テヌータ サンアントニオによる新世代アマローネとSO2無添加プロジェクト「テロス」

2016/11/08
突撃インタビュー
 
2016年10月31日 テヌータ サンアントニオ社 アルマンド カスタニェーディ氏

テヌータ サンアントニオによる新世代アマローネとSO2無添加プロジェクト「テロス」

テヌータサンアントニオのアルマンド氏と
テヌータ サンアントニオはヴェネト州の生産者協同組合の設立者を父に持つ4人の兄弟が立ち上げたワイナリーです。古い慣習にとらわれず、品質向上のための研究や工夫、こだわりを続け、兄弟4人がそれぞれの役割を果たして人気実力ともにヴェネト州のトップワイナリーに成長させました。2009年からは新たにSO2無添加に取り組み、「テロスプロジェクト」として完成。彼らの看板商品の「ソアーヴェ モンテチェリアーニ」と合わせてオーナーのひとり、アルマンド カスタニェーディ氏から詳しくお聞きしました。

生産者協同組合を設立した父親のもとで子供のころから畑仕事を手伝ってきた4人兄弟

テヌータサンアントニオの4兄弟テヌータサンアントニオは1995年からワイン造りを始めたワイナリーです。アントニオというのは私たち4人兄弟の父親の名前であり、また、所有している畑の中に聖アントニオに捧げる祭壇があったことからこの名前になりました。

父は地元の生産者協同組合を設立したメンバーの一人で、昔からブドウを栽培していました。長年、ブドウ造りをしていましたが協同組合に売るだけでワインを造ることはありませんでした。私たちはその父のそばで子供のころから畑仕事を手伝っていて、いつしか自分たちが造ったブドウで自分たちのワインを造りたいと思うようになったのです。

私たちの思いは最初は父に反対されました。1990年から5年間、研究を重ねてようやく父の許可を取り、自分たちの名前でワインを造ることをスタートしました。4人の役割は、4男のマッシモが畑仕事、二男のティツィアーノが国内の販売、三男のパオロが醸造、そして長男の私アルマンドが国外の販売をしています。

ヴェネト州の二大生産地「ヴァルポリチェッラ」地区と「ソアーヴェ」地区に畑を所有。それぞれの土壌を生かしたワイン造りを行う

所有畑は約100ヘクタールです。そのうち70ヘクタールがヴァルポリチェッラ地区、30ヘクタールがソアーヴェ地区にあります。ヴァルポリチェッラの畑はモンティガルビというエリア、ソアーヴェ地区はモンテチェリアーニというエリアに畑があります。

モンティガルビの「ガルビ」とは「やせている」という意味で、土壌は石灰質になります。ここでコルヴィーナ、コルヴィノーネ、オセレータ、ロンディネッラ、クロアティーニを造っています。

モンテチェリアーニの「チェリアーニ」は、昔この土地を所有していた一族の名前です。ここは火山性土壌と粘土質土壌で、ガルガネガ、トレッビアーノ、シャルドネを栽培しています。

テヌータサンアントニオの畑の風景
 

SO2無添加「テロスプロジェクト」。「テロスTELOS」とは「目標」という意味の古代ギリシャ語

「テロス」は2009年に始めたSO2無添加ワインの新しいプロジェクトです。ワインの保存剤として使われるSO2(二酸化硫黄)の添加を行わず、化学的なことを一切使わないワインを提案したいという思いで研究機関との共同プロジェクトとして始めました。「テロス」を造るために新しい畑を準備するということではなく、これまでのサンアントニオの畑のブドウを使って、テロスのワインを造っています。

「テロス(TELOS)」とは、古代ギリシャ語で「到達するべき目的。すなわち目標」を意味する言葉です。そして、それぞれの文字に意味を込めました。

T=TERRITORIO(テリトリー、土地)
E=ENERGIA(エネルギー)
L=LAVORO(仕事)
O=OPERATIVITA’(影響、作用)
S=SOLE(太陽)

全てのアマローネは新樽100%でほぼトノー(500リットル)で熟成。新樽はアマローネをよりきれいな味わいにする

テヌータサンアントニオの熟成庫テロスのアマローネも含め、私たちのアマローネはすべて新樽100%で造っています。そして大きさは大部分がトノー(500リットル)になります。毎年だいたい350樽購入しています。新樽を使う理由は、よりきれいなワインを造るためです。新しい樽は清潔感をワインに与えますし、より長い熟成も可能にしています。

今の傾向として、少し前のアマローネに比べ、現在のアマローネはより飲みやすいものになっているかと思います。昔は陰干しの期間を長くしてより乾燥させたブドウで造っていました。そうすることで当時の消費者が求めていた煮詰めたフルーツのような味わいが出せたんです。

陰干し期間はヴァルポリチェッラの協会が定めていて、陰干しを終えて搾り始める時期を規定しています。それよりも遅く搾り始めるのは問題ありません。いずれにしても陰干しは温度を上げずにゆっくりと行うことが大切です。長すぎたり、急ぎすぎたりするとアルコール度数をあげてしまうことになります。

最良の条件の単一畑で造るサンアントニオの看板ソアーヴェ
モンテ チェリアーニ ソアーヴェ 2014
モンテ チェリアーニ ソアーヴェ 2014


モンテチェリアーニは私たちの畑の中で最良の単一畑です。ガルガネガ100%で造っているソアーヴェになります。ガルガネガは完熟すると酸が減ってしまう特性のあるブドウです。そのため、収穫を2回に分けていて、まずしっかりとした酸がある状態のタイミングで収穫し、続いて完熟したタイミングで収穫します。それぞれステンレスタンクで醸造を行い、翌年の春にブレンドします。収穫の時期をずらしたブドウを混ぜることで、フレッシュな酸があると同時に豊かでリッチな果実味も存在する複雑で厚みのある味わいになります。

モンテチェリアーニは一般的なソアーヴェに比べて飲み頃になるのが遅めです。これは2014ヴィンテージですが、今がちょうど飲み頃の時期になってきたころです。そして5年ぐらい熟成させると果実味が抑えられ、ミネラル感やオイリーさが表面に出てきます。これがクラシコ地区の
ソアーヴェとの違いです。クラシコ地区は石灰分が強いので若い時期からオイリーなニュアンスが出てきますが、チェリアーニは時間がかかります。

試飲コメント:イキイキとした酸と熟した果実の香りが華やかに広がります。濃密さとボリュームを感じる豊かな果実味と心地よいミネラルのバランスがとれた、飲みごたえ十分の味わい。

陰干しカベルネソーヴィニョンと陰干しをしないヴァルポリチェッラのブレンドで造る新しい個性的赤
スポンサ ヴェロネーゼ 2013
スポンサ ヴェロネーゼ 2013


スポンサは、陰干しをしたカベルネソーヴィニョンをヴァルポリチェッラにブレンドした新しいワインです。カベルネソーヴィニョンはヴェローナ周辺で造ると青っぽさがどうしても出てしまうので陰干しをして熟成感と凝縮感が加わるようにしました。「スポンサ」はヴェネト州の方言で「休みを取る」という意味です。カベルネを陰干し、つまり寝かせているという意味を込めました。
試飲コメント:コーヒーを焦がしたようなコクのあるアロマ。そして甘く心地よいチェリーのニュアンスが香りからも味わいからも感じられます。濃厚な味わいながらも軽やかさを感じる飲み心地の良さ。

ソアーヴェとして認められなかった驚きの白!SO2無添加のガルガネガのピュアな個性がさく裂!
サンアントニオ テロス イル ビアンコ 2015
サンアントニオ テロス イル ビアンコ 2015


テロスプロジェクトで造る白ワインです。生産本数は約50000本です。ガルガネガ80%、シャルドネ20%で、ソアーヴェとしてリリースをするつもりで造りました。しかし、ソアーヴェとしての認定を受けることができませんでした。というのも、試験官に味と香りがソアーヴェの定義とは違うと判断されてしまったからです。

テロスはSO2無添加、化学的なものを一切排除、ということで酸化防止剤には木の皮や緑茶を用いています。こうすることでガルガネガ本来のアロマを引き出すことができたわけですが、それがソアーヴェとは違うという判断になってしまいました。

酸化防止の役割として発酵を促す酵母が働いています。アルコール発酵後、澱と一緒にしばらく置いておきます。タンクから移し替える際も澱引きは行っていません。白ワインは赤ワインに比べると酸化しやすいため、この方法でどの程度ワインがもつのか最初はわかりませんでしたが、2016年のヴィーニタリでテロスビアンコの垂直試飲をしたところ2011と2012が一番評判がよかったんです。それで、この方法でも十分にやっていけるという自信になりました。

このテロスの経験によって、これまでのテヌータサンアントニオのワインについても発酵の際にSO2を添加することをやめ、樽の移し替えの工程から若干量添加することにしました。このおかげでアロマに果実味が前面に出るようになりました。特に赤ワインは果実味がよりはっきりと出るようになりました。

試飲コメント:圧倒されるほどのピュアで力強い果実の香りが襲う。柑橘類やハーブのニュアンスも感じる、とても魅力的なアロマ。フレッシュで豊かな果実味と心地よい清涼感が共存。これまでに飲んだことのないガルガーネガ。

SO2無添加で造るヴァルポリチェッラ。ピュアな果実と心地よいコクが調和した美しい味わい
サンアントニオ テロス イル ロッソ 2013
サンアントニオ テロス イル ロッソ 2013


これはヴァルポリチェッラDOCになります。ヴァルポリチェッラの使う5つのブドウ、コルヴィーナ、コルヴィーナグロッソ、コルディネッラ、クロアティーナ、オゼレータをブレンドしています。リパッソ製法ではありませんが、ブドウは遅摘みしています。1年間オーク樽で熟成させています。生産本数は約20000本です。

私たちのヴァルポリチェッラにはモリナーラは使っていません。モリナーラは色が淡く、ロゼっぽいので使うことをやめました。でも生産性の高いブドウなのでバルドリーノには向いています。

試飲コメント:ピュアな赤い果実のニュアンスとドライフラワーを思わせる上品なアロマ。きれいで厚みのある果実感のまろやかな味わい。心
地よいコクで重たさを感じさせないきれいな印象。

テーマは「食事に合わせやすく、飲み心地の良いアマローネ」
サンアントニオ テロス アマローネ 2011
サンアントニオ テロス アマローネ 2011


私たちのアマローネは、食事に合わせやすく、飲み心地がいいというポリシーで造っています。そしてこのテロスはさらにフレッシュさを感じさせるアマローネになっています。一般的なアマローネに比べて香りにもフレッシュな印象があり、あまりに飲み心地が良いため「陰干しで
造っているのか?」と聞いてくる人もいます(笑)。もちろん、アマローネの規定通りに造っています。

陰干し期間は12月の中旬ぐらいまでの100日間ほどです。500リットルの木樽(新樽)で15ヶ月間で、他のアマローネに比べると少し短いです。

テロスは3種類のワインで、イルビアンコとイルロッソは白色のラベルですが、アマローネは特別な存在のワインということで濃い色のラベルを使っています。テロスの中ではこれが一番少なくて、約10000本の生産本数になります。

試飲コメント:説明の通り、とてもクリーンで上品。濃密で複雑なアロマとなめらかな舌触りで、ピュアな果実味とミネラル、スパイシーなニュアンスが徐々に広がっていきます。アマローネならではの心地よい甘みが邪魔することなく溶け込んでいます。
インタビューを終えて
テヌータ サンアントニオのワインは高品質でお値段が手頃で飲み心地が良い、ということで人気が高いのですが、このテロスの登場でさらに注目が集まると実際に飲んで実感しました。

より自然でナチュラルなものを提供したい、という思いからスタートしたテロス。SO2無添加にすることで本来持っている果実のピュアな部分がとてもきれいにワインから感じられ、新しい驚きを覚えました。そのため、ソアーヴェにしたかったのにソアーヴェと認められなかったというオチもあるのですが、個人的にはソアーヴェにはソアーヴェの、このテロスビアンコにはテロスビアンコの確固とした個性があると感じました。

そしてアマローネの飲み心地の良さ。「どっしり濃密のアマローネが好き」という方には物足りないかもしれませんが、自然な造りが生み出した美しくクリーンなアマローネにはこれにしかない魅力があります。3本のテロス、ぜひお試しください。

テヌータサンアントニオのアルマンド氏とトスカニースタッフ
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