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2015年10月5日 カンテ社 エディ タパチーノ
フリウリ「カルソ」地区のトップ生産者。自身のこだわりを全てワインに表現、「最もユニークなワインの造り手」とも評されるイタリア屈指のビアンキスタ
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イタリア屈指の白ワイン産地フリウリ ヴェネツィア ジュリア州の中でも「ユニークな存在」としてその名を知られているカンテ。州都トリエステに近い、カルソと呼ばれる地区を代表する造り手であり、カルソDOC認定の立役者でもあるカンテは土着品種ヴィトヴスカを復活させたことでも有名。ワインに対する情熱と強いこだわりによるワインは世界の愛好家を熱狂させています。 |
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カルソに根付いた一族のカンテ。10代のころから大御所生産者と交流し、経験を積んだ
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カンテのオーナー、エディカンテはイタリア白ワインの生産者として最も名の知られている造り手のひとりです。40年前、彼が18歳の時に本格的なワイン造りをスタートさせました。当時からグラヴナーやガヤ、ソルデラなどの大物生産者たちと交流があり、ワインについて学んでいたそうです。彼らが20代後半の大人だったのに対し、カンテはまだ10代と若かったのですが、その頃からすでに品質の高い造り手たちと意見を交換していたのです。
カンテの一族はずっとカルソに住んでいて、自家用のワインを造っていました。昔は、イタリアの田舎では畑でブドウを育て、自分たちで飲むワインを造るのは普通でした。でもカンテはワイン造りに対して強い関心があり、子供の頃から畑に出ては父親と一緒にブドウの面倒を見ていたのです。そのような生活の中でブドウ樹のかけ合わせなども覚え、自然とフリウリの実力生産者たちと知り合うようになっていったようです。 |
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畑を造ることが困難なほどに石だらけの土地のカルソ。ひとりで石を取り除き畑にしていった
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カルソは州都トリエステに近い、丘陵地一帯を指すエリアです。カルストの語源となったことからも分かる通り、石灰質が豊富な土壌です。カンテはワイン造りを始める際、まず畑を造ることから始めなければなりませんでした。カルソは石がごろごろしている土地だったためまずその石を取り除き、そして石灰質と鉄分が豊富な土を運び入れて畑にしました。1か所にまとまっているわけではなく、小さな畑が点在した形になっています。
ブドウを育て始めてすぐに、ここが白ブドウに適した土地であることがわかりました。そこで土着品種のヴィトヴスカとマルヴァジア、そして国際品種のシャルドネ、ソーヴィニョンを植樹しています。 |
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バリックで発酵、熟成を1年間、その後ステンレスタンクで1年間。カンテが考えるワインのスタイル
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カンテは同一品種から2つのシリーズ、「クラシックライン(スタンダード)」と「セレツィオーネ(セレクション)」を造っています。ヴィトヴスカ、マルヴァジア、シャルドネです。どちらのラインもバリックで発酵、熟成に1年間かけ、その後ステンレスタンクで1年間寝かせています。セレツィオーネは毎年作るわけではなく、その2年の期間が過ぎてからセレツィオーネにふさわしい出来のものだけを選んで造ります。例えばソーヴィニョン セレツィオーネは前回は2006年、そして今回の2009年と3年ぶりになります。
最初の1年目に使うバリックは旧樽で、だいたい18年ぐらい使用したものです。だからワインに樽のニュアンスはほとんど感じないと思います。酸化防止剤(SO2)は使用を極力控えていて、瓶詰の前にごくわずか加えるだけです。
カンテのワインはエクストロを除いてにごりはありません。フリウリの自然派のグラヴナーやラディコンとは全然違います。実はカンテも当初は彼ら同様、長い醸しをしてワインを造ることを試みたのですが、自分が納得するようなものにはならなかったため、それ以来醸しは一切やっていません。 |
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飲み頃になってから初めてリリース。セレツィオーネの熟成期間は数年以上。ワインはカルソに掘って造った洞窟のセラーで寝かせている
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カンテは飲む人に楽しんでもらいたい、ということを大切にしています。だから飲み頃と考えてからリリースしています。そしてさらに熟成し続けるポテンシャルがあります。カンテの地元のファンはワインを購入してから自分のセラーでさらに熟成させて楽しむ人も多いです。長期熟成に向く白ワインができることをカンテのワインが証明しました。
15年前にカンテは地下に洞窟を掘ってセラーを造りました。子供の頃からカルソの地に慣れ親しんでいたカンテは、ここが1年中温度変化がなく、ワインの保存に適した湿度の環境であることがわかっていました。そこで、自ら洞窟を掘って熟成庫を造り、そこに造ったワインを寝かせています。
ここから試飲をしました。
(※ワイン画像は試飲当時のものと異なる場合があります) |
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シャルドネとマルヴァジアで造るメトドクラシコ。石灰質と海に近い土壌由来のミネラルを感じる複雑な個性 |
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ドサージュ ゼロ カッパ カッパ |
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15年前から造っているメトドクラシコのスプマンテです。シャルドネとマルヴァジアから造っていてセパージュは年によって変わります。ドサージュゼロのしっかりとした辛口で、残糖値は1g/リットルです。
カルソは石灰質土壌なのでそれ由来のミネラルと、海を感じるニュアンスがあります。しっかりとした力強い酸味を感じる、他のメトドクラシコにはない個性があります。
カッパカッパとはカンテの「K」をシンメトリーに並べたデザインです。これはカンテの過去と未来を表現しています。 |
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試飲コメント:思わず目を見開くような辛口ながら、溶け込んでいた繊細な泡が口の中で連続して広がるとやわらかな味わいへと変化。しっかりとしたミネラルと上品な果実味が調和。フランチャコルタやトレントでは出会えない、唯一無二の味わい。 |
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カンテが復活させた土着品種ヴィトヴスカ。土地のミネラルと海のニュアンスをダブルで感じる、個性的な白 |
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ヴィトヴスカ 2012 |
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ヴィトヴスカはカルソの土着品種ですが、カンテが造りはじめるまでは忘れ去られた品種でした。現在、ヴィトヴスカを造っている他の生産者も、そのブドウは元をたどればカンテのヴィトヴスカと言っても過言ではありません。
海のミネラルと果実のコクが感じられますが、非常にスムーズに飲めます。 |
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試飲コメント:しっかりとしたストラクチャーと見事なバランス感。印象的なミネラルがクリーンな美味しさに溶け込んでいる。 |
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最良のキュヴェだけで造るヴィトヴスカのリゼルヴァ |
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ヴィトヴスカ セレツィオーネ 2005 |
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セレツィオーネです。先ほど飲んだヴィトヴスカのリゼルヴァということになります。特に、セレツィオーネ用の畑というものはなく、バリックで発酵、熟成を1年、ステンレスタンクで1年の熟成をしたあとで良いキュヴェを選んでセレツィオーネにしています。セレツィオーネは毎年造っているわけではありません。 |
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試飲コメント:外観は濃く、味わいも濃密感があるが、しっかりとした酸とミネラルでとても個性的。10年経ったヴィンテージとは思えないほどにフレッシュな味わい。 |
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クラシックラインながら各評価誌で絶賛される高レベルソーヴィニョン |
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ソーヴィニヨン 2012 |
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クラシックラインのソーヴィニョンです。品種は違いますが造り方は全く同じです。ヴィトヴスカ同様、非常にエレガントさを感じていただけるかと思います。
(1年間の樽発酵・熟成ながら樽のニュアンスをほとんど感じないことについて質問)
バリックを使って醸造している、という意識はカンテにはありません。旧樽ですし、中には18年ぐらい使ったものもあります。発酵を樽で行って、そのまま寝かせているだけで、熟成はステンレスタンクで1年間、そして瓶塾によって熟成が進んでいく、という感覚です。だからバリック熟成させたワインという意図はないんです。
ただ、逆にバリックを使わなければこのようなエレガントなスタイルは出来ていないと思います。旧樽バリックのおかげで品種をよりエレガントにまろやかに表現することができていると思います。 |
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試飲コメント:やわらかな口当たりとスムーズなのどごし。一般的にイメージするソーヴィニョンのニュアンスがほとんど感じない、カンテ独特のスタイル。 |
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ワインアドヴォケイトでイタリア辛口白ワインの歴代最高得点96点獲得の偉大なソーヴィニョン |
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ソーヴィニヨン セレツィオーネ 2009 |
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前回のセレツィオーネは2006ヴィンテージで、次がこの2009年です。このようなスタイルのソーヴィニョンはイタリアにはないと思います。醸造は他のワインと同じですが、ステンレスタンクの熟成を終えてセレツィオーネとして選んだあと、さらに4年間ステンレスタンクで熟成させています。 |
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試飲コメント:塩気と果実のまろやかさのバランスが見事。エレガントな果実感がじわじわと口の中を広がっていき、その後ソーヴィニョンらしさがかすかに感じられる。 |
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シャルドネのやわらかな果実味と独特のミネラルが見事に調和 |
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シャルドネ セレツィオーネ ラ ボーラ ディ カンテ 2009 |
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シャルドネのセレツィオーネです。カンテはクラシックラインはシンプルなラベルデザインに統一されていますが、セレツィオーネのラベルはすべてカンテの手描きの絵か、写真を使っています。シャルドネはトリエステの岸壁に打ち寄せる波の写真です。この波を引き起こしているのがトリエステ特有の風ボーラです。 |
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試飲コメント:3つの中では最も果実味を感じるまろやかなスタイル。塩気とミネラルは健在で、飲み進めると火薬のニュアンスも。 |
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セパージュも醸造方法もすべて秘密!「飲む前によく振って」とお勧めするワイン |
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エクストロ |
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エクストロはカンテが自分のすべてを出したいと造っている特別なワインです。飲み手の想像を膨らませるためセパージュも造りも秘密です。ヴィンテージも分かりません。8年か9年前に初めてリリースされました。
コンセプトはヨーグルト。ちょっと解りにくいかもしれませんが、フルーティーで他のワインに比べると甘みがあるのが特徴です。
ご覧のとおり全体的にごりがあります。裏ラベルに「飲む前に振ってください」と書いているのですが、ボトルの底にたまった澱を全体に拡散させたうえで感じる複雑さや旨みがカンテの出したい味なのです。 |
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試飲コメント:カルピスかと思うようなほどににごりのある色合い。口当たりはやわらかく、甘みも感じるが、それ以上に広がる旨みが素晴らしい。 |
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カルソの土着品種テラーノ。ピュアな果実味が印象的 |
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テラーノ 2008 |
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テラーノはレフォスコの兄弟品種と言われていて、非常に実が小さいブドウです。カルソの赤はテラーノしかありません。特徴は寒い土地に育ち、酸が高め。ラズベリーのニュアンスもありますが、印象的な酸とミネラルがあります。 |
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試飲コメント:想像していたよりもずっとやわらかさがあり、心地よいフレッシュな果実味で飲みやすい。 |
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2000年から2010年の間に仕込んだワインをブレンド。誰も真似できない別次元の赤ワイン |
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オペラ ヴィーヴァ NV |
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これは、カンテが挑戦的に造ったワインです。あるとき友人から「君の白ワインはすごい赤はテッラーノしかないんだね」といわれ、それじゃあ造ってやる、と取り組んだワインです。
2000~2010年の間に仕込んでいた一番いいテラーノ、ピノネーロ、カベルネソーヴィニョン、メルローのうち、一番いいものを選んでブレンドしています。もう、その仕込んだワインは全部使ってしまっているので、次のオペラヴィーヴァはいつになるかわからないです。
ラベルデザインはシンプルですが、実はカンテのフルネーム(EDI KANTE)と記載している唯一のワインなんです。(※他のワインはKANTEだけ |
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試飲コメント:酸、タンニンの2つの重要な要素がしっかりと共存して、まとまったストラクチャーを造っている。梅やシソ、そして海のニュアンスと果実味。さらに凝縮させた旨味が一体となって広がる何とも言えない美味しさ。一筋縄ではいかない香りも個性的。 |
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■インタビューを終えて |
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フリウリで最も有名なビアンキスタのひとりとして知られるカンテのワインを今回ゆっくり飲み比べることができました。他の人が何をしようが自分の信じた方法で、一貫してワイン造りを行っているカンテの姿勢に感動しました。
フリウリの自然派と言うと、グラヴナーやラディコンのように最初はなかなかとっつきにくいワインのイメージがありますが、カンテは偉大な彼らとは別の道を歩み、飲み手を楽しませることを最も大切にしたワインを造り続けてそのスタイルを確立させました。その結果、何年経ってもフレッシュさを失わない、不思議な長期熟成型白ワインが生まれているのだと思います。
透明感のあるスムーズな味わいの白の中で異色の存在のエクストロですが、これがカンテのすべてを表現している、というのも面白い。カンテはどういう人なのか聞いたところ、ブドウ樹の接ぎ木までも含めて畑仕事から醸造まで、全てに精通し、さらには芸術的なラベルも自分で描く多才な人物とのこと。ワインは造り手を表現すると言いますが、ますますわからなくなってきました(笑)。どんな人なのかを想像しながら飲むのもカンテのワインの面白さだと思います。 |
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