2016年6月14日 テヌーテ ルビーノ社 デ マウリ フランチェスコ氏
絶滅しかけた土着品種「ススマニエッロ」を復活させたプーリア新進気鋭の若手生産者「テヌーテ ルビーノ」 |
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プーリア州サレント半島のブリンディジを本拠地とするテヌーテ ルビーノの現オーナー、ルイジ ルビーノ氏は、父が1980 年代半ばに購入した農園を発展させ、1999年にテヌーテルビーノを立ち上げました。現在は500ヘクタールの広大な土地に畑を所有しています。スタッフの平均年齢40 歳以下というこの若い生産者は、「サレント半島=バルクワイン」のイメージから脱却するべく様々な試みを行っています。特に注目されているのが、ルイジが復活させた土着品種「スッスマニエッロ」から生まれる美しい酸とエレガントな味わいを持つワインです。ワイナリーの輸出部長で日本語が堪能なデ マウリ フランチェスコ氏にお話を聞きました。 | ||||||||||
テロワールを意識した高品質なサレント産ワイン |
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イタリアでは珍しく広い平野部を持つプーリア州は、温暖な気候に恵まれオリーヴや穀物、野菜や果実などを栽培する大農産地で、ワイン生産量も常にイタリアトップの座を争っています。私たちはサレント半島ブリンディジの海岸線近くに複数の畑を所有し、それぞれの畑が持つテロワールに合わせてブドウを栽培しています。海の影響を一番強く出る畑が 「イアッディコ・ジャンコーラ」。ここにはワイナリーの顔となるスッスマニエッロを植えています。ミネラリーな土壌と海からの影響で酸とミネラルがイキイキとしたワインが出来ます。「マルモレッレ」は少しだけ内陸に入った畑でネグロアマーロとマルヴァジア、シャルドネを栽培しています。石灰質を多く含む土壌でレバンテと呼ばれる局地風の影響によりやや涼しい気候となっています。「プンタ アークイラ」畑は海抜100 メートル地帯に広がる痩せた土地で、石ころが多く混じります。力強く、酸が強い最高のプリミティーヴォが産まれてくる場所です。そのテロワールを把握し、食事に合うドライで洗練されたワイン造りを行っています。 |
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プリミティーヴォの畑から発掘された3500年前の古代遺跡 |
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テヌーテ ルビーノのラベルに描かれた紋章は今から3500年前、古代ローマ以前にワイン造りをしていたヴィセルノ家のもので、ルビーノがプリミティーヴォを植えている畑からヴィセルノ家の古代遺跡と紋章が偶然に発掘され、大変話題となりました。つまり3500年も前からここでブドウが栽培され、今は私たちがワインを造っています。その畑で造られるワインを「ヴィセルノ」として年間30000本リリースしています。 | ||||||||||
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しっかりとしたアイデンティティを持ったワイン造りへ |
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1980年代のサレントは大量生産のバルクワインが中心でした。野菜や麦を造っていた農家の私たちもブドウを栽培していました。私たちが育てたブドウの品質が年々上がってきて、次第に北イタリアで高値で買われるようになりました。そうしたことから私たちの自身の名前でワインを造ろうと思いました。それから数年後、ヴィニタリーに初めて参加したんですが、興味をもってくれる人がとても少なかったです。それには、一般的にプーリアのワインが「大量生産のワイン」という認識があったからだと思います。ルイジ氏は「今、プーリアに必要なのは市場における価格戦略でも、国際的に通用するスタイルでもない。『これこそがプーリアのワインだ』というアイデンティティが必要」と捉え、「プーリア ベスト ワイン」という組合を造りました。ルイジが会長職に就き、他の生産者と一緒に、高品質なプーリアワインの発展に取り組んでいます。 | ||||||||||
絶滅の危機に瀕していた「スッスマニエッロ」の復興 |
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今、特に注目されているのが、ルイジが復活させた土着品種「スッスマニエッロ」です。早熟で栽培の難しい黒ブドウ品種スッスマニエッロ。栽培に非常に手がかかり、樹齢15年をピークに収量がかなり落ちる事が原因で、多産を求められていた80年代のサレントでは見向きもされなくなってしまい、一時期絶滅の危機に瀕していました。ルイジは購入した畑に放棄されていた樹齢75年のスッスマニエッロから根気強くマッサールセレクション(より良い樹だけ残していく方法)を行い、ブドウを少しずつ増やしていくことに成功します。
温暖なプーリアでは非常に珍しい10月初旬の収穫 プーリアワイン全体の僅か0.02%!今までのプーリアワインのイメージを覆す美しい酸を感じるエレガントなスッスマニエッロ |
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女性の為のプーリアワインイベント |
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比較的新しい生産者ですが、農業においてサレントでは昔から女性は常に重要な役割を果たしてきたことに敬意を表し、8月からの各畑で行われるブドウの収穫は、すべて女性の手によってデリケートに行ないます。男性はブドウを運ぶ役割を担います
例年9月には「ヴェンデンミア デッレ ドンネ」(女性達の収穫祭)が行われ、収穫体験を行った後、プーリアの民族音楽である「ピッチカ」やカンツォーネを聞きながら、畑にテーブルを並べ食卓を囲み、目の前で出来立てのモッツアレラチーズをちぎって食べ、賑やかなイベントと共に豊穣の秋を祝います。女性の為のプーリアワインのイベントに毎年、イタリア各地からテレビや雑誌の取材陣が訪れ、プーリアワインのアピールに一役を買っています。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
日本語堪能なフランチェスコ氏の軽快な説明で土着品種スッスマニエッロについて知るとてもいい機会でした。比較的新しいワイナリーで、高品質なプーリアワインを目指していますが、奇をてらわず昔からある土着品種のポテンシャルを見事に引き出す堅実なワイン造りです。南の土着品種のおおらかで良い部分と丁寧に醸造された現代的で滑らかな飲み心地がバランス良く共存していています。他には見られないエレガンス溢れるプーリアワインです。食事との幅広い相性の良さも感じさせます。スッスマニエッロで瓶内2次醗酵スプマンテを造る等、独創的な面もありますが、栽培しているのは伝統的土着のブドウ品種です。伝統と革新が息づく、今後ますます楽しみなワイナリーと思いました。 | ||||||||||
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絶滅しかけた土着品種「ススマニエッロ」を復活させたプーリア新進気鋭の若手生産者「テヌーテ ルビーノ」
2016/06/21