2019年12月5日 ブリガルダーラ社 マルチェッロ プオッロ氏
アマローネクラシコ地区のマラーノ谷にあるブリガルダーラに1929年創業。クリュ「カーゼヴェーチェ」「カーヴォロ」を所有、アマローネの伝統を尊重するとともにクリーンでエレガントな飲み心地の良いスタイルを確立。さらにアッレグリーニやマァジ等の歴史的生産者13社で「Famiglie Storiche dell’Amarone」を設立し、アマローネの地位向上とクリュ制度の確立を目指すブリガルダーラ突撃インタビュー |
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ブリガルダーラは、アマローネクラシコ地区のマラーノ谷にあるブリガルダーラに1929年創業した家族経営ワイナリーです。コルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラ、ガルガネガの土着品種だけを栽培し、アマローネDOCGとヴァルポリチェッラDOC、ソアーヴェDOCだけを造っています。単独所有する単一畑「カーゼヴェーチェ」のアマローネとヴァルポリチェッラはその稀有なテロワールを表現し、高い評価を受けています。また、アレグリーニ、スペリ、マァジ等の歴史的生産者13社で「Famiglie Storiche dell’Amarone」を設立、アマローネの地位向上とクリュ制度の確立を目指しています。アマローネの伝統を尊重するとともに、アパッシメントの先進技術を取り入れ、クリーンでエレガントな飲み心地の良いスタイルを貫くブリガルダーラのワイン造りについて輸出担当のマルチェッロ ブオッロ氏にお話を聞きました。 | ||||||||||
アマローネクラシコ地区のマラーノ谷にあるブリガルダーラに1929年創業。1200年代からすでにその名が古文書に残る由緒ある土地 |
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ブリガルダーラは、1929年にチェザーリ家がこの土地と建物を購入したことから始まります。ブリガルダーラはアマローネクラシコ地区の3つの重要な谷、フマーネ、マラーノ、ネグラルのうちのマラーノ谷にあり、1200年代の古文書にはすでにその名が記されていた由緒ある土地です。当初はブドウ以外にオリーブや果物、穀類などを造っていて、長い間ワイン醸造はやっていませんでした。ワイン造りを始めたのは1979年になってからです。 ブリガルダーラはヴェローナから北へ20kmほど上がった、マラーノ谷のサンピエトロ イン カリアーノ村にあります。カンティーナは1400年代の建物で醸造所と熟成庫があります。オーナーのチェザーリ家はここに暮らしています。現在の当主は2代目のステファノ チェザーリ氏で、3代目に当たる2人の息子、ランベルトとアントニオとともにワイナリーを経営しています。ステファノはブリガルダーラは“青年たちのワイナリー”と表現しています。私を含め、多くが20代から30代。ステファノが先を見据え、若い社員が多く働いている会社です。 畑はブリガルダーラのカンティーナの周囲と、ヴァルパンテーナ地区にある2つのクリュ「カーゼヴェーチェ」「カーヴォロ」、そして一番東のヴァルポリチェッラオリエンターレ地区にあります。これらの畑から4つのアマローネ、「クラシコ」「リゼルヴァ」「カーゼヴェーチェ」「カーヴォロ」と、3つのヴァルポリチェッラ「カーゼヴェーチェ」「リパッソ」「ヴァルポリチェッラ」、そしてレチョートとソアーヴェを造っています。 栽培しているのは土着品種のコルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラ、ガルガネガだけです。ワインは原産地呼称のDOCGとDOCだけになります。 ブリガルダーラのロゴマークは創業以来、一度も変わっていません。樽を横から見た円形をモチーフにしていてその周りに畑をイメージしたブドウの葉や蔦が描かれています。 |
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ヴァルパンテーナ地区の西端、クラシコ地区に接するクリュ「カーゼヴェーチェ」を単独所有。60ヘクタールの森に囲まれた稀有なテロワール |
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ブリガルダーラにとって最も重要な畑が、ヴァルパンテーナ地区の西端にある「カーゼヴェーチェ」です。ここは1990年代に購入した土地で、全部で70ヘクタールありますが、そのうち10ヘクタールがブドウ畑で残りの60ヘクタールは森です。この森はイタリア政府が管理している自然公園に続いているため、手を加えることはできませんし、畑を広げることもできません。ブリガルダーラだけが所有するモノポールになります。森ではトリュフが採れますし、オリーブオイルも造っています。
畑の標高は450メートルで南西向きです。森に囲まれた稀有なテロワールで非常に空気のきれいなクリーンな場所です。ここに行くとまるで幸福の島に自分がいるように感じます。この畑を購入した時からここがワイナリーにとって重要な畑になると確信していました。現在、クリュ「カーゼヴェーチェ」としてアマローネとヴァルポリチェッラスペリオーレを造っています。ラベルにはヴァルパンテーナとは表記せず、クリュ名を |
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アマローネで偉大な功績を残したクインタレッリの醸造家ロベルトフェラリーニ氏をエノロゴに招聘。クリーンでエレガントなスタイルを確立 |
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ブリガルダーラのエノロゴはアマローネでもっとも重要な人物で、クインタレッリの醸造家でもあった故ロベルトフェラリーニ氏 (2014年死去)が2007年ヴィンテージまで務めていました。フェラリーニ氏は『ガンベロロッソ2009』の最優秀醸造家にも選ばれている、素晴らしいエノロゴです。彼は、アマローネにクリーンさ、エレガントさ、そして飲み心地の良さを求めました。そのスタイルをブリガルダーラはずっと守り続けています。 フェラリーニ氏はアマローネ全体の技術レベルの向上に貢献しました。自身が教授を務めるヴェローナ大学と共同でアパッシメント研究センターを設立。ブリガルダーラの社員もこの研究センターで学んだ人たちです。 ブリガルダーラの使命はアマローネの伝統に飲み心地よさを加えたエレガントなスタイルを貫くこと ブリガルダーラのアマローネは「カーヴォロ」以外は残糖0で造っています。飲むとドライな辛口というよりは、ふわりとした柔らかさがあり、とても飲み心地がいいのです。この心地よさは糖ではない他の成分からもたらされています。 フェラリーニ氏のスタイルは、アマローネの原点である、ブドウに含まれる糖を全てアルコールに変えて、残糖のない、アマーロ(苦い)にするとともに、それによってアルコール度数は高くなってもクリーンでエレガントな飲み心地の良いワインにすることです。これがまさにブリガルダーラのワインのスタイルです。 アマローネは伝統的に残糖がほぼなくなるまで発酵させて造るので、甘いワインではありません。ブリガルダーラはその伝統を守り、そこに飲み心地の良さを加えることです。そのため使用するバリックも大樽もトーストは軽めにしています。 ロベルトフェラリーニ氏の教えを継承した若いエノロゴがブリガルダーラのスタイルを守る 今、ブリガルダーラのエノロゴは、ロベルトフェラリーニ氏の弟子であるエンリコニコリスとマルコフーリアが務めています。彼らはフェラリーニ氏の哲学を継承し、クリーンでエレガントな飲み心地の良いブリガルダーラのアマローネを守り続けています。ブリガルダーラには長年の顧客が大勢いますが、このぶれないスタイルを評価して下さっていると思います。 |
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アパッシメントを高いレベルで実現させるための共同施設「アパッシメント研究センター」&アマローネの地位向上とクリュ制度の確立を目指した「Famiglie Storiche dell’Amarone」 |
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ロベルトフェラリーニ氏がヴェローナ大学と共同で設立したアパッシメント研究センターは、ブリガルダーラも所属する「Famiglie Storiche dell’Amarone」の各ワイナリーが共同出資しています。「Famiglie Storiche dell’Amarone(ファミリエ ストリケ デッラ アマローネ)」は、アマローネで長い歴史のある13社の家族経営ワイナリーで組織され、アマローネの地位向上とクリュ制度の確立を目指しています。
アパッシメント研究センターはフマーネ谷にあり、アパッシメントを高いレベルで実現するための設備が整っています。ブリガルダーラは全てのアパッシメントをこのセンターで行っています。 アマローネは、収穫したブドウを通気性の良いスノコ状の容器に入れて約3ヶ月間乾燥させて造りますが、温度や湿度の管理が難しく、カビの発生などのリスクが伴います。センターでは温度・湿度を完璧に管理できるとともに、最新技術でブドウの変化をモニタリングして、粒に起こる外見的な変化だけでなく、化学的な変化まで追跡できるようになっています。このような最新技術や設備を個々のワイナリーで整備しようとすると莫大なコストがかかりますが、共同で出資することでそのコストを抑えることができます。 同じ施設内でアパッシメントを行ってもワインのスタイルはワイナリーごとに異なる アパッシメント研究センターは、基本的にどの生産者でも使うことができます。もちろん、出資ワイナリーが優先されます。センターの目的は、高品質なアパッシメントを可能にする環境を整え、ブドウの粒のモニタリングデータを元に、それぞれワイナリーのスタイルでワインを造ることです。だから、たとえ同じ施設内でアパッシメントを行っていても、ワインのスタイルはワイナリーごとに異なるのです。 造るアマローネは全て120日間のアパッシメント。期間を長くすることで濃くなりすぎない色合いになる ブリガルダーラのアマローネはそれほど濃い色ではなく、むしろ淡く感じるかと思います。これはアパッシメントの期間の長さが理由です。全てのアマローネのアパッシメントは120日間とアマローネの中でも長い方です。ワインの色は果皮から抽出されて付きますが、アパッシメントが長くなるほど果皮から色が出にくくなるのです。だから色の薄いアマローネほど、アパッシメントの期間が長いことになります。もっとも、使用するブドウ品種によっても色めは変わりますので一概には言えません。マァジのアマローネは非常に濃い色ですが、これはどちらかというとオゼレータという品種を使っていることに由来していると思います。 アレグリーニ、スペリ、マァジ等、アマローネの歴史的生産者で組織する「Famiglie Storiche dell’Amarone」の一員としてクリュ制度確立を目指す 先ほどから話に出ている「Famiglie Storiche dell’Amarone」は、2009年にアマローネで長い歴史のある13社の家族経営ワイナリーで組織されたグループです。アマローネの地位向上とクリュ制度の確立を目指しています。アレグリーニ、ベガーリ、ブリガルダーラ、グエッリエリ リッツァルディ、マァジ、ムセッラ、スペリ、テデスキ、テヌータサンタントニオ、トンマージ、テッレドルティヴェントゥリーニ、ゼナートの13社で活動しています。 バローロやバルバレスコ同様、アマローネのクリュ制度の確立を目指していますが、アマローネを造る生産者は協同組合などもあり、なかなか一つにまとまるのが難しいのが現状です。クリュ名を細かく表記した地図がENOGEA社から発行されていますし、ワインにクリュ名を表記するなど、少しずつ広めていかなければならないと思います。 |
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ヴァルパンテーナの単一畑「カーヴォロ」と、全ての畑の最良のブドウで造る「リゼルヴァ」 |
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今日持ってきているアマローネは2つあります。ヴァルパンテーナの単一畑「カーヴォロ」と、全ての畑から最良のブドウだけを選んで造る「リゼルヴァ」です。
カーヴォロはヴァルパンテーナにありますが、ワイン名にはクリュ名の「カーヴォロ」だけを表記しています。先ほどのカーゼヴェーチェと同じく、カーヴォロと記載することでヴァルパンテーナにあることが分かるからです。 カーヴォロとは、イタリア語でキャベツの意味です。畑の畝の様子がキャベツの葉に似ていたからとか、昔ここでキャベツなどの野菜を造っていたからとか、言われていますがその名前の由来ははっきりしていません。イタリア語では「カーヴォロ(キャベツ)」は、人をからかったりするときにも使われる言葉なので、そんなカーヴォロで造られたのに美味しいワインができる、そんな逆説的な意味もあるのかもしれません。 リゼルヴァは、ブリガルダーラが所有する全ての畑のなかから、最良のブドウをだけを選んで造っています。毎年造るわけではなく、ブドウの出来が特によかった年にだけ生産される、特別なアマローネです。ロベルトフェラリーニ氏によると、2007ヴィンテージは特に素晴らしい出来栄えで、クインタレッリにも匹敵する品質だと言っていました。2007、2009、2011とパーカーポイントで95点を獲得しています。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
ブリガルダーラのワインは、「バランスの良さと飲み心地の良さにこだわっている」というワイン造りポリシーそのままのエレガントなスタイル。多くの人がアマローネに抱いている「濃くて重厚」というイメージとは全く違います。ふわりと柔らかくエレガント。妖艶なアロマ。それでいてアマローネらしい滑らかさと芯の強さも兼ね備えたスタイルに、圧倒されました。食事に合わせて楽しめるアマローネとして身近に楽しめる造り手だと思います。ソアヴェはフレッシュでヴァルポリチェッラ スーペリオーレは凝縮感があり非常にコストパフォーマンスが高いと感じました。
アマローネの地位向上やクリュ確立を13の歴史的生産者達とともに取り組む活動も興味深く、これからのアマローネの世界がどう変わっていくのかも注目していきたいと思います。 日本へ紹介されたばかりの知られざる優良生産者ブリガルダーラのワインをぜひお試しください。 |
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アパッシメントの先進的技術を用い、土着品種だけにこだわってエレガントなスタイルを貫くブリガルダーラ突撃インタビュー
2019/12/24