「元祖」キャンティ!2000年以上の時を超えてキャンティを現代に受け継ぐ造り手バディア ア コルティブオーノ

2019/10/09
突撃インタビュー
 
2019年9月12日 エマヌエラ ストゥッキ プリネッティ女史

「元祖」キャンティ!紀元前からバディアコルティブオーノの敷地内にあるチェタムラの井戸が「キャンティ」と呼ばれていたことが判明。2000年以上の時を超えてキャンティを現代に受け継ぐ造り手バディア ア コルティブオーノ

エマヌエラ・ストゥッキ・プリネッティ女史
バディア ア コルティブオーノの敷地からはエトルスキ時代から、ここ、ガイオーレ イン キャンティのこの場所がキャンティと呼ばれていたことを証明する最古の資料が発見されました。エマヌエラ ストゥッキ プリネッティ女史は古から続く歴史を受け止め、自らがキャンティジャーノ(キャンティに住む人々の事)であることを誇りにワインを造ります。日本に何度も自らの足を運ぶ、バディア ア コルティブオーノの当主エマヌエラ・ストゥッキ・プリネッティ女史にお話を伺いました。

バディア ア コルティブオーノの敷地内で発見されたキャンティの歴史

発掘敷地内からは古代エトルスキ代やローマ時代の遺跡も発掘
エトルリア人はローマ人より前に、この地域に住んでいた民族です。その古代民族の遺跡が、私どもの敷地内で発掘されました。フロリダ大学から調査チームがきて、トスカーナ州と共同で調査をしています。
見つかった史料を調べると、「キャンティ」という言葉は、最初にエトルリア人によって使用されていたという事実が明らかになりました。
エトルリア人はチェタムラにある井戸を「キャンティ」と呼んでいたようです。
チェタムラの井戸からは、紀元前3世紀から紀元前1世紀の青銅のツボが非常に良い状態で見つかりました。ツボの中にはブドウの種が入っていました。このブドウの種は、現在解析中です。

青銅のツボまた、チェタムラの井戸からは、ローマ時代の貨幣も見つかりました。その貨幣はユリウス カエサルやクレオパトラの時代の物もあり、その時代の戦争があった時の兵士への報酬ではないかと予想しています。(一同「あのカエサル!!」と感嘆の声)
こういった遺跡が自分たちの土地から発掘されることは、とても感慨深いものがあります。

ガイオーレインキャンティ「キャンティ」はワインの名前として有名ですが、元々は地域の名前です。このことは消費者を混乱させます。ワイン名で「キャンティ」とつくワインは沢山ありますが、元々の「キャンティ」と呼ばれている地域で造られていない「キャンティ」もあります。元々の「キャンティ」と呼ばれる地域で造られた「キャンティ」は「キャンティ クラシコ」と呼ばれます。

1846年からバディア ア コルティブオーノを守るストゥッキ プリネッティ家

修道院と小作人の良好な関係が築いた農園
小 モンテベッロ
バディア ア コルティブオーノは、1051年にジョヴァンニ グアルベルト修道士が、貴族からサン ロレンツォ教会の寄付を受けて創設され、この名前が付きました。ワイナリー名Badia a Coltibouno の「Badia」は修道院、「Coltibouno」の「Colti」はカルチャーや収穫、「Bouno」は良いという意味があります。
たくさんのベネディクト派の修道士が集まりました。創設時から修道士たちは、ブドウとオリーブの耕作に尽力しました。
修道士たちは畑を耕す小作人に家を与え、メッザドリーアmezzadriaと呼ばれる折半耕作の制度を造りました。これはできた作物の半分を修道院と小作人で半々に分ける制度です。この制度により、小作人は領主の農奴にならずに済むようになりました。

大変だった時代を切り抜けた父ピエロ ストゥッキ プリネッティ
二度の大戦があり50あった農園を耕していた、それぞれの小作人は、戦争でいなくなったり、辞めてしまったりして農園の管理をするのが難しくなっていました。畑は敷地内に点在し、非常に効率が悪くなっていました。そこで、父はバラバラになっていた畑を一か所に集めるように、ブドウ木を植え替えました。こうして、現在のバディア ア コルティブオーノの礎が固められました。
現在は、約800ヘクタール以上の土地を所有し、その内の60ヘクタールがブドウ畑、18ヘクタールはオリーブ畑です。

大切にしてきたキャンティ地区の9種類の土着品種
80年代には、ここキャンティ地区でも国際品種を植えるのが流行りました。
しかし私たちの考えとは違うので、それをしませんでした。私たちは昔からこの近辺で栽培されてきた品種だけでワインを造り続けました。古代から歴史のある、キャンティ クラシコエリアに住んでいるので、どの品種を植えるかをよく考えました。私たちは昔から受け継がれたキャンティ地区で栽培されてきた、9種類の土着品種を大切にしています。最近あまり聞かなくなってきた品種で、今もワインを造り続けています。

9品種

以前から有機栽培を続けて2000年からビオ認証!新しい醸造所を建設しワインの品質が飛躍的に向上
以前から有機栽培でしたが、2000年からビオロジコの認証を取りました。醸造には天然酵母を使います。一本のブドウ木に付ける実は少なく、グリーンハーベストはあまりしません。自然な実の付き方で、ブドウ木は病気になりにくいです。虫もたくさん寄ってくるように工夫もしています。
1997年には約60ヘクタールの畑の真ん中に新しい醸造所を建設しました。
以前は各契約農家がブドウを別々に収穫し、醸造したものを、ワインの状態で買い取っていました。この醸造所が出来て、ブドウは新鮮なうちに醸造所に運ばれて、私たちが醸造します。そのお蔭でワインの品質は飛躍的に上がりました。
新しい醸造所の外観は、周囲の環境に溶け込むように配慮しました。醸造所内は、グラヴィティーシステムを採用し最新の設備を導入しています。

バディア 全景
 

マレンマの太陽を浴びた陽気なヴェルメンティーノ トスカーナ
トラッポリーネ 2017
トラッポリーネ 2017


このワインは「コルティブオーノ セレクション」として取り扱っており、ワインの状態で買っています。産地はマレンマで、造っているのは、コルティブオーノのエノロゴであるマウリッツォ カステッリ氏です。
先日、和食とこのワインを合わせる機会がありました。鮎と胡麻豆腐のお吸い物と、とても組み合わせがよかったです。
試飲コメント:パイナップルなど完熟した南のフルーツの豊かなアロマ。生の果実をそのままかじったような、瑞々しさがあります。ミッドパレットから背骨となる酸をしっかりと感じて、このワインの立体的な味わいを構成しています。

「元祖」キャンティ!が造るフラッグシップのキャンティ クラシコ
キャンティ クラシコ 2016
キャンティ クラシコ 2016


2016年は5月に雹が降りましたが、7月と8月は暑く乾燥した天候は高品質のブドウをもたらしました。
2019年は7月に雹害にあいました。たった4分間、雹がふっただけで、収穫量の40%~50%が被害にあいました。7月の雹は、来年の芽も傷をつけるため、来年の収穫量にも影響します。
試飲コメント:抑制された香り。スミレ、チェリーの小さな赤い果実の奥に、炭やなめし皮などのアロマが潜んでいる。やさしいアタックでタンニン分はシルキー。

キャンティ エリアのサンジョヴェーゼへのオマージュ
サンジョヴェート 2013
サンジョヴェート 2013


2013年はとても良い年でした。まだ若くエネルギーに満ちています。1980年に発売したキャンティのサンジョヴェーゼに注目した名前です。
昔この辺りではサンジョヴェーゼの事をサンジョヴェートと呼んでいました。
地中の深いところにあるアルベレーゼという岩の層が炭酸カルシウムを多く含み、ワインにミネラル感を与えます。
試飲コメント:ブラックチェリー、赤いバラの若々しくピュアな香り。模範的なサンジョヴェーゼで果実味が豊かで、酸は穏やかで心地よく、バランスが取れています。滋味深いワインです。

キャンティ地区の土着品種9種類をブレンドしたキャンティ地区でしかできない独特のキュヴェ!
バディア モンテベッロ 2011
バディア モンテベッロ 2011


最近見向きされていないけど、30年ぐらい前まではよく使っていた、土着品種で造りました。結果的に9品種を同じ割合でブレンドになりました。2011年がファーストヴィンテージです。
こなれたタンニンで良いキャンティジャーノに仕上がりました。エレガントなワインは少し閉じこもっていないとなりません。
試飲コメント:鉄、ドライフルーツのプルーンなど重心が低い落ち着いた熟成のアロマ。オーケストラが奏でる交響曲のように調和します。ブラックチョコレートのフレイバーがあります。
インタビューを終えて
エトルリア時代の遺跡の上にあるバディア ア コルティブオーノ。エマニュエル女史はキャンティ クラシコ地区でワインを造り、自らがキャンティジャーノであることを誇りにしています。

「本当にエレガントなワインは、少し閉じこもっていないと」一緒にテイスティングをしていた時のエマニュエル女史のコメントが心に残りました。
少しこちらから近寄らないと真の姿が見えない奥ゆかしさ。日本の美的感覚に通じるような、美意識を感じました。

相手を魅了する、落ち着いた知的な話し方のエマニュエル女史。ワインは世間に媚びない、エマヌエラ女史そのもの。
きっとエマヌエラ女史の中に流れている時間は、世界のどこに行ってもキャンティジャーノなのでしょう。
このバディア ア コルティブオーノのワインを口に含んでもらえれば、その悠久の時間の流れを感じて頂けることでしょう。

集合写真
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