2015年4月24日 カッシーナ キッコ社 エンリコ ファッチェンダ氏、ララ コッシャ ファッチェンダ氏 ご夫妻来社

2015/04/24
突撃インタビュー
 
2015年4月24日 エンリコ ファッチェンダ氏、ララ コッシャ ファッチェンダ氏 ご夫妻 Mr. Enrico Faccenda & Ms. Lara Coscia Faccenda

カナーレダルバで知らぬ人はいない、父フェデリコさんの決断で急成長。マルコ&エンリコさんの二人の息子が醸造と販売を担う家族経営のワイナリー「カッシーナキッコ」突撃インタビュー

ご夫妻と
ロエロで3世代続く家族経営のワイナリー、カッシーナ キッコ。コストパフォーマンスに優れたネッビオーロが人気ですが、2006年に購入した畑で造るバローロがワインスペクテイターで94点を獲得、高品質ワインを身近な価格で提供するピエモンテの造り手としての地位を確立しました。

1950年代、祖父エルメストがカナーレ ダルバに小さな農場を購入し始まったカッシーナキッコ

カンティーナの中カッシーナキッコは父フェデリコと一緒に私エンリコと兄のマルコが経営するワイナリーです。もともとは、祖父のエルメストがロエロの中心地カナーレ ダルバに小さな農場を購入したのが始まりです。1950年代のことで、ネッビオーロとバルベーラを造り始めました。

ワイン造りは一家のメインの仕事ではなく、父が受け継いだあともサラミを造って販売するサルメリアを経営していました。しかし、ロエロの土地に根付いたワイン造りの伝統を大切にしたいとワインを本業にすることを決め、1980年代にワイナリー「カッシーナ キッコ」を設立しました。

ポリシーは「歴史のあるテロワールとブドウ品種を大切にする」こと。畑名入りのワインを数多く造っている

当初は小さな畑しかなかったのですが、徐々に土地を購入し、今はロエロ地区に40ヘクタール、モンフォルテ ダルバ地区に5ヘクタールの畑があります。私たちは歴史のあるテロワールでのワイン造りを大切にしているので、そういう背景を持つ畑を探して購入してきました。私たちのワインには畑名が入っているものが多いのですが、それはテロワールに重きを置いていることの表れでもあります。

ロエロでのワイン造りを続け、そして今はバローロにも畑を所有しています。ロエロはもともと海だった土地で、化石が良く出てきます。土質的には年度と石灰が半々ぐらいです。一方、私たちのバローロの畑は粘土質になります。この2つのエリアのテロワールを大切にしたワインを造っています。

3枚の畑の写真
 

サルメリア経営の兼業からからワイン造り1本の道へ

サルメリアで使っていた大理石のカウンター みんなが遊んでいた、15才からブドウ作りを手伝って

私が子供の頃はサルメリアをやっていたので、サラミやワインがいっぱいありました。15~6歳ぐらいからワイン仕事を手伝うようになったのですが、友達はみんな遊んでいるときに、ワイン造りを手伝っていたので、「一緒に遊びに行きたい」と思うこともありました。父は将来私たちもワイナリーで働くと考えていたのか、新しい機械を次々と導入してワイナリーを整備していったのです。機械には興味がありましたが、機械の操作を覚えてしまうと、仕事ももっと増えてしまいそうだし、私は仕事よりも遊びに行きたかったので(笑)、機械の操作を覚えることが嫌で醸造学校に入学しました。

日曜日も開けていたサルメリアの経営とワイン造り、「このままでは日曜日も働かなくてはいけなくなるよ」
カナーレ地区はイタリアでは珍しく、昔から日曜日もお店を開ける慣習があり、お店をやっり、ワイン造りもしていた私たちは1年中休みなく働いていました。父は、「このままでは土日も働かなくてはいけなくなるよ」と家族と話し合い、結果ワイン造り一本でいこうということになったんです。でも、ワイン造りにはお休みがないですからね。結局、今でも1年365日、みんな仕事しています。(笑)

ワイナリーを大きくしたのは父です。私たちは決して焦らず、銀行に大きな借り入れもせずにこつこつと規模を大きくしていきました。今、父はワイナリーのことをほぼ私と兄に任せてくれていますが、まだ74歳だし、他のワイナリーだったらまだ自分が主導でやっているかもしれません。ですが、進歩的な考え方をする人なので私たちにやってみろ、と言うことなのだと思います。そうはいっても、大きな意味では監督してくれていますがね。

ここから試飲をしました。

偶然が生んだ「クリオマセラシオン」で造るアロマティックな白
ロエロ アルネイス アンテリージオ 2013
ロエロ アルネイス アンテリージオ 2013


私たちにとって一番重要なワインで、ガンベロロッソで最初に最終選考に残ったワインでもあります。このワインは昔からクリオマセラシオン(低温での醸し)をやっていました。クリオマセラシオンは果皮の成分を引き出し、アロマとストラクチャーをワインに与えます。手間がかかるので誰もが行えるものではありません。

実は、クリオマセラシオンは偶然の産物なんです。収穫時期にタンクが故障してしまい、困って近所の果物倉庫を借りて冷やしていたことがあったのですが、そのブドウがとてもいい状態になったのです。

試飲コメント:フルーティーな香りとしっかりとしたミネラル。飲みごたえのあるしっかりとした骨格が印象的。

果実味を際立たせる丘の畑で造るバルベーラ
バルベーラ ダルバ グラネラ アルタ 2013
バルベーラ ダルバ グラネラ アルタ 2013


カステッリナルドの地にあるグラネラアルタで造られるバルベーラダルバです。石灰質土壌で、比較的酸が低く、果実味を際立たせるブドウができます。ここは1920~30年代から「いいブドウができる」と評判の土地で、ブドウも高値で取引されていました。

新樽ではなく、2年目の樽で約9~12ヶ月間熟成させています。酸もきつくなく飲みやすくて「わかりやすいバルベーラ」と言われます。少し冷やして飲んでも美味しいです。

試飲コメント:やわらかく、フルーティーなスタイル。飲み心地良く美味しい。

より条件のいい樹齢の高いバルベーラ。長期熟成できるポテンシャル
バルベーラ ダルバ ブリック ロイラ 2011
バルベーラ ダルバ ブリック ロイラ 2011


平均樹齢は20年、古いもので40年ぐらいのバルベーラで造ります。グラネラアルタと同じくカステッリナルドにある南向き斜面の畑になります。熟成はバリック(一部新樽)で12~14ヶ月。長く熟成できるワインです。
試飲コメント:濃密感のあるしっかりとしたストラクチャー。力強く柔らかさもある。樽のニュアンスもきつくなく、エレガント。

料理に合わせやすい、わかりやすいキャラクターのネッビオーロ
ランゲ ネッビオーロ 2013
ランゲ ネッビオーロ 2013


私たちのネッビオーロの中で、一番若いワインです。色々な場所のネッビオーロから造っているのでこのワインには畑名がありません。ネッビオーロは品種的に複雑な特徴がありますが、若いネッビオーロは料理に合わせやすいですね。今あるフルーティーさはこれから数年は感じられますが、その後は熟成感が出てきてトリュフの風味なども感じられます。
試飲コメント:赤い小さい果実やイチゴなど、ネッビオーロの明るい果実味が表現。フルーティーで飲みやすい。酸とミネラルも上品でなめらか。

ロエロの中で最も有名なクリュ「ヴァルマッジョーレ」
ロエロ リゼルヴァ ヴァルマッジョーレ 2011
ロエロ リゼルヴァ ヴァルマッジョーレ 2011


ロエロの中で最も有名なクリュ「ヴァルマッジョーレ」で造るネッビオーロです。ヴァルマッジョーレは1630年の文献にも記録されているほど古くから知られている畑です。

ずっとほしいと思っていたヴァルマッジョーレは1992年に購入できました。実は妻のララの家族がここに畑を持っていたんです。ヴァルマッジョーレに畑を所有していたから結婚したわけではないのですが(笑)。

1本のブドウ樹から2㎏のブドウを収穫。15~18ヶ月間バリックの新樽で熟成させています。

試飲コメント:芳醇で力強く、エレガント。豊かなボディと長い余韻で最後まで楽しませてくれる。

長年の経験を生かし、探し求めて手に入れた畑で造るバローロ
バローロ ロッケ ディ カステッレット 2011
バローロ ロッケ ディ カステッレット 2011


2006年、バローロの産地であるモンフォルテ ダルバに素晴らしい畑を見つけて購入することができました。この元の所有者はピエリンさんと言うおじいさんで、ブドウ以外にも色々な農作物や花を栽培して売ったりして暮らしていた方です。

バローロを造るのはとても大変で時間がかかります。発酵は天然酵母だけを使います。マセラシオンは40日以上、熟成は30ヶ月間大樽で行います。ボトリング前にステンレスタンクに移してさらに1年間寝かせ、その後、ボトルで8ヶ月間寝かせてからリリースします。苦労はありましたがすぐにいい結果が出ました。2010年ヴィンテージがワインスペクテイターで94点をとりました。2010ヴィンテージは良年と評判ですが、私たちはこの2011年もいい状態で造ることができたと思います。

試飲コメント:2010に比べてもそこまで若くて硬いという印象ではなく、やわらかさと果実味のある心地よい美味しさ。
インタビューを終えて
兄弟の二人のお嫁さんは、畑のあるそれぞれの土地から・・

カッシーナ キッコのランゲネッビオーロは、最初に飲んで以来すぐにファンになってしまいました。初めて飲むネッビオーロとして誰にでもお勧めできる1本だと思います。

今回お話を聞いて印象に残ったのが「歴史を持つ土地のテロワールを大切にしたワイン」を造っていること。畑名を付けたワインが多いこともその表れ。長くこの土地で生活を続けているからこその思いであり、焦らず、丁寧に、じっくりと探して畑を広げていったことが結果的にカッシーナキッコの高い品質を造り上げたのだとわかりました。

また、エンリコさんは、新たな畑購入を検討している段階で、ご両親がブドウ栽培をされていた、現在の奥様のご両親に「娘と一緒に畑をくれ」といったやりとりがあったとか、兄の嫁のシモーナさんも現在畑を持つ、ヴァルマッジョーレ出身だとか、ブドウ畑で結ばれた縁ある家族だという、お話もきかせて頂き、カッシーナキッコのみなさんが、いかに土地に根差した生産者さんなのかを、実感した次第です。

ワインは料理と一緒に飲んでもらうことが大切、と今回日本に来られて和食とのマリアージュも色々試しているそうです。「私たちのバルベーラは日本の魚料理とも合いますよ」と嬉しそうに教えて下さいました。

集合写真
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