2018年1月19日 マシャレッリ社 ルイジ マセッティ氏
モンテプルチアーノで世界レベルのワインを造り出しアブルッツォワインの歴史を変えた「マシャレッリ」 |
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2018年1月16日~1月21日までワイナリー視察研修にイタリアに行ってきました。カンパーニャ、ウンブリア、トスカーナ、アブルッツォの4州の生産者を訪ねて、カンティーナや畑を見学、生産者から直にお話を伺い、ワイン造りへのこだわり、思い等を聞きました!イタリア中央部を南北に走るアペニン山脈を超え、いよいよ視察研修の最後の州、アブルッツォにやって来ました。 アブルッツォ州はイタリア南部に位置していながら、アペニン山脈の麓に広がるスキーリゾートが非常に盛んで、手付かずの自然が残るアウトドア派に人気のエリアです。海に面した州でもあることから、スキーを楽しみながらアドリア海を眺める事も出来る、山と海に囲まれたユニークな特徴を持っています。また日本でもお馴染みの高級パスタメーカー「ディ チェコ」は1886年アブルッツォで創業、山岳自然公園の湧水を使いアブルッツォでパスタを造っています。 今回訪ねたワイナリー、「マシャレッリ」はモンテプルチアーノ種で世界レベルのワインを造り出す、イタリアの中でも最上の生産者に挙げられます。創業者ジャンニ マシャレッリ氏は高品質アブルッツォワインの新たな道を切り開いた偉大な功績でモンテプルチアーノ種の可能性と品質の高さを世界中に知らしめました。『ガンベロロッソ』で最高賞を獲得した歴史的トップキュヴェ「ヴィッラ ジェンマ」は新樽バリック熟成モンテプルチアーノ100%の名品。年産6000~8000本と極めて少量生産のため、世界各国割り当て制になっている程の大人気ワインです。アブルッツォを代表するワイナリー、マシャレッリ社の輸出マネージャーであるルイジ マセッティ氏にお話を聞きました。 |
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アブルッツォワインの発展に大きく貢献したジャンニ マシャレッリ氏 |
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叔父からブドウ畑を譲り受け1981年にワイン造りをスタートさせる アブルッツォ州が、イタリアの中でも最も貧しい州の一つに挙げられた頃の1956年、サン マルティーノ スッラ マッルチーナ村にジャンニ マシャレッリはこの地に生まれました。当時はアメリカ、南米、カナダへと大量の移民が相次いだ直後の、過疎化が進んだ村。目立った産業がなく、国からは援助を受けるどころか、国家の財政負担が、南部イタリア全体の貧農に課せられていた時代です。 マシャレッリ家はブドウの専門の栽培家でも、ワイン生産者でもありませんでしたが、16歳に季節労働者としてシャンパーニュの収穫を手伝ったジャンニは当時ワイン造りに対する漠然とした興味を持ち始めました。 そして1978年、22歳でトラック運転手だった祖父から2.5ヘクタールのブドウ畑を譲り受けます。ここにはトレッビアーノが植えられていました。もう一方の祖父から譲り受けたのも、ぶどう畑。収量でいえば半分以下のごく僅かなモンテプルチアーノでした。小さな畑からスタートさせ、1981年に初めてワイン造りを行います。 「生まれ故郷サン マルティーノ スッラ マッルチーナ村の、自然がもたらす恵みが、とても貴重な宝であることに気づいていた」 誰もが故郷の地に自信を持つ事が出来なかったこの時代に、彼はアブルッツォ州の、そして生まれ故郷サン マルティーノ スッラ マッルチーナ村の、自然がもたらす恵みが、とても貴重な宝であることに気づいていたのです。そして、いつの日か真価を発揮させるのは、自分の役割だと考えていました。 「安酒の生産地と見做されるアブルッツォワインへの偏見を取り去ろう」 フランスのバリック(225リットル)で熟成された、この強烈なパワーを持つワインはマリナ ツヴェティッチ シリーズと名付けられ、1990年から順を追って品種ごとに販売されます。 モンテプルチアーノ ダブルッツォの認知度を上げることに大きく貢献 |
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山と海、2つの大自然が共存するユニークな土地 |
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ワイナリーに到着すると、輸出マネージャーであるルイジ マセッティ氏が迎えてくれました。まず新設したカンティーナを案内してくださいました。
山と海、2つの大自然が共存するユニークな土地 「この地はポテンシャルがあるはず。必ずや成功する土地」だと確信 畑は現在400ヘクタールあり、220万本を生産 先ずはステンレスタンクが並ぶ新しいカンティーナの中へ行きましょう。 ここで全てのワイン造り、醗酵をスタートさせる場所です。ガニメデ社のステンレスタンクを使用しています。 ~ガニメデ社のタンクは醗酵の際に出る炭酸ガスを循環させてピジャージュ(櫂入れ)を自動で行うシステムを搭載。人力のピジャージュに比べ、まんべんなく行われる為、ブドウ本来のアロマや色素の抽出率が高くなります。一連の作業が密閉したタンク内で行われる為、従来方式にくらべ、衛生面で優れ、醸造中のSO2使用を最小限に抑えられる利点があります。~ アブルッツォ全体で造られるワインの約85%が赤ワインです。その中でもモンテプルチアーノ種がメインとなります。私達のカンティーナでは赤ワインの比率は83%です。モンテプルチアーノからはロゼも造っています。白はトレッビアーノがメインとなります。 次に熟成庫に行きましょう。ワイン毎に熟成庫が異なります。トレッビアーノ、モンテプルチアーノとその他赤、シャルドネの順でお話しましょう ワイン造りにフランス格付けシャトーも使用する高級なフレンチバリック新樽を導入 岩を重ねた壁でより自然な近い環境で熟成 赤ワインには80~85%が新樽バリック、残り15%が2年目以降の旧樽を使用 異なるロースト度合いの新樽を数種類使い熟成させる「シャルドネ」 |
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「畑は賢い。あとは人間がどのように畑、ブドウに関わるかが重要」 |
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ではブドウ畑に移動しましょう。
時に3メートルの積雪をも記録する厳しい環境 ジャンニ マシャレッリがアブルッツォで初めて採用したグイヨ式栽培 畑でのアプローチについて話しましょう。ブドウの畝は88センチ間隔で植えています。この間隔にしている訳はブドウ同士の成長をを競争させる事にあります。他のブドウに負けまいと栄養分を求めて地中深くまで根を伸ばします。収穫時は手作業で行い、1本の樹から最大でも3~4房に制限します。畑に肥料は状況に応じて使います。あまり行き過ぎたオーガニック栽培では収量が安定しません。 畑の中に建てられたペンサトイオ(試飲ルーム)に移動すると現オーナーであるマリナ ツヴェティッチさんが待っていました。 ジャンニは「良いブドウのみから良いワインが造られる」という信念を一人発信し続けました ワイナリーを創業した約40年前のアブルッツォでは良い品質を求めるような潮流ではありませんでした。ジャンニは「良いブドウのみから良いワインが造られる」という信念を一人発信し続けました。シンプルな事ですが、これは非常にタフなことだったと思います。 ジャンニはとてもワインが好きでした。イタリアワイン以外ではフランスワインのシャトームートンロートシルトを好んでいました。 「畑は賢い。ブドウは次の年に向けてしっかりと経験を積み学んでいる。あとは人間がどのように畑、ブドウに関わるかが重要」 |
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2004年に400年前の古城「セミヴィコリ城」を購入 |
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2004年に400年前の古城「セミヴィコリ城」を購入 次にルイジさんと車で高台にある400年前の古城「セミヴィコリ城」へ移動しました。 この城は良いワイン造りを目指すマシャレッリが次に目指すコンサートや文化的活動、ワイン教育に関するイベント活動の為に2004年に購入した城です。 セミヴィコリ城のオープンを待たずしてジャンニは52歳の若さで逝去 リノベーションされ中にはフィットネスクラブ、レストラン、屋上庭園を備えた宿泊、結婚式にも利用できる城となっています。ローマ時代当時の食糧保存庫や食堂も歴史的資料として保存され見学もできます。地下続くワインセラーにはマシャレッリ家のファミリー用のプライベートストックワインも多数眠っています。 |
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『ガンベロロッソ』ピッツェリア最高賞獲得の名店でワインテイスティング |
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『ガンベロロッソ』ピッツェリアにおいて最高賞3スピッキを獲得した名店でワインテイスティング カンティーナ、畑、セミヴィコリ城を見学した後は、ワイナリー直ぐ近くにあるピッツェリア「ソルジェンテ」へ移動。 2018年から新たに造られた『ガンベロロッソ』ピッツェリアにおいて最高賞3スピッキを獲得した名店です。マシャレッリのワインを試飲後、「ラ ソルジェンテ」の斬新な発想のピッツァとワインを合わせました。 (試飲ワインはこちら) 1.ロザート 2016 2.ヴィッラジェンマ ビアンコ 2017 3.カステッロ ディ セミヴィコリ ペコリーノ2017 4.カステッロ ディ セミヴィコリ トレッビアーノ2013 5.カステッロ ディ セミヴィコリ ロッソ2015 6.マリナ ツヴェティッチ イスクラ 2014 7.マリナ ツヴェティッチ モンテプルチアーノ 2014 8.マリナ ツヴェティッチ モンテプルチアーノ 2009 9.ヴィラ ジェンマ 2012 10.ヴィラ ジェンマ 2011 コースメニューで一品ずつサービスされるピッツァ 1.マルゲリータ(トマト、モッツアレラ) 2.マグロとピスタチオ 3.ズッキーニの花とアンチョビ 4.ウニと赤玉ねぎのピッツァ ピッツァにワインを合わせるテクニックや食材のチョイス ワインと合わせる料理と言うと、ついお肉や魚をばかりが注目されますが、ピッツァにワインを合わせるテクニックや食材のチョイスはとても勉強になりました。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
マシャレッリがワイナリーを構えるサンマルティーノ村は例年1月なら多い時で3メートルも雪が積もる日もあるそうですが、案内してくれたルイジ氏は「今日はまるで春のような暖かさだね。屋根が雪で壊れる事もあるんだ」とアブルッツォの厳しい気候を教えてくれました。
創業者ジャンニ マシャレッリ氏は2008年に52歳の若さで亡くなってしまった為、現在は妻マリナ ツヴェティッチさんがワイナリーを運営しています。 マリナさんの言葉で印象的だったのが「畑やブドウはとても賢い。例えば(ブドウが)病気や天候の影響を受けて生産量が少なくなったとしても畑、ブドウは次の年に向けてしっかりと経験を積み学んでいる。あとは人間がどのように畑、ブドウに関わるかが重要」と土地への想いを強い気持ちで話してくれました。 試飲で頂いた、お披露目前の希少な「ヴィッラ ジェンマ」2012年は既に調和がとれていて、実に豊かな味わい。タンニンが極めて上質なので今~20年はゆっくり楽しめる素晴らしいワイン。 『ガンベロ ロッソ ピッツェリア』2018で最高賞を受賞したアブルッツォのピッツェリア「ラ ソルジェンテ」さんの斬新なピッツァとマシャレッリのワインのペアリングではズッキーニの花、ウニ、マグロ等斬新な食材の組み合わせによる新感覚のピッツァ。海と山の二つの自然を持つアブルッツォらしい「食材の豊かさ」を感じました。特にロゼや白ワインと相性が良かったです。ワインと合わせる料理と言うと、ついお肉や魚をばかりが注目されますが、ピッツァにワインを合わせるテクニックや食材のチョイスはとても勉強になりました! |
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アブルッツォワインの歴史を変えた偉大な造り手「マシャレッリ」
2018/04/25