トレンティーノの畑全体の60%を所有する実力派生産者協同組合カヴィット

2017/11/03
突撃インタビュー
 
2017年10月18日 カヴィット社 エンリコ ザノーニ氏、アンドレア ニコリーニ氏

トレンティーノの畑全体の60%を所有!最優秀スパークリングにも選出される実力派生産者協同組合「カヴィット」突撃インタビュー

カヴィット社エンリコザノーニ氏、アンドレアニコリーニ氏と
カヴィットはトレンティーノの生産者協同組合で、トレントDOCを始め、幅広いワインを生産しています。カヴィットの強みはトレンティーノの栽培面積の60%を所有し、特徴の異なる畑からブドウをセレクトして様々なタイプのワインを造ること。飲み心地の良さにこだわり、世界中の愛好家から高く指示を集めているカヴィットのワイン造りに対する思いや取り組みをお聞きしました。

トレンティーノの畑全体の60%を所有。土壌や気候条件の異なる様々なタイプの畑があることでセレクションが可能

カヴィットはトレンティーノの生産者協同組合で、トレンティーノの畑全体の60%を所有しています。カヴィット(CAVIT)は、Cantina Viticoltori del Trentinoの頭文字をとったものです。組合員はトレンティーノの北から南まで所属しているので、トレンティーノエリアまんべんなく畑があり様々なタイプのブドウが得られます。そのため、タイプごとにブドウをセレクトできるので、トップラインの高級レンジから、ベーシックなワインまで幅広い商品を造ることができます。

現在、組合員は4500人です。畑全体の面積が5500ヘクタールほどですので、ひとりの組合員の畑は1ヘクタールちょっとになります。畑のある場所ごとに10のグループに分けていて、それぞれに醸造所があります。

カヴィット社の地図

全ての畑はピーカ(PICA=Piattaforma Integrata Cartografica Agriviticola)システムで管理。区画ごとに畑の特徴が一元管理されている

5500ヘクタールの畑はすべてピーカ(PICA)システムで管理しています。これはPiattaforma Integrata Cartografica Agriviticolaというもので、区画ごとに畑の向きや土壌のタイプ、水はけの状態などをこと細かく調べ、管理しています。このシステムにより、区画に適した仕立て方法や品種、そして収穫の時期などきめ細かく適切に決めることができます。ピーカにはもう一つ意味があります。トレンティーノでは「ブドウの房」のことをこの地方の方言でピーカと呼ぶので、それもかけています。

畑はトレンティーノのほぼ全域にわたっていますが、場所によって特徴が違います。例えばガルダ湖の北側のエリアは地中海的な気候で、オリーブなども栽培されている温暖なエリアです。一方、北に行くほど内陸性の気候になります。また、アディジェ川の影響もあります。それぞれ、気候条件、土壌タイプなどが違います。

トレンティーノは栽培面積が全部で10000ヘクタールほどしかありませんが、DOCの数は20ほどもあります。それぐらいバラエティに富んだワインができる土地なのです。この多様な土地もピーカシステムのおかげで適切に管理することができています。

カヴィット社の畑
 

スパークリングワインの最高品質のものはメトドクラシコで造るトレントDOC。カジュアルに楽しめるメトドシャルマのスパークリングも人気が高い

カヴィット社はたくさんのスパークリングワインを造っていますが、その中で最高品質のものがメトドクラシコ(瓶内二次発酵)で造るトレントDOCです。「アルテマージ」というブランド名で展開しています。

また、シャルマ方式のプロセッコも造っています。これはアメリカ市場で大成功しています。また、ミュラートゥルガウ種で造るシャルマ方式のスパークリングも造っていて、これも非常に人気が高いです。

カヴィット社アルテマージのカンティーナ

原料となるブドウの品質が最も重要。アルテマージはエレガントさを大切に造っている

カヴィット社エノロゴのパオロトゥッラ氏アルテマージの醸造責任者パオロ トゥッラは、アルテマージを造る上でエレガントさを表現することを大切にしています。そのためにも原料となるブドウの品質が最も重要だと考えています。原料の良さがワインにも表現されますから。美人には化粧はあまり必要ではないのと同じです(笑)。

アルテマージに使用するブドウはトレントDOC認定区域内のシャルドネとピノネロです。エリアはガルダ湖からアルプスに続く山岳エリアまで広がっていますので、気候や土壌タイプなどが実にさまざまです。毎年毎年、それらの畑の中からアルテマージにふさわしいブドウを選んで造っています。

カヴィット社アルテマージの畑

飲み心地抜群のエクストラドライタイプのプロセッコ
ロスカート プロセッコ エクストラ ドライ NV
ロスカート プロセッコ エクストラ ドライ NV


これはヴェネトの契約農家の畑で造っているプロセッコになります。トレンティーノ州以外ですのでPICAのシステムには入っていませんが、私たちが管理をし、醸造はトレンティーノの私たちのカンティーナで行っています。

プロセッコの多くはエクストラドライですが、このロスカートもエクストラドライです。日本ではブリュットのほうが人気がありますか?エクストラドライのほうが甘みがあってやわらかい味わいなので新しいワインの飲み手の人たちに受けるのではないかと思います。私たちのエクストラドライは残糖値はそれほど高くなく、どちらかというとブリュットよりです。

試飲コメント:プロセッコらしい、リンゴや桃などのフルーティーな香り。甘みをほんのりと感じる爽やかな味わい。気軽にぐいぐいと飲める楽しいスタイルでアメリカで受けているのがよくわかる。

シャルドネ100%で造るエレガントなブラン ド ブラン
アルテマージ ブリュット ミレジマート 2011
アルテマージ ブリュット ミレジマート 2011


複数の畑のシャルドネをセレクトして造っているブランドブランのトレントDOCです。ヴィンテージは2011で、デゴルジュマンは2016年末です。エノロゴのパオロが意図したとおり、エレガントな味わいになっています。瓶内熟成は36ヶ月間以上です。とても繊細でクリーミーな泡をまず感じ、その後にきれいな酸が広がってとてもフレッシュな味わいです。複雑味はありつつもとても飲みやすいスタイルに仕上がっています。

このワインはシャルドネの長期熟成力を存分に表現しています。先日、昨年デゴルジュマンをした1998年と1999年ヴィンテージのものを飲みましたが非常にフレッシュで素晴らしい味わいになっていました。

試飲コメント:果実由来の酸とミネラルが印象的な味わい。繊細な泡とともに美しい酸を感じる、キリリとした美味しさ。

ピノネロとシャルドネで造る端正なスタイルのロゼ
アルテマージ ブリュット ロゼ NV
アルテマージ ブリュット ロゼ NV


ピノネロとシャルドネで造るロゼブリュットです。この淡いピンク色を見せるため、透明のボトルに入れています。光などから守るため、黄色のセロファンに包んで出荷しています。

ピノネロの骨格とシャルドネの果実味と酸が上品に表現されていると思います。生産本数は14000本とごくわずかです。

試飲コメント:フレッシュで心地よい酸のある飲み心地の良いロゼ。チェリーや森の果実の洗練したニュアンス。上品な辛口でやわらかい後味が美味。甘みはほとんど感じない。

カヴィットのトップキュヴェ!『ガンベロロッソ』年間最優秀スパークリングにも選出
アルテマージ リゼルヴァ グラアル ブリュット 2008
アルテマージ リゼルヴァ グラアル ブリュット 2008


『ガンベロロッソ』で13回トレビッキエリを獲得しているカヴィットのトップキュヴェです。2010年版では2002ヴィンテージが年間最優秀スパークリングに選ばれました。最高賞をずっと取り続けているというのは安定した品質の証拠でもあると思います。

シャルドネとピノネロで造っていて、その比率は年によって違います。シャルドネは半分ほどバリックの旧樽で熟成させています。他のアルテマージのワイン同様、飲み心地の良さとエレガントなスタイルを大切にしています。もちろん、香りや味わいの複雑さや広がりは違います。6年間の瓶内熟成をしています。

試飲コメント:非常にきめ細かい泡。ハチミツやナッツ、熟した果実のニュアンス。時間とともにふくよかさと厚みが広がる。
インタビューを終えて
トレンティーノ全体の60%もの畑を所有しているというのが驚きでした。スパークリングワインからスティルワインまで、様々なレンジのワインを生産することができるのもピーカという優れた管理システムがあってのこと。

今回はプロセッコ1つとトレントDOCを3種類試飲させていただきましたが、いずれも飲み心地がよく、難しく考えずに楽しむことができるスパークリングワインでした。カヴィット社はトレントDOCの中では3番目の生産者ということですが(1位はフェッラーリ社、2位はロータリ社)、メトドクラシコをお手頃価格で楽しめるのもカヴィットの強みだと思います。

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