単一畑バローロの先駆け的存在!「究極のモノ造り」の哲学が産み出す伝統的生産者「ヴィエッティ」

2018/12/14
突撃インタビュー
 
2018年11月14日 ヴィエッティ社 ルカ クッラード ヴィエッティ氏 エレナ ペンナ クッラード女史

単一畑バローロの先駆け的存在!「究極のモノ造り」の哲学が産み出す美しき伝統的バローロ「ヴィエッティ」

ヴィエッティ社 ルカ クッラード ヴィエッティ氏 エレナ ペンナ クッラード女史と
1800年代後半、初代カルロ ヴィエッティがバローロを代表する村のひとつ、カスティリオーネ ファレットでブドウ栽培を始め、1957年4代目のアルフレード氏が更なる高品質なワイン造りに取り組み品質への高い拘りを魅せる生産者「ヴィエッティ」。1961年、「偉大なワインを造る為には最高の畑が必要」と、この地区で初めて単一畑によるクリュバローロ「バローロ ロッケ」をボトリングした単一畑バローロの先駆け的存在です。今回来日した5代目ルーカ クッラード氏、エレナ夫妻によるバローロ テイスティングセミナーに参加し、お話を聞きました。

ルカ クッラード ヴィエッティ氏と>エレナ ペンナ クッラード女史

ヴィエッティ夫婦ルカ クッラード ヴィエッティ氏
現在ヴィエッティの醸造責任者を務める。
先代のアルフレッド氏の息子で、
醸造学校卒業後、カリフォルニアの
シミ ワイナリーやオーパスワン、
そしてボルドーのシャトー ムートン ロートシルトで、
醸造に携わりながら見聞を広め経験を積む。

ヴィエッティの他、トスカーナのクエルチャベッラ社、
ルイジ ダレッサンドロ社のワイン醸造家としても活躍しています。
また、近年Vegan Societyによるヴィーガンワインの認証を受け、更に現在、有機栽培の認証取得に向け申請中です。(予定は2018ヴィンテージ~)

エレナ ペンナ クッラード女史
輸出&ブランドマネージャー
1994年8月Miroglio Groupという本社をアルバに構えるイタリアのファッション界でも有数のトップ企業に入り、ジェネラルマネージャーや最高財務責任者として11年間勤務。

同じく1994年8月に、ヴィエッティのオーナー兼醸造家であるルーカ クッラード ヴィエッティ氏と結婚。

2005年からはワイナリーでの仕事に専念。また新たなマーケティングプロジェクトの責任者として従事する一方、社のホスピタリティ業務も担当。

カスティリオーネ ファレット村で5代続く「ヴィエッティ」

畑大

バローロ地区で高品質なワイン造りを最初に目指したワイナリー
ヴィエッティはピエモンテ以外の地方に行ってワインを造った事はありません。イタリアで最高のブランドであるように常に努力を続けています。私達の財産と言ったらバローロ地区に畑がある事です。そしてバローロ地区で高品質なワイン造りを最初に目指したワイナリーでもあると言えます。

1870年代、私達の祖先はアメリカに働きに出かけました。当時はよくある事でした。私の曾祖父は技師としてアメリカで働き、1917年にイタリアに住む兄弟が亡くなった事を契機にアメリカから戻ってきました。農園の運営を継続させなければいけなかったからです。ヴィエッティ家の歴史でこれは非常に重要な事でした。曾祖父は技師であり農夫でもありました。つまり大西洋を渡った「世界を見てきた農夫」と言えます。曾祖父はそれまでの一般的なワイン造りでは、ヴィエッティのブランドは有名にはならない、もっと違う栽培や醸造をしなければならないと考えました。先見の明があった人と言えます。

 

現在20の単一畑グランクリュの内、15ヵ所をヴィエッティが所有

横長

現在20の単一畑グランクリュの内、15ヵ所をヴィエッティが所有
現在ではバローロの単一畑についてよく議論がされますが、100年前だとそれは非常に難しい状況でした。曾祖父は当時から「偉大なワインを造る為には最高の畑を購入する必要がある」とバローロ地区の畑を廻りました。そんなことする人は当時いなかったようですね。「おかしい人」だと思われていました。当時はトラクターなんてありません。当然手作業ですし、農夫は当然のように自分の家の近くに畑を持っていました。何故なら働きやすいからです。

曾祖父はバローロエリアの11ある村から最高の畑でワインを造ろうと決心しました。100年経った今、バローロ協会公式の単一畑を記した地図が出来ました。現在167の単一畑が記されています。その中でも最上とされる畑「グランクリュ」の単一畑をヴィエッティほど多く所有している生産者は稀であるという事です。20あるグランクリュのうち、15ヵ所にヴィエッティは畑を所有しているからです。それは何世代にも渡り高品質を目指してきた結果、素晴らしい畑を買い集める事が出来たのです。単一畑でリリースするのはブルナーテ、ラヴェッラ、ラッツァリート、ヴィレッロの畑です。

トップワインに成りうる単一畑を惜しげもなくベースとなるバローロにブレンド
ヴィエッティが瓶詰めしていない11のグランクリュがありますが、単一畑バローロしても全く問題の無いもので、他の生産者にしてみたらトップワインに成りうる畑です。3~4年樽熟した後、ブラインドテイスティングしてふさわしいグランクリュのワインをブレンドしてバローロカスティリオーネとしてリリース、更にランゲネッビオーロとしてリリースしています。バローロカスティリオーネはヴィエッティのベースとなるバローロとなります。

ブレンドをするという事は音楽と似ていると思います。より音の大きい楽器だけを集めるのではなく、それぞれの個性が集まって良い音楽となる事が重要なのです。それがバローロ カスティリオーネのブレンドです。

カスティリオーネ、ラヴェーラ、ラッツァリートの3種のバローロをテイスティング

テイスティング

今日は試飲をしながら3種のバローロについてご説明します。

試飲1.
バローロ カスティリオーネ2014
バローロ カスティリオーネ2006

カスティリオーネ60~70年代を彷彿させる厳格さとシャープさ
2014年は素晴らしいヴィンテージとなりました。エレガントで複雑です。ピノノワール、ネッビオーロは涼しい場所で真価を発揮するブドウで冷涼だった2014年はクラシックなスタイルのバローロになりました。60~70年代を彷彿させる厳格さとシャープさがあります。小学生がキッチリと制服を着て緊張しているような状態と言いましょうか。長期熟成に向いているワインです。一方2006年は複雑さもボリュームも増していきます。2006は非常に好きなヴィンテージです。複雑性、ボディの強さがありながら非常にフレッシュで酸がしっかりとしています。2006ヴィンテージは私達の寿命よりも長い寿命を持つワインかもしれません。

試飲2.
バローロ ラヴェーラ 2014
バローロ ラヴェーラ 2011

ラヴェーラ「2000年を最後にラヴェーラを造るのは10年間止めました」
ノヴェッロ村にあるラヴェーラの畑は1998年に購入しました。バローロにある村の中でも最もアルプスの影響を受ける村です。涼しい風を受ける場所で昼夜の寒暖差も大きいのが特徴です。20年以上前はそれほど評価されていませんでしたが、気候変動の影響もあり近年評価をあげています。特に暑いヴィンテージには評価を上げる村で気候変動の恩恵を受けています。ヴィエッティの中で最後に収穫を行う村です。

ラヴェーラ1999年がファーストヴィンテージでヴィエッティの単一畑の中では新しいワインです。1999、2000年と造ったのですが、2000年に関しては『ワインスペクテーター』で98点まで頂きましたが、自分たちは納得いく出来映えでは無かったので造るのを止めました。確かに美味しかったのですが、自分たちが考えるラヴェーラの表現が出来ていなかった。2000年を最後にラヴェーラを造るのは10年間止めました。

復活したラヴェーラ2010年で『アントニオガッローニ』が100点満点を付ける
いかにテロワールを表現出来るか、突き止めていき、2010年はようやく納得できるラヴェーラが出来たので3400本ボトリングしました。ラヴェーラのブドウは1/3はラヴェーラ単一畑としてボトリングしています。残りの2/3はバローロ カスティリオーネにブレンドされます。『アントニオガッローニ』がラヴェーラ2010年に100点満点を付けました。

100点満点を取った事で需要も上がりました。しかし、元々使っていない2/3のブドウを使うつもりはありません。1/3のみのブドウを使います。

木箱「自分たちが思い描くラヴェーラでは無かったから」
偉大なワインを造る為には頭を使うだけでは無くて、「勇気」が必要です。10年間ラヴェーラを造る事を止めた事も「勇気」だと思います。現在ワインガイドブックも100点満点が連連発し、インフレ状態となっていますが(笑)、昔は98点ですら頻繁に与えられる点数ではありませんでしたから。「ラヴェーラが98点も取っているのに造るのを止めるなんて。馬鹿じゃないの!」と家族にまで言われましたね。

例えば高級なショッピングストリートで高級な靴を買うとしますね。家に持ち帰って履いてみたらそれほどシックリとこない。つまり自分にとってラヴェーラは心地の良いものでは無かったからです。一般的なラヴェーラのバローロとしては良いのだけれど、自分たちが思い描くラヴェーラでは無かったからです。10年もの間、売れるはずのものを造らない訳ですから当然経済的損失が生じましたが、今は自分たちが思うシックリとくるラヴェーラが造れています。2014年はフレッシュさ、タンニン、塩っぽさが感じられます。本当に喜びを与えてくれるワインです。私はラヴェーラを試飲するたびに微笑みがこぼれてしまいます。若いヴィンテージの厳格さと固さが解って頂けると思います。3年熟成された2011年は様子が変わってきていますスパイスやミントの香りが感じられます。

試飲3.
バローロ ラッツァリート 2014
バローロ ラッツァリート 2006

ラッツァリートブドウ栽培も昔から行われている歴史的な環境「ラッツァリート」
ラッツァリートはセッラルンガ村に位置する畑です。歴史的に重要な畑で、「ラッザレート」という元々は病院施設を指す言葉でした。その昔は流行していたペスト菌に対して、空気が綺麗な場所に隔離する為に病院施設が建てられました。それがこの地域です。そういう意味ではとても綺麗な場所です。ブドウ栽培も昔から行われている歴史的な環境で、人間にとっても「治らないものも治る」と考えられていた程、優れたブドウを産み出す土地です。

「ラッツァリートをグランクリュと呼ばないのならば、何をグランクリュと呼ぶのか」
ラッツァリートは海が隆起して出来た土壌でラモッラ村の土壌よりも古い歴史があります。セッラルンガの特徴はタンニンが厳格で固さを持つ男性的なバローロが産まれます。ミネラルが豊富でスパイシー、茶葉やグリーンティーのニュアンスもあります。力強く厚みがありますが、若い時に飲んでも美味しいです。村こそ違いますが、ラヴェーラと比べると早い段階から楽しめると思います。ラッツァリートは400年以上も前から偉大なワインが造られるといわれている場所です。「ラッツァリートをグランクリュと呼ばないのならば、何をグランクリュと呼ぶのか」と言える畑だと思います。1年間に5000~6000本しか造る事が出来ません。

「力強いワインを造る事は簡単だがエレガントなワインを造る事はとても難しい」
2014年は畑の特徴を理解するにはとても良いヴィンテージで、是非2014年を飲んで頂きたいですね。ワイン造りにおいて「力強いワインを造る事は簡単だがエレガントなワインを造る事はとても難しい」という言葉があります。ボディや力強さは後から付け足すことも出来ますが、エレガント、フィネス、複雑性というものは人間や機械が出来る事ではありません。ブドウ畑で産まれるものです。つまり「ブドウ畑にそういった要素があるか、ないか」という事です。2006年は実に素晴らしいですね。イチジクやプルーンを思わせる凝縮感のあるアロマ、柔らかい口当たりがあり余韻も長いです。

偉大な熟成能力、並外れたフィネス、卓越したバランス、持続性
バローロ カスティリオーネ 2014、2016
バローロ カスティリオーネ 2014、2016


ヴィエッティが瓶詰めしていない11のグランクリュがありますが、単一畑バローロしても全く問題の無いもので、他の生産者にしてみたらトップワインに成りうる畑です。3~4年樽熟した後、ブラインドテイスティングしてふさわしいグランクリュのワインをブレンドしてバローロカスティリオーネとしてリリース、更にランゲネッビオーロとしてリリースしています。バローロカスティリオーネはヴィエッティのベースとなるバローロとなります。
試飲コメント:スパイスや紅茶の葉、
バラの花びらを伴う熟したチェリーのリッチで凝縮感のあるアロマ。
力強く豊かなタンニンとフレッシュな酸、男性的ストラクチャーを持つ。
非常に偉大な熟成能力、並外れたフィネス、卓越したバランス、持続性のある余韻を持つバローロ。

非常にクラッシックかつ伝統的なワイン
バローロ ラヴェラ 2011、2014
バローロ ラヴェラ 2011、2014


ヴィエッティの単一畑の中では新しいワインです。1999、2000年と造ったのですが、2000年に関しては『ワインスペクテーター』で98点まで頂きましたが、自分たちは納得いく出来映えでは無かったので造るのを止めました。確かに美味しかったのですが、自分たちが考えるラヴェーラの表現が出来ていなかった。2000年を最後にラヴェーラを造るのは10年間止めました。
試飲コメント:優れたストラクチャーとしっかりしたタンニンを持つ
非常にクラッシックかつ伝統的なワインに仕上がっている。
若いうちはブーケが閉じ気味で酵母の香りがほんのり感じられるが、
グラスに注ぐとスパイスやミントの香りと共に徐々に開いていく。
力強いストラクチャーと凝縮感がタンニンを円やかにする。

凝縮感のあるアロマ。柔らかく丸みのあるタンニンを伴うエレガントな
仕上がり
バローロ ラッツァリート 2006、2014
バローロ ラッツァリート 2006、2014


ラッツァリートは海が隆起して出来た土壌でラモッラ村の土壌よりも古い歴史があります。セッラルンガの特徴はタンニンが厳格で固さを持つ男性的なバローロが産まれます。ミネラルが豊富でスパイシー、茶葉やグリーンティーのニュアンスもあります。力強く厚みがありますが、若い時に飲んでも美味しいです。村こそ違いますが、ラヴェーラと比べると早い段階から楽しめると思います。ラッツァリートは400年以上も前から偉大なワインが造られるといわれている場所です。「ラッツァリートをグランクリュと呼ばないのならば、何をグランクリュと呼ぶのか」と言える畑だと思います。
試飲コメント:しっかりした骨格ながら非常に丸みのある味わい。ヴェルベットのような柔らかい口当たり。イチジクやプルーンを思わせる
凝縮感のあるアロマ。柔らかく丸みのあるタンニンを伴うエレガントな
仕上がり。余韻も長い。
インタビューを終えて
『ワインスペクテーター』で98点の高評価を得ながら「自分たちが思い描くワインでは無かったから」と何と10年もバローロ ラヴェーラをボトリングしなかったヴィエッティ。右に並ぶものがない「究極のモノ造り」の哲学がヒシヒシと伝わってくるセミナーでした。10年振りにリリースする事になったバローロ ラヴェーラ2010年は『アントニオガッローニ』が100点満点を付け、最上の評価で復活を称えています。

「偉大なワインを造る為には頭を使うだけでは無くて、「勇気」が必要」という言葉も印象的でした。時代が変わろうとも決して信念を曲げる事がない偉大な生産者ヴィエッティのワインからは伝統的な美しく力強いバローロの味わいがしっかりと感じられます。

ヴィエッティ社 ルカ クッラード ヴィエッティ氏 エレナ ペンナ クッラード女史
ヴィエッティのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒