土着品種×国際品種の異色ブレンド!独創的発想と注意深い栽培哲学で注目を集める「ムステラ」

2019/03/13
突撃インタビュー
 
2019年3月11日 ムステラ社 ジュリアーノ イウオリオ氏

バルバレスコエリアで土着品種×国際品種の異色ブレンド!独創的発想と注意深い栽培哲学で注目を集める「ムステラ」

ムステラ社 ジュリアーノ イウオリオ氏と
元々栽培農家で2003年から自社で醸造、ボトリングを開始した「ムステラ」はワイナリーの歴史こそ非常に浅いですが強いパッションを持ったジュリアーノ イウオリオは既に各方面から注目されており今後の飛躍も期待されているピエモンテの新星ワイナリーです。伝統的品種に捉われずに、土着品種に国際品種をブレンドしたり、異なるブドウを全て一緒に混醸する等、唯一無二とも言える独創的発想と他の生産者も舌を巻く注意深い栽培哲学で注目を集める生産者です。ムステラ社のジュリアーノ イウオリオ氏にワイナリーの歴史とその拘りの醸造についてお話を聞きました。

ランゲ地方でも最も高い標高500メートルエリアで2003年から自社醸造ボトリング

畑大
元々栽培農家から2003年自社で醸造ボトリングを始める
私達のワイナリーはバルバレスコに程近いトレッツォ ティネッラ村に位置しています。両親はブドウ栽培農家で、造ったブドウを生産者に卸していました。2003年、私が21歳の時に自社にて醸造と瓶詰めを始めました。栽培に関しては小さな頃から父と一緒に行っていましたし、醸造もピエモンテの友人のワイナリーを手伝いながら、「ブドウの品質」こそが、大切である事を学んでいきました。自社で瓶詰を始めて約16年が経ちましたが、常にブドウの品質を高める事を考えています。現在9種類のワインを造っています。

ランゲ地方でも最も高い標高500メートルエリア
畑は標高500メートルとランゲ地方でも最も高いエリアに8ヘクタール所有しています。その場所はミネラル豊富な土壌で冷涼な風が吹き抜ける特徴があります。標高の高さ、ミネラル豊富な土壌、冷涼さの3つの要素からブドウにとって理想的な場所と言えます。毎日畑に出向き、状態をチェックし注意深く作業をすれば、素晴らしい品質のワインが産まれます。私達のワイナリーはバルバレスコのエリアにあるのでバルバレスコも少量造っています。

「量を造るのではなく高品質なワインを造る」

イウオリオ氏「量を造るのではなく高品質なワインを造る」
1987年からは一切化学肥料などを使用せず、現在では減農薬(リュットレゾネ)の手法と取り入れているのでブドウの畝間には雑草が生い茂っていますが、「雑草が伸びているということは(ブドウ畑自身が)しっかりと生きている証拠」でもありますね。毎日畑を廻り、ブドウの健康状態を常にチェックしています。総生産量は約6万本程です。小さなワイナリーですが、私はムステラが「量を造るのではなく高品質なワインを造る造り手」と思ってもらえたら嬉しいですね。私達のワインの共通点は「フレッシュ感、酸味、しっかりと味わい」です。私達は両親2人、2人の従業員、そして私の5名でワイナリーを運営していて、畑~販売まで全て自分達でやっています。
 

新しい考え方でワインを造りたい「ブレンドではなく、混醸」

ロゴ新しい考え方でワインを造りたい「ブレンドではなく、混醸」
複数品種で造られるランゲ ビアンコ ジョヴィネとランゲ ロッソ ミルズは混醸を行っています。品種ごとの発酵・熟成で瓶詰め前に「ブレンド」する手法ではなく、複数の品種を同時に醸造させています。ラベルは土と太陽に挟まれたグラスを表しています。つまり自然から産まれたワインである事です。

ソーヴィニョンブラン70%、シャルドネ20%、ピノネロ10%のブレンド「ジョヴィネ」
ランゲ ビアンコ ジョヴィネはソーヴィニョンブラン70%、シャルドネ20%、ピノネロ10%のブレンドです。単一品種でボトリングする事が多いピエモンテのエリアでは「新しい考え方」でワインを造りたいと思っていました。つまり様々な品種のハーモニー、調和を重視したワインで辛口過ぎず、甘すぎない味わいです。ジョヴィネは色々と検証を重ねながら完成させたワインです。

畑斜面「力強いワインですが、私達のワインの特徴である酸とミネラルがしっかりとしています」
ジョヴィネはアロマティックでストラクチャーのしっかりとした白ワインです。ピノネロはピエモンテで珍しいですが、今から20年程前に植えました。3種のブドウは別々に醸造するのではなく、3種一緒に混醸、ステンレスタンクと一部バリックで醗酵をしています。熟成は80%ステンレスタンク、20%バリックを使う事でより満ち足りたエレガントな味わいになるとともに、フレッシュ感を失う事無くボトル熟成も可能になります。力強いワインですが、私達のワインの特徴である酸とミネラルがしっかりとしています。これテロワール由来によるものです。最初に酸味とミネラルを、その後に果実の力強さや甘やかさが感じられます。あまり冷やし過ぎずにグラスの中で少しずつ温度上げながら楽しむと、アロマや味わいの表現力も豊かになります。白身肉料理や卵を練り込んだパスタ等にも合わせる事が出来ます。

バルベーラ50%、ネッビオーロ25%、ピノノワール25%のブレンド!唯一で特別なワイン「ミルズ」

インタビュー唯一で特別なワインを造りたかった「ミルズ」
ランゲ ロッソ ミルズの畑はトレイゾの急な斜面で造られています。バルバレスコも名乗れるエリアの畑です。バルベーラ50%、ネッビオーロ25%、ピノノワール25%のブレンドです。ファーストヴィンテージは2004年です。ミルズとはスペシャルの意味があります。ミルズは唯一で特別であるワインを造りたかったのです。ピノネロは世界的に見ても非常に重要な品種だと思っています。飲んで頂くとお分かりになると思いますが、非常にエレガントな飲み心地があります。とはいっても決して軽い味わいではありません。白ワイン「ジョヴィネ」同様に3品種を別々造らず全て混醸します。バリック50%、大樽50%で18ヶ月熟成させています。個性の異なる3品種ですが非常に調和がとれています。ラベルに何も書かれていないのは好奇心を掻き立てる為にあえてデザインしました。「このワインは何だろう?」とね(笑)

フレッシュさ、ミネラル感がしっかりと感じられるシャルドネ
ランゲ シャルドネ 2017
ランゲ シャルドネ 2017


このワインはストラクチャーもしっかりとしていますが、フレッシュさ、ミネラル感がしっかり感じられ、バランスが取れています。毎日畑をくまなく見てまわり、ブドウの生育状態を確認します。塩味、酸味を感じた後に余韻の長い味わいが楽しめるシャルドネです。
試飲コメント:若いパイナップルのように甘酸っぱさを感じる。ドライな口当たりで軽めの料理に向きます。淡いイエローで、白い花や果実感に富んだ香りが広がります。

濃厚で円やかで複雑なボディ「ジョヴィネ」
ランゲ ビアンコ ジョヴィネ 2017
ランゲ ビアンコ ジョヴィネ 2017


ソーヴィニョンブラン70%、シャルドネ20%、ピノネロ10%のブレンドです。単一品種でボトリングする事が多いピエモンテでは「新しい考え方」のワインだと思います。ピノネロはピエモンテで珍しいですが、今から20年程前に植えました。3種のブドウを混醸してステンレスタンクと一部バリックで醗酵しています。
試飲コメント:濃厚で円やかで複雑なボディですが、ピノ ネロの綺麗な酸が全体を見事に引き締め、実に美しいシェイプです。余韻には清々しさと豊かな風味が混じり合う奥深さもあり、抜群のハーモニーを奏でる堂々たる存在感です。あまり冷やし過ぎずにグラスの楽しむと、アロマや味わいの表現力も豊かになります。

豊かな果実味と筋の通ったエレガンス
バルベーラ ダルバ ルビア 2016
バルベーラ ダルバ ルビア 2016


15カ月間バリック熟成していますが、それに耐えうるしっかりと熟したブドウでなければならないのです。畑では少しの房しか残しません。アルコール度数は14.5%もありますが、ワインは決して重すぎず、軽やかさがあります。良質の酸があるからです。

※バルベーラ ダルバ ルビアは、バルベーラ ダルバ スペリオーレ ルビアに名称変更しました。

試飲コメント:力強いルビーの色調でプルーンやブルーベリーの豊かなフルーツ香にバニラやカカオの香ばしいニュアンスが豊かに重なります。飲むと、イキイキとした酸味と豊かな果実感、バリックの風味が見事に溶け合っています。果実感やバリックの風味はありますが、重々しさやもたついた感はなく、筋の通った酸と力強さが見事に共存しています。

バルベーラ、ネッビオーロ、ピノノワールの3種のブレンド
ランゲ ロッソ ミルズ 2015
ランゲ ロッソ ミルズ 2015


バルベーラ50%、ネッビオーロ25%、ピノノワール25%のブレンドです。ピノネロは世界的に見ても非常に重要な品種だと思っています。飲んで頂くとお分かりになると思いますが、非常にエレガントな飲み心地があります。とはいっても決して軽い味わいではありません。白ワイン「ジョヴィネ」同様に3品種を別々造らず全て混醸します。バリック50%、大樽50%で18ヶ月熟成させています。個性の異なる3品種ですが非常に調和がとれています。
試飲コメント:バルベーラ、ネッビオーロ、ピノノワールの3種のブドウを使用しています。バルベーラのふくよかな果実感もありながら、酸とタンニンもしっかりと感じられ、とてもエレガントな仕上がり。飲み心地が良く風味も豊か。他には無い唯一無二の個性があります。
インタビューを終えて
1981年生まれのイウオリオさんが造る新しいスタイル、斬新な発想が印象的なインタビューとなりました。伝統的なバルバレスコエリアで、ピノネロを植え、白ワインにピノネロを混醸した「ジョヴィネ」をリリースさせるなど、「他には無い」唯一無二のワイン造りを行っていてかなり個性的に思えますが、いざ試飲してみると、とてもバランスが取れていてしっかりとしたブドウの味わいがあり、完成度の高さがありました。ある種シャンパーニュに近いような白、黒ブドウのブレンドの発想。既存の概念に囚われない新世代の造り手のエネルギーを感じました。

イウオリオさんが「どのワインが一番好きですか?とよく聞かれるのですが、それぞれのワインを同じく敬意を払って造っています。(飲む方にとって)好みはあると思いますが、私にとっては全て最高の品質を目指して造っています。季節によっても、また日によっても飲みたいワインは変わっていくものだと思います。どれが最高かというのはとても難しい質問ですね(笑)」とワイン愛に溢れたコメントにも共感が持てました。

他にはないスタイルで土地を表現するイウオリオ氏は、異なる品種を自在に操るまさに「天才肌」。是非お試し頂きたい若手生産者です。

ムステラ社 ジュリアーノ イウオリオ氏とトスカニースタッフ
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