独自のスタイルによるプロセッコで世界中の愛好家から支持を受ける「ベッレンダ」突撃インタビュー

2017/12/25
突撃インタビュー
 
2017年11月15日 ベッレンダ社 ウンベルト コスモ氏

独自のスタイルによるプロセッコで世界中の愛好家から支持を受ける「ベッレンダ」突撃インタビュー

ベッレンダ社長ウンベルトコスモ氏と
ベッレンダはプロセッコDOCGのエリア「コネリアーノ」に構えるプロセッコの造り手です。プロセッコだけでなくシャルドネやピノネロ、ラボーゾなどからもスパークリングワインを造っているのを始め、カベルネ、メルローからボルドースタイルの赤ワインを造るなど、ヴェネト各地のテロワールを生かした様々なワインを造る意欲的な生産者です。プロセッコ生産者の中でも独自の道を進むベッレンダ社の社長ウンベルト氏にワイナリーの歴史と現在の取り組みについてお聞きしました。

ベッレンダは30年前に設立した比較的若いワイナリー

ベッレンダは比較的若いワイナリーで、約30年ほどの歴史があります。家族は酪農を営んでいたのですが、両親とは違う仕事がしたいと、弟のルイジと一緒にワイン造りの道に入りました。ルイジは醸造学を勉強していたのでそのままエノロゴとして、私は販売の方を担当する、という役割分担をしました。

ベッレンダ社オーナー3兄弟
代々ワイン造りをしている家族ではなかったことはデメリットもありますが、メリットもあります。メリットとしては何も実績がないので自由にできた、ということです。歴史がないから自分たち自身の独自のスタイルを作っていくことができました。一方、デメリットは技術的なことで、そもそもの家族のサポートがない、ということです。だからまずは教えてくれる人を探さなければなりませんでした。

ただ、事業としてのワイン造りはしていませんでしたが、畑は所有してブドウ栽培を行い、売っていました。自家消費用のワインも作っていました。畑の場所はおもに現在のカンティーナがある場所で、それ以外にも少し所有していました。

ルイジがエノロゴ、ドメニコがロジスティック、そして私が営業および販売をする、ということで3兄弟の役割がはっきりと分かれているのでそれもうまく行った理由だと思います。3人ともやりたいことが違うのでよかったです(笑)。

みんながやっていることはやらない。独自の道を歩む

ルイジは若い頃、1970年代ですが、カリフォルニアへワインの勉強にも行きました。これは「他の人がやることはせず、自由に自分の道を進むように」という父の教えからです。その当時はイタリア国内で修行する人が多かったのですが、彼はアメリカでワインを造ってみたかったのです。

ワイン造りを始めた頃も、私たち独自のスタイルを大切にしました。プロセッコを主流の甘さを感じるタイプではなく、しっかりとした辛口で造りました。また、ボトルの形状も独特の形を選びました。

 

ワインガイドにサンプルを送るのを今年からやめた。ガイドの評価に頼らず、自分たちでワインを紹介し、飲んだ人がそれを広めてくれる

ベッレンダ社プロセッコサンフェルモ今年、またひとつ他社と違うことを始めたました。ベッレンダ社のワインをワインガイドで評価してもらうことを止めたことです。色々な造り手がいて、色々な造り方をするワインがあります。つまり、カテゴリーが違うワインたちをブラインドで一緒に試飲して評価することに意味がないのではないか、と考えるようになったからです。評価ではなく、「誰がワインを造っているのか」をしっかりと紹介することが大切なのではないかと思います。

ワインは、そのワインを飲んでくれた人がまた伝えていってくれる、そういうものだと思います。もちろん、最初に個々人にワインをプレゼンテーションしなければならなくなるなどデメリットもありますが、私たちの考えに賛同してくれる人もいます。ワインガイドの評価者の好みに迎合することなく、流行に流されることなく、伝統的なやり方をリスペクトするとともに、自分たちが信じた、造りたいものを造ることを大切にしたいのです。

実は、ワイナリーを始めた頃、ガンベロロッソから私たちのプロセッコ(サンフェルモ)に対して「もう少しやわらかい味わい(エクストラドライなど)にしたら点数が上がるよ」と言われ、その言葉に従って少し甘いタイプにして造ったことがありました。するとすぐに顧客から「味が違う、何をしたんだ?美味しくない」というクレームが次々に来てしまいました。それですぐに、兄弟たちと相談して元の辛口のスタイルに戻したのです。

プロセッコは想像以上のポテンシャルがあるワイン

私たちがプロセッコを造り始めた頃は、現在のように重要視されるようなワインではありませんでした。そのため、イタリア国外のマーケットに力を入れました。その流れでもありますが、現在、生産量の90%は輸出しています。1986年にはイタリアで大手ワイナリーのスキャンダルがありました。その影響もあって、大手は苦難の時代が続いたのですが、その一方で、私たちのように小さい造り手は成長できるチャンスとなりました。

プロセッコと言うと早飲みの若いうちに飲む軽やかなスパークリングワイン、というイメージがあります。でも、プロセッコには素晴らしいポテンシャルがあります。個性的な味わいにすることもできますし、長期熟成に相応しいタイプとすることも可能です。非常に価値のあるブドウだと思います。イメージにとらわれず、新しいものにも挑戦しなければならないと思います。もっとも、そういう自由な考え方でやって、いつも成功するとは限りませんが。

ベッレンダ社のブドウ畑

ヴェネト各地のブドウを使って個性の異なる3つのメタリックボトルスパークリングを開発

ベッレンダは自社畑が35ヘクタールで、全てDOCGエリアにあります。さらに、契約農家の畑が70~80ヘクタールあって、これも大部分はDOCGです。契約農家ですが、私たちが栽培指導をしています。

ベッレンダのほとんどのワインは自社畑のブドウですが、本日試飲していただくこのメタリックボトルの3本は、ロザリカは大部分が自社畑、アズリカとキラリカは契約農家のブドウを使っています。

この地図は1870年代当時の地図で、祖父の家で見つけたものです。イタリアで最初に作成されたブドウ品種地図になります。真ん中に流れているのがピアーヴェ川で下流方向を向いて左手側を「sinistra Piave」、右手側を「destra Piave」と呼びます。sinistra Piaveにある丘陵地は昼夜の寒暖差が大きいため酸がしっかりとある、スパークリングに向く白ブドウが多く造られ、destra Piaveは比較的穏やかな気候の平地が赤ワイン用の黒ブドウ、丘陵地は赤と白の両方が栽培されていました。一方、トレヴィーゾの西側のエリアは昔、川があったところなので水はけが悪く、ブドウ栽培には向きません。だからこの古地図にもブドウ栽培の印がついていないのです。

それから、ここで表示されているのはフィロキセラ以前のものなので、現在栽培されている品種とは異なります。

ヴェネト州の古い地図

シャルドネとソーヴィニョンで造るゴールドボトル
スプマンテ ブリュット キラリカ NV
スプマンテ ブリュット キラリカ NV


「キラリカ」というのはモンテ物産さんと一緒にネーミングしました。ゴールドなのでイタリア語では「オーロ」ですが、日本ではピンとこないので“キラキラ”からキラリカと呼ぶことにしました。日本以外でも販売していますが、「キラリカ」という名前は日本だけで使っている名前です。このメタリックボトルのシリーズはロザリカから始まりました。採用する前、このメタリック調のボトルに対して家族や会社からは反応はいまひとつでした。でも、私自身はとても気に入ってたし、みんながそれほどでもないなら逆にいいのではないか、と思いましたね。

シャルドネにほんの少しソーヴィニョンブランを加えて造っています。ソーヴィニョンはアロマが特徴的なブドウですから、スプマンテにするとその香りと味わいが主張し過ぎる傾向にあるので、ほんの少しの比率にしています。

試飲コメント:華やかなアロマのあるフルーティーな印象。シャルドネらしい南国系果実のニュアンス。豊かな果実味の中に香ばしいニュアンスもあり。しっかりとしたキレのある、辛口スパークリング。

ガルガネガ、ピノビアンコ、マンツォーニビアンコで造るブルーボトル
ブリュット スプマンテ アズーリカ NV
ブリュット スプマンテ アズーリカ NV


アズリカはよりストラクチャーを考えて造っているワインです。ヴェネトを代表する品種ガルガネガを50%とピノビアンコ、マンツォーニビアンコの3品種のブレンドで造るスパークリングワインです。ガルガネガは他品種とのブレンドにも非常に向いている品種です。ピノビアンコは個人的にも好きな品種で、ワインに骨格を与え、リースリングとピノ ビアンコの交配品種であるマンツォーニ ビアンコはアロマをワインにもたらします。キラリカに比べるとより骨格のある味わいになっています。

※こちらの商品は終売となりました。

試飲コメント:ボディを感じるしっかりとした辛口で、より通向きな味わい。目にも鮮やかなブルーメタリックのボトルに惑わされそうですが、なかなかの本格派でゆっくり味わえるスパークリング。キラリカとはキャラクターが違うので、飲み比べるとより面白い。

土着品種ラボーゾとピノネロで造るピンクゴールドボトル
ロゼ スプマンテ ブリュット ロザリカ NV
ロゼ スプマンテ ブリュット ロザリカ NV


ロゼ+メタリックでロザリカ、という名前になりました。メイン品種は土着品種のラボーゾです。このラボーゾは、コネリアーノの南、ピアヴェ川に程近い平地の自社畑で栽培しています。ラボーゾは丘陵地よりも平地に適しているんです。ラボーゾは酸のしっかりとあるブドウでザクロの香りがあります。そしてピノネロを20~25%ブレンドしています。ピノネロは丘陵地に向いています。この2つの品種の比率は年によって変えて、できるだけ毎年同じ味わいになるようにしています。トマトソースを使った料理によく合いますし、カプレーゼなどのシンプルな料理とも、トマトベースのパスタとも相性がいいですよ。ラボーゾの酸がトマトの酸とうまくマッチするんですね。
試飲コメント:非常に淡い銅色の美しい色合い。熟したベリー系果実のアロマがそのまま味わいへとつながっていく。キュートな果実味ながら甘さはほとんどなく、料理と合わせて楽しみたい。

ベッレンダの真髄。辛口で造るプロセッコ
サン フェルモ プロセッコ コネリアーノ ヴァルドッビアーデネ スペリオーレ ブリュット 2016
サン フェルモ プロセッコ コネリアーノ ヴァルドッビアーデネ スペリオーレ ブリュット 2016


サンフェルモはベッレンダのハートのようなワインです。「サンフェルモ=ベッレンダ」と言ってもいいぐらいです。甘くやわらかいタイプのプロセッコではなく、辛口で造り続けています。残糖値はヴィンテージによりますが6~7.5グラム/リットルです(※プロセッコの主流であるエクストラドライは12~17グラム)。

ベッレンダ社のホームページでサンフェルモを見ていただくと、ワインの特徴やマリアージュを楽しく紹介したミニ動画を載せています。このような動画作成が得意な社員がいるので全て自社で作成しています。こちらもぜひ見ていただきたいですね。そこにもご紹介していますが、食前酒はもちろん、魚料理ととてもよく合いますし、アスパラガスなどの野菜のリゾットとも美味しいですよ。

試飲コメント:プロセッコの華やかでふくよかさのある香りが印象的。しっかりとした辛口の中にナッツ系のニュアンスが感じられる。

ベッレンダがシャルドネで造るキリリとした辛口エクストラブリュット
シャルドネ スプマンテ エクストラ ブリュット NV
シャルドネ スプマンテ エクストラ ブリュット NV


シャルドネで造るスパークリングワインです。ベッレンダとしては2つ目に造ったワインになります。シャルマ方式ですが、ゆっくりと時間をかけて二次発酵を行っています。サンフェルモに比べると少しかたい印象になるかと思います。シャルドネからはメトドクラシコのスプマンテも造っています。

※こちらの商品は終売となりました。

試飲コメント:果実味の中にほんのりと酵母のニュアンス。味わいはキリリとしたドライな辛口。

長期熟成のポテンシャルのあるボルドーブレンド
コントラーダ ディ コンチェニゴ コッリ ディ コネリアーノ ロッソ 2011
コントラーダ ディ コンチェニゴ コッリ ディ コネリアーノ ロッソ 2011


コントラーダ ディ コンチェニゴは1986年から造り始めた、ワイナリーにとっても初期から造っているワインになります。1986年ヴィンテージを1991年から販売を始めました。カベルネソーヴィニョン、メルロー、マルツェミーノ、そしてカベルネフランのブレンドで造っています。生産本数はブドウの出来次第ですが、だいたい年間25000~40000本になります。『神の雫』に取り上げられた時はあっというまになくなってしまいましたよ(笑)。

コンチェニゴというのはヴィットリオヴェネト村にある古い地名で今はその名前の土地はありません。ここは私たち一族の出身地で、1700年代の建物に住んでいたのですが、その地下に貯蔵庫があってそこで最初のうちこのワインを熟成させていたのでその名前を付けました。

このワインに使っているカベルネソーヴィニョンもメルローもマルツェミーノも、現在のカンティーナの近くにあります。このあたりはプロセッコの地区なので普通だったらグレラ(プロセッコ)に植え替えるのかもしれませんが、私たちはこのワインが好きなのでカベルネソーヴィニョンを育て続けています。長期熟成も十分にできるワインで、先日、1999ヴィンテージを飲みましたがとても美味しかったです。ファーストヴィンテージもまだ少し残っているはずです。

試飲コメント:落ち着いた熟成感。タンニンもこなれているし酸もきれいに乗っている。濃厚感というよりは上品なエレガントさを感じる。
インタビューを終えて
ウンベルトさんとは2013年4月にワイナリーを訪問させていただいて以来の再会となりました。相変わらずおだやかで優しいウンベルトさんに改めてベッレンダの歴史などをお聞きしたのですが、「他の人とは違う、独自の道を進む」という強い信念をお持ちなんだということを改めて知ることができました。

ワインガイドへ評価用のサンプルを送ることをやめたというのも勇気のいることだと思うのですが、それは自分たちのワインに対するゆるぎない自信と、ベッレンダのワインを愛してくれる世界中の顧客との強い信頼関係があるからだと思います。

やわらかい味わいのエクストラドライが多いプロセッコの中でベッレンダの辛口プロセッコは他とは一線を画します。キリッとした、そして華やかさもあるベッレンダのプロセッコ。乾杯から食事まで幅広く楽しめる万能スパークリングです。

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