2016年6月6日 ヴァッレ デラカーテ社 ガエターナ ヤコノ氏
シチリア初のDOCG認定ワイン「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」を代表する造り手ヴァッレ デラカーテ |
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シチリア初のDOCG認定ワイン、「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」の中心地アカーテで6世代にわたってワイン造りを続けるヴァッレ デラカーテ。90年代から始まったシチリアワインブームで『濃厚フルボディ』というイメージがついたシチリアワインですが、近年、世界的にエレガントな味わいのスタイルが好まれる中、軽やかで上品なワインを造る品種「フラッパート」や、フラッパートとネロダーヴォラで造る「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」に注目が集まっています。その中心的ワイナリー「ヴァッレデラカーテ」の6代目オーナー、ガエターナ ヤコノ女史にお話を聞きました。 | ||||||||||
シチリア初のDOCG「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」の中心地アカーテはクラシコを名乗れる村のひとつ。 |
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ヴァッレデラカーテはシチリア南東部、ラグーザ県アカーテ村で6世代続くワイナリーです。ラグーザは世界遺産に登録されている建物がいくつもある観光地としても有名なところです。また、ミシュランの星付きレストランが4つあり、食事がおいしいことでも知られています。ラグザーノというチーズやトマトの産地としても有名です。町がとても美しいのもあって、イタリアの人気TVドラマ『モンタルバーノ警部(Il commissario Montalbano)』の舞台にもなっています。日本でも放映されているようなので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
チェラスオーロディヴィットリアにはクラシコのカテゴリーもあります。クラシコを名乗れるのはアカーテ村、ヴィットリア村、コミソ村、キアラモンテ グルフィ村、サンタ クローチェ カメリーナ村の全域と、カターニア県の一部です。 |
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1870年代はバルクでフランスへ輸出。1980年代から本格的に自社でボトリングを始める。1990年代後半の「シチリアワインルネッサンス」で濃厚フルボディのネロダーヴォラが一躍有名に。 |
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私たちの先代は、ずっとワインを造ってはいましたがもっぱらフランスへ樽で輸出をしていました。1870年代以降のことです。シチリアのワインはパキーノ、リポスト、マルサラ、スコリッティという港からフランスや北イタリアに次々と輸出されていました。だからシチリアという地名よりも、その港の名前のワインとして知られていたんです。エトナで造られていたワインは「リポスト港」から輸出されたので、エトナワインとしてではなく、リポストワインとして認識されていたんです。
1980年代になって私の父が自社でボトリングをするワイナリーを立ち上げました。その後、1990年に私もワイナリーの一員として働くようになって、父と一緒に本格的に高品質ワインを造ることをスタートしました。 シチリアワインが世界的に知られるようになったのは1990年代の後半です。「シチリアワインルネッサンス」とも言われますが、ネロダーヴォラを使った濃厚フルボディのモダンなワインが登場し、一気に有名になりました。そのおかげでシチリアに注目が集まったのですが、この「シチリア=濃厚フルボディ」というイメージが定着してしまったのも事実です。 ネロダーヴォラといっても、造られる場所によってその特徴は大きく異なります。南西部のメンフィあたりで造られるものはしっかりとした果実味がありますし、トラパニあたりはスパイシー。そしてヴィットリアではミネラリーなものになります。シチリアはひとつの州ですが面積がとても広く、ひとつの大陸と考えてもいいぐらい、多様性のある土地なのです。 |
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シチリアの多様性がシチリアワインの魅力。「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」はヴィットリアのフラッパートの特徴が生かされる |
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シチリアはギリシャ、ローマ、イスラム、スペインなど、古代から様々な民族が支配してきた歴史があります。また、海に囲まれ、内陸には高い山があり、土地の特徴もバラエティに富んでいます。土壌のタイプも非常に多く、当然ながら造られるワインの味わいも土地によって全く異なります。
近年人気の出てきたフラッパートは、特にラグーザが適しているといわれています。シチリア初のDOCG「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」はフラッパートとネロダーヴォラのブレンドで造られますが、ラグーザのフラッパートの特徴が生かされた味わいとなっています。 フラッパートは「スマイリングワイン」といわれます。甘さを感じる心地よい香りがあるので、そのアロマを感じるだけで自然に笑顔になるからなんです。 合わせる料理はマグロやカチョカヴァッロ、ボッタルガのパスタ、ピザなど。トマトソースで煮込んだ魚介類ともよく合います。魚料理が主体のレストランではフラッパートをよく使っていますね。 |
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フラッパートの個性がわからないと「チェラスオーロディヴィットリア」の本当の価値がわからない |
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「チェラスオーロディヴィットリア」を知らずに初めて飲んだ方は、その軽やかさに驚かれます。シチリアの、しかもDOCGだから勝手に濃厚フルボディなワインだと思っていた人もいるようです。最近も中国人のジャーナリストから「チェラスオーロ ディ ヴィットリアのように軽いワインがDOCGなんて考えられない。」というようなことを言われました(笑)。
フラッパートのように非常にエレガントで、どこか軽やかで、飲むと爽やかな風が吹いたように感じるワインはシチリアワインのこれまでのイメージとは異なります。でもこれがフラッパートの個性なんです。この素晴らしい個性を理解していないと、「チェラスオーロディヴィットリア」を正しくは評価できないのだと思います。 実はチェラスオーロディヴィットリアは長期熟成のポテンシャルのあるワインです。一見、エレガントで弱いイメージがありますが、実際にはブルゴーニュのような要素を持っているんです。最近も1996ヴィンテージを飲みましたが、ピンピンしていました。 今、チェラスオーロ ディ ヴィットリアDOCGとして生産されているワインの量は約100万本と、それほど多くはありません。造っているワイナリーは30社ほどありますが、メインは私たちを入れて5社ですね。 エレガントスタイルのワインが人気となってきた今、チェラスオーロ ディ ヴィットリアに取り組み始めたプラネタのような大手ワイナリーが増えてきました。 |
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7種類の土壌タイプに合わせたワイン造り |
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ヴァッレ デラカーテは100ヘクタールの畑があります。その畑は7種類の土壌タイプに分けられます。祖父の代の頃は経験で「この土地にはこのブドウが向いている」ということがわかっていたのですが、乳の代になってからは化学的に分析を行って区別するようになりました。シチリアの土壌の研究はアッティリオシェンツァ教授が中心になって行いました。
■TERRA BIANCA1(白色土壌) ビディス(シャルドネ) ■TERRA NERA CON CIOTTOLI DI COLORE BIANCO(白石混じりの黒色土壌) イルフラッパート(フラッパート) ■TERRA ROSSA(赤色土壌) チェラスオーロ ディ ヴィットリア(ネロダーヴォラ、フラッパート) ■TERRA NERA(黒色土壌) イルモロ(ネロダーヴォラ) ■TERRA OCRA(黄土色土壌) タネ(ネロダーヴォラ、シラー) ■TERRA ROSSO ARANCIO(オレンジがかった赤色土壌) |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
フラッパートやチェラスオーロ ディ ヴィットリアを飲むと、改めてシチリアは奥が深いと感じます。「飲むと笑顔になるでしょ」とガエターナさんがおっしゃるように、華やかで甘い香りに触れると自然に幸せな気持ちになってくるのだと思います。
ガエターナさんが強調されていたのが「ボトルに込められたメッセージ」。それぞれのワインにはその背景に歴史と文化があり、同じワインはないということ。同じフラッパートでも、他の地域で造られたものは自分たちのと全く違うと。 持続可能な農業「Agricoltura Sostenibile」にも取り組み、土地の守り人として次世代へと引き継ぐことの責任を意識してワイン造りをしているヴァッレ デラカーテ。ここでしか造られない「フラッパート」と「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」でシチリアワインの豊かさを感じていただければと思います。 |
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シチリア初のDOCG認定ワイン「チェラスオーロ ディ ヴィットリア」を代表する造り手ヴァッレ デラカーテ
2016/06/09