2019年6月10日 ポイエル エ サンドリ社 フェデリコ サンドリ氏
トレンティーノワインの教科書と言うべき清らかでクリーンなワイン造り!ワイン醸造の常識に革命を興し続ける偉大な自然派「ポイエルサンドリ」 |
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1975年にフィオレンティーノ サンドリ氏がトレンティーノにブドウ畑を購入し、友人であった醸造家のマリオ ポイエル氏と共に立ち上げた「ポイエル エ サンドリ」は1代でトレンティーノを代表する造り手にまで成長しました。彼らの畑は谷の合間で日陰が多いトレンティーノにおいてトスカーナと同等の日照量を確保できる約束された素晴らしいエリア「フェアド」でテロワールを尊重した「トレンティーノワインの教科書」とでも言うべき清らかでクリーンなワイン造りを続けています。創業時からブレンド用にしか使われなかった土着品種「ノジオラ」の素晴らしいポテンシャルを見抜き単一品種でボトリング。20年を経過してもイキイキとした酸とミネラルを残すノジオラの長期熟成の可能性を世界に示しています。ブドウを洗う新発想、空気に触れさせない醸造をいち早く発明したマリオ氏はそれまでのワイン造りに常識を革命を起こした、まさに「ワイン界のエジソン」的存在。自然派と呼ばれる多くの生産者が彼らのワインに「ヴァンナチュールより自然なワイン造り」と敬意を払うポイエルエサンドリ社のフェデリコ サンドリ氏にお話を聞きました。 | ||||||||||
1975年トレンティーノの小さな村「ファエド」で創業 |
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ワイナリーの歴史からお話しましょう。「ポイエル エ サンドリ」は1975年、父のフィオレンティーノ サンドリと友人のマリオ ポイエルの2人がトレンティーノとアルトアディジェの州境にある小さな村ファエドに設立したワイナリーです。現在は創業者である父とマリオ、そしてマリオの息子と、私を含めた3人兄弟でワイナリーを運営しています。 「自分達で価値ある仕事をしよう」と意気投合 |
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トスカーナと同等の日照量が確保出来る特別な地「ファエド」 |
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白ブドウ品種が向いている土地である事をいち早く見抜く ワイナリーを創業した1970年代当時、(ファエドでは)ブレンド用に使われる黒ブドウのスキアーヴァが多く栽培されていて、それほど重要なワインが造られる産地とは認識されていませんでした。父はフェアドの地で白ブドウであるノジオラ、ミュラートゥルガウ、ソーヴィニョン等、白ブドウ品種が向いている土地である事をいち早く見抜き、これまでにはなかった新しいワイン造りに挑戦する事になります。 「トスカーナと同等の日照量が確保出来る特別な地」 土壌も2億5000万年前に隆起した土壌で火山岩と粘土が混じあう非常に珍しい畑からワインが造られています。当初は2ヘクタールの畑とガレージに置かれた簡単な醸造設備のみでしたが、現在自社畑は40ヘクタールになり、トレンティーノを代表する造り手となりました。創業時から私達はブドウが本来持つ力が失われないように(ブドウの持つ)個性を表現する事に注力しています。 畑は3つのエリアに分かれます。まず「フェアド」ワイナリーでも一番古いエリアでドロミティ渓谷の山間にあります。石灰質の土壌で山がちな地勢の畑です。「バルディチェンブラ」は谷にある畑で火山性土壌で鉄分の多い赤土が混じります。「グルメス」は標高1000メートルの畑で森に囲まれています。近隣のワイナリーは近くても10キロ先となります。「グルメス」では主に「ゼロインフィニート」に使われるソラリス種が植えられています。 |
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「自然なワイン」=「醸造は何もしない」ではない |
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発明家マリオの「ブドウを洗う」新発想 ワイナリーを始めた当初から畑~醸造に至るまで全て自分達の手でワイン造りを行ってきました。買いブドウは一切使いません。私達のポリシーは「畑でもセラーでも極力化学的なものは使わない」という事です。 「畑で採れた野菜は洗うのにどうしてブドウは洗わないのか」 フランチャコルタのカ デル ボスコも6年前から導入 仕組みとしては顆粒上のクエン酸を1%に希釈した水に15秒程潜らせ、底から泡を出し、ジェットバスのような状態でブドウを傷つけずに揺らします。その後水洗いをして室温でファンを使って乾燥させています。 Q.何故クエン酸をつかうのですか? クエン酸は畑で少しだけ使用するボルドー液を落とす効果があり、泡は果皮に付着した固形物を落とします。10年前に遠くアイスランドで大噴火がありましたが、畑のブドウを洗うと赤い火山灰が流れ出てきました。ファエドまで火山灰が飛んできているのです。もしも(ブドウを)洗わなければ(ワインと)一緒に発酵されるので何かしらかの影響をワインに与えていたのでしょう。 15秒ほど洗うという短い時間は果皮から水分が浸透しない時間で、その後、ブドウはすぐに常温の風で適度に乾かされます。この作業により果皮にある重金属である銅、そして硫黄、更に自然と付着してしまう排気ガス等、更にバクテリアまで落とすことができるのです。ブドウを綺麗に洗う事で、醸造の際に(ワインを)フィルターをかける必要もありません。 洗う事でブドウに付いた酵母も流してしまうのでは? ブドウにある酵母の約30%が外側、約70%が果皮の内側にあります。果皮の内側にある酵母には強さがあり、洗い流したとしても醗酵する事に何も問題はありませんし、これまで醗酵で問題が起きたことはありません。仮に外側の酵母が30%失われたとしても、むしろ天敵バクテリアのない環境下で酵母は一気に活動を強めていきます。加えて、ブドウの破砕から醸造まで一切酸素に触れさせないシステムとなっています(これもマリオの発明です!)窒素を充填したチューブ状のパイプを通して真空状態でブドウを送ることでブドウが酸化せず、ブドウ本来の天然の味わいを保つことが出来ます。 「自然なワイン」=「醸造は何もしない」ではない 私達はワイン造りにおいて機械的な介入をしていますが、ブドウが本来持つ自然な味わいをワインに反映させる為に追求した結果です。私達は「自然なワイン」=「醸造は何もしない」ではない、と思っています。ポテンシャルの低いブドウで酸化対策や温度、バクテリア対策をしていなかった事で傷んでいたり、極度の還元状態のワインを「自然派ワインだから仕方ない」と言うのは造り手としての責任を果たしていないと思っています。 |
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「ゼロインフィニート」に使われる野生品種ソラリス |
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ボルドー液すら必要としない野生品種「ソラリス」
「ゼロインフィニート」に使われるソラリスという品種は野生品種で「フィロキセラ」にも耐性を持つドイツの「フライベルグ大学」が古代種を掛け合わせて完成させた品種です。化学的なアプローチを一切必要とせず、有機で認められているボルドー液すら必要としません。私達は標高1000メートル、森に囲まれた「グルメス」の畑で7ヘクタール栽培しています。ソラリスは現在トレンティーノ全体では50ヘクタールにも栽培面積が広がりました。 ステンレスタンク醗酵でアルコール醗酵が終わらないうちに無ろ過でボトリングする、昔ながらの製法「メトドアンセストラーレ」で造られています。こうしてボトル内で自然に生成される二酸化炭素がいわゆる「酸化防止剤的な」役割を果たします。原材料100%ブドウのみです。化学的なものを足すべきではありませんが、何もしないことが良いわけではなく、醸造過程でも欠点が出ないように努力すべきだとと考えています。 「食事と楽しむ時はボトル下部には澱をゆっくりと混ぜて楽しむが良いでしょう」 ゼロインフィニートの上澄み部分は非常にフレッシュなワインです。レストランではアペリティフとしても楽しめます。食事と楽しむ時はボトル下部には澱をゆっくりと混ぜて楽しむが良いでしょう。ラルドコロンナータ、サラミ、フリット、脂身の多い魚と好相性です。ゼロインフィニートの澱には旨みがあるのでリゾットを造る時に使う野菜のブロード(出し汁)と合わせて造ると非常に美味しくなりますね。 長期熟成も可能な偉大なポテンシャルを秘めた土着品種「ノジオラ」 一般的なノジオラは平地で造られデザートワインとなる事が多いですが、標高の高い石灰質主体のフェアドの畑で造る私達のノジオラはフレッシュな辛口ワインとなります。 私達は1980年代からその重要性にいち早く着目しました。当時ノジオラはブレンド用に使用されることが殆どでしたが、私達はノジオラ種単一でワインを造ってきた先駆者でもあります。ノジオラはリースリングと共通する特徴があり、若いうちはフレッシュでフルーティーさがありますが、長期熟成に向いている品種で、(熟成とともに)骨格が出てきてリッチさと複雑味が増していきます。今日は20年経ったノジオラ1998年をワイナリーから持ってきました。2018、2017年と比較してみて下さい。色調が明らかに違います。ステンレスタンクしか使わないノジオラですが、今非常に複雑で豊かな香りが出てきています。かつ酸とミネラルはしっかりとあり、驚くほどのフレッシュさが保たれています。 |
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アルブレヒト デューラーの作品をラベルに採用 |
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アルブレヒト デューラーの作品をラベルに採用 ラベルはドイツのルネサンス期の画家、版画家のアルブレヒト デューラー(1478~1528)の作品です。デューラーの作品は元々好んでいてラベルにしたいと思っていました。あとになって分かったのですがデューラーがドロミティを通って旅をしていたことが分かり、縁を感じました。今から20年位前でしょうか、ドイツのデューラーの美術館から突然招待状が届きました。「ワインのラベルに使ってくれてデューラーを広めて下さってありがとうございます」と表彰されました。「何か指摘を受けるのではないか」、と内心ドキドキしていたので、お詫び用に車にワインをいっぱい積んで美術館に向かいましたね。結果は全く違いましたが(笑) |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
ブドウ本来の鮮烈なアロマ、清らかさに溢れる瑞々しい味わいが非常に印象的で、まさに「トレンティーノワインの教科書」とでも言うべき目を見張るクリーンなワイン造り。フェデリコ サンドリ氏の「私達は「自然なワイン」=「醸造は何もしない」ではない、と思っています」という言葉が印象的でした。
ブドウを洗う発想、極力酸素に触れさせない醸造は伝統的なワイン造りには無かった発想だと思いますが、ブドウ本来の豊かなアロマ、深みをより引き出す為にポイエルエサンドリのマリオ氏が発明したブドウを洗うアイデアは現在カ デル ボスコのフランチャコルタをはじめイタリアで200社以上で採用されています。 ポイエルエサンドリは固定概念だけで判断せずにワイン醸造の常識に革命を起こし続けています。「マリオさんの発明はいったい幾つあるのですか?」と尋ねると「沢山あり過ぎてもう数えられませんね」と。 自然派と呼ばれる多くの生産者が彼らのワインに「ヴァンナチュールより自然なワイン造り」と敬意を払っています。トレンティーノのワインを語る上で外す事の出来ない生産者だと思います。是非お試しください。 |
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トレンティーノワインの教科書と言うべき清らかでクリーンなワイン造り!「ポイエルサンドリ」
2019/06/14