2013年3月12日 パルッソ社 マルコ パルッソ氏 来日セミナー

2013/03/12
突撃インタビュー
 
2013年3月12日 パルッソ社 マルコ パルッソ氏 Mr.Marco Parusso

マルコ パルッソ氏と
パルッソはかつて「バローロボーイズ」の一員として知られていましたが、その後、自然な味わいのバローロ造りへと方針を変更。他の造り手がやらないパルッソ独特のワイン造りについてお話しを聞きました。

リリースした時に飲み頃で、時間が経っても美味しいワインを造る

まず皆さんにお伝えしたいことは、自分たちは農家だということ。だから出来るだけ自然に任せたブドウ栽培とワイン造りをしています。そして「若いときから飲み頃で、時間が経っても美味しくなる」ワインというのがパルッソの特徴です。

ブドウは十分に成熟するまでできるだけ待ってから収穫します。以前は酸や糖度の分析を細かくしていましたが、10年ぐらい前から自分の目と感覚を重視するようになりました。

1995年に収穫したブドウを数日間休ませると房がリラックスしていることに気が付きました。

収穫直後のブドウは相当のストレスを受けているから休ませてから圧搾。こうすることでタンニンは甘く、まろやかになる

ブドウの休憩室ブドウは、樹になっているときはゆったりしていますが、切った直後はストレスを受けています。ストレスを受けたままワインにしていくのはおかしいと感じました。バナナやオレンジだって切った直後よりも少し寝かせたほうが甘みが出て柔らかくなる。それと同じです。

収穫後、かごに入れたブドウを温度管理できる「休憩室」で休ませます。1日目は10~12℃に置き、徐々に20℃まで上げていきます。皮が固く苦みや酸が目立っていたのが休ませることで果皮が柔らかく、タンニンも甘く、丸くなっていきます。

収穫間もないブドウ、6日後のブドウ、13日後のブドウ

梗が付いたまま房を休ませます。発酵する前に除梗するのが普通で、私もそう思っていましたが、あるとき4,5日たった梗がとても美味しくなっていることに気が付きました。梗と一緒に発酵すると青臭いブドウができると思っていましたが、全くそういうことはありません。そして2007年から除梗なしで発酵することを一部(約20%)のブドウで始めました。2009年にはその比率は80~90%に上げています。

調べてみると1940年ぐらいまでは除梗しないでワインを造っていたということがわかりました。でも、手間がかかるから今はだれもやっていません。
今日の私の話も理解するのは難しいかもしれません。でもこれが自分のやり方だし、パルッソのワインそのものなのです。

 

10年たたないと飲めないバローロは造りたくない。エレガントな味わいはパリで高い支持を受けている。

パルッソのバローロは「今飲んでおいしいと思ってもらえるもの」を目指しています。いくらいいものだとしても、その良さをわかるのに10年も待たなきゃいけないものなんて、私は欲しくありません。レストランさんにはストックしておくことよりも使ってもらいたいです。私のバローロはパリでよく売れているのですが、パリの人たちはエレガントなブルゴーニュをよく飲んでいるので、スタイルが似ているからだと思います。

ここから4つのバローロの試飲をしました。

複数の畑のネッビオーロをブレンドして造るクラシカルなバローロ。若いうちから楽しめる。
パルッソ
バローロ 2008
バローロ 2008


2008年はとても良いヴィンテージでした。フレッシュで、おだやかなタンニンでエレガントな味わいになっています。パルッソのスタイルに近い味わいです。

4つの地区にある畑のブドウをブレンドしています。飲みやすいバローロで、絹のバローロと呼んでいます。バローロはアグレッシブなものが多いですが、そのようなものはパルッソのバローロではありません。

2つのクリュをブレンド。クリュバローロを味わう導入ワイン的な存在。
パルッソ
バローロ レコステ モスコーニ 2008
バローロ レコステ モスコーニ 2008


モンフォルテダルバのレコステとモスコーニという2つのクリュのブレンドです。セッラルンガに近いところにあるので男性的な特徴も見られます。味わいはとてもリッチで濃密、シルクというよりはカシミアに近いバローロです。先ほどのバローロに比べ、華があってはっきりしています。

歴史的にも重要なクリュ ブッシア
パルッソ
バローロ ブッシア 2008
バローロ ブッシア 2008


ブッシアは歴史的に見て重要なクリュです。個人的に「カンヌビ」「チェレクイーオ」「ブルナーテ」「ブッシア」の4つがバローロのクリュの中で特に重要だと考えています。これらには高貴さがあります。このブッシアもエレガントに仕上がっています。

2005年はクリュバローロは造らなかったが、ブッシアのブドウだけでリゼルヴァを造った。価格が上がるのでブッシアは名乗っていないお買い得リゼルヴァ
パルッソ
バローロ リゼルヴァ 2005
バローロ リゼルヴァ 2005


2005年は雨が多く、熟したタンニンを得るのが難しい年でした。だからクリュバローロを造るのはやめて、全部混ぜてバローロを造りました。でも、ブッシアについては単独で造り、リゼルヴァにしたのです。だからこのリゼルヴァは本当はバローロブッシアリゼルヴァなのですが、そうするとお値段も上がってしまうので(笑)名乗っていません。
インタビューを終えて
収穫したブドウをいったん休ませ、ストレスを取ってあげるという話は恐らく初めて聞きました。かごに入れて部屋で寝かせると言ってもアマローネのように乾燥させるわけではなく、しっかりと温度管理を行い、ブドウのフレッシュさとしての品質を失うことはありません。 「今飲んでおいしいエレガントなバローロ」という言葉通り、今までに飲んだことのないバローロです。スタンダードバローロはネッビオーロにしては色合いが濃く、タンニンは強いがとてもなめらか。どこかマンゴーのようなニュアンスもあり、とても不思議。ガツンとくる力強いバローロも大好きですが、パルッソの不思議なエレガントさはくせになりそうです。
パルッソのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒