2012年9月18日 カンティーナトッロ

2012/09/18
突撃インタビュー
 
2012年9月18日 カンティーナトッロ

記念撮影
カンティーナトッロはアブルッツォの生産者協同組合で、『ガンベロロッソ』で年間最優秀生産者に選ばれるほどの造り手です。1200もの栽培農家の畑から選別して造られる「カンティーナトッロ」ブランドのワインはどれもが驚くほどのコストパフォーマンスを誇っています。高品質で抑えられた価格はどこからくるのかをこの目で確かめに、ローマからアペニン山脈を越えてアドリア海へと向かいました。

9月も後半とはいえまだまだ暑いのは日本と同じ。ペスカーラから海岸線沿いに南へ下り、トッロ村への標識が出たところで右折。そこからはどんどん山を登っていきます。トッロは標高が高いところにあることがわかります。

収穫真っ最中で大賑わいの醸造所を訪問

そびえたつステンレスタンク輸出責任者のドメニコさんが迎えてくれました。

ドメニコさん(以下トッロ):よくきてくれました。今はちょうど収穫の真っ最中だからカンティーナはフル回転していますよ。

トスカニー:次から次へとブドウを積んだ車が入ってきますね。それにしてもタンクがいっぱい!こんなに大きい醸造所は見たことがありません。

トッロ:(笑)ここに着いた車はまず重量を測ります。同時にブドウの品質を確認します。状態を目で見て、粒をとって糖度を計ります。その結果、どの破砕機に入れるかを決めます。ブドウを全部入れ終わって空になった車はもう一度重量を測ります。その差がブドウの重さ、ということになります。

トスカニー:それによって農家の人はいくらもらえるか決まるんですね。

トッロ:金額が決まるのは年末です。どれだけの売り上げになるかで配分額が決まります。もちろん品質が高ければ高いほど支払う額も高くなります。だから農家たちはよりいいブドウを造ろうとします。

かごに入ったブドウ
トスカニー:あそこの小さなかごに入ったブドウはなんですか。

トッロ:あれはセレクションされた畑で収穫したブドウです。ランクの高いワインを造るためのブドウで、収穫してからここに運ばれるまで小さなかごに入れています。

トレーサビリティは完璧!全てのボトルはどこの畑のブドウから造っているかをしっかり管理

発酵中のタンクのある場所へ移動

トッロ:音がうるさくってごめんなさい。今は収穫の最盛期なので醸造所は24時間体制です。収穫は8月中旬から10月末ぐらいまで続きます。ブドウは破砕して圧搾したら白ブドウは果汁を発酵タンクに入れます。1日に4回温度をチェックして、温度が上がり過ぎないように注意します。白ワインのフレッシュな香りを保つためにそうしています。

このセメントタンクは内側がグラスファイバーで加工されていて清潔です。昔は100%セメントタンクを醸造に使っていましたが今はボトリングの前の貯蔵用として使っています。品質を保つためには清潔第一だから必ず毎日洗浄しています。

各タンクにはどのワインが入っているのか紙が張ってありますが、この番号からどの畑で収穫したブドウなのかもわかるようになっています。

トスカニー:しっかり管理されているのですね。

トッロ:トレーサビリティができているので、ボトルからどの畑のブドウで造ったのかわかります。

 

フラッグシップのカジョーロがトレビッキエリ獲得

トッロ:ここは分析室です。発酵過程のワインと完成したワインをすべて分析しています。製品の品質を保証する大切な役割を果たしています。コルクも使用する前に必ず検査しています。

トスカニー:はあ~徹底していますね。さすが。これなら本当に安心です。

トッロ:次は樽熟成庫に見に行きましょう。

トスカニー:たくさんありますね!

バリック
トッロ:1000~1500ぐらいのバリックがあります。年間8万リットルほど熟成しています。昔は大樽を使っていましたが、10年ほどたつと臭いが出てきます。木の種類は通常はオークですが、今、実験的にアカシアの木も使っています。
バリックを使い出してからワインの出来具合は本当に良くなっています。そうそう、つい先日、カジョーロ2009が『ガンベロロッソ2013』でトレビッキエリを獲得したという連絡が入りました。

トスカニー:すごい!おめでとうございます!これはすぐに予約しないといけないです。

トッロ:ありがとうございます。でも大丈夫、あなたたち用にちゃんととっておきます。

新しいDOCトゥルムの規定は超シビア!

カンティーナに併設されている試飲販売所カンティーナに併設されている試飲販売所(通称:カンティーナ イン)に移動して試飲することになりました

トスカニー:品質管理が徹底されていることが本当に良くわかりました。

トッロ:1000以上の契約農家がいるので品質のセレクションが可能です。毎年、安定した品質のワインを造ることができます。全生産量のうち30~40%がカンティーナトッロとしてボトリング、残りはバルク売りをしています。

トスカニー:規模はアブルッツォで一番大きい?

トッロ:ボトリングの量ではもっと大きいカンティーナはあります。でも、生産過程のすべて、つまり畑から最終のボトルにいたるまですべてを管理して把握している生産者としてはNo.1だと思います。私たちは農家向けの資材なども扱っているのですが、このおかげで生産にかかわるすべてのサイクルをトータルに管理できています。

トスカニー:新しく始まったフェウドアンティコもここカンティーナトッロの醸造所で造っているのですか?

トッロ:醸造はここでしています。フェウドアンティコは別会社になりますが、品質管理においてはカンティーナトッロが責任を持ってやっています。今、フェウドアンティコのカンティーナを建設中で、完成したら熟成はそちらで行います。 フェウドアンティコの白は自然発酵で造ります。品種はトレッビアーノダブルッツェーゼ、ペコリーノ、パッセリーナ。すべてこの地域で伝統的に造られてきたものです。
それから、ココッチョラという品種で造るワインもあります。トレッビアーノの親戚のブドウですが、生産性が高くないのでいいワインにするにはコストがかかります。

トスカニー:そういえばトゥルムDOCの規定はとても厳しいそうですね。

トッロ:畑はトッロ村にないといけないですし、最高収量も低く抑えられています。理論上、トゥルムDOCの認定区域は150haですが、実際にブドウを造っているのは14ha程度です。

トスカニー:そんなに少ないのですか。

トッロ:ええ、それにフェウドアンティコはほとんどがセレクション畑で、80%が先ほど見た小さなかごで収穫しています。

トスカニー:セレクション畑ということは、カジョーロやアルディアーノなどハイクラスのワイン用のブドウもフェウドアンティコの畑ということもありますか?

トッロ:そうだったものもあります。でもトゥルムは収量が70ql/haですが、カジョーロは100~110ql/haなので、原料となるブドウは違います。

フェウドアンティコのロゼトスカニー:フェウドアンティコのロゼは面白いワインですね。外観が日本のにごり酒みたいです。

トッロ:そうですか?フェウドアンティコのロゼと白は2013年から有機として販売する予定です。
トゥルムDOCはとても狭いエリアに限定されていて、規定も厳しい。よりテロワールに密着したワインとなっています。フェウドアンティコは『スローワイン』からワイナリーとしての表彰を受けることになりました。

 

 

伝統的なテンドーネ仕立てトッロ:アブルッツォは伝統的に仕立てはテンドーネ仕立てで、これは一般的には量がたくさん造ることができるけど品質は劣ると思われています。でも、収量を管理さえすれば高い品質のブドウができます。トゥルムも赤はテンドーネ仕立てで造っています。

外に出るともう17時は回っていましたが、カンティーナには次から次へとブドウを載せたトラクターやトラックがやってきて、大渋滞になっていました。自分が育てたブドウを運んでくる農家の人たちが誰もが嬉しそう。1年で1番充実感のある時期なんだろうなーと思いました。

インタビューを終えて
今回、醸造所(カンティーナ)を見学してカンティーナトッロの規模の大きさと完璧な品質管理を実感しました。イタリアには数多くの協同組合がありますが、トッロはそのどこよりも高いレベルで運営されていることがわかりました。このレベルの高さがロッカヴェントーザに始まり、ヴァッレドーロ、アルディアーノ、そしてフラッグシップのカジョーロにいたるまで、圧倒的なコストパフォーマンスを作りだしているのです。

収穫時期と重なっていたので続々と農家の方が自分のブドウを運んでくるのを見ることができました。この方たちのおかげであの美味しいトッロのワインを飲むことができるのかと、本当に感謝、感謝、です。

収穫されたブドウの前で記念撮影
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