2018年11月14日 カニカッティ社 アベレ カーザグランデ氏
デイリーから上級ラインまで品質にこだわって成長を続けるシチリア・アグリジェントの生産者協同組合「カニカッティ」突撃インタビュー |
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カニカッティは、シチリアのアグリジェントに構える生産者協同組合です。従来のバルク売り主体のワイン造りから、品質重視へと方向転換をしたのが約25年前。以来、品質への意識の高い組合員たちとともに、世界的コンクールで評価を得るほどにまで成長・発展を続けています。最近ではアグリジェントの世界遺産の畑で造る「ディオドロス」など、地域の歴史や文化の再評価につながる取り組みも行っています。高品質ワインへの取り組みについてエキスポートマネージャーのアベレ カーザグランデ氏にお話をお聞きしました。 | ||||||||||
アグリジェント県に1969年設立した生産者協同組合。25年前から品質重視のワイン造りへ舵を切る |
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カニカッティは、アグリジェント県のカニカッティに1969年に設立した生産者協同組合です。来年で設立50年を迎えます。シチリアの中ではどちらかというと歴史のある生産者協同組合になりますね。設立当時はフランスや北イタリアのワイナリーへ販売をするためのブドウを造っていました。質よりも量が重視されていた時代です。25年ほど前まではそのような状態が続きました。
変化を起こしたのは25年前です。このエリアの価値を生かし、高品質のワインを造らなければと方針を変えました。そのため、組合員の意識を変える必要がありました。私達のアグロノモやエノロゴの考えを組合員たちに教え、従ってもらうよう、指導を始めました。もちろん、組合員全員が私達の方針に従ったわけではありません。だから二者選択をしてもらいました。私達の品質重視のワイン造りについてくるか、これまでの多産のブドウ栽培を続けたいか。後者を選んだ組合員には脱退してもらいました。その結果、意識の高い組合員だけが残ったわけです。 |
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約300の組合員が所有する800ヘクタールの畑を特徴ごとに分類。60のミクロゾーンとして管理 |
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現在、300ほどの組合員が所属し、800ヘクタールほどの畑を所有しています。畑は海の近くから内陸の標高600メートルほどのところにまで広がっています。だから畑のある場所によって標高や土壌、気候条件など特徴が違います。そこで私達は60のミクロゾーンに分けて管理しています。この管理を行うことで、デイリータイプのもの、熟成タイプのもの、プレミアムなもの、という商品ラインを造ることができます。
また、800ヘクタールの畑のブドウを全てカニカッティの名前でワインを造り、販売しているわけではありません。私達の名前でボトリングをするのは生産量の25%程度です。それぐらい厳しい選別を行ったブドウだけで高品質なワインを造ることができています。 |
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世界遺産の遺跡の中にある忘れられた畑を復活させたプロジェクト「ディオドロス」 |
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ディオドロスについてお話ししましょう。アグリジェントはユネスコ世界遺産の「Valle dei templi」があり、古代ギリシャ時代を始め考古学上の価値のある遺跡が数多く残されています。ディオドロスはこの中の「Tempio di Era (Giunone) Lacinia ジュノーネ神殿」の真下にある畑で造られています。この畑は世界遺産「Valle dei templi」の中にあるので、管理をしている「parco dei templi agrigento」の所有となります。
ディオドロスの畑はとても海に近い場所にあり、海抜50~100メートルほどです。この畑には1970年ごろに植樹したネロダーヴォラ、ネレッロマスカレーゼ、ネレッロカップッチョ、そしてインツォリアのブドウ樹がありましたが、荒れ果てていました。2011年、世界遺産の管理側の代表者と、カニカッティの社長とでこの畑について話し合いが行われ、プロジェクトがスタートしました。カニカッティは畑を整備し、栽培から醸造、販売、そしてディオドロスのプロモーションを担っています。 2012年に初めての収穫を行いました。ボトルデザインについてはいくつかの案を発表し、投票で決められました。ワインのお披露目は2014年のヴィーニタリになります。ワイン名の「ディオドロス」というのは紀元前1世紀のシチリアの歴史家からとりました。 インツォリアも植えられているのですが、ワインを造るほどの量は取れません。 |
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シチリアの土着品種と国際品種のブレンドで造る新ライン「アリコ」 |
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今年、新しい商品をリリースしました。「アリコ」という名前で、白はインツォリア&シャルドネ、赤はネロダーヴォラ&シラー(2017年はネロダーヴォラ100%)という、土着品種と国際品種のブレンドで造っています。「ラフェルラ」と「アクイレ」の間にあたるシリーズになります。
土着品種と国際品種のブレンドにした理由は、ワインを覚えてもらうという狙いがあります。イタリアにはとにかくたくさんの品種があって、理解されにくいという問題があります。たとえば、アメリカのイベントでインツォリアを飲んでもらうと、そのときにインツォリアの説明はしますが、残念ながら記憶としては残っていないのではないかと思います。でも、シャルドネという名前が入ることで覚えてもらいやすくなる。そういうところも考えています。 |
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ネロダーヴォラについてはIGTからDOCへ。より厳しい基準で、そして造っている土地をより明確にしたいという想い |
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新しいアリコラインのネロダーヴォラとアクイレネロダーヴォラは2016ヴィンテージまでは「IGT テッレシチリアーネ」でしたが、2017ヴィンテージから「シチリアDOC」になります。上級ラインのチェントゥーノとディオドロスは前から「シチリアDOC」として造っています。IGTからDOCにするために収量は減りましたが、より厳しい基準で造っているということを強調したワインにしたかったのです。
ネロダーヴォラを使ってシチリア以外の州でボトリングして販売している会社もあります。その会社が長年そのような形で生産をしている場合、たとえボトリング場所がシチリアの外だったとしても既得権によって「シチリアDOC」と名乗ることができるのです。でも、新規参入の会社には認められていません。そのような会社のワインは、中身がネロダーヴォラでもシチリア産とは言えないわけです。 既得権が認められていることについてとやかく言うつもりはありません。でも、私達のワインは紛れもなくシチリアのアグリジェントの畑で造って、ここでボトリングをしているワインなので、それをより分かってもらいたいと思います。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
カニカッティのワインの輸入を始めてもう10年になります。品質が良く、味わいのしっかりとしたシチリアワインが非常にお手頃価格で販売ができると言うことが決め手で取引をスタートさせました。ヴィーニタリでシチリア州最優秀ワイナリーに選出されたり、さまざまな国際コンクールで高い評価を受けたりと、ずっと優れた品質を常に保って私達に素晴らしいワインを届けてくれるワイナリーです。ビオシリーズを発表したり、アグリジェントの世界遺産でのコラボレーション「ディオドロス」を手がけたりと着実に成長・発展する姿もいつも嬉しく感じています。
今回の突撃は短い時間でしたが、生産量の25%しかボトリングしていないなど、品質へのこだわりや、ワインのスタイルのこだわりなどの一端に触れることができました。10年前のスタイルからより洗練された、上品な旨味を感じるワインにもなっています。「ディオドロス」のようなプロジェクトを任されるなど、シチリアの中でも重要な造り手になっているカニカッティのワイン。もっと楽しんでいただければと思います。 |
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デイリーから上級ラインまで品質にこだわって成長を続けるシチリア・アグリジェントの生産者協同組合「カニカッティ」突撃インタビュー
2018/12/19