取れたファインワインとなっています。

キャンティ クラシコ全体の僅か4%!ほんの一握りのトップクラスにのみ認められる
300社以上もあるキャンティ クラシコの生産者の中で、2014年は僅か25銘柄のみでのスタートとなりました。2017年2月現在では80社、110銘柄が認定されました。それでもキャンティ クラシコ銘柄全体で見て「グランセレツィオーネ」銘柄は僅か4%。ほんの一握りのワインにしか認められない、言うならば「まさにトップクラス」のキャンティ クラシコです。これにより、エリア全体の品質が向上しました。1000本程しか生産できない少量生産者にも素晴らしいチャンスが訪れた訳です。

フレッシュな果実感に豊かなミネラルと心地よい塩味!
カンポ マッチョーネ ヴェルメンティーノ 2015
カンポ マッチョーネ ヴェルメンティーノ 2015


トスカーナのヴェルメンティーノらしいミネラル感溢れるフレッシュな白ワインです。海が近いロケーションの特徴が良く出ています。程よい塩味がアクセントになり、食事との相性も良いです。トスカーナでは魚料理、ウサギ肉や鶏肉、豚肉料理と合わせて楽しみます。
試飲コメント:すっきりとしたフレッシュな果実感に豊かなミネラルと心地よい塩味が綺麗に折り重なる滑らかさがあります。余韻に感じる心地よいほろ苦さがこのワインのアクセントとなっています。まずは良く冷やしてヴェルメンティーノのフレッシュな味わいを楽しみ、すこしずつ温度が上げると、より豊かなヴェルメンティーノの香り、味わいが楽しめます。

美しいミネラルとバランスのとれた味わい
キャンティ クラシコ ファミリア ツィンガレッリ 2013
キャンティ クラシコ ファミリア ツィンガレッリ 2013


ロッカ デッレ マチエのキャンティにはサンジョヴェーゼの特徴であるミネラルと酸に支えられた果実味、トースティな香ばしいフレーバーが感じられます。バランスのとれた味わいで特に美しいミネラルが感じられます。
試飲コメント:ルビー色の豊かな色調でベリーやプラムの豊かな果実香が印象的です。飲むと、フローラルなブーケと上質なタンニンが綺麗に溶け合い、フルボディで力強さも感じられます。特にお肉料理とは相性抜群で、ワインの持つタンニンやボディに良く合います。ステーキから焼肉など、幅広くお楽しみ頂けます。

深みがありながらも飲み疲れないバランスのとれた秀逸なキャンティ クラシコ リゼルヴァ
キャンティ クラシコ リゼルヴァ 2013
キャンティ クラシコ リゼルヴァ 2013


2013年からは3つの畑から収穫しています。リゼルヴァは大樽での熟成によりタンニンもより甘美なスタイルとなり、厳選したブドウから造られたリゼルヴァは豊かなミネラルと美しい酸の調和が見られ、ブラックペッパーやビターチョコレートの深いアロマと豊かな味わいがあります。
試飲コメント:赤い果実の華やかさに熟したプルーンやブラックペッパー、ビターチョコレートの豊かなインパクトが混じり合う奥行きのある複雑な香りです。力強く、凝縮した果実感がありますが、美しい酸と豊かなミネラルがこのワインの屋台骨を支えていて、深みがありながらも飲み疲れないバランスのとれた秀逸な味わいがあります。

芳醇なアロマとエレガントな旨み!クリュキャンティクラシコ
テヌータ サン タルフォンソ キャンティ クラシコ 2013
テヌータ サン タルフォンソ キャンティ クラシコ 2013


サン タルフォンソはロッカ デッレ マチエが所有した最初のクリュ キャンティ クラシコです。リゼルヴァディフィツィアーノと並び、ワイナリーを代表する最高峰2大クリュの一つです。カステッリーナ イン キャンティ地区の単一畑の中で最西端にある畑で完熟したサンジョヴェーゼのみを使用します。甘草やビターチョコレートの芳醇なアロマが特徴です。
試飲コメント:スミレ、チェリー、プラムなどの果実、ハーブ、スパイスのようなアロマ。口当たりはやわらかく、コーヒーのようなほろ苦さやミネラル感、エレガントな酸味と旨味も感じられる芳醇な味わいです。ローストした赤身肉やジビエ、ラザニア、ラグーソースパスタ、熟成したチーズ等と相性が良いです。

確りとしたボディに洗練さが宿る素晴らしい最上級レンジ「グランセレツィオーネ」
キャンティ クラシコ グラン セレツィオーネ リゼルヴァ ディ フィッツァーノ 2011
キャンティ クラシコ グラン セレツィオーネ リゼルヴァ ディ フィッツァーノ 2011


グラン セレツィオーネという新しい呼称は2014年2月に僅か25生産者、25アイテムのみに与えられた300社程あるキャンティクラシコの中でも極限られた銘柄のみ許される厳しい規則、検査機関を経てリリースされる上級ラインです。
試飲コメント:熟したプルーンに甘草やビターチョコレート、ブラックペッパー、タバコのニュアンスが重なり合う複雑で美しい香りです。熟したサンジョヴェーゼの艶やかさと力強さが入り混じる魅力的なスタイルで、豊かなフレーバーと洗練された余韻が非常に長く続きます。赤身肉のグリルや熟成したチーズと相性が良いです。
インタビューを終えて
キャンティクラシコエリアの全体の地位向上に尽力し続けるロッカデッレマチエ社。2014年から始まった新たな最上格付「グランセレツィオーネ」についてお伺いすると、待っていたかと言わんばかりにとても熱心に話してくれました。「グランセレツィオーネ」の呼称に決まるまでは、「グランリゼルヴァ」、「グランクリュ」等、数多くの候補に挙がっていたそうです。非常に厳しい規定がありながらも、多くの生産者がそのリリースを待ち焦がれていた様子が伝わってきました。品質の向上と共に新たなステップへ進むキャンティクラシコの今後が益々楽しみになりました。余談ですが、トーティ氏はロッカ デッレ マチエ社の前にヴェルナッチャディサンジミニャーのワイナリーで仕事をされていたそうです。トスカニー直輸入「チェザーニ」のスーパートスカン「ルエンツォ」の話をしたら、顔をほころばせて「Good Wine!」と絶賛して頂きました!
ロッカ デッレ マチエ社マルコ トーティ氏とトスカニースタッフ
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