2019年11月22日 アロイツ フェリックス イエルマン氏
北イタリアの宝石イエルマン!ミリ単位の緻密な品質管理から造られる衝撃の混植混醸で『ガンベロロッソ』最優秀白に輝く「カポマルティーノ」「ヴィンテージトゥニーナ」と“白ワインの王様”「ワードリームス」!世界中を魅了するイエルマン突撃インタビュー |
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イエルマンは、フリウリをイタリア随一の白ワイン産地に押し上げた、偉大な白ワイン生産者です。混植混醸という昔ながらの造り方に、最新の技術を駆使することで、隙のない洗練された味わいを生み出し、国内外で圧倒的な支持を得ています。今回は、4代目当主シルヴィオ氏の息子、フェリックス氏に、イエルマンの徹底された品質管理や、フラッグシップ「カポマルティーノ」「ワードリームス」「ヴィンテージトゥニーナ」を始めとする白ワイン、2018年にリリースされた新しいピノネーロ「ロンズブラウ」について詳しくお話を伺いました。 | ||||||||||
イエルマンの緻密な品質管理によって造られる「混植混醸」の偉大なワイン |
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イエルマンを代表する2つのワイン「カポマルティーノ」と「ヴィンテージトゥニーナ」は、複数の品種のブドウがひとつの畑に混ざって植えられていて、全てのブドウを同じタイミングで一度に収穫して一緒に醸造する「混植混醸」で造っています。これは昔の農民が行ってきた、伝統的な造り方で、祖父の代から続いています。
カポマルティーノは、フリウリの4つの土着品種フリウラーノ、マルヴァジーア、ピコリット、リボッラジャッラの混植、ヴィンテージトゥニーナはシャルドネ、ソーヴィニョン、マルヴァジーア、ピコリット、リボッラジャッラの5種類のブドウの混植になります。どちらも単一畑で、異なる品種のブドウ樹が混ざって植えられています。畑自体が古いため、現在のように品種ごとに分けて植えるということがなかったのです。イエルマンの中でも新しい畑については整然と植えられていますので、見るとその違いがはっきりわかります。 混植混醸と聞くと、ブドウ樹の管理が難しいのではないかと思われる人もいますが、私たちは最新の技術を駆使して徹底した品質管理を行っています。たとえ、適当に植えられているように見える畑でも、それは同じです。現在所有する160ヘクタールの畑全てにおいて、ブドウの葉の光合成具合をスキャニングして生育の状態をチェックしているのです。どうするのかというと、幅の小さい4輪車の両端にスキャナー用のカメラを取り付け、ブドウ樹の横を走り、一つ一つの葉の光合成具合をスキャンします。春から夏にかけて行うので、太陽の下でなかなかリラックスできる仕事です。日焼けもできます(笑)。 こうしてスキャンした結果を元に、ブドウ1本1本についてどの程度の栄養が必要かなどを詳しく見ていきます。それによって全てのブドウ樹が健康に最良の状態になるように管理をすることができるのです。 |
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祖父へのオマージュ!4種の土着品種の混植混醸で造る「カポマルティーノ」 |
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カポマルティーノは、1991年が初ヴィンテージでこの2016ヴィンテージが25回目のヴィンテージとなります。このヴィンテージは『ガンベロロッソ2019』で年間最優秀白ワインに選ばれました。畑は7ヘクタールで生産本数も非常に限られていて最大で1万本です。日本へは多くても480本ほどしか入っていません。
ここにはフリウラーノ、マルヴァジア、ピコリット、リボッラジャッラの4つの土着品種が植えられています。畑は丘になっていて、標高の高いところにはリボッラジャッラとピコリット、真ん中あたりにフリウラーノ、低いところにマルヴァジア、という風に分かれています。フリウラーノが一番多くて畑全体の70%になります。斜面地の段々の部分にフリウラーノを植えているわけですが、ひとつの段には1列しか植えていません。土地の面積の割には株数が少なく、そのおかげで風通しがよく、ブドウが健康な状態で育ってくれます。 これら4つの品種を一度に収穫してみんな一緒に醸造します。これはフリウリの伝統の造り方で、カポマルティーノは農民たちの昔ながらのやり方を踏襲したワインですし、祖父の代から行ってきたワイン造りです。 カポマルティーノのラベルには糸杉とリンゴの木と梨の木が描かれているのですが、これはカポマルティーノの畑を表現しています。丘の頂上には祖父が昔造っていたリンゴとナシの木があり、糸杉は畑の周囲に父が植えたものです。だからカポマルティーノは祖父の思い出として、祖父へのオマージュとして造っているワインです。 7ヘクタールという小さな畑は盆栽のようなものですね。小作農だった農民たちだから造ることができた田舎っぽさだったり、力強さだったり、野性味なんかを表現したいと思っています。 |
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イエルマンを代表するもうひとつの混植混醸「ヴィンテージトゥニーナ」 |
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ヴィンテージトゥニーナも単一畑の混植混醸によるワインです。1975年が初ヴィンテージで、当時は「混植混醸でこんなに美味しいワインをどうやって造ることができるのか」と大変話題になりました。この2017ヴィンテージで20回目のトレビッキエリを獲得しました。1997年ヴィンテージが『ガンベロロッソ』年間最優秀白ワインにも輝いています。
ヴィンテージトゥニーナはシャルドネとソーヴィニョン、マルヴァジア、リボッラジャッラ、ピコリットの5品種の混植混醸です。畑の標高の低い場所には湿度と肥沃な土地に向くが太陽をあまり好まないマルヴァジアとソーヴィニョン、真ん中あたりにシャルドネ、頂上付近にはやせた土地に向いていて日光を好むリボッラジャッラとピコリットを植えています。古い畑なので昔ながらのシルヴォー仕立てで植えられています。これはひとつの木から2つの枝が伸びていく方法で、多くのブドウを付けることができるやり方です。 混植混醸なので、1日に全てのブドウを一緒に収穫します。通常9月の第3土曜日に行っています。朝6時半ごろから始めて夜遅くまでかかります。ワイナリーにとって1年で一番長い日です。 品種によって成熟するタイミングは異なりますので一度に収穫するのことを疑問に思われるかと思います。5つの中でソーヴィニョンが最も早熟で、次がマルヴァジア、シャルドネと続き、一番遅いのがリボッラとピコリットです。収穫のタイミングは、シャルドネの成熟具合が完璧なタイミングに合わせていますが、先ほどお話ししたように、全てのブドウ樹をスキャニングしているので、成熟具合をしっかり管理していて、ヴィンテージトゥニーナにとってのそれぞれの品種のベストタイミングが収穫日になるようにしています。つまり、リボッラとピコリットはしっかり酸がある状態で収穫することによってワインのフレッシュさを形成するようになります。 このワインはフリウリを代表するワインであると同時にイタリアを代表する白ワインです。もちろん、コッリオらしさを表現することを一番に考えています。実は今年、ヴィンテージトゥニーナ専用グラスをリーデルと一緒に開発しました。グラスの形は今ここで飲んでいる、カベルネ用のグラスのような感じですが、グラス内部が波型に加工されていて、液体が触れる表面積を増やすようにしています。これによってヴィンテージトゥニーナのキャラクターを引き出しより楽しめることができます。若いヴィンテージトゥニーナでもいいですが、熟成したヴィンテージトゥニナを楽しむためのグラスになっています。みなさんにもぜひこのグラスで飲んで頂きたいですね。 |
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4つの単一畑のシャルドネで造る“白ワインの王様”ワードリームス |
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ワードリームスについては前回ここに来た時もたくさんお話ししたので(笑)良くご存じだと思います。“白ワインの王様”という存在ですね。セパージュはシャルドネ主体で少しだけ他品種を入れていますが品種名は非公開です。
ワードリームスは、他の白ワインにはない特別な香りが特徴です。まず、木樽の香り。そして南国フルーツの香りです。この香りをもたらす、4つの単一畑の最高のシャルドネから造っています。すべてコッリオのポンカ土壌の畑ですが、標高と向きが違うのでそれぞれのシャルドネは個性が違います。 4つの畑にはそれぞれ名前があります。RX MOTO、DUE PONTI、デセメネウス、MILLE FIORIです。RX MOTOとは、父が乗っている単車の名前、DUE PONTIはその畑の両側に川が流れていて、2つの橋が架かっているから、デセメネウスはラテン語で古代ローマ時代の物語に出てくる名前ですが綴りは忘れました(笑)。そしてMILLE FIORIは1000の花という意味ですが、100以上の種類の草花が咲いている畑です。アカシアの森に囲まれた場所にあり、春には咲き誇った花々から素晴らしい香りがしてきます。他品種の花があることは多くの種類の昆虫が飛んでくるので受粉に役立つのはもちろん、強いブドウが造られると言うメリットがあります。生物多様性がいかに重要であるかがわかります。 |
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フェリックス氏にとって忘れられない日!紫のスミレが咲く畑で造る新しいピノネロ100%「ロンズブラウ」の誕生 |
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今日は、特別なワインを持ってきています。日本にはまだ入荷していない、ピノネロ100%の「ロンズブラウ」です。初ヴィンテージは2013でこの2015年は2年目になります。レッドエンジェルと比べると、よりしっかりとした果実味とボディのあるスタイルです。チェリーやイチゴなどの果実味に加えて、ブラックチョコレートや樽やバニラ、燻したようなニュアンスも感じます。色もより濃密です。
ロンズブラウの畑はコッリオのロンザーノにある森の中の丘の単一畑です。ロンズブラウという名前は、“ロンザーノのブラウブルグンデル(ピノネロのドイツ語)”から名付けました。2000年に土地を購入して開墾して、2005年に植樹しました。 ロンズブラウの誕生には忘れられないエピソードがあります。2005年のある春の日に父のシルヴィオから「スミレを探しに行こう」と誘われて、その新しい畑まで一緒に行きました。そして「畑に紫のすみれが咲いていたらピノネロ、白のスミレが咲いていたらシャルドネを植樹しよう」と話をしていました。森の中の畑に着くと紫色のスミレが一面に咲いているのを見つけました。そこで私たちはピノネロを植えることに決めたのです。 その後、周りを探索しましたが、私たちの購入した北西向きの斜面には、紫のスミレしか咲いていませんでした。逆に南西側の斜面には白いスミレしか咲いていなかったそうです。 「スミレに適材適所があるように、ブドウにも適材適所がある。 いいワインを造るためには、品種のキャラクターを最大限に生かせる土地を探す。」ということが大切だということをそこで教わりました。 私は当時9歳でしたので、その日のことははっきりと覚えています。実はその日は2005年4月2日。前々代のローマ法王、ヨハネパウロ二世が亡くなった日なのです。畑から家に帰っている途中、大きな鐘の音が遠くから聞こえました。それは、ローマ法王が亡くなることを知らせる鐘でした。隣で父は涙を流していて、私も子供ながらに、とてもショックを受けました。 スミレを探しに行った日、ローマ法王が亡くなった日、 あの1日は私たちにとって、忘れることのできない1日になりました。 そのため、ラベルには、3色のスミレとローマ法王のシンボルを入れました。 このラベルは、伝統、信仰、思い出が詰め込まれた特別なラベルになっています。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
「イエルマンは、ミリ単位で味わいを調整して造ってくる。」と、以前に、ワインジャーナリストの宮嶋さんも絶賛していました。私も今回、ブドウ葉の要素調査を行い、最高の品質に持っていくというお話を聞き、徹底された品質管理に驚くとともに、イエルマンの洗礼された美しい味わいの秘密は、このきめ細やかな品質管理にあると強く実感しました。 また、写真を撮る際に、ちょっと待って!と言ってコルク栓の向きを一つ一つ揃えて並べているフェリックス氏の姿にも、きめの細やかさを感じ、(父はもっと細かい人なんだよ!と教えてくれましたが、)そんな細かいところまで目の行き届くイエルマン親子の性格がワインの味わいにも反映されているのだと思いました。 エレガント・モダンなスタイルで世界中を魅了する、イタリア最高峰白の作り手イエルマン。彼らの造るワインは、どれも繊細でエレガント、それでいて味わい深い計算しつくされた味わいです。 |
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北イタリアの宝石イエルマン!ミリ単位の緻密な品質管理から造られる衝撃の混植混醸で造る「カポマルティーノ」「ヴィンテージトゥニーナ」で世界を魅了するイエルマン突撃インタビュー
2020/01/14