ヴェルメンティーノの最高峰ルナエからペットナット&オレンジワインが新登場!「ルナエ」突撃インタビュー

2024/12/03

2024/10/28

ミケーレ ジャナッツァ氏 Mr. Michele Gianazza

イタリアで人気絶頂のヴェルメンティーノの最高峰ルナエからペットナット&オレンジワインが新登場!繊細な食文化に調和するワイン哲学!リグーリア最大の造り手「ルナエ」突撃インタビュー

1966年創業、リグーリア州スペツィアに拠点を置く家族経営ワイナリー「ルナエ」。創業者のパオロ・ボゾーニ氏はコッリ ディ ルーニDOC認定の立役者の1人としても知られ、同州を牽引する造り手でもあります。現在も畑の拡大や新ワインの生産を続け、生産量は州全体の半数近くに及ぶなどリグーリア最高峰の造り手として君臨しています。今回は、フラッグシップのエチケッタ ネーラに加えて、2本の新登場ワイン「リンカンタトリーチェ」「パードレ フィリオ」を試飲させていただきました。ディエゴ・ボゾーニラインとして、父のパオロ氏と息子のディエゴ氏が世代を超えて造り上げたワインです。その新しいワインやヴェルメンティーノ哲学などについて、ルナエ社の輸出マネージャーを務めるミケーレ ジャナッツァ氏にお話を聞きました。

州全体の50%近くの生産量を誇るリグーリア最大の造り手

DOCコッリ ディ ルーニの立役者
ルナエは、1966年にパオロ・ボゾーニがリグーリア州スぺツィアに創業したワイナリーです。ワイナリー名は、昔このエリアにあったルーナと呼ばれる港町に由来します。創業当初は、パオロは別の仕事をしながらワインを造り、週末になると家を一軒一軒まわり自ら訪問販売をしていました。そんなパオロは、1989年のDOCコッリ ディ ルーニ創設の立役者でもあります。現在は、息子ディエゴと娘デボラも参画しており、ディエゴが発案してパオロとともに造り上げたワインを今回は紹介します。

丘陵、丘の麓、平野に所有する個性の異なる畑
ルナエが所有する畑は、3つのエリアに分かれています。丘陵地、丘の麓、平野部です。50%が丘陵地、50%が麓と平野部。丘陵地は標高256mで、小石や石を含む土壌です。樹齢の高いブドウ樹が植えられ、重要なワインを造っています。丘の麓は粘土質を含む土壌で、平野部は標高50m程度でIGTエリアにあたります。

それら3つのエリアは、標高2000m以上の山から海までわずか7kmしかない地形の中にあり、ワイナリーと畑は海から2km、山から5kmの範囲にあります。こうした特異な地形や気候条件により、エリアごとに異なる個性が生まれるのです。

ルナエの本拠地、丘陵地に古代ローマ人が植えたヴェルメンティーノ
ヴェルメンティーノは、メソポタミア時代に古代ローマ人によって現在の丘陵地に植えられたと考えられています。その理由としては、かつての平野部は沼地でブドウ栽培ができず、後に干拓されて港として利用されていたためです。私たちが拠点を置く丘陵地が始まりだったと言えます。

2023年6月10日にワイナリーの改築工事が完成しました。このプロジェクトは大きな経済的投資を伴うものでしたが、その結果、ワインの質と生産量が向上しました。また、建築の美しさが評価され、インテリア雑誌では「イタリアで必見のデザイン・ワイナリー29選」に選ばれました。

新たにサルティコラの畑を取得し、年間100万本を生産するまでに
ワイナリー改築だけでなく畑の取得も進めています。この6年ほどで畑を取得・再植樹して、畑の総面積は95haに拡大しました。リグーリアのワイナリーの平均生産量が約3万本の中で、ルナエは年間100万本以上を生産しており、州全体の約半数を占めています。新しい畑はランブルスキから取得したサルティコラのものです。もちろん植えたのは、私たちのアイデンティティであるヴェルメンティーノです。ルナエは、ヴェルメンティーノに飢えており、品種の可能性や魅力をさらに引き出すことを目指しています。

食文化に寄り添うエレガントさを重視する
ルナエのヴェルメンティーノ哲学

近年、国内外で人気が高まるヴェルメンティーノ
ヴェルメンティーノが栽培される主なエリアは、リグーリア(2300ha)、サルデーニャ(3300ha)、トスカーナ(約8400ha)です。ここ5年で非常に勢いがあるのがシチリアで、3000haにまで拡大しています。また、南フランスではヴェルメンティーノと同じDNAのロールという品種が「ヴェルメンティーノ」と名前を改めようとするなど、ヴェルメンティーノは今非常に人気が高まっています。

郷土料理と調和するリグーリアのヴェルメンティーノ
その中でも、ルナエを含めたリグーリアのヴェルメンティーノは、アロマティックでフレッシュ、飲みやすいのが特徴です。これは、リグーリアの食文化にも密接に関係しています。例えば、ペースト アッラ ジェノヴェーゼ(ジェノヴェーゼソース)に使われる地元の名産オリーブオイルとバジルは、他の州のものと比べると香り高く繊細です。私たちは、その料理を上から覆ってしまわないような、「バランス」させるヴェルメンティーノを信条としています。木樽ではなく、ステンレスのみを使うのはそのためです。

その地域にしかない自然と文化を尊重して行うワイン造り
料理の味付けが濃いエリアでは、それに合わせてボディのしっかりとしたワインが造られます。料理の横にワインがあり、ワインの横に料理があるということです。リグーリアは魚を食べる文化ですが、ルナエの本拠地から南に3km行くだけで、赤身肉と赤ワイン文化のトスカーナになります。

その各地の(食)文化に抗わない、ということです。私たちが、気候も食文化も異なるトスカーナやシチリアの真似はできませんし、逆も然りです。自然環境や文化に立ち向かうのではなく、調和を図り、一歩一歩慎重に進むことがワイン造りでも大事なのです。

伝統と革新の融合
世代を超えて生み出されたルナエの新ワイン

 今回紹介するワインは、当主パオロの息子ディエゴが発案したディエゴ・ポゾーニラインの2つのワインです。両者ともに現代的なスタイルで、「リンカンタトリーチェ」はアンチェストラーレ(ペットナット)で、「パードレ フィリオ」はいわゆるオレンジワインです。ディエゴ発案ですが、パオロと一緒に異なる世代が協力して造り上げた、伝統と革新を融合させたワインです。

食前酒に最適
ペットナットスタイルの「リンカンタトリーチェ」

リンカンタトリーチェは、古典的なアンチェストラーレ製法を現代技術で再現したフリッツァンテです。従来のルナエのラインナップとは異なるタイプですね。エリアの多様性を表現するために4つの品種(ヴェルメンティーノ、マルヴァジーア、アルバローラ、グレコ)をブレンドしています。アペリティーボにも適しており、食事前に軽く楽しむのに最適です。

食中酒に最適
味わい深いオレンジワイン「パードレ フィリオ」

パードレ フィリオは、父と息子を意味し、エノロゴ兼当主のパオロとその息子ディエゴの2世代を近づける意味合いを持ちます。ラベルのぐじゃぐじゃとした部分はアイディアが錯綜する親子の頭を表し、それぞれ混乱しながらも共存している様子が描かれています。約35~40年前に農家たちが行っていた伝統的な方法で、ゆっくり発酵させて温度管理なしで色調や香りを抽出。ここ2年はアンフォラを使用しており、バランスを重視しながらも深みのある味わいに仕上げています。複雑なワインとして、料理と合わせることで特徴を最大限に引き出します。

同じゴールを掲げて親子で造り上げた新ワイン
パオロとディエゴの最大の目的は「伝統と革新を融合させたワインを造ること」でしたので、意見に大きな相違点はありませんでした。しかし、時には息子のディエゴのほうが伝統的な考えを持つこともあり、新しいことに挑戦する父パオロにストップをかけることもありました。リンカンタトリーチェとパードレ フィリオは、若者向けに造られたワインではありますが、結果的に世代を超えて好かれるような味わいに仕上がりました。

ディエゴ・ボゾーニライン
4品種構成でエリアの多様性を表現した微発泡ワイン

リンカンタトリーチェ

リンカンタトリーチェ

ミケーレ氏:
「リンカンタトリーチェはディエゴ・ボゾーニラインの1つで、伝統と革新を大切にすることを象徴しています。イタリアではアンチェストラーレ、世界的にはペットナットという伝統的製法を用いて、現代的なワインに仕上げています。特に若い人に受け入れられやすいワインで、リグーリアの料理や魚料理、前菜などに合わせやすいです。ステンレスタンクで一次発酵を15日程度行い、その後すぐに瓶内で発酵させます。糖は加えません。その後は約5ヶ月寝かせてリリースします。ルナエが初めてアンチェストラーレとして造ったワインです。生産本数は6000~7000本。

飲み方(注ぎ方)は2通りあります。1つは、普通に注いで澱なしを楽しむ方法、もう1つは澱を全体に行き渡らすようにボトルをひっくり返してから楽しむ方法です。品種構成はヴェルメンティーノ、グレコ、アルバローラ、マルヴァジア ディ カンディアの4種類。畑は平野部から麓、丘陵地に分散しており、私たちのエリアの多様性を表現するために4品種構成にしています。ラベルにはフィレンツェのアーティストが描いた人魚が描かれています。ルーニの港に現れた人魚が漁師に歌を歌ったという伝説に基づいています。ラベルの一番下と後ろにはディエゴの名前が逆向きに鏡文字として記されています」

試飲コメント:淡い麦わら色。リンゴやミネラル、海のニュアンスが感じられるフレッシュでジューシーな香り。口に含むとフレッシュな酸が際立ち、リンゴや白桃などのフルーティな風味が広がります。柔らかな口当たりとクリーミーさが印象的です。心地よい酸によって余韻が長く持続します。

『ガンベロロッソ』最高賞トレビッキエリ常連
ルナエのフラッグシップ

エチケッタ ネーラ コッリ ディ ルーニ ヴェルメンティーノ

エチケッタ ネーラ コッリ ディ ルーニ ヴェルメンティーノ

ミケーレ氏:
「エチケッタ ネーラは、ルナエの代表作で、2000年頃から造り始めたワインです。最初に造ったエチケッタ グリージャからさらにステップアップするために、ブドウを厳選して造られました。ブドウ畑は丘陵地にあり、標高256m、樹齢40~45年のブドウを使用しています。収量を下げ、凝縮感を高めることで品質を向上させています。発酵前にクリオマセラシオンを行っています。温度を3~4度に下げ、7~8時間行うことで酸化のリスクを減らし、色調や香りを最大限に引き出しています。その後、ステンレスタンクでアルコール発酵を行い、4ヶ月間澱とともに寝かせてから瓶内熟成に入ります。

アロマティックで果実の緑っぽさ、アカシアなどの花の香りが特徴で、素晴らしい酸とバランスの取れた味わいです。余韻にはミネラル感や塩味、海風のニュアンスがあり、口の中がリセットされ、次にもう1杯飲みたくなるような印象を与えます。このワインは熟成に向いており、瓶内で寝かせることでバルサミックなニュアンス、スパイスやセージ、ローズマリーが現れます」

試飲コメント:麦わら色。白桃、洋梨、パイナップル、マンゴー、グレープフルーツなど複雑な香り。クリーンでフルーティー、華やかさが際立っています。柔らかな口当たりにフレッシュな酸が溶け合う味わい。香りで感じた複雑な果実味とほろ苦さが同時に広がり、余韻が長く持続します。

ディエゴ・ボゾーニライン
ヴェルメンティーノ100%オレンジワイン

パードレ フィリオ

パードレ フィリオ

ミケーレ氏:
「ディエゴ・ポゾーニラインであるパードレ フィリオは、父と息子を意味しています。2つの世代、異なる世代を近づけるという意味も込められています。ラベルには、アイディアが混乱している様子を表しています。息子ディエゴと、当主であり父のパオロの2人の考え方から生まれたワインでもあり、伝統と革新が融合しています。100%ヴェルメンティーノを使用し、料理と合わせることでその良さが最大限に発揮されるワインだと考えています。バランスの良さも特徴です。35~40年前、まだ醸造技術が未発達だった時期に農家たちが行っていた伝統的な方法で造っています。発酵は18~20日間かけてゆっくり行い、温度管理をしないため、色調が深く、香りが抽出されています。畑は丘の麓に位置するルーニとカステルヌオヴォ マグラの2つの畑です。木樽のバニラ香を避けるために、アンフォラを使用しています」
試飲コメント:黄金色。熟した果実のフレッシュさとナッツやハーブを伴う複雑な香り。ソフトな口当たりで、酸とエレガントな果実味がじわっと広がる味わいです。と同時に、優れた骨格があり力強い風味が口中を満たします。

インタビューを終えて

今回初めて日本に入ってきた2本の新登場ワイン「リンカンタトリーチェ」「パードレ フィリオ」。どちらもソフトな口当たりでデリケートな味わいがあり、従来の醸造アプローチとは違いながらも、しっかりとルナエが重視するエレガントさとバランスを感じました。「若者向けに造りましたが、世代を超えて好かれるような味わいになりました」という言葉通りでした。これらのワインを造る上で、息子のディエゴさんのほうが伝統的で「新しいことに挑戦する父パオロにストップをかけることもありました」という話が印象的でした。

ルナエが考えるヴェルメンティーノ哲学の話も、非常に印象的でした。その土地にしかない気候、農産物、食文化、人間に寄り添うワインが自然と生まれ、その自然に抗わないワイン造りに注力しているルナエ社の哲学をワインから感じ取ることができました。リグーリアのスーパーマーケットには、賞味期限が製造日から1週間程度しかないジェノヴェーぜソースが売られています。非常に新鮮で、フレッシュで香り高く繊細な味わいです。ワインを試飲しながらミケーレさんのお話を聞いた時に、あのジェノヴェーぜソースを思い出してしまいました。賞味期限が短いのでお土産には向かないかもしれないですが、リグーリアを訪れた際はぜひ、お探しいただければと思います。