ブルネッロ ディ モンタルチーノの歴史的名門「コルドルチャ」インタビュー&垂直試飲

2019/03/13
突撃インタビュー
 
2019年2月27日 コルドルチャ社 パオラ テアルディさん

ブルネッロ ディ モンタルチーノの歴史的名門「コルドルチャ」インタビュー

コルドルチャ社パオラテアルディさん
コルドルチャは、モンタルチーノでいちはやくブルネッロを造り始めた歴史的名門ワイナリーです。長年トスカーナの貴族たちが所有していた農園を1973年にピエモンテの実業家チンザノ家がフランチェスキ家から購入、現在のワイナリーとしてのコルドルチャが始まりました。540ヘクタールという広大な土地のうち、144ヘクタールがブドウ畑、さらにオリーブ、小麦、タバコなど様々な植物を育て、生物多様性を作りだしています。今やトスカーナ最大のビオワイナリーとなったコルドルチャの歴史や哲学についてエクスポートマネージャーのパオラ タルディさんにお話をお聞きしました。

ブルネッロの黎明期からワイン造りを行っている歴史的ワイナリー。実業家チンザノ家の所有となりコルドルチャの現在の歴史が始まる

モンタルチーノの造り手は今では200以上いますが、元々は数えるほどのワイナリーしかありませんでした。コルドルチャはモンタルチーノの歴史を造り始めた初期のころからの造り手になります。

その歴史はとても古く、1700年代にさかのぼることができますが、当時は穀類やタバコなどの栽培をしていた農園でした。ワイン造りを始めたのは1900年代に入ってからです。記録としては1920年にシエナで開催された見本市で賞をとったことが残っています。

チンザノ氏
コルドルチャの農園は代々トスカーナの貴族たちが所有してきました。1958年、当時の所有者だったフランチェスキ家はレオポルドとステファノの兄弟が分割で相続し、それぞれイルポッジョーネとコルドルチャという別々のワイナリーを立ち上げました。ステファノは子供がいなかったため農園経営を継続せずに1973年にピエモンテの実業家チンザノ家に売却しました。こうしてコルドルチャの現在のワイナリーがスタートしました。チンザノ家はすでに酒類製造販売業で成功していましたし、資本力もあり、経営力がありました。コルドルチャにとってチンザノ家が所有者になったことは非常に大きな意味をもったことになります。

540ヘクタールの広大な敷地のうち144ヘクタールがブドウ畑。さらに様々な植物を育て、生物多様性を実現。トスカーナ最大の有機栽培生産者に

チンザノ家が購入したのは540ヘクタールという広大な土地でした。現在、そのうち144ヘクタールがブドウ畑で、80%がサンジョヴェーゼになります。それ以外ではカベルネソーヴィニョン、メルロー、シラー、プティヴェルド、チリエジョーロ、ピノグリージョ、シャルドネ、ヴェルメンティーノ、モスカデッロを植えています。

コルドルチャの敷地はモンタルチーノの南部にあり、中世のヴィラがある小さな村のサンタンジェロ イン コッレから、鉄道のそばのサンタンジェロ スカロに広がる土地になります。ブドウ畑以外は大部分は森が広がり、樹齢100年を超えるオリーブや、小麦、果樹園、豆類などが育っています。さらに以前ここで栽培されていたタバコの栽培も始めました。

このお話をさせて頂いたのは、コルドルチャの哲学を感じてもらいたいと思っているからです。様々な植物を育てることで生物多様性が生まれます。有機認定も取得しました。コルドルチャはトスカーナで最大の面積の有機栽培生産者となっています。

さらに、養蜂もしていますし、七面鳥や鶏なども育てています。ワイナリーの訪問者にふるまう食事は全てコルドルチャの敷地の中でとれたもので、「キロメートルゼロ」を実現しています。

コルドルチャ所有地
 

大学との共同研究によって地質を細かく分類。最高の知識を使い伝統をリスペクトするワイン造り

コルドルチャとフィレンツェ大学コルドルチャは大学と共同研究を行い、さまざまな研究を行ってきました。ピサ大学やミラノ大学とも行っていますが、特にフィレンツェ大学との研究が大部分を占めています。株密度についてや、畑の雑草をどのように残すか、さらには畑を細かく分割して土壌タイプを分類しました。これにより、コルドルチャの畑には様々なタイプの土壌があることがわかりました。

サンジョヴェーゼクローンの研究も行い、4つのクローンがコルドルチャの名前で登録されています。このような研究が積み重なり、現在のコルドルチャのワインの基礎となっています。

コルドルチャは「ブルネッロの伝統的造り手」として知られています。もちろんそれは正しいのですが、伝統的だからといって古いやり方を続けているということではありません。新しく、最高の知識を蓄え、それを用いて伝統をリスペクトしたワイン造りを行っているのです。

複数の畑をブレンドするクラシックブルネッロと、単一畑ブルネッロ「ポッジョ アル ヴェント」

コルドルチャは2つのブルネッロがあります。複数の畑のサンジョヴェーゼをブレンドして造るクラシックブルネッロと、単一畑で造る「ポッジョ アル ヴェント」です。

クラシック ブルネッロは、3年間大樽で熟成させます。大樽は25、50、75ヘクトリットルの3つの異なる大きさの、スラヴォニア産とアリエ産のミックスです。収量としては規定上1ヘクタール8トン以下のところ、6トンで造っています。コルドルチャの生産量の約25%がこのブルネッロになります。

ポッジョ アル ヴェントは、当初は1974年に植樹した4.5ヘクタールでしたが、徐々に広がって現在は7ヘクタールです。良い年にだけ造るリゼルヴァになります。ポッジョ アル ヴェントとは「風の丘」という意味ですが、風が強いわけでなく、常に風が吹いている畑になります。

ブルネッロの長期熟成を重視し、オールドヴィンテージのストックに力を入れる

コルドルチャ オールドヴィンテージコルドルチャは毎年一定の本数をストックするようにしています。クラシックブルネッロで3~5000本はストックします。年々、このストックの量を増やしています。オーナーのチンザノ氏は私達がストックワインを売りすぎると文句を言ってきます(笑)。それは、ブルネッロを熟成させる重要性をよくわかっているからなんです。

1997年のポッジョ アル ヴェントは『ガンベロロッソ』の年間最優秀ワインに選ばれました。その当時、私達はストックすることの重要性の意識が低く、受賞のお祝いにたくさんのイベントを開催して、多くのボトルを使ってしまいました。だから残念なことにほとんど残っていないんです。さらに悪いことに、数少ないストックも2年前にワイナリーが盗難に遭った際に盗まれてしまいました。1997年のポッジョ アル ヴェントはだからとても希少です。

コルドルチャ「ブルネッロ ディ モンタルチーノ」垂直試飲(1995、1999、2001)

このインタビューの前に、銀座の「ビステッケリア イントルノ」さんで開催されたコルドルチャのクラシックブルネッロのオールドヴィンテージの比較試飲会に参加しました。コルドルチャでは、長期熟成のポテンシャルがあることを早くから意識し、毎年、一部を熟成のためにストックしています。そしてワイナリーで熟成させてからリクエストに応じてリリースしています。

※2019年2月の時点では最新ヴィンテージ2014がイタリアでリリースされ始めています。

垂直試飲とともに、パオラさんに各ヴィンテージの特徴をご説明いただきました。

1995年:完璧な年。春期は好ましいコンディションでかつ適量の降雨。8月は比較的気温が低く、収穫時期のコンディションはパーフェクトで例年より遅い収穫となった。そのためブドウは完熟し、ワインの出来は素晴らしいものとなった。

1999年:力強く濃厚。最初は難しい年に思われたが季節とともにコンディションに恵まれた。春は十分な降雨に恵まれ、夏期は乾燥式イ音も高かったが高すぎることはなかった。秋期も天候に恵まれ最良のコンディションで収穫できた。結果、非常に凝縮感と優れたストラクチャーをもつ骨太の力強く濃厚なワインになった。

2001年:エレガントな調和。4月に強い寒波に襲われ、ブドウの量が激減。7月の最終週から8月の始めにかけて熱波のため収穫時期がかなり早まった。調和のとれた温かみのある味わい。

3つのヴィンテージを2001年、1999年、1995年の順に試飲しました。

コルドルチャ垂直試飲

エレガントな調和をみせる2001ヴィンテージ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (参考商品) 2001
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (参考商品) 2001


エレガントな調和。4月に強い寒波に襲われ、ブドウの量が激減。7月の最終週から8月の始めにかけて熱波のため収穫時期がかなり早まった。調和のとれた温かみのある味わい。
試飲コメント:2001年はとてもエレガント。色合いも透明感のあるルビーレッド。滑らかかつ濃密なタンニンとバランスとれたやわらかな果実味。芯のしっかりとした素晴らしい骨格によって伸びやかな飲み心地を作っています。

骨太の力強く濃厚な1999ヴィンテージ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (参考商品) 1999
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (参考商品) 1999


力強く濃厚。最初は難しい年に思われたが季節とともにコンディションに恵まれた。春は十分な降雨に恵まれ、夏期は乾燥式イ音も高かったが高すぎることはなかった。秋期も天候に恵まれ最良のコンディションで収穫できた。結果、非常に凝縮感と優れたストラクチャーをもつ骨太の力強く濃厚なワインになった。
試飲コメント:1999年は、濃厚かつ強い甘みがガツンとくる、ボリューミーな印象。複雑なアロマからは濃厚さと熟成感が現れ、飲むと黒糖を思わせる濃密で上品な甘みに圧倒。その後、様々な要素が顔を見せてくる。ある意味、驚きのヴィンテージ。

完璧な年となった1995ヴィンテージ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (参考商品) 1995
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (参考商品) 1995


完璧な年。春期は好ましいコンディションでかつ適量の降雨。8月は比較的気温が低く、収穫時期のコンディションはパーフェクトで例年より遅い収穫となった。そのためブドウは完熟し、ワインの出来は素晴らしいものとなった。
試飲コメント:1995年の印象は、完璧なヴィンテージという表現に相応しい、熟成を重ねて美しく調和のとれた気品のある味わい。エレガントな凝縮感がしっかりとした酸と特徴的な旨味とともにゆっくりと広がっていく優美な美味しさ。さらに熟成させてからの変化も見てみたいと思いました。
インタビューを終えて
安定した品質と洗練された美味しさで長年愛され続けているコルドルチャ。今回、改めてお話をお聞きして、その安定感を継続させる底力を再確認することができました。ヴィンテージによっては困難な年もあるはずですが、量は減らしても品質は絶対に落とさないという自負も感じました。

ブルネッロのストックにも非常に力を入れている、ということで、売りすぎると怒られるというエピソードにも驚きました。今回、ブルネッロディモンタルチーノの3つのバックヴィンテージを比較試飲することができましたが、23年、19年、17年と熟成を重ねたブルネッロ ディ モンタルチーノの変化とヴィンテージの特徴を感じることのできるとても貴重な機会となりました。

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