1000年前からバルバレスコで異彩を放つ区画「ソリ パイティン」!独自の分析で唯一無二のテロワールを表現する「パイティン」突撃インタビュー

2021/06/30
突撃インタビュー
 
2021年6月16日 ルカ パスクエロ エリア氏 Mr. Luca Pasquero Elia

1000年前からバルバレスコで異彩を放つ区画「ソリ パイティン」!独自の分析で唯一無二のテロワールを表現する「パイティン」突撃インタビュー

ルカ パスクエロ氏
2019年に訪問いただいたパイティンの当主、ルカ パスクエロ氏に再びお話を聞くことができました!パイティンは、ネイヴェ村「セッラボエッラ」地区で8代にわたりバルバレスコの生産を行う歴史的生産者です。バルバレスコはかつてバローロとして売られていた時代がありましたが、19世紀末にバルバレスコとして区別されるようになります。パイティンは、このバルバレスコの黎明期にいち早くボトリングを行ったカンティーナでもあります。今回は異彩を放つ歴史的区画「ソリ パイティン」や所有畑、そして独自のテロワールが引き出されたワインについてオンラインでお話を伺いました。

バルバレスコ三大地区ネイヴェ村の優良畑「セッラボエッラ」に拠点を置き、特別な区画「ソリ パイティン」で上級バルバレスコを造るパイティン

柑橘類、スパイスのニュアンスがあり、ミネラルが豊富なバルバレスコが造られるネイヴェ村の畑。そんなネイヴェ村南東にある優良畑の一つ「セッラボエッラ」をパイティンは1796年に購入します。現在は、セッラボエッラ内に7ヘクタールの畑を所有してバルバレスコの生産を行い、畑を見下ろす形でカンティーナを構え日々ブドウの生育を見守っています。

セッラボエッラは、セッラヴァリアーノ地層とトルトニアーノ地層が混ざる珍しい組み合わせの丘陵地帯。西側に露出した長い丘に位置し、南に向かって緩やかに曲がっています。急勾配かつ暖かい気候で育ったブドウは力強さとエレガントさを兼ね備えた独特の表情を持ちます。

パイティンが誇るソリ パイティンは、所有するセッラボエッラの中で最も優良な区画です。畑の中央に位置し、風に恵まれた石灰質土壌の比較的暖かいエリア。力強くも滑らかなタンニンと洗練されたフィネスを感じる逸品を生み出しています。

セッラボエッラ畑

当主ルカ パスクエロ氏が独自に分析、区分けするバルバレスコの4つのエリア

当主ルカ パスクエロ氏は「バルバレスコは4つのエリアに分けられ、それぞれユニークな特徴がワインに与えられる」とご自身で作成した地図を用いてバルバレスコ全域のエリア分析を行っています。下の図にあるように、パイティンが所有するセッラボエッラはエリア3に位置しています。西端に流れるタナロ川から一番離れるセッラボエッラは標高が高くて湿度が低い、風がよく通る大陸性気候で非常に恵まれた地域です。

所有畑の本質を明確に見抜いたルカ パスクエロ氏は「どこが一番優れたエリアかは断言できない」と謙遜しつつも、「ソリ パイティンは、バルバレスコとしては強さもありますが、セッラボエッラ地区の特徴であるタンニンの滑らかさがあります。バローロエリアのカステリオーネ ファレットにあるクリュ、ブリッコ フィアスコの滑らかなタンニン質と共通する個性があります」と、ユニークで偉大なバルバレスコが生産される優秀な自社畑の分析を行っています。

※緑丸:優秀なクリュ、橙線:広大な渓谷が位置し、暖かく風が良く通るエリア

バルバレスコ畑分析マップ
 

ブルーノ ジャコーザの元エノロゴが自社のバローロと間違えた、異彩を放つ歴史的区画「ソリ パイティン」で造るバルバレスコ ソリ パイティン

2018年夏、レストラン「ラ チャウ デル トルナヴェント」でソムリエが中心となってランゲ地方のワインをそれぞれ持ち寄りでブラインドテイスティングする会が行われました。周りのソムリエたちが試飲をする中、ブルーノ ジャコーザの元エノロゴ、フランチェスコ ヴェルジオ氏が「このワインは絶対私が造ったバローロだ」と断言します。周囲が興味を持って、そのワインの銘柄を確認すると「ソリ パイティン」だった、という事件が起こったのです。

4つに分けたエリア分析時にお話しいただいた通り、「ソリ パイティンは、バルバレスコとして強さもありますがタンニンの滑らかさがあり、バローロエリアのカステリオーネ ファレットにあるクリュ、ブリッコ フィアスコの滑らかなタンニン質と共通する個性があります」とルカ パスクエロ氏は分析します。パイティンは、そのセッラボエッラ畑と特別区画ソリ パイティンが持つテロワールを最大限に引き出すことで、フランチェスコ ヴェルジオ氏が「私が造ったバローロだ」と断言するほど、力強くも滑らかなタンニンと洗練されたフィネスを感じる逸品を造りだしています。

第8代当主、ルカ パスクエロ氏が解説するパイティンのワイン

試飲したパイティンワイン

バルバレスコ セッラボエッラ
セッラボエッラ畑内の「Ernestin」と「Tourun」、2つの優良区画からなるブドウを熟成後にブレンドしてテロワールを表現
パイティン セッラボエッラバルバレスコ セッラボエッラの畑はパイティンが誇る「ソリ パイティン」を挟む形で、「Ernestin」と「Tourun」の2つに分けられています。北側(画像左)に位置する「Ernestin」は素晴らしい上品さ、果実味、シルキーなタンニンをもたらします。南側(画像右)に位置する「Tourun」はアグレッシブさとスパイシーさを提供します。

セッラボエッラ畑

収穫からブレンドまで細かいディテールにもこだわりを見せます。2つの優良区画「Ernestin」と「Tourun」の中からさらに10区画に分けて栽培しており、収穫と醸造も区分けされたそれぞれのブドウで行われます。最後のブレンドの際に全ての区画が合わさることで、稀有な土壌を持つセッラボエッラ畑のテロワールが最大限に引き出されます。それにより、バルバレスコ セッラボエッラは力強くもミネラルとエレガンスに富む優雅な個性を醸す逸品となり、バランスに優れた長期熟成が可能なワインに仕上がります。

バルバレスコ ソリ パイティン
1000年前、11世紀からネッビオーロに適した土地と言い伝えられる特別な区画「ソリ パイティン」
パイティン ソリパイティンバルバレスコ ソリ パイティンは1893年に初めてバルバレスコの名前でリリースされました。ソリ パイティンの畑は、パイティンが所有するセッラボエッラの中で最も優良な区画です。畑の中央に位置し、風に恵まれた石灰質土壌の比較的暖かいエリア。ここで育ったブドウは一番早く収穫され、ワインにフレッシュさと極上のフィネスを示す幅広いタンニンが組み合わさった乾燥した葉などの印象を与えます。

パイティン、牛セッラボエッラ畑の近くに、大昔から建つ教会があります。その教会では、1000年代から「セッラボエッラはネッビオーロ栽培に適した土地だ」と言い伝えられています。当主の祖父の代からも、ソリ パイティンには「何か」があると言われていました。当時、畑を整備するために牛にクワのようなものを引かせていたところ、ソリ パイティンのエリアを通る時だけ、土が固いのか牛が歩きづらそうにしていたそうです。その頃からソリ パイティンのエリアにはすでに線引きがされていました。

ネッビオーロ ダルバ カ ヴェヤ
1500年代から続く歴史区画「カ ヴェヤ」。バローロの銘醸地と類似する土壌で育った“ベイビー バローロ”
パイティン カヴェヤ「カ ヴェヤ」はアルバ南部リヴォリ地域に位置する、標高280~320メートルの南東向きの2ヘクタールの区画。この土地の方言で「古い家」を意味します。「カ ヴェヤ」では、すでに1世紀以上も前から他者によってネッビオーロが栽培されていましたが、1995年にパイティンが行った大規模な植え替えによって初ヴィンテージ1998年をリリースします。

「カ ヴェヤ」の土壌は、バローロの銘醸地カステリオーネ ファレットやモンテフォルテに非常に良く似ています。砂質の圧縮された大きな石がゴロゴロしている中に、小さな石灰岩がたくさん混じっている珍しい組み合わせ。これは、モンフォルテからバローロにかけての丘陵地帯にのみ見られる土壌です。飲むと豊富なタンニンがあり、セッラボエラ産のネッビオーロと比べると男性的な骨格。バルバレスコと比べて色調も濃く、しっかりとした味わいがあります。

ドルチェット ダルバ ソリ パイティン
従来のドルチェットとは異なり、飲み心地の良さと果実味感じる赤ワイン!
パイティン ドルチェット1943年~1947年、猛暑が続いた時期がありました。当主ルカ パスクエロ氏の祖父は、土を掘り起こして熱い土を外に出し、ブドウの樹に水分を確保させることに成功します。2017年は同様に猛暑が続き、6か月間も雨が降りませんでした。ルカ パスクエロ氏は祖父の教訓を思い出し、実行に移すことで猛暑という困難を乗り越えます。また、ソリ パイティン畑は、日中は暑さが続く一方で夜間は大変涼しく、気温は13度ほどまで下がります。それが功を奏し、酸が保たれワインにフレッシュで豊富な果実味をもたらすことに成功しました。

パイティンは、2018年からドルチェットの畑をアルバ南部リヴォリに移しました。そのため、2017ヴィンテージが特別な区画「ソリ パイティン」で造る最後のドルチェット ダルバです。

ロエロ アルネイス ヴィーニャ エリザ
同じ畑から特徴の違うブドウを同時に収穫、ブレンドすることで複雑さを表現
パイティン エリザ畑はクーネオ県プリオッカに位置し、標高の高低差による特徴の違うブドウを同時に収穫しブレンドすることで、ワインに複雑さが生まれます。早く熟成される畑の上部は熟した果実味、熟成が遅い下部は酸やミネラルを含んだ味わい。これらが合わさることで、フレッシュさと酸味を維持しつつ熟した豊満なアルネイスが仕上がります。地元品種による伝統的なワインに注力すべきという方針により、2018ヴィンテージから100%アルネイスに見直されています。

「アルネイスは非常に興味深い品種です。一般的にはリリースして最初の数年は飲みやすい果実味が特徴ですが、そのあとが難しいんです。しかし、我々の“ロエロ アルネイス エリザ”は熟成も可能で、リリースの数年後にはオイル香やハーブ香が出てきて非常に複雑さが増します。パイティンの方針でもある“前菜に合わせるものではなく、しっかりとしたワインを目指すこと”が表現されています」とルカ パスクエロ氏は話します。

典型的なロエロ アルネイスよりも複雑で完熟した果実が香る豊満でコクのある味わい
ロエロ アルネイス ヴィーニャ エリザ 2018
ロエロ アルネイス ヴィーニャ エリザ 2018


19世紀末バルバレスコ黎明期に誕生した歴史的ワイナリー「パイティン」が造る唯一の白「ロエロ アルネイス エリザ」。典型的なロエロ アルネイスよりも複雑な香りと濃厚な味わいが特徴で、アルネイスのグランクリュともいうべき、大変ユニークで上質な味わいです。第二次世界大戦中の暗黒時代に、ワイナリーを見事に切り盛りした偉大な5代目女性当主エリザ エリアから命名された畑「エリザ」で収穫されたアルネイスを使用。彼女が亡くなった1973年に初めてリリースされます。
試飲コメント:色濃く輝く麦わら色。力強くふくよかで完熟した果実などの複雑な香り。花、杏、ナッツ系のニュアンス。味わいは香り同様の力強さがあり、豊富なミネラルを感じる余韻が口中を覆います。

飲み心地の良さとフルーツ感が表現されたドルチェット ダルバ!
ドルチェット ダルバ ソリ パイティン 2017
ドルチェット ダルバ ソリ パイティン 2017


歴史的なバルバレスコ生産者パイティンが造るドルチェット ダルバ ソリ パイティンです。パイティンは、2018年からドルチェットの畑をアルバ南部リヴォリに移しました。そのため、2017ヴィンテージが特別な区画「ソリ パイティン」で造る最後のドルチェット ダルバとなります。当主のルカ パスクエロ氏が「飲みやすいフルーツ感を表現しています」と話す通り、フレッシュな果実味が特徴的。従来のドルチェットのイメージと異なり、飲みやすさとフルーツ感が引き出されています。程よいタンニン、香りの特徴でもある果汁に富んだブルーベリー、 緑のニュアンスを感じ、最後まで味わいが続きます。
試飲コメント:深い紫色。ベリー系の黒い果実、赤い花、レッドチェリーを感じるフレッシュな香り。ミディアムボディ。口当たりは果実味のジューシーさが際立ちます。適度なタンニンが後を追うように優雅な後味を引き立てます。

2014年は会心の出来!歴史的なバルバレスコ生産者パイティンが造る“ベイビー バローロ”
ネッビオーロ ダルバ カ ヴェヤ 2014
ネッビオーロ ダルバ カ ヴェヤ 2014


バルバレスコの歴史に深く寄与してきたパイティンが、1500年代から続く歴史区画「カ ヴェヤ」で造るネッビオーロ ダルバ カ ヴェヤ。しっかりとした骨格とハーブ香、緻密な果実感が楽しめる味わい豊かな赤ワインです。2014年はイタリア全体で雨が降り続けて他の地方が苦労する中、バルバレスコ周辺では8月、9月に雨が降りませんでした。それが奏功して「2014年は非常に優れたヴィンテージ。複雑さと長期熟成ポテンシャルを持ったネッビオーロができた。丹念に醸造していることもあり、とてもバランスの優れたワインに仕上がった」と当主のルカ パスクエロ氏は話します。
試飲コメント:ふちがオレンジに近い輝きを持ったルビー色。香りは複雑です。赤い系果実に加えて、ローズマリー、ミント、八角などのハーブやスパイスの香りが際立っていました。「強いタンニンが特徴」とのことでしたが、そこまで強くはなく、なめらかなタンニンと香り同様の味わいが口の中に広がる複雑な味わいです。

バルバレスコ屈指の優良畑が生むミネラルとエレガンスに富む優雅な逸品!
細部に及ぶ醸造でテロワールを最大限に表現!
バルバレスコ セッラボエッラ 2013
バルバレスコ セッラボエッラ 2013


1893年、いち早くバルバレスコの瓶詰を行った歴史的カンティーナ、パイティンが造るバルバレスコ セッラボエッラです。偉大なワインを輩出するバルバレスコ三大地区ネイヴェ村の優良畑「セッラボエッラ」で育ったブドウを使用。力強さとボリューム感に加えてエレガントなテクスチャーを備えるワインに表現されています。

柑橘類、スパイスのニュアンスがあり、ミネラルが豊富なバルバレスコが造られるネイヴェ村の畑。そんなネイヴェ村にある優良畑の一つ「セッラボエッラ」をパイティンは1796年に購入します。現在は、セッラボエッラ内に7ヘクタールの畑を所有してバルバレスコの生産を行っています。セッラボエッラは、セッラヴァリアーノ地層とトルトニアーノ地層が混ざる珍しい組み合わせの丘陵地帯。西側に露出した長い丘に位置し、南に向かって緩やかに曲がっています。急勾配かつ暖かい気候で育ったブドウは力強さとエレガントさを兼ね備えた独特の表情を持ちます。

試飲コメント:美しく輝くガーネット色。グラスから飛び出すほどのエレガントな芳香。チェリーやラズベリーの果実香だけでなく、バラ、コショウ、革、ミントの香りが溶け込みます。口に含むと、ミネラルが豊富で味わい深い風味とシルキーなタンニンを感じ、香り同様にエレガントで心地よい余韻が長く続きます。

『BIBENDA2017』で最高賞チンクエグラッポリ受賞!
パイティンが特別区画で造る上級バルバレスコ「ソリ パイティン」
バルバレスコ ソリ パイティン 2013
バルバレスコ ソリ パイティン 2013


19世紀末バルバレスコ黎明期に誕生した歴史的ワイナリー、パイティンを代表するクリュバルバレスコ。骨格のしっかりとした堂々たるボディで、力強くも滑らかなタンニンと洗練されたフィネスを感じる逸品。中盤から落ち着いた果実の豊かな風味、滑らかさが際立つ古典的な魅力にあふれています。

バルバレスコ ソリ パイティンは1893年に初めてバルバレスコの名前でリリースされました。ソリ パイティンの畑は、パイティンが所有するセッラボエッラの中で最も優良な区画です。畑の中央に位置し、風に恵まれた石灰質土壌の比較的暖かいエリア。ここで育ったブドウは一番早く収穫され、ワインにフレッシュさと極上のフィネスを示す幅広いタンニンが組み合わさった乾燥した葉などの印象を与えます。『BIBENDA2017』で最高賞チンクエグラッポリを獲得しています。

試飲コメント:ガーネット色。赤い果実、革、スパイス、ハーブを感じる繊細かつ複雑な香り。タンニンがありつつも口当たりはなめらか。飲み込んでからの余韻が素晴らしく、豊かなタンニンと果実味豊かなフレッシュさが溶け合い、洗練されたフィネスを感じさせます。
インタビューを終えて
オンラインという形ではありますが、再びパイティン社にインタビューすることができました。今回はバルバレスコ全体と所有畑の土壌を中心に聞かせていただきました。当主であるルカ パスクエロ氏は非常に緻密な方のようで、自作の地図を用いてバルバレスコを4つのエリアに分けて細やかな分析をしています(記事中の地図は弊社トスカニーが作成)。バルバレスコ地域全体の特性を把握した上で自社畑の特徴を分析し、客観的なデータに基づいて所有畑の評価をされていたことがとても印象的でした。

「どのエリアも個性を持っているし、どこが一番優れているかは断言できない」という他者へのリスペクトを持ちつつも、その一方で、「セッラボエッラ」や「ソリパイティン」などの区画がどれだけ稀有で価値があるか、という想いも今回のインタビューを通して感じることができました。1000年以上も異彩を放ち続け、そしてパイティン社の緻密な分析によって引き出されたテロワールを感じるパイティンのワインをぜひお楽しみください。

ルカ パスクエロ氏と
パイティンのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒