2018/07/31
/
「イタリアワインの怪人」 本間 チョースケ氏
本間チョースケ氏が語る!
ブルネッロ協会創設メンバーの歴史的生産者「古典派ブルネッロの重鎮」リジーニ

某ワイン漫画登場のイタリアの怪人こと本間 チョースケ氏

某ワイン漫画でイタリアの怪人「本間 チョースケ」のモデル。
日本ソムリエ協会シニアワインアドバイザー。
著書に、
「本間チョースケが独断と偏見で選ぶイタリア安旨ワイン203連発!」(講談社刊)
「本間チョースケ独断選定。イタリアワイン最高峰201連発!」(講談社刊)等。
日本におけるイタリアワインの伝道師的存在。
1900年代初頭から100年以上に亘りモンタルチーノでワイン造りを続けるトップワイナリー

リジーニの歴史は古く、1846年にキャンティ地区に畑を持っていたロドヴィコ リジーニ氏と、モンタルチーノのフランチェスカ クレメンティ氏が結婚し、新生リジーニ家が産まれたことまで分かっています。
それ以前のルーツに関しては、リジーニ家の人々でさえも分からないほどです。リジーニのラベルに描かれた家紋はクレメンティ、リジーニ両家のシンボルが刻まれていて、左側がクレメンティ家、右側がリジーニ家を表しています。
1900年代初頭から100年以上に亘りモンタルチーノでワイン造りを続けるトップワイナリー
1900年代初頭、ワイン文化がまだ盛んでなかったモンタルチーノの土地に、キャンティ地区からの技術やアイデアをリジーニ家が持ち込んだことにより、リジーニ家がモンタルチーノでワイン造りを始めることになります。1967年になってブルネッロ協会が設立されますが、協会を設立したのはリジーニを含めた12生産者と言われています。今では250以上の生産者がひしめくエリアとなりましたが、1900年代初頭から100年以上に亘りモンタルチーノでワイン造りを続けるトップワイナリーです。
ブルネッロ協会設立時からの協会員で「サンジョヴェーゼの重鎮」の一人

リジーニはサンジョヴェーゼに特化した生産者で、ブルネッロ協会設立時からの協会員で「サンジョヴェーゼの重鎮」の一人挙げられる歴史的生産者です。時代が変わってもその確固たる品質は変わらない古典的ブルネッロのトップ生産者として君臨しています。
「サンジョヴェーゼの化身」フィリッポ パオレッティ氏
リジーニの醸造家はフィリッポ パオレッティ氏で、醸造の全てを任されている人物です。ワイナリーの中にある家に住み、畑の全てを把握している「サンジョヴェーゼの化身」と呼ばれているスペシャリストで、とにかくリジーニとサンジョヴェーゼを愛する情熱の持ち主です。リジーニがブルネッロのトップワイナリーに君臨しているのもフィリッポ氏の手腕によるところが大きいですね。
近代的な醸造施設を使用しつつも伝統を重んじ、流行を追うような事はしません。ワイナリーのオーナー兼責任者であるロレンツォ リジーニ氏は利益よりもとにかく品質を最優先する人物で、その揺るがない高い拘りがリジーニの品質を支えています。
「同じブルネッロでも北部と南部では味わいが違ってきます」

近年感じる事として、モンタルチーノの気温が年々上がってきていますね。1995~2014年の15年間で調べてみると、1~2度の気温上昇がみられます。それに伴い収穫時期を早めたり、出来上がるワインのアルコール度数も変化が見られる生産者もあります。同じブルネッロでも北部と南部では味わいが違ってきます。
ブルゴーニュ的な透明感。綺麗なブルネッロを産み出す北部エリア
例えば「カパルツォ」や「カパンナ」のようなモンタルチーノ北部の生産者。このエリアは寒暖差があり冷涼な気候となります。(南部に比べ)土壌も痩せている事から、ブルゴーニュ的な透明感があって綺麗なブルネッロを産み出すエリアとなっています。北部の冷涼な気候では白ワイン造りを行うブルネッロの生産者もいます。
肥沃な土壌と温暖な気候。豊満なボディを持つブルネッロを産み出す南部エリア
一方、モンタルチーノ南部に位置するリジーニに関してですが、モンタルチーノ南部の特徴として、(北部と比べ)肥沃な土壌と温暖な気候があり、豊満なボディを持つブルネッロが産まれます。白ワインの生産は非常に少なく、温暖な気候を利用した国際品種のメルローの栽培に適したエリアでもあります。
リジーニはサンジョヴェーゼしか栽培していない
一般的に南部のブルネッロはふくよかで濃密なスタイルになってきます。その中でもリジーニは伝統的なアプローチを守り抜いているクラシックな魅力に溢れる生産者でサンジョヴェーゼしか栽培していません。
単一畑ブルネッロ「ウーゴライア」
リジーニのラインナップとしては全て赤ワインでサンジョヴェーゼ種のみです。樽を使わないサンジョヴェーゼ「サン ビアジョ」、ロッソディモンタルチーノ、ブルネッロ、ブルネッロ リゼルヴァ、単一畑キュヴェ「ウーゴライア」と続いていきます。現在、「サンビアジョ」と対を成す「幾つかのキュヴェをブレンドした」新しいワインを造っている途中です。(現時点ではまだリリースされていません)
他の畑とは全く異なる「ウーゴライア」酸化鉄を多く含んだ赤土の粘土質土壌
畑の位置により土壌の違いこそありますが、リジーニが持つ単一畑「ウーゴライア」は1.5ヘクタールのは広さで良年のみ生産されます。生産量は約6000本ととても少ないです。畑は酸化鉄を多く含んだ赤土の粘土質土壌です。他の畑とは全く様相が異なる土壌で、出来上がった「ウーゴライア」からはしっかりとした力強いボディが感じられます。
「オフヴィンテージと言われている1994年ですが、とても素晴らしかったですね」

ウーゴライアに関しては1990年代と2000年代では味わいのスタイルが異なる印象を受けます。醸造設備のインフラまわりは変わらないのですが、気候による違いが大きいのではないかと思います。
ブルネッロ南部の肥沃な土壌と昨今の気温上昇により、以前よりも早く飲めて、より近づきやすい柔らかく、フレンドリーなスタイルに変わっているように思います。
「オフヴィンテージと言われている1994年ですが、とても素晴らしかったですね」
昨年1週間程モンタルチーノで過ごしたのですが、レストランで「ウーゴライア」1994、1995年の飲み比べをしました。当初は優良ヴィンテージの1995年を期待したのですが、現時点では圧倒的に1994年が良かったです。日本国内で「ウーゴライア」1993、1994、1995年がリリースした当初も飲んではいましたが。その時はこのような状態になるとは思ってもいませんでした。1995年は暑いヴィンテージで(熟成に耐える)酸が足りなかったと考えられますね。一般的にオフヴィンテージと言われている1994年ですが、とても素晴らしかったですね。
Q.リジーニがサンビアジョ、ロッソ、ブルネッロの造り分ける基準は何ですか?
サンビアジョはサンタンティモのDOCサンタンティモを名乗れるエリアの畑から、ロッソに関してはDOCGブルネッロに使用しないロッソ用の畑として分けています。リジーニのブルネッロの畑と「ウーゴライア」の畑では明確に個性が異なります。「ウーゴライア」は酸化鉄を多く含む赤土の土壌となります。
樽を使っていない「素顔のサンジョヴェーゼ」 |
サン ビアジョ 2016 |
![]() |
サンジョヴェーゼ100%のサン ビアジョはリジーニの哲学を良く表したワインです。ステンレスタンクで造る為、完熟したブドウでなければ鋭角的な酸やタンニンがでてしまいます。樽も使っていません。まさに「素顔のサンジョヴェーゼ」と言えるワイン。栽培において確りとした仕事によって産まれるリジーニならではワインです。 |
試飲コメント:2016年は2015年に続き、ブルネッロ協会最高5つ星ヴィンテージとなっています。一般的に濃密で力強い2015年に比べ、2016年の方が寒暖差の大きい天候でバランス型ヴィンテージと呼ばれています。個人的には2015、2016年は非常にタイプが似ている印象を受けます。サンビアジョは樽を使っていない「素顔のサンジョヴェーゼ」です。2016年は非常にタンニンが熟れていて、既に飲みやすい状態に入っています。 |
10年間で最も理想的なバランスの取れたヴィンテージ |
ロッソ ディ モンタルチーノ 2016 |
![]() |
とても旨いですね!現時点で既に楽しめる状態です。完熟イチゴ、ブラックチェリーの果実、くるみや焼き栗のようなアロマも感じられる。滑らかな舌触りの中に旨みが詰まっていて、ドライフラワーや果実味、酸の余韻が残ります。 |
試飲コメント:サンビアジョ同様に素晴らしい出来映え。ここ10年間で最も理想的なバランスの取れたヴィンテージ。凝縮感という点では2015ヴィンテージが上回りますが複雑さと果実風味は2016の方が際立ちます。 |
複雑かつ早くから楽しめるスタイルの2013ヴィンテージ |
ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2013 |
![]() |
2013年は春先雨が多く、生育サイクルが遅れた年と言われています。ブルネッロ協会が4つ星を付けているヴィンテージで、クラシックなブルネッロの特徴が良く出ているヴィンテージでもあります。 |
試飲コメント:例年よりブドウの成熟に時間を要した為、10月第2週目に収穫しました。ワインはクラシックで控え目な感はありますが、果実味と瓶熟成によるバルサム系の第二アロマのニュアンスがあります。複雑かつ早くから楽しめるスタイルです。2011と2012ヴィンテージの中間的性格とも言えます。 |
インタビューを終えて
また本間氏は「現在モンタルチーノでは生産の大半を国外用に輸出するワイナリーが多く、主力ワインであるロッソ ディ モンタルチーノに国際品種をブレンドするべきという動きがありましたが、リジーニを中心にロッソは「100%サンジョヴェーゼでなければならない」という反対運動を起こし、差し止められた経緯があります」と話してくれました。モンタルチーノにとってサンジョヴェーゼというブドウがいかに重要であるか、古典派リジーニがサンジョヴェーゼにかける情熱がヒシヒシと伝わってくるエピソードです。
試飲ではサンビアジョ2016年が印象的でした。ステンレスタンクのみで造る為、完熟したブドウでなければ鋭角的な酸やタンニンがでてしまう、リジーニの妥協なきハードワークから産まれる素晴らしい1本。まさに「素顔のサンジョヴェーゼ」と言えるワイン。みずみずしさがあり、奥行きを感じる味わいでこの価格帯では群を抜く出来映え。
「1994年のウーゴライアが素晴らしい状態だった」と話してくれた本間氏。例え困難なヴィンテージであっても見事に仕上げてくるリジーニ。難しい年でありながら、20年以上の歳月を経ても十分に楽しめる素晴らしさ。100年以上に亘りモンタルチーノでワイン造りを続けるトップワイナリー、リジーニならでは「凄み」のようなものを感じました。
