2018年10月18日 フェウド アランチョ社 マウリッツィオ マウリッツィ氏、マッテオ アポッローニオ氏
次世代シチリア!全て自社畑にこだわる大規模ワイナリー「フェウド アランチョ」突撃インタビュー |
||||||||||
2001年創業のフェウドアランチョはシチリアに新しい風を吹き込んだ次世代ワイナリーです。トレンティーノに拠点を置く「メッツァコロナ」グループが新天地シチリアに進出。北イタリアで培った知識と経験をもとに、これまでシチリアにはなかった最先端の設備と技術を持ち込み、600ヘクタールという巨大な自社畑から、高品質かつ低価格のワインを次々と造り、あっという間に世界中で支持を集めるワイナリーへと成長しました。生産責任者のマウリツィオ氏と輸出マネージャーのマッテオ氏にワイナリーの哲学についてお話をお聞きしました。 | ||||||||||
自社畑だけでワインを造ることにこだわり、畑もカンティーナもすべて新しく造るところからスタート |
||||||||||
フェウドアランチョは2001年に創業しました。シチリアの2つのエリアに2つのカンティーナを設立。それぞれのエリアに適したワインを造るということを目的に畑もカンティーナもすべて新しく造るところから始まりました。
私達はトレンティーノに拠点を置く、メッツァコロナ社のグループです。メッツァコロナは自社畑だけにこだわるワイナリーで、それはこのシチリアでも同じです。自社のワインは全て自分たちで管理したブドウから造りたいのです。そのためにこれだけの規模となりました。北イタリアで培った技術と経験をもとに最高のかつ最新のテクノロジーをシチリアに持ち込みました。 114年の歴史を持つメッツァコロナはイタリア国内で第6位の規模を持ちます(グループ全体)。全部で3400ヘクタールの畑があり、年間35,000,000本を生産しています。これが全部自社畑です。毎日飲んで頂けるワインを高品質で手に入りやすい価格で造る、というのが私達のモットーです。 |
||||||||||
北イタリアで培ったワイン造りの経験をシチリアで生かす |
||||||||||
サンブーカディシチリアにもアカーテにも私達が畑を整備する前も少しブドウ畑がありましたが、それは昔風のテンドーネ(棚)仕立てで高品質のブドウ栽培には向いていません。だから畑は新しく整備しました。そのために、畑の区画ごとに土壌を調査し、どの品種が適しているのかを研究しました。
畑の整備を行う上では北イタリアのメッツァコロナのやり方を取り入れました。私達の畑の上空写真を見ると面白いのですが、フェウドアランチョとそれ以外の畑とは明らかに違います。畑が整理整頓されているように見えますよ。 7つのため池も整備して灌水設備を整えました。地中に灌水設備を配して必要な場合に雫を少しずつ落とせるようになっています。池は標高の高いところにあり、低いところへと自然に流れるようになっています。 |
||||||||||
|
||||||||||
特徴の異なる2つのエリア「サンブーカ ディ シチリア」と「アカーテ」。ワインの個性に応じて使い分ける |
||||||||||
サンブーカディシチリアとアカーテは同じシチリアでもテロワールが違います。アカーテは海に近く、砂質土壌で、サンブーカディシチリアは丘陵地にあり、粘土質です。アカーテで造るネロダーヴォラは軽やかで香りの高いワインになります。私達のベーシックラインのネロダーヴォラを造っています。一方サンブーカの方は骨格のしっかりとした味わいのネロダーヴォラが生まれます。そのため上のクラスのワインに使っています。
同じ品種でもこの2つのエリアでは造られるワインが全然違います。ワインの個性に応じてどの地区のブドウを使うのかを考えています。 グリッロで造る珍しい泡「アックシイ」 グリッロ100%のスパークリング「アックシイ」は、アカーテのグリッロで造っています。アカーテは海に近く、海岸まで約4.6kmほどです。地中は海水と淡水がミックスされていて、土壌にも塩っぽさが感じられます。南からの風がよく吹いている土地で、海の影響を強く感じます。畑の写真を見てみると白っぽくなっているところがありますよね。これは塩が表面に出てきているのです。 そもそもシチリアは暑い土地なので、スパークリングワインに必要な酸がブドウに足りないんですね。だからグリッロもずっとマルサラの原料として使われてきました。でも、実はグリッロはphも低く、酸がしっかりとある品種なのです。スパークリング用のブドウとして一般的なシャルドネは、そういう意味ではシチリアでは難しいんです。そこで私達はグリッロ100%でスパークリングを造りました。今ではグリッロからスパークリングを造る生産者も出てきましたが、それでも珍しいと思います。 収穫は、酸をよりしっかりと保つためにスティルワイン用のブドウよりも早い8月上旬ごろ行います。こうすることで白い花やマンダリンオレンジなどの豊かなアロマも生まれます。 |
||||||||||
「アカーテ」と「サンブーカ ディ シチリア」。テロワールの特徴を生かして2つのグリッロ、2つのネロダーヴォラを生産 |
||||||||||
グリッロからはもちろんスティルワインも造っています。ベーシックラインのグリッロはアカーテのブドウで造ります。収穫は8月下旬です。シチリアは非常に暑いのでブドウが乾燥してしまうのですが、グリッロは成熟につれて果皮が濃くなっていき、中の果実をプロテクトします。そのおかげで8月下旬まで待つことができます。他の品種だとこうはいきません。
グリッロのリゼルヴァワインが「ダリラ」です。ストラクチャーのあるワインにするためにサンブーカディシチリアのグリッロを使います。凝縮感がありますし、口の中でどんどんと広がっていくワインです。甘いニュアンスもあります。これがサンブーカのグリッロの特徴です。 シチリアの白ワインで「リゼルヴァ」と付いているワインは他にはあまりないですね。もちろん、通常のワインよりもDOCの規定は厳しいです。ただ、あまり「リゼルヴァ」ということを目立たせたくないので、ラベルの「RISERVA」の文字は小さくしています(笑)。 ネロダーヴォラも2つのエリアの特徴を表現した2つのワインを生産。ネロダーヴォラのオリジナルの土地とされるのが「アカーテ」 ネロダーヴォラについても同様で、2つのエリアで2つのワインを造っています。アカーテのブドウからはベーシックラインのネロダーヴォラを造ります。アカーテはラグーザ県にある地区ですが、ネロダーヴォラのオリジナルのエリアとされています。砂質土壌でワインは軽やかでフレッシュで華やかな香りを持つのが特徴です。グラスに注ぐとすぐにわかる香りです。イチゴのニュアンスがあります。これが「アカーテのネロダーヴォラ」の特徴です。 シチリア中でネロダーヴォラは造られていますし、輸出も多くされていますが、ネロダーヴォラが骨太のフルボディというイメージを持たれている人が本当に多いですね。でも本来のネロダーヴォラはアカーテのネロダーヴォラです。 サンブーカディシチリアのネロダーヴォラからはリゼルヴァタイプのネロダーヴォラ「カントドーロ」を造っています。タンニンがしっかりとあるのでこちらはバリックで熟成させています。ネロダーヴォラの個性が詰まっている、果実味とフレッシュさのバランスのとれたスタイルで食事ともよく合います。 |
||||||||||
より高みを目指して完成させたトップワイン「エドニス」 |
||||||||||
最初にお話しした通り、私達のモットーは毎日飲んで頂けるワインを高品質で手に入りやすい価格で造ることです。それはこれからも変わりません。ですが、より上のレベルの、トップの中のトップのワインを造りたい、という想いを持っています。そしてネロダーヴォラ100%の「エドニス」が誕生しました。 エドニスのプロジェクトは2010年に始まりました。サンブーカの畑について、区画ごとに調査し、特に優れた2つの区画を選びました。2つ合わせても僅か5ヘクタールほどの畑です。そして、それぞれのブドウの特徴を最大限に引き出す醸造方法を研究し、アパッシメントと長期バリッ ク熟成という方法にたどりつきます。 1つ目の区画のブドウはしっかりと成熟させたブドウを収穫し、カンティーナの中で4ヶ月間アパッシメントをします。そしてアルコール発酵と15日間のマセラシオン。18~20ヶ月間ステンレスタンクで熟成させます。2つ目の区画のブドウは収穫後、通常の醸造過程を進みます。アルコール発酵とマロラクティック発酵後、フランス産バリックで約1年半熟成させます。この熟成を経た2つのキュヴェをブレンドしてエドニスが造られます。 アパッシメントは16度の低温と高湿度でゆっくりと行う
私達はアパッシメントについて研究した結果、時間をかけてゆっくりと行うことで、乾燥ブドウの風味が加わるだけでなく、果実のニュアンスを失わず、フレッシュな味わいを保つことができることがわかりました。そこで、16度の低温と高湿度の環境を保つ乾燥室を整備。4ヶ月かけてゆっくりゆっくりアパッシメントをする方法を採用しました。湿度は最初80%で少しずつ下げていき、最後は60%ほどになります。4ヶ月のアパッシメントを終えたブドウは干からびた印象ではなく、瑞々しさがあります。 乾燥室は巨大な扇風機がいくつもあり、ブドウを並べた列ごとに最適な乾燥状態になるように操作されます。アマローネの有名な造り手たち、例えばモトックスさんがやっているダル フォルノ ロマーノなども大きな空調設備のある乾燥室がありますよね。品質を高めるために徹底していると思います。 ラベルデザインはギリシャ神話のディオニソスとアリアドネの婚礼がモチーフ ラベルのデザインはギリシャ神話のディオニソスとアリアドネの婚礼がモチーフです。サンブーカのカンティーナの近くにはセリヌンテの遺跡があり、ギリシャ時代の石などが見つかります。また、ギリシャとアフリカ文化が混じり合う境界にあたり、お互いが侵略をし合う様な土地でした。 ラベルには、アリアドネと酒の神様ディオニソス(バッカス)との結婚式の宴の様子を描いています。ワインの名前のエドニスというのは「エドニズム(Hedonism:快楽主義)」から付けました。「この瞬間を楽しんで幸せになる」、このワインを飲む今このときを楽しんで欲しい、という気持ちを込めました。(※イタリア語ではHの発音をしないので、エドニスとなります)。 |
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
|
||||||||||
■インタビューを終えて | ||||||||||
“コストパフォーマンス抜群のシチリアワイン”としてあっという間に人気ワイナリーの仲間入りをしたフェウドアランチョ。美味しく低価格でたくさんのワインを造っているというイメージでしたが、すべて自社畑のブドウを使うことにこだわっている、徹底した品質管理がそれを可能にしているのだと納得しました。広大なシチリアの中からテロワールの個性が異なる2つのエリアを選び、それぞれに適した品種とワインのスタイルを追求していることもよくわかりました。
トップキュヴェのエドニスにも驚かされました。ネロダーヴォラのトップの中のトップを目指し、これまで誰もやったことのないアパッシメントとバリック熟成という融合によって生まれた唯一無二のワインです。このワインに費やす手間と時間を考えると、この価格で実現させたフェウドアランチョは本当に凄いです。 デイリーに楽しめるベーシックワインにも、トップキュヴェにもこだわりのストーリーがあります。1本1本、ゆっくりと味わって頂きたいと思います。 |
||||||||||
フェウド アランチョのワインはこちら⇒ | ||||||||||
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒ | ||||||||||
次世代シチリア!全て自社畑にこだわる大規模ワイナリー「フェウド アランチョ」突撃インタビュー
2018/11/14