モンタルチーノで100年以上続く家族経営ワイナリー「ラ フォルトゥーナ」突撃インタビュー

2019/04/23
突撃インタビュー
 
2019年4月16日 ラ フォルトゥーナ社 アンジェロ ザンノーニ氏

モンタルチーノで100年以上続く家族経営ワイナリー「ラ フォルトゥーナ」突撃インタビュー

ラフォルトゥーナ社オーナー、アンジェロさんシモーナさん夫妻
ラ フォルトゥーナは、モンタルチーノで100年以上続く家族経営のワイナリーです。1907年の創業以来ワイン造りを続けていて、1969年にブルネッロ協会が設立したときの25社のうちの1社です。カンティーナがあるモンタルチーノ北部はビオンディサンティとも隣接。さらにモンタルチーノ南部の銘醸地カステルヌォーヴォデッラバテにも畑を所有。ヴィンテージごとに北と南のサンジョヴェーゼの比率を変えて、常に高品質なブルネッロを造っています。4代目になる現オーナーのアンジェロザンノーニ氏にワイナリーの歴史とワイン造りへのこだわりについてお話しをお聞きしました。

モンタルチーノ北部に借りた畑をカードゲームに勝利して手に入れて自社農園がスタート

ラフォルトゥーナファミリーラ フォルトゥーナは私の曽祖父であるアンジョリーノがモンタルチーノの北部の畑を借りて、1907年に始めたワイナリーです。それ以来、ずっとワインを造っています。当初は造ったワインはもっぱら量り売りをしていました。また、ブドウ畑だけでなく、家畜も飼っていましたし、小麦粉などの穀類も造っていた、昔ながらの農園でした。

その農園は、私たち家族と、もうひとつの家族で借りていたのですが、1935年に畑の所有者がモンタルチーノを離れることになったので売却されることになったのです。でも、両方の家族に分けるわけにいかず、どちらか一つに譲渡することになりました。その頃は私の祖父のジーノがアンジョリーノと一緒にワインを造っていたのですが、彼はとてもカードゲームが好きで何でも賭けていました。それで「どちらの家族が畑をもらうか、カードゲームで勝負しよう」と持ちかけたのです。その結果、ジーノが勝利して私たち家族がこの2ヘクタールの農園を所有することができたのです。ゲームに勝って畑を手に入れた、なんてラッキーなんだ、ということからこの農園の名前を「ラ フォルトゥーナ(LA FORTUNA:幸運)」と名付けたのです。

ゲームに負けたもう一つの家族の方はその後、エミリアロマーニャへ移住しました。現在、どこで何をしているのか、残念ですがわかりません。

モンタルチーノの評判が高まり、大手ワイナリーとともにブルネッロ協会を設立

ラフォルトゥーナボトル畑を手に入れてから農園の規模も少しずつ大きくしていきました。ただその後、戦争が始まったのでその間はワイン造りに注力することができない時期もありました。戦後、1947年に私の父ジョベルトが生まれます。そしてまた元のようにワイン造りを再開しました。現在、手元に残っている最も古いブルネッロは1967年のものです。水がもうない、古い井戸に貯蔵しています。

モンタルチーノには私たちのように小さな家族経営の造り手だけでなく、徐々に大規模なワイナリーも出てきました。そのおかげでモンタルチーノのワインの評判も高まっていき、祖父も父もシエナなどの町のレストランまでワインを売りいくようになりました。そして、モンタルチーノのワインをさらに発展させるために祖父と父は大規模ワイナリーと一緒になってブルネッロ協会の設立をしたのです。協会設立時は25社が参加しました。

ラフォルトゥーナ100周年25社の生産者は集まって醸造方法や販売方法など、様々な内容についてアイデアを持ち寄って話し合いを重ね、団結していったのです。協会ができたおかげでさらにブドウ畑を増やし、1969年に25社だった生産者は今では250社にもなりました。私達も2007年には100周年を迎えることができました。

モンタルチーノエリアは30000ヘクタールありますが、ブルネッロとしてい認定を受けている畑は3000ヘクタールです。そこから造られるワインは14,000,000本です。

ラフォルトゥーナの畑
 

当初の北部の畑に加え、南部の銘醸地カステルヌォーヴォ デッラバテにも畑を購入、品質の向上とアイテムを増やすことに成功

ラフォルトゥーナ収穫
私は1982年の生まれです。小さいころからブドウ畑を見て育ったので自然と興味がわき、ワインの仕事を選びました。1988年ごろまでは家畜を飼っていたのですが、実際のところほとんどその記憶はありません。小さい頃から私にとっては自分の家はブドウ畑という印象が強いです。

1997年にラフォルトゥーナは転換期を迎えます。モンタルチーノ南エリアの5ヘクタールの畑を購入したのです。その5ヘクタールはブルネッロ ディ モンタルチーノだけを造っています。現在、ラフォルトゥーナは全部で40ヘクタールの土地があり、そのうち18ヘクタールがブドウ畑です。北部が13ヘクタール、南部が5ヘクタール、という比率になります。モンタルチーノは北エリアと南エリアで特徴が全く異なります。土壌タイプも違いますし、気候も違います。夏は5度ぐらいの気温差があるんですよ。

北部の土壌は凝灰岩と粘土質、南部は砂質です。気候の違いも組み合わさって、北部の畑のブドウはよりエレガントで香り高いものになり、南部の畑のブドウはより凝縮感のあるワインになります。だから私達はそれぞれの畑で造ったワインをブレンドしてブルネッロを造っています。そのブレンドも年によって変えています。また、南エリアに畑を購入したことでロッソディモンタルチーノとリゼルヴァ、さらにサンタンティモ、というようにアイテムを増やしていきました。

ロッソディモンタルチーノは北エリアにある2ヘクタールの畑だけで造っています。ブルネッロに使わなかったものをロッソに使っているのですが、南エリアの畑のサンジョヴェーゼは強すぎるので、私達は「ロッソには向かない」と考えているので使っていません。

私達の北エリアの畑は、ビオンディ サンティやカサノヴァ ディ ネリが近くにあります。そして南エリアだとポッジョ ディ ソットやオリヴェートが近くにあります。

※カサノヴァ ディ ネリのジャンロレンツォさんが3月にトスカニーに来られたことを話すと「彼とは友達だよ」と嬉しそうに話してくださいました。

醸造家パオロヴァガッジーニ氏ラ フォルトゥーナのワイン造りを支えるヴァガッジーニ親子

ラ フォルトゥーナのエノロゴは、親子2代にわたって私たちを支えてくれているパオロ ヴァガッジーニが担っています。パオロの父もコンサルタントととして働いてくれていました。彼はどちらかというと販売についてのアドバイスが強かったのですが、息子のパオロは醸造の専門家です。彼はシエナに住んでいて、サンジョヴェーゼの醸造家としては3本の指に入ります。私たち以外にもモンタルチーノの15社のワイナリーのエノロゴとして活躍しています。

アーティストでもある妻シモーナさんによってラベルデザインがさらに洗練、独自性がうまれる

妻のシモーナはアートを勉強してきたのでデザインのセンスがあります。ワインにとってラベルデザインはとても大切で、彼女も私と結婚してワイン造りにかかわるようになって、ラフォルトゥーナのラベルデザインについて色々なアイデアを出してくれました。ブルネッロディモンタルチーノのラベルデザインも、もともとは父の考えたラベルでしたが、新しいラベルに変わりました。

そして2011年からは通常のラベル以外に特別なラベルを日本向けに造っています。ここには2011,2012,2013の3つのヴィンテージがありますが、これは全部彼女のデザインで、彼女が描きました。このラベル、実はワインで色付けしているんです。それぞれの年に造られたワインでそれぞれのラベルを描いています。

この3つのラベルのコンセプトは「ワイナリーの風景」です。どれもが、ラフォルトゥーナのどこかで見かける場所を切り取ったものになっています。そして2014年はこれからですが、もう彼女の頭の中にアイデアができています。恐らく、ワイナリーではなく、モンタルチーノの風景をテーマにしたものになるかと思います。

ラフォルトゥーナ特別限定ラベル

エントリーラインながらバリック熟成で造る珍しい「ロッソ トスカーナ」
フォルトゥネッロ ロッソ トスカーナ 2016
フォルトゥネッロ ロッソ トスカーナ 2016


フォルトゥネッロは、若い樹齢のサンジョヴェーゼで造るエントリーラインのロッソ トスカーナです。2016年はブルネッロ協会が5つ星に認定したヴィンテージで、サンジョヴェーゼ100%で造っています。ヴィンテージによっては、カベルネソーヴィニョンやプティヴェルドを混ぜることもあります。

ベーシックなワインですがバリックの旧樽(2年目および3年目)で6ヶ月間寝かせています。ブルネッロの生産者の多くはロッソトスカーノを造っていますが、このクラスのワインでバリック熟成をしているのは珍しいと思います。

重くなく、飲み心地の良いワインなので前菜やプリモなどの軽めの料理と合わせるといいと思います。

試飲コメント:ラズベリーなどの甘やかさのある心地よい香り、口当たりはやわらかく、スムーズな飲み心地。しっかりとした果実味で酸とタンニンもほどよく、とてもバランスがいい。モンタルチーノのサンジョヴェーゼらしいエレガントさがあってレベルの高さを感じる。素晴らしいコストパフォーマンスワイン。

長期熟成ポテンシャルのある4つ星ヴィンテージ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (2013年限定特別ラベル) 2013
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (2013年限定特別ラベル) 2013


先ほどお話ししましたが、こちらは日本向けに特別にデザインしたラベルになっています。2013年のブルネッロを使って描いています。2013年はブルネッロ協会としては4つ星のヴィンテージですが、長期熟成のポテンシャルもある、非常にいい年です。5つ星にできなかったのは恐らく、少し
雨が多くて気温が低かったせいかと思います。協会としては4つ星ですが、私達は5つ星のレベルにあると考えています。

2013年は非常に凝縮感を感じるワインになっています。アルコール度数は15%ありますが、凝縮感があるのでその高さを感じさせません。ブドウのブレンド比率は南エリアの畑のものを30%、北エリアのものが70%です。大樽で36ヶ月間熟成させています。2013年は2012年よりも酸の値が高く、あと10年もすると2012年よりもいい状態になっていると思います。

2014年についてですが、難しいヴィンテージでしたので良いブドウだけを選び抜いて造りました。相当数のブドウを捨てたことになります。この年は南の畑のサンジョヴェーゼだけを使いました。北と南の両方に畑があるのは品質を確保するうえでも非常に有利で大切です。

試飲コメント:しっかりとした重厚感とバランスの良さが光る。説明の通りアルコールの高さをあまり感じない。凝縮した果実味の中に上質な酸とミネラルが調和した完成された味わい。

北エリアのサンジョヴェーゼだけで造った暑い年2012年のブルネッロ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (2012年限定特別ラベル) 2012
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (2012年限定特別ラベル) 2012


2012年のブルネッロは非常に暑い年でしたので北エリアのサンジョヴェーゼだけで造っています。夏は40度にまで上がりました。2013年は最高でも30度ほどでしたので全然違います。もしも2012年を南エリアのブドウだけで造ったらとんでもなく凝縮された濃厚なワインになったと思います。
試飲コメント:暑いヴィンテージ、というイメージの2012年ながら、その美しいスタイルとエレガントさに驚く。綺麗な酸が味わいを引き締め、余韻に感じるミネラルの旨味もとても上品。時間の経過とともにスパイシーなニュアンスも感じる。

リリース直後から飲みやすいやわらかな味わいの2011年ブルネッロ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ (2011年限定特別ラベル) 2011
ブルネッロ ディ モンタルチーノ  (2011年限定特別ラベル) 2011


2011年は2013,2012と比べて、今飲むと一番やわらかい味わいになっていると思います。リリースした直後から飲めるのが2011年の特徴です。実はリリースして6ヶ月後には完売してしまったんです。ひとつ前の2010ヴィンテージがとにかくがっしりとしたタイプのワインになりましたので、飲めるようになるまで非常に時間がかかりました。その特徴とは全く違うのが2011年ですね。

2011年も雨の多い年でした。雨が多い年は通常ならば南の畑のサンジョヴェーゼの比率が高くなるのですが、この2011年は50%ずつです。北と南の畑のブドウは別々に醸造し、ボトリング前にテイスティングしてブレンド比率を決めています。

試飲コメント:滑らかな口当たりの、やわらかでバランスのとれた味わい。香りのトーンもエレガントで優しく包み込まれるよう。落ち着いてずっと飲み続けられるブルネッロ。

独特なスパイシー感が特徴の2009年ブルネッロ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2009
ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2009


2009年は今までの中で一番飲み頃になっていると思います。雨もまあまあ降った年で、ブドウの比率は南が70%、北が30%です。味わいに舌を刺激するようなスパイシーなニュアンスが感じられるのが特徴です。このスパイス感がなぜ生まれるのか、私達も不思議だったのですが、この年に熟成に使う大樽の一部を新しくしたので、その影響かもしれません。大樽はスラヴォニア産を使っています。
試飲コメント:熟成を重ねてこなれた印象もある中に、舌をピリッと刺激するスパイシーな感覚が面白い。様々な味わいの要素が次々とあふれる、複雑味のある美味しさ。滑らかさの中にしっかりとしたコクとミネラルがあり、後味も非常に長い。

厳選したブドウ樹だけを使用。良い年にしか造らないリゼルヴァ2004年
ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ 2004
ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ 2004


良い年だけ、最高のブドウだけを使って造るリゼルヴァです。1年間フレンチオークのバリック、そして3年間大樽で熟成させています。バリックは30%だけ新樽を使います。ラフォルトゥーナで新樽を使っているのはこのリゼルヴァだけです。

ブドウは、ひとつの樹に最大でも4房しかならないものを選びます。畑によってできる房の数は違いますが、平均すると8房ぐらいです。実を付ける前のツルの状態でまずカットし、収穫の1ヶ月前に房の大きさや形によってグリーンハーベストを行い、最終的にリゼルヴァ用のブドウを選んでいます。カンティーナには大小様々な15のステンレスタンクがあって、それぞれリゼルヴァ用、ブルネッロ用、という具合に分かれています。リゼルヴァ用は一番小さいタンクになります。

今、2004年は絶好調の飲み頃になっていると思います。

試飲コメント:色合いも、香りも非常に濃厚。その印象のまま凝縮した濃い味わいがまず口の中を広がるが、上質なミネラルと酸によって味わいがまったくもたつかず、むしろシャープさや清涼感も感じさせる。
インタビューを終えて
「ラ フォルトゥーナ(幸運)」という素敵な名前のワイナリー、今回その名前の由来を知ってとても親近感を覚えました。100年もの間、ずっとモンタルチーノで、そして家族だけでワインを造り続けることは生半可なことではなかったと思いますが、オーナーのアンジェロさんのフレンドリーな雰囲気からも、きっと地元でも愛されているワイナリーなんだろうなと感じました。

モンタルチーノの北と南ではキャラクターの違うワインができることは良く知られていますが、ラフォルトゥーナではその両方の畑を持つことでヴィンテージの特徴に応じて比率を変え、そしてその良さを引き出しています。彼らのワイン造りレベルの高さを今回の試飲を通して実感することができました。

エントリーラインにしてバリック熟成の「フォルトゥネッロ」からリゼルヴァまで、モンタルチーノのサンジョヴェーゼの素晴らしさ、魅力を存分に感じられるラインナップになっています。2011年、2012年、2013年の飲み比べも本当にオススメ。素晴らしいラベルデザインも必見です。

ラフォルトゥーナ社オーナー、アンジェロさんシモーナさん夫妻
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