2017年11月16日 バローネ ピッツィーニ社シルヴァーノ ブレッシャニーニ氏
元ミシュラン2つ星シェフが「有機栽培」にこだわりぬいて造る
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1870年に設立されたフランチャコルタ最古のワイナリー「バローネ ピッツィーニ」。オーナーの高齢により、1992年にワイナリーを引き継いだシルヴァーノ ブレッシャニーニ氏はミシュラン2つ星「アンティカ オステリア デル ポンテ」で活躍した元スターシェフ。彼がワイナリーの改革を行い、まず取り組んだのは「有機栽培によるフランチャコルタ」を造る事。エリアで先駆けて有機栽培を実践、その手法を他の生産者にも自らシェアするほど。その活動により現在フランチャコルタエリアの約70%が有機栽培の畑で占められるという、他に類を見ない素晴らしいDOCGエリアとなりました。スターシェフが料理において徹底的に「素材」に拘り抜くように、ブレッシャニーニ氏は「有機栽培のブドウ」に徹底的にこだわり、今や『スローワイン』『ガンベロロッソ』最高賞を連発する目を見張るレベルのワインを毎年のように造りあげています。彼がマルケ州で造る「ピエヴェルタ」社のヴェルディッキオ「サンパオロ リゼルヴァ」がイタリアのワイン専門誌『チヴィリタ デル ベーレ』 で、サッシカイア、ジュリオフェッラーリ、グラヴネルと並び2017年の年間TOP7に選ばれています。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで注目を集める「バローネピッツィーニ」社と「ピエヴァルタ」社のオーナー、シルヴァーノ ブレッシャニーニ氏にお話を聞きました。 | ||||||||||
1870年からロンバルディア州でワイン造りの歴史を持つ「バローネ ピッツィーニ」 |
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1870年からロンバルディア州でワイン造りの歴史を持つ「バローネ ピッツィーニ」 バローネ ピッツィーニはロンバルディア州で1870年からロンバルディア州で歴史を持つワインメーカーです。農園を運営していたジュリオ ピッツィーニ男爵がフランチャコルタを造り始めたのは1971年の事でそれ以来、フランチャコルタのワイン生産発展に重要な役割を果たしてきました。ジュリオ ピッツィーニ男爵の高齢により、1992年ワイナリーを売却後、地元出身の3人の共同経営者が引きつぎ、私が取締役兼オーナーに就任しました。土地への愛情とチャレンジ精神を持ち、就任後1994年に初めて収穫を行いました。その4年後、1998年に有機栽培を始めました。2001年に全ての畑において有機認証を取得しました。 「土壌を豊かにする」為に有機栽培を採用 フランチャコルタには複数のヴィンテージを使用し長期の樽熟成を設けますので実質ボトリングされたワインの数とその年の生産量が必ずしもイコールではありません。私たちの生産規模数として、昨年2016年は28万8000本のフランチャコルタの販売実績があります。 |
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ミシュラン2つ星「アンティカ オステリア デル ポンテ」でシェフ兼ソムリエとして活躍 |
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Q.ワイン造りを始める前は何をされていたのですか?
私はワイナリーを購入する1年前の1991年までミラノのあるイタリアのミシュラン2つ星レストラン「アンティカ オステリア デル ポンテ」でシェフ兼アシスタントソムリエをしていました。ドメーヌ ド ラ ロマネコンティ社のオーナー、ヴィレーヌ氏も私のレストランに来てワインを楽しんで下さいました。これがその時のヴィレーヌ氏との写真です。 Q.2つ星のリストランテでシェフとソムリエを兼務していたのは凄い事ですね。シェフ、ソムリエ時代に好きだったワインはありますか? 勤めていた1985年当時はシャンパーニュのクリュッグが大好きでした。当時はまだ若かったから、完成された味わいのシャンパーニュを飲む機会に恵まれとても良い経験でした。今でも個人的にはやはりスパークリングワインが好きですね。次に白、その次が赤でしょうか。ロゼはスパークリングなら飲みますよ(笑) |
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フランチャコルタエリアで先駆けて有機栽培を実践。そのノウハウを他生産者ともシェアしていく |
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2006年にカンティーナをリニューアル。環境に配慮しエネルギーを使わないような造りに転換 「カンティーナは私達の哲学が盛りこまれたシンボル的存在」 Q.55ヘクタールの畑を有機栽培へ転換するのは大変だったのではありませんか? そうですね。今から約20年前、私達は広い畑の全てを有機栽培に転換しました。有機認証を取るのは非常に大変でした。その当時、有機栽培でフランチャコルタを造ろうという生産者が私達以外ほとんどいませんでしたよ。他のワイナリーの友人からも「なぜそんな事をしているのか?」と不思議な顔をされたものです(笑)。 フランチャコルタエリアで先駆けて有機栽培を実践。そのノウハウを他生産者ともシェアしていく 「より良い品質のワインを造る」為の有機栽培 Q.(試飲をしながら)一般的なフランチャコルタに感じるスタイルとは異なるドライな味わいですね 味わいもそうですが、私達は有機栽培や除草剤を使わないサステナブルな活動を行っています。根底にあるのは「より良い品質のワインを造る」という事です。 「収穫とブドウのプレス」。これでワインの品質の8割が決まる 「有機栽培を通して品質を上げようと思ったら、最低でも10年はかかる」 二酸化炭素排出削減で「UNI ISO14064-1:2006EA 01-03」認証取得 バックラベルにワイン情報を掲載 Q.2017年はイタリア国内全体で、難しいヴィンテージだったと聞いていますが、バローネピッツィーニではどうでしたか? ある意味、収獲は簡単でしたよ、、なにせ雹害で厳しい年で収量が40%減ってしまったからね!なにせ収量が少なすぎて・・・。これ程の被害があったのは1954年以来ですね。こんな年は厳しい年はもう最後にして欲しいですね。 |
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マルケ州カステッリ デイ イエージで有機栽培を行う「ピアヴェルタ」 |
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マルケ州カステッリ デイ イエージで有機栽培を行う「ピアヴェルタ」 畑は1970年代からの歴史があり、トップキュヴェである「サン パオロ」は1992年に栽培が開始されました。私たちは購入した当初から100%オーガニック栽培に徹していて2004年には有機認証団体「デメテール」の認証を取りました。収穫は全て手摘み、農薬や化学肥料を使わない栽培、地中には牛の角に牛糞を詰めたプレパラシオン(ビオディナミ特有の転園の調合剤)行っています。2016ヴィンテージのワインからは新たに「ヴィーガン」(Vegan)の有機認証を得ています。野生酵母のみを使い醗酵を行っています。 フランチャコルタから車で4時間位でピエヴァルタには着きますので、あまり遠い距離ではないと思っています。通常私はフランチャコルタにいるので、マルケのカンティーナにはエステートマネージャーであるアレッサンドロフェニーノ氏がその栽培~醸造までを担当しています。 Q.なぜ州の異なるマルケで、スパークリングではないヴェルディッキオの白ワインを造ろうと思ったのですか? 偉大な土着品種「ヴェルディッキオ」に着目 私も「アンティカ オステリア デル ポンテ」でアシスタントソムリエをしていた頃からヴェルディッキオは目を付けていた土着品種であり、個人的にもヴェルディッキオが大好きだったからです。 マルケのワイナリーからしてみれば、私達は異郷人のような存在だったでしょうね。違う州から来た私達だからこそ今までマルケでは見られなかったような新しいアプローチによる農法(ビオディナミ)に取り組みました。それにより、ストラクチャーがありながらもより純度が高く、エレガントな味わいのワインを造る事が出来ました。 フランチャコルタで学んだ方式「除梗をせずにブドウをソフトプレス」 ブドウの粒の中心部に糖度、酸味、ミネラルの要素が詰まっています。この部分の果汁こそ私達が欲しい部分です。プレスしたブドウの最後の方はポリフェノールが残り、苦味やヴェジタルなニュアンスが出来があがるワインに残ってきます。そのような最後にプレスしたワインは私達の求めるクオリティではありませんので使いません。 Q.プレスジュースが少ないと、収量はものすごく少なりなりますね? ジュースは60%の搾汁率に留めていて、ワインとなる時には55%になります。ですので、本質的には現在の20%以上の生産量を増やす事が出来ますが、行いません。またブドウを傷つけてしまう恐れがあるので、機械では収穫しません。全て手摘みで行い、小さなケースに小分けに入れてブドウにダメージを与えないようにしてカンティーナに運んでいます。 |
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サッシカイア、グラヴネルと並びイタリア年間最優秀ワイン7本に選出!「サンパオロ リゼルヴァ」 |
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低収量のトップキュヴェ「サンパオロ リゼルヴァ」 トップキュヴェの「サンパオロ リゼルヴァ」は特殊な土壌です。粘土凝灰岩土壌がワインに個性と力強さを与えています。ステンレスタンクと野生酵母で醗酵、ステンレスタンクの中で18カ月間シュールリーにて熟成させます。口の中での香りの広がり方に特徴があります。ラベルの裏に土壌やブドウの植樹年、標高、収穫日、収量、生産量の情報が記されています。2012年は適切な収穫が早く、1ヘクタール当たり35ヘクトリットルの収量でした。(ヴェルディッキオとしては非常に収量が少ない) サッシカイア、グラヴネルと並びイタリア年間最優秀ワイン7本に選出! 『ガンベロロッソ』『スローワイン』で最高賞獲得 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
まず、ブレッシャニーニ氏の経歴を聞いて驚きました。ミシュラン2つ星の名店「アンティカ オステリア デル ポンテ」でシェフとして活躍されていたからです。同店は現在東京丸ビル内にも支店を持つ、イタリアでも名門中の名門リストランテです。
ブレッシャニーニ氏が有機栽培の「ブドウ」に強い拘りをみせる話を聞きながら、野菜や魚、お肉等、徹底的に「素材」にこだわりぬく一流の料理人の姿が重なり、モノづくりを極めたブレッシャニーニ氏ならでは情熱的なお話が聞けました。 2015年12月からフランチャコルタ協会の副会長として、べラヴィスタのヴィットリオモレッティ会長と共にフランチャコルタの品質、認知度の向上の為に献身的に活動を続けています。 試飲した中でもフランチャコルタロゼは目を見張る美しさ。まるで完成されたひとつの料理のように、純度の高い果実感、彫りの深いミネラル、伸びやかな酸味が見事なハーモニーを奏でていました。マルケ州で造る極上ヴェルディッキオ「サンパオロリゼルヴァ」の軽やかさと深みが交錯する緻密な味わいは思わず「ハッ」とさせられる清らかさに満ちていて、「どちらもワインはブレッシャニーニ氏が造ったものだ」と気づかされる純度の高さとエレガンス溢れる美しく繊細なタッチを感じさせてくれる白眉の出来映えでした。 ワインが大好きな星付きシェフが素材と真剣に向き合い造り上げた他を寄せ付けない純度の高さと清らかな厚み、煌めくような酸味、ミネラルの旨みが詰まった極上のフランチャコルタとヴェルディッキオ。特別なひと時に楽しみたい優雅さを感じさせてくれるワインです。 |
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エレガンスに満ちた有機栽培フランチャコルタ「バローネ ピッツィーニ」
2017/12/01