バローロ・バルバレスコ地区において安定した品質と優れたコストパフォーマンスを誇る最大規模の実力派生産者協同組合「テッレ デル バローロ」

2019/02/25
突撃インタビュー
 
2019年2月18日 テッレ デル バローロ社 ダニエーレ ポンツォ氏インタビュー

バローロ・バルバレスコ地区において安定した品質と優れたコストパフォーマンスを誇る最大規模の実力派生産者協同組合「テッレ デル バローロ」

テッレデルバローロ社ダニエーレポンツォ氏と
テッレデルバローロはバローロ地区最大の生産者協同組合です。1958年に約20の栽培農家が集まって設立、現在では約400の栽培農家が所属し、600ヘクタールの畑を所有しています。バローロ生産地として認定を受けている11のコムーネ(村)すべてに畑を持つ唯一の造り手でもあります。2007年からエノロゴを務めるダニエーレポンツォ氏によって品質が著しく向上。優れたコストパフォーマンスで偉大なバローロ、バルバレスコを次々と造り出しています。さらなる飛躍を続けるテッレデルバローロについて、エノロゴのダニエーレポンツォ氏からお話をお聞きしました。

1958年、バローロエリアの栽培農家たちの経済的地位を向上させるためアルナルドリヴェラ氏が創設して誕生した生産者協同組合

テッレデルバローロ創設者アルナルドリヴェラ氏テッレデルバローロは1958年アルナルドリヴェラの考えの下、誕生しました。彼はカスティリオーネファレットの市長や教師を務めてきた人物で、当時、経済的に苦しい栽培農家たちの状況を何とか改善させたいと考えていました。造ったブドウを売るのではなく、彼ら自身でワインを造り、販売をすることができないか。その考えに賛同する約20の農家が集まって設立されました。

設立の翌年にカンティーナを建設。1961年にはさらに賛同者が増え、組合員が増えていきます。そして1968年には新しい熟成庫も造られました。1980年代の始めぐらいから国際的なコンクールなどにも出品するようになり、賞をとったりしていきます。また、国際的な展示会にも出展することでどんどん成長・発展していきました。

私達のワイン造りのモットーは「Vinum Vita Est (ワイン、それこそが人生)」です。現在、約400の組合員が所属し、畑は600ヘクタールにもなります。そして、バローロエリアに認定されている11の村の全てに畑を所有しています。バローロの11の村全てに畑を持っている生産者はテッレデルバローロだけです。

熟成庫も2200m2の規模を誇ります。従業員は39名で平均年齢39歳と若い人たちが数多く働いています。

かつては海だったところにあるバローロの産地。3つの土壌タイプが存在する

バローロエリアはかつて海でした。そのため、畑からは貝殻がたくさん出てきます。土壌タイプは3つあり、最も古いレクイオ層(1200万年前)、次に古いディアーノ ダルバ砂岩(900万年前)、そして一番新しいサンタガタ フォッシーリ泥灰土(700~1000万年前)です。

バローロの11コムーネ
11の村はそれぞれ地層が異なります。傾向としては東側の「セッラルンガダルバ」「カスティリオーネファレット」「モンフォルテダルバ」などは古い地層です。この地区の特徴はフローラルでスパイシーなバローロになることです。しっかりとした骨格があり、長熟タイプの特徴もあります。

西側の「ラモッラ」「ヴェルドゥーノ」「ノヴェッロ」などは若い土壌で、フルーティーでフレッシュ、エレガントさがあって親しみやすいバローロになるのが特徴です。

バローロ地区の土壌分布
 

ワインの品質の決め手は「ブドウの質」「新しい技術」「バランス」

テッレデルバローロはワインの品質を高めるために3つのポイントを重視しています。まず、ブドウの質を高めることです。テッレデルバローロには3人のアグロノミストがいて、管理しています。常に畑を見て回り、栽培農家たちと一緒に仕事をしています。栽培については20年前とは全く違っていて、環境に配慮した栽培方法をとっています。20年ぐらい前は除草剤を使っていたので畑には雑草などは生えていません。今は化学薬品などは使っていませんので、雑草が伸び放題。畑は一面緑で覆われています。

収穫が近づくと畑に出ているアグロノミストから逐一報告が来ます。そしてとってきたブドウを一緒に食べて、収穫のベストなタイミングを見極めています。このようにして最も品質の良いブドウを収穫できるわけですが、これも優秀なメンバーがいるおかげです。

そして新しい技術の採用です。例えば圧搾のときに酸化させないように二酸化炭素を使用します。発酵についてはブドウに付いている酵母を使い、セレクション酵母は使用しません。また、アルコール発酵に関しては温度管理のできるステンレスタンクで行っています。この醸造過程においてもセラー内は常に清潔に保つようにしています。

テッレデルバローロ
そして、ワインの味わいを決める「バランス」を保つこと。何かの要素が突出しないように気を付けています。例えば、熟成にはトノーから大樽まで様々なタイプの木樽を使い、セメントタンクも使用しています。フランス産の木樽はエレガントになり、タンニンを抑えてくれます。スラヴォニア産の木樽はバルサミコのような芳しさとタンニンを引き出します。さらに、フランス産とスラヴォニア産とを組み合わせた樽も使い、両方の要素を与えます。あと、古い土壌で育ったブドウにはトノーが向いていて、また別の要素が加わります。

現在、新しい醸造設備を備えたカンティーナを建設中です。これが完成すればバローロエリア最大の施設となります。

「アルナルドリヴェラ」や「クリュシリーズ」など高品質ラインのリリース

ウンディチコムーニテッレデルバローロでは、より高品質の特別なワインを造るプロジェクトをスタートさせました。「アルナルドリヴェラ シリーズ」は2013年からスタートしました。これは、最高の品質のワインを造るため特に優れた畑を持っているメンバーの栽培農家の数軒と新たな契約を交わし、従来のブドウの量に対して支払うのではなく、畑の面積に対して対価を支払います。これによって栽培農家は収入減の心配なく、思い切った収量制限を行うことが出来ます。

「ウンディチコムーニ」は、バローロエリアの11のコムーネ全てに畑を持つテッレデルバローロそのものを表すキュヴェとして造られました。ラベルに描いたのはバローロの11の村の形です。11のコムーネを結び付ける姿を描いています。これは『ワインスペクテーター』のTOP100にも選ばれました。

クリュバローロとしては、「カステッロ(グリンツァーネカヴール村)」、「ラヴェラ(ノヴェッロ村)」、「モンヴィリエーロ(ヴェルドゥーノ村)」、「ロッケデッランヌンツィアータ(ラ モッラ村)」、「カンヌビ(バローロ村)」、「ヴィーニャリオンダ(セッラルンガ ダルバ村)」、「ブッシア(モンフォルテ ダルバ)」、「ロッケ ディ カスティリオーネ(カスティリオーネ ファッレット村)」があります。それぞれ特徴の異なるテロワールで造られていますので、味わいもその個性が表現されています。カステッロは骨格がありビロードのようなタンニンがあり、ラヴェラは若い土壌でわかりやすいタイプ、モンヴィリエーロも若い土壌でスパイシーなニュアンスがあり、ロッケ ディ カスティリオーネはバラのニュアンスと甘いスパイスが感じられて、私が一番好きなクリュバローロです。そしてカンヌビ。カンヌビはロッケと似ていますが、よりタンニンがなめらかですね。近々、この5種類のクリュバローロが日本に入る予定です。

テッレデルバローロのクリュ

ダニエーレポンツォ氏ダニエーレポンツォ氏

バローロエリアの出身。アルバの醸造学校を卒業後、カヴィオラなどで経験を積み、2003 年にテッレ デル バローロへ加入。2007 年からメインのエノロゴとして従事。「品質を向上させるために設備投資や様々な試みをしてきました。モダンな要素を否定する訳ではないですが、出来上がったものをみると伝統的な味筋を守っていることがわかってもらえると思う。」。彼が行った改革は、例えば、「農家へ栽培方法を指導」「畑での選別を徹底」「ワインの状態を細かく管理できるようタンクを小さなものへ変更」など。また、樽熟成の研究室を設置し、定期的に同じワインの樽熟成による違いをチェックして各ワインに最適な樽を選別している。

ハイコストパフォーマンスのテッレ デル バローロが造る上質バルベーラ ダルバ スペリオーレ
バルベーラ ダルバ スペリオーレ 2015
バルベーラ ダルバ スペリオーレ 2015


2015年は、ブドウの成熟が完璧に進んだヴィンテージです。素晴らしいブドウが収穫されました。まさにエクセレントな年ですね。アルコール発酵とマロラクティック発酵は500リットルのトノーの新樽で行っています。フレッシュさ、若々しさ、そして美しい酸を表現した仕上がりになっています。
試飲コメント:とてもフルーティーなバルベーラです。チェリーやイチゴなどの甘く優しい香り。飲むと心地よい果実味が口の中を広がるとともに、バルベーラらしいフレッシュな酸もしっかりと感じられます。フレッシュ感と甘さとの調和が素晴らしくとれた、洗練された美味しさです。

特に優れた畑の樹齢50年のバルベーラで造る最高品質「アルナルドリヴェラ」
バルベーラ ダルバ ヴァルディセーラ アルナルドリヴェラ 2015
バルベーラ ダルバ ヴァルディセーラ アルナルドリヴェラ 2015


このバルベーラの畑は古い地層で、モンフォルテ村とノヴェッロ村にあります。樹齢約50年の古樹バルベーラで造っています。こちらも2015年で非常に素晴らしい出来になりました。美しくきれいな色にするためにマセラシオンは短めで、ステンレスタンクでアルコール発酵後、マロラクティック発酵。そして熟成は500リットルのトノーで9ヶ月間です。色を見て頂くと、バルベーラダルバスペリオーレに比べて、こちらの方が濃いのがわかります。香り、味わいともにより濃密です。これがヴァルディセーラの個性で、これをしっかりと引き出すことを狙いました。
試飲コメント:濃いルビー色の美しい色合い。ブラックチェリーやベリー系の強い香りや甘いスパイスのニュアンスが感じられます。味わいも濃密でとてもなめらかで柔らかく、エレガントな酸が美しく調和しています。余韻も非常に長く、心地よい果実の甘さが続きます。広がりのある、豊かな味わいの魅力あふれるバルベーラです。

熟成50ヶ月以上!“ワインの女王”バルバレスコ リゼルヴァを身近に楽しめる
バルバレスコ リゼルヴァ 2012
バルバレスコ リゼルヴァ 2012


(試飲は2012年)。2012年はとても良い年でした。夏は暑く、収穫前の秋頃には涼しくなり、ブドウの成熟にとても良い影響をもたらしました。バルバレスコはタナロ川をはさんでバローロと反対側にあるエリアです。このバルバレスコリゼルヴァは、トレイゾとネイヴェにある畑のネッビオーロです。比較的若い地層の土壌で、土の色は明るめで白っぽいですね。

醸造は、ステンレスタンクで発酵させ、25ヘクトリットルの大樽で熟成させています。この樽はフランス産とスラヴォニア産の木をミックスさせて造った樽です。バルバレスコの特徴であるエレガントで、そして若いというニュアンスを引き出すことができます。

試飲コメント:スミレなどの上品なフローラルな香りと赤い果実のニュアンス。しっかりとした味わいながら口当たりはとてもなめらかでフレッシュさも感じられます。バランスのとれたエレガントな味わいで飲み飽きません。

複数の畑のネッビオーロをブレンドすることで高品質を実現する「バローロ」
バローロ 2012
バローロ 2012


このバローロは複数の村の畑のネッビオーロをブレンドして造っています。目指しているのはバランスです。最終的にバランスの良いバローロにするために、畑を選んでいます。発酵は、ネッビオーロに付いている自然酵母で20日間行います。熟成は25~50ヘクトリットルのフレンチオークの樽だけを使います。これはワインにエレガントさを与えてくれます。

バローロには様々な土壌があって、新しい地層、古い地層など色々です。これらの異なるテロワールの畑のブドウをブレンドすることでワインに様々なニュアンスが加わります。若々しさ、フルーティーさ、スパイシーさ、まろやかさ。それらの要素がバランス良く調和しています。

試飲コメント:華やかで甘くエレガントな香りがとても魅力的です。しっかりとした骨格を感じさせる味わいですが、いかめしさはなく、柔らかく調和がとれています。こなれたタンニンと上質な旨味が果実味とともに心地よく感じられるバランスのとれた美味しさ。親しみやすさとともに、偉大なバローロの芯の強さが伝わってきます。

バローロ北部の畑「モンヴィリエーロ」のネッビオーロで造るお手本のようなお値打ちクリュバローロ
バローロ モンヴィリエーロ 2012
バローロ モンヴィリエーロ 2012


テッレ デル バローロの「バローロ モンヴィリエーロ」は、3つの組合員が所有するモンヴィリエーロの畑に育つネッビオーロをブレンドして造られています。この畑は、ヴェルドゥーノ村の中の丘の頂点のひとつにあります。ヴェルドゥーノは、バローロ地区の中でも最も北にあたる場所で、土壌はバローロの中でも若い地層になっています。この若い地層の畑からは、フルーティーでフレッシュ、エレガントさがあって親しみやすいバローロになるのが特徴です。

熟成は500~700リットルのトノーを使います。80%は旧樽です。これは、新樽の影響がワインに出すぎないようにするためです。樽で32ヶ月間熟成させています。

試飲コメント:オレンジがかったガーネットの色合いです。スミレやバラなどの華やかで甘みを感じる美しい香りがグラスから広がります。味わいはドライですが香りの印象のままの甘やかさがあり、タンニンはこなれてなめらか。芯がしっかりとした、そして非常にエレガントな美味しさに満たされます。

62ヶ月以上の熟成を経て造られる重厚感のあるバローロリゼルヴァ
バローロ リゼルヴァ 2009
バローロ リゼルヴァ 2009


2009年はとても暑い年でした。そのため、ブドウもしっかりと熟しました。醸造も熟成も難しく、タンニンが硬かったのでまろやかさを出すために新樽を使いました。2009年はまだセレクション酵母を使った発酵を行っていますので、今日これまでに飲んだワインとは少し違う印象をもたれるのではないかと思います。
試飲コメント:力強くしっかりとした骨格を感じるバローロ。深みを感じさせる重厚感が溢れながらもイキイキとした酸は健在でこれからさらに熟成を続けるポテンシャルを感じます。
インタビューを終えて
28年前からテッレ デル バローロを輸入しているインポーターの株式会社稲葉の稲葉社長が、今回のセミナーにあたって「テッレデルバローロは、年々、品質向上を続けていて、特に2007年から醸造を手掛けるダニエーレ ポンツォ氏の手腕によってそのレベルが著しく上がった」と力説されていました。以前からも“お手頃価格で美味しいバローロ”のイメージはありましたが、ここ2,3年、試飲するたびに「こんなに凄かった?!」とそのハイレベルな品質に驚かされています。

ダニエーレ氏は、その話しぶりからも非常に理論的で、目指すワインのスタイルが確立していると感じました。明確な理想があり、その実現に向けての知識も技術も備わってきたテッレデルバローロのメンバー達が現在の高い品質を支えているのだとわかりました。

アルナルドリヴェラシリーズや、クリュバローロなど、魅力的なワインが次々とリリースされる中、やはり見逃せないのがスタンダードに愛されている伝統のワインたちです。バローロ、バルバレスコ、そしてバルベーラ。この価格でいいのかと本当に不思議になるぐらいにお手頃価格で高品質。これからも愛好家たちを喜ばせてくれるに違いありません。

テッレデルバローロ組合員
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒