2018年5月15日 ラシーヌ社 合田泰子氏、合田玲英氏
バローロボーイズから自然派へ。セッラルンガの銘醸畑ボスカレートを所有する「現代のクラシック」プリンチピアーノについてラシーヌ合田社長に聞く |
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プリンチピアーノフェルディナンドは、ピエモンテ州モンフォルテダルバに構えるバローロの造り手。現当主のフェルディナンドは当初バローロボーイズの一員としてモダンなスタイルのバローロを造っていましたが、2002年に方針転換。祖父がやっていた伝統的醸造に戻り、そしてビオロジックな造りへと変わりました。今回はプリンチピアーノを輸入するラシーヌの合田泰子社長と息子の玲英氏にお話しをお聞きしました。 | ||||||||||
「選び抜かれたワインを、良いコンディションでお客様のもとにお届けし、消費者にお楽しみいただくこと」をモットーにするワインのインポーター「ラシーヌ社」の社長合田泰子氏 |
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フランス滞在中1987年ボルドー大学テイスティング技術コースを受講、帰国後に複数の輸入会社でワインの仕入れを担当したのち、2003年4月にラシーヌを設立。
1989年以降、スペイン、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなどから優れた造り手たちを日本に紹介。合田氏によって日本に初めて紹介された造り手は数知れず。ラシーヌ設立後もヨーロッパを中心に、ジョージアやアメリカなどからも知る人ぞ知るワイナリーを開拓、精力的に活動されています。 ラシーヌの理念は「選び抜かれたワインを、良いコンディションでお客様のもとにお届けし、消費者にお楽しみいただくこと」。品質とコンディションへの徹底した追及はインポーター業界1と言っても過言ではないでしょう。 |
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カヴィオラの指導のもとバローロボーイズの一員としてモダンな造りで人気を博す |
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プリンチピアーノは、1900年代初めから自分たちが所有する畑でブドウを造っていた家族です。1960年に現当主フェルディナンドの父アメリーコがカンティーナを設立。所有する畑はモンフォルテダルバ、セッラルンガダルバの優れた立地の区画でしたが、当初は造ったブドウをチェレット、プルノット、スカヴィーノ、アルターレなどの名門ワイナリーに売っていました。
1997年、フェルディナンドはブドウを売るのをやめ、100%自身のカンティーナでの醸造と瓶詰め、販売に切り替えます。1993年から指導を受けていたカヴィオラのもと、当時主流だったバローロボーイズの流れを受けたモダンな造りのワインで人気を博します。 モダンな造りのワインから伝統への方向転換 バローロボーイズの一員としてモダンな造りを続けていたフェルディナンドですが、ワインを売るために世界各地に営業に回ることには消極的でした。ランゲ生まれの自分が何をすべきなのか、何をしたいのかを考えていた彼は、祖父のワイン造り(旧来の伝統的醸造方法)に戻ることが自分のやりたいことだと気付き、大胆な方向転換を行います。 2004年にはロータリーファーメンターを売って大樽を購入。畑では化学的なものを排除したオーガニック栽培からビオディナミへと自然な造りへと転換していきます。 |
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造りたい白ワインのために標高が高いアルタランガの土地へ。選んだ品種「ティモラッソ」 |
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プリンチピアーノは白ワインをひとつだけ造っていますが、それが「ランゲビアンコ750メートルエスエルエム」です。エスエルエムとは海抜の意味で、つまり海抜750メートルの高い土地の畑と言う意味です。
プリンチピアーノは「すっきりとしたクリアな白がイタリアでもできることを証明したい」という思いがありました。そこで選んだのがティモラッソというコッリトルトネージ原産のピエモンテの土着品種です。バローロエリアよりもさらに南の、アルタランガ地区で、ランゲ地方よりも標高が高いのが特徴です。アルタランガは冷涼な気候なのでピノノワールとシャルドネを栽培してスプマンテが多く造られているエリアですが、プリンチピアーノは爽やかな白にするためにティモラッソを選んだのです。 フランスで生活をしていた玲英氏いわく、イタリアに初めて来たときはどのワインも全て濃い印象だったそうですが、プリンチピアーノのワインは果実味が綺麗で繊細だと感じたそうです。 他の人ならネッビオーロに植え替えてしまうところ、適材適所を考えてドルチェット、バルベーラを造り続ける ランゲではやはりバローロの品種であるネッビオーロがもっとも高く売れるワインとされています。そのため、ドルチェットやバルベーラを抜いて、ネッビオーロに植え替え、「ランゲネッビオーロ」として売る人が増えています。昔は、風が強い場所はバルベーラ、湿気が多い場所はドルチェット、というようにその場所に適した品種を植えていたのですが。さらに、以前は全く違う植物が育っていた場所に、ブドウを植え始める人もいます。
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ブドウの要素をしっかり抽出した力強さのあるワインではなく、抽出しすぎないように気を付ける |
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プリンチピアーノのワインはどれも綺麗で軽やかさがあると感じます。先ほどフランスワインとの濃さの違いの話をしましたけど、ピエモンテに来て色々なバルベーラを飲んだ時もとにかく力強いものが多いと感じました。いわゆる自然派と呼ばれている造り手のものでもそうでした。これはおそらく、あらゆる造り手から尊敬を集めているグラヴナーの影響が多いのかなと。ブドウの要素をしっかり抽出した造りになっていますよね。
でもプリンチピアーノはなめらかでざらつきがない。これは抽出しすぎないように気を付けているからなんです。プリンチピアーノのカンティーナは天井が低くてピジャージュができないというのもあるのですが(笑)、下からポンプで汲み上げた果汁を上から少し濡らす程度のルモンタージュをしています。濃すぎず、日常飲みができるワインがプリンチピアーノの目指すスタイルです。 |
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自然なバランスでブドウを成熟させたいとグリーンハーベストを中止。クリュバローロも一つに絞った |
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プリンチピアーノは2010年からグリーンハーベストをやめました。グリーンハーベストは残したブドウをより凝縮させるために行うものですが、彼らは間引きをするとブドウのバランスが崩れると考えています。最後まで房を付けておくことで自然なバランスが生まれるということです。また、間引きすると結果的にワインの価格が高くなってしまいます。グリーンハーベストをしないことで価格も上げずにすみ、自然なバランスを保った繊細でエレガントなワインを造ることができています。
プリンチピアーノのクリュに対する考えも変わってきました。以前はモンタリアーノなどクリュごとにバローロを造っていましたが、ブルゴーニュ的だと考えてボスカレートだけに絞って他はやめました。その結果、もともとクリュに使っていたネッビオーロはセッラルンガに入れるようにしました。中には樹齢の高いものもあったので止めるのは惜しいなあと個人的には思いましたが。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
「ワインの状態」「飲み頃」「飲み心地の良さ」を重視するラシーヌさんのワインはいい意味で驚かされることがないと思います。このプリンチピアーノのワインも安心感、飲み続けられる心地よさ、やさしさを全てに感じました。
すっきりとしたエレガントな白が造りたいと、わざわざ標高の高い畑を選んだり、適材適所の品種を尊重したりとその考えと実践がとてもシンプル。そしてグリーンハーベストをやめたことで自然なバランスで育ったブドウを造り、本来の味を表現する。力強いワインが好きな人にとっては、最初は物足りなさを感じてしまうかもしれませんが、飲んでいくと造り手の考えがしっかりと伝わってくる、造り手が見えてくるワインです。 |
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バローロボーイズから自然派へ。セッラルンガの銘醸畑ボスカレートを所有する「現代のクラシック」プリンチピアーノ
2018/06/04