2018年3月13日 エミディオ ペペ社 キアラ ぺぺさん
世界中から賞賛されるモンテプルチアーノ ダブルッツォの王者!偉大なカリスマ「エミディオペペ」 |
||||||||||
エミディオペペは「モンテプルチアーノ ダブルッツォの王者として世界中のワイン生産者、愛好家から尊敬、賞賛されるイタリアワイン界におけるカリスマ的存在です。1964年の創業時から木樽を使わず、瓶内で長期熟成させる方式を変わらず続けています。飲むと圧倒的な熟成のポテンシャルを持つブドウの力強い表現があり、1980年代のワインですら複雑味とともに酸味、タンニンが鮮烈でさらに長い生命力を伺わせます。カンティーナから少しずつリリースされるバックヴィンテージは世界中の愛好家垂涎のワインとして瞬く間に特定の顧客に流れていきます。今回来日したエミディオペペ氏のお孫さんで、輸出マネージャーであるキアラ ペペさんに偉大なエミディオペペの歴史についてお話を聞きました。 | ||||||||||
創業1964年から変わらず貫かれる手作業による伝統的ワイン造り |
||||||||||
創業1964年から変わらず貫かれる手作業による伝統的ワイン造り 私達はアブルッツォ州北部トラーノ ヌオーヴォで15ヘクタール程の畑でワインを造る小さなカンティーナです。祖父エミディオの考え方として「少ない生産量で全て手作業に拘ったワイン造りをやっていこう」という考えの下にワイナリーがあります。 「生産量が少ない」という事は畑での栽培からカンティーナの瓶詰め作業に至るまで、全ての段階において自分で直接的に管理する事が出来るからです。 これは創業1964年から変わらず貫かれているフィロソフィーであり、ワインの製造方法も全く変わっていません。現在でも私達はエミディオが最初に始めた造り方でブドウ栽培、ワイン造りを行っています。祖父のエミディオ、祖母のローザはカンティーナで出荷するワインのデカンタージュをしています。その娘で醸造担当のソフィア、経理部分の仕事を私の母ダニエラが担当しています。 アブルッツォで発達したとても古い仕立て法「ペルゴラ」 創業時からずっと全ての畑でビオディナミ農法を採用 |
||||||||||
白ブドウは「足で踏む」古典的な搾汁法を今も行う |
||||||||||
白ブドウは「足で踏む」古典的な搾汁法を今も行う まず白ブドウ「トレッビアーノ」と「ぺコリーノ」についてお話します。トレッビアーノの畑は4ヘクタール、ぺコリーノの畑は1ヘクタールです。全て手摘みで収穫されます。収穫された白ブドウは足で踏み、搾汁します。この木桶は一回に100キロのブドウを入れる事が出来ます。そして約40分間ブドウを踏み続けるんです。 Q.この木桶は何台あるのですか? 1台しかありません。(一同驚く!)この1台の木桶で全ての白ワインを造ります。この木桶は約1.5×2.5メートルの大きさで40分かけて丁度ブドウが搾汁される計算で造られた大きさなんです。 収穫期は1日に12回くらい踏みますね。他から人を集めてブドウ収獲を手伝ってくれる方がいますが、この桶に入って踏めるのは私達の家族だけに限られています。とても重要な作業なので家族の仕事となっています。収穫したブドウはその日の内に搾汁しなければなりません。収穫したブドウは一晩超す事はありません。だいたい1日に1ヘクタール分位踏みます。ずっと続くと飽きてくるので陽気な歌を歌いながら楽しみながら踏んでいますよ(笑)エミディオも85歳ですが、とても元気ですよ。 「自然とソフトプレスとなり果皮の部分の望ましい要素がしっかりと果汁に移ってくれる」 Q.エミディオペペさんは何歳の時にワイン造りを始めたのですか? もう一人の巨匠「エドアルド ヴァレンティーニ」と殆ど毎日やり取りする仲 Q.その頃は安価で気軽なアブルッツォワインが時代の潮流だったと思いますが? 確かにそうですね。しかしエミディオとエドアルドの2人は違っていました。その流行や一般的だったワイン造りとは全く逆の事を行っていたと思います。 カンティーナを始めた頃は質の高いワイン造りのフィロソフィーを理解してもらえない事がとても多かったです。なにせ一般的なワイン造りとは全く逆の発想でワインを造っていたので。ですが、2人とも自分たちのアイデアが正しいと信じていたので、努力し合い、2人で話し合いをしてお互いのワイン造りを高めていきました。アブルッツォでクオリティの高いワインを造るという事は、つまりは沢山のワインは要らないし、少量でも良いからクオリティが高いものでなければならないという信念で2人とも続けて来ました。 |
||||||||||
|
||||||||||
出荷されるボトルを一本一本澱引きする気の遠くなるような作業 |
||||||||||
「セメントタンクは外からの影響を受けにくい一番ニュートラルな容器」 大昔はセメントタンクが一般的に使われていましたが、木樽やステンレスタンクを使ったワインの流行が来ました。今はまた少し戻ってきてセメントタンクを使う生産者が増えています。エミディオは創業当時から全く造りを変えず、セメントタンクだけを使い続けています。 多種多様な野生酵母醗酵でワインに良い影響を与える Q.白と赤では醗酵期間は異なりますか? 白も赤も醗酵期間は同じです。それぞれの酵母が特有の香りを持っています。つまり、少なくとも150種類の異なる香りが白も赤もワインに溶け込んでいると言えますね。 出荷されるボトルを一本一本澱引きする気の遠くなるような作業 オールドヴィンテージのエミディオペペに澱が少ない理由 オールドヴィンテージのエミディオペペのワインに澱が少ないのはそうした理由からです。その際にブショネのチェック、ヴィンテージ通りに正しく熟成したか香りをチェックしています。 コルクに出荷ヴィンテージを刻印 Q.家族で一本一本デカンタージュまで行うのは本当に気の遠くなるような作業ですね。セラーにストックはどの位あるのですか? 熟成庫のストックは35万本です。毎年平均して8万5000~9万本のワインが造られます。毎年すぐにはリリースしないで、少なくとも半分は保管します。すぐには全く販売しないヴィンテージもあります。どのタイミングでリリースするかを注意深く見ながら出荷しています。 「モンテプルチアーノという品種は一番良い状態を表現するのにとても長い時間がかかる」 Q.創業時からワインを寝かせて出荷しようと考えていたのですか? 面白い話なんですが、エミディオは創業当時はお金がなかったので、自宅でワインを造っていました。お金が少しずつ貯まり、最初に造ったのは醸造所ではなく熟成庫だったのです。その後、1970年代に入ってから醸造所を造りました。普通のワイナリーでは醸造所が先と考えるのでしょうが(笑) その当時からやはりモンテプルチアーノの熟成力に目を向けていたと思います。エミディオペペ設立50周年記念に1964年から2010年まで垂直試飲を行いました。エミディオは1964年が一番美味しいと言っていました。そして50年後の100周年記念では恐らく2010年が一番良くなるだろうとも言っていました。 Q.昨日試飲会で貴重な1983年を試飲させて頂きました。1960年代のオールドヴィンテージとはやはり色の違いがありますか? 大体30年程で色が褪せてきますが、それ以後はあまり変わらないと思います。タンニンがとても豊富な品種である事、酒石酸が高い事が言えるでしょう。この2つがワインを長く保つ事が出来る要因です。 |
||||||||||
「海風を受けるトレッビアーノ、山風を受けるモンテプルチアーノ」 |
||||||||||
海風を受けるトレッビアーノ、山風を受けるモンテプルチアーノ トレッビアーノが南東向き、モンテプルチアーノが南西向き Q.エミディオさんの哲学や信念は誰からか影響を受けたものですか? エミディオは本能的な人物で、もしそのような質問があったら「自分で解っていたよ」と答えるでしょうね(笑)。ワイン造りを始めた時、他にエミディオのようなモンテプルチアーノの長期熟成させている人はエドアルド ヴァレンティーニ以外いなかったので。エミディオの自伝本のプロローグにエドアルド ヴァレンティーニの息子、フランチェスコ パオロ ヴァレンティーニ氏が次のようなコメントを寄せています。 「ひとつひとつの作業が手作業でまさに「職人」である事に気づかされた」 |
||||||||||
「ワインの中にその年の自然、気候を表現する事が大切」 |
||||||||||
Q.ペコリーノはいつから栽培していますか?
ペコリーノは2006年に植樹した新しい畑で2010年が初ヴィンテージです。私達の所有する畑の中で唯一北向きの畑です。一般的にペコリーノを使ったワインは軽やかでアペリティフ的なワインが多いですが、エミディオは「ペコリーノは長期熟成にも耐える偉大なワインである」と認識した事もあり、造る事になりました。 トレッビアーノと違い、ペコリーノはアロマティックで香り高い品種です。畑が1ヘクタールしかないので少量生産で、毎年半分はストックに廻しています。元々ペコリーノは冷涼な山間で栽培されていた品種で、出来るだけ日照量を避けたい事もあり、私たちは北向きの畑にブドウを植えています。 Q.エミディオペペを楽しむにはどのくらい前に抜栓したら良いのでしょうか?ヴィンテージの個性はどのように捉えていますか? 前日位に抜栓するのが丁度よいと思います。エミディオは「ワインの中にその年の自然、気候を表現する事が大切で、人間は(自然よりも)間違いを犯しやすい。自然は間違う事は無いから、ワイン造りには注意と分析が必要。畑からカンティーナまで細部に至るまで注意深くブドウを向き合わなければならない。カンティーナは常に清潔でなければならない」と言います。例えばイタリアで2014年は難しい年とされていますが、トレッビアーノにとって良い年となりました。モンテプルチアーノはちょっと違います。私達が造るトレッビアーノの良いヴィンテージはいつも寒く雨がちな年です。熟成する事でクオリティが上がっていきます。2014年はこの後どのように変化していくか楽しみです。 |
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
■インタビューを終えて | ||||||||||
世界的な名声を誇るカリスマ「エミディオペペ」。全てにおいて手作業を貫くワイン造りに驚かされるインタビューとなりました。
ブドウの足踏みのお話は聞きしに勝るもので、「原始的」とも言える圧倒的なローテクから産み出されるトレッビアーノ2014年は不思議な位に淀みになく洗練されていて、ブドウの味わいがダイレクトに伝わる圧巻の出来映え。 樽を使わず、長期瓶熟後リリースされるモンテプルチアーノは出荷時に一本一本デカンタージュして手作業で澱を取り除き、コルクを打ち直してから出荷する拘りぶり。エミディオ ペペの名前の凄さは知っていたものの、お話を聞いて改めてその偉大さを知りました。栽培からボトリングまでワインにかける情熱はまさに「生きる伝説」「他の追随を許さない真の職人」という言葉がこれほどピッタリと当てはまる生産者は他にそう思いつきません。 ブレない強い信念から産まれたモンテプルチアーノ2010、2000年は抜栓1日を経て柔らかさと強さ、深さが濃密に溶け合い気品に溢れ、思わず言葉を失う感動の味わい。まさに「王者の風格」が漂う偉大なモンテプルチアーノ。 時代がどんなに変わろうが自らの信念を貫くエミディオペペ。他では味わう事の出来ない「真のモンテプルチアーノの最高の表現」がありました。特別な時に開けてみたいイタリア最高峰のワインです。 |
||||||||||
エミディオ ペペのワインはこちら⇒ | ||||||||||
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒ | ||||||||||
世界中から賞賛されるモンテプルチアーノ ダブルッツォの王者!「エミディオペペ」
2018/03/19