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2021年3月12日 ニコロ カルツァ氏 Mr. Nicolo’ Calza
“フリウリのワイン造りの父”!フリウリ丘陵地のポテンシャルを確信し、1956年の初リリースからフリウリの地図をモチーフにしたラベルデザインで世界に知られる白ワインの名手「リヴィオ フェッルーガ」突撃インタビュー
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リヴィオフェッルーガは、フリウリで5世代に渡りブドウ栽培・ワイン造りを続け、白ワインの名手として世界中に知られる造り手です。“フリウリのワイン造りの父”と呼ばれた4代目のリヴィオは、フリウリ丘陵地のポテンシャルを確信し、誰よりも早く瓶詰めを始めた第一人者。2016年に102歳で亡くなるまで、コッリ オリエンターリ デル フリウリDOCのサブゾーン「ロサッツォ(2011年にDOCG認定)」の土地を愛し、フラッグシップ「テッレアルテ」、「アッバッツィアディロサッツオ」などの偉大なワインを生み出しました。今回は、彼の情熱を受け継いだ息子と娘たちが更なる発展を続けているリヴィオ フェッルーガの歴史と現在について輸出マネージャーのニコロカルツァ氏にオンラインでお話を聞きました。 |
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複数の国境に接し、複雑な歴史的背景と独特の文化を持つフリウリ ヴェネツィア ジュリア
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リヴィオフェッルーガはイタリアの北東、フリウリ ヴェネツィア ジュリア州(※以後フリウリと記載)のコルモンスにあります。フリウリは北がオーストリア、東がスロヴェニア、南がアドリア海、西がヴェネトと一部アルトアディジェに接している州です。地形的には北がアルプス山脈、南が平野、中央が丘陵地で、リヴィオフェッルーガは中央の丘陵地にあり、畑はコッリオDOCとコッリオリエンターリデルフリウリDOCにあります。
フリウリの現在の国境付近のエリアは、歴史に翻弄された場所で、リヴィオの家族もオーストリア帝国に統治されていた土地の中で転々としながらブドウ栽培を続けてきました。そして1930年代にフリウリの丘陵地でのブドウ栽培の経験を重ねたリヴィオは、コッリオ(当時メダーナ、コサーダ、サンマルティン ディ クイスカと呼ばれていた土地)の魅力に取りつかれ、フリウリ丘陵地の可能性を感じるようになります。
第2次世界大戦でワイン造りの中断を余儀なくされたリヴィオは、終戦後、ロサッツォに土地を購入しワイン造りを再開。それは決して簡単なことではありませんでした。フリウリにも工業化の波が来て農民たちはみな畑を去り、都会の工場で働くことを選んだため、丘陵地で農業をする人が誰もいなくなったのです。そんな時代が続いてもリヴィオはひとり丘陵地でのブドウ栽培とワイン造りの道を貫き、1956年に最初のワイン「ピノグリージョ」をリリースしました。
フリウリの土地を伝えるための斬新なラベルデザイン
1956年にリリースした、リヴィオの初めてのワイン「ピノグリージョ」。ラベルにはこのワインが造られているフリウリ・コルモンス周辺の地図が描かれています。丘が連なり、小さな村が点在している様子がよくわかる地図です。消費者にこのワインがどのような場所で造られているのかを知ってもらい、自身が愛しているフリウリの土地を伝えたい。当時からワインと土地の結びつきを意識していたリヴィオのマーケティング能力の高さがわかります。この地図を描いたデザインはずっとリヴィオ フェッルーガのワインに使い続けられています。
リヴィオが愛し続けたロサッツォの土地とロサッツォ修道院
ロサッツォは、コッリ オリエンターリ デル フリウリDCOのサブゾーンで、2011年にDOCGに昇格しました。ロサッツォは2000年以上前からブドウ栽培が行われてきた土地で、11世紀~12世紀に修道院(アッバッツィア)によって確立されました。ロサッツォの丘の上に建つ修道院は12世紀に造られたフリウリで最古のセラーをがあることでも知られています。修道士たちがこの地の住民に土地の耕し方を教えて以来、ロサッツォではずっとブドウ栽培が途切れることなく行われてきました。ロサッツォのワインの名声は、ヴェネツィア共和国の総督用にリザーブされ、外交用に使われていた時代にピークを迎えました。
ロサッツォの土地は、戦後、ワイン造りを再開するリヴィオ氏にとって、自分が造りたいワインができる理想的な土地でした。その象徴でもあるロサッツォ修道院(アッバッツィア ディ ロサッツォ)への思いも強く、修道院が所有する畑を自らの手で管理しワインを造りたいと願うようになります。地震や懇意にしていた神父の死など紆余曲折の後、その夢がかないます。こうして2009年にワイン「アッバッツィア ディ ロサッツォ」が誕生。現在も修道院の畑とセラーの管理はリヴィオ フェッルーガ一社に一任されています。
アッバッツィア ディ ロサッツォは、フリウラーノ、ピノビアンコ、ソーヴィニョン、マルヴァジア、リボッラジャッラの5品種で、修道院の畑の中でも特に優良な房だけを厳選して造られています。収穫後、丁寧に除梗し、低温マセラシオンの後ソフトプレス。ステンレスタンクで発酵、オークの大樽で熟成させます。 |
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ポンカ土壌とボーラ。フリウリ丘陵地のワインを造る重要な要素
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フリウリは北にアルプス山脈があり、南はアドリア海に挟まれたエリアです。ワイン産地としては大きく分けて丘陵地(コッリオDOC、コッリオリエンターリデルフリウリDOC)、平野(グラーヴェDOC、イソンツォDOC)、海岸付近(アンニアDOC、アクイレイアDOC、ラティサーナDOC)の3つにわかれます。土壌タイプは海岸付近が砂地、平野が堆積土壌とチョートリと呼ばれる小石、そして丘陵地がポンカです。リヴィオフェッルーガの畑はすべて丘陵地にあります。
ポンカは、元々は海底だった始新世期時代の地層。砂質と泥灰土が固まってできた土壌で、ミネラルが豊富です。ロサッツォDOCGのすべての土壌を特徴づけています。写真のように平たい石のような形をしていますが、元々が砂なので触るとほろほろと崩れます。フリウリと国境を接するスロヴェニアやトレンティーノ アルトアディジェの一部にも存在しますが、呼び名はそれぞれの土地によって違うと思います。
ポンカは、フリウリのワインにとって非常に大切な要素です。フリウリは春と夏の降雨量が非常に多く、2日間でシチリアの6か月分の雨量が降ります。年間降水量は2200ミリで、ブルゴーニュやピエモンテの800~900ミリと比べてその多さがわかります。水はワインにとって重要です。ポンカは水はけがよく地中の深いところまで水が達し保水します。そのため水不足を防いでくれています。
フリウリは強い風が吹くエリアとしても知られています。この風はボーラ(BORA)といい、東欧方面から吹いてきます。湿気を飛ばすので病気を防ぎ、夏季は気温を下げてくれます。このおかげで昼夜の寒暖差を生みブドウに良い酸をもたらし、フリウリの素晴らしい白ワインが造られるのです。しかしボーラは非常に強風で、丘陵地ではその強さが少しは和らぎますが、トリエステのように海に近い場所では暴風となります。時速120kmの風が吹くこともあるんですよ。 |
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息子、娘たち4人が偉大な父リヴィオの85歳の誕生に贈ったワイン「イッリーヴィオ」
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リヴィオの85歳の誕生日に4人の息子、娘たちが贈ったワインがイッリーヴィオです。illivio、つまりil Livio。強さとエレガントさを持つ偉大な父リヴィオをワインで表現したものです。長男のマウリッツィオの発案で始まったプロジェクトで、父に見つからないよう隠しながら仕込んだそうです。
リヴィオは戦争を生き抜いてきました。そして他の人が畑から去って行ってもひとり丘陵地のポテンシャルを信じ続けてワインを造り続けてきました。そんな父親の強さとエレガンスをワインに込めています。
品種はピノビアンコ、シャルドネ、ピコリット。ピノビアンコが純正、シャルドネが頑固な強さ、そしてピコリットが優しさをワインにもたらしています。フレンチオークで熟成させていて、バニラやクリーム、はちみつなどの甘さとミネラルと苦みが調和しています。少しブルゴーニュワインを感じさせるかと思います。
リヴィオフェッルーガのフラッグシップ。ロサッツォDOCG「テッレアルテ」
ロサッツォの土地から戦後のワイン造りをスタートさせたリヴィオは、ロサッツォのポテンシャルを確信していました。それが証明されたのが1981年にリリースした「テッレアルテ」です。豊かなアロマ、力強く深みとエレガンスのある味わい。偉大な骨格を持ち、長期熟成によりその真価を発揮するワインです。イタリアの白ワインの中でも最も評価されているワインの一つで、『ガンベロロッソ』で毎年のように最高賞トレビッキエリを獲得しています。
テッレアルテは、ロサッツォの自社畑の中の古い畑のフリウラーノ、ピノビアンコ、ソーヴィニョンの3品種から造られます。ピノビアンコとソーヴィニョンはステンレスタンクで低温発酵、熟成。フリウラーノはバリックで発酵、熟成させます。10~12か月の熟成後、アッセンブラージュし、瓶詰めします。ジャスミンやアカシア、ハーブやバルサミコ、そして柑橘系など華やかで複雑な香りがあります。コクとうまみを感じる味わいで熟した果実、さらにクリーミーなニュアンスもあります。
ロサッツォは、コッリ オリエンターリ デル フリウリDOCのサブゾーンでしたが、2011年にDOCGに昇格しました。ロサッツォDOCGは全体でも恐らく150ヘクタールほどだと思います。約10軒ぐらいのワイナリーがあり、リヴィオフェッルーガがその中でも最大の20~25ヘクタールの畑を所有しています。
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リヴィオ フェッルーガをカジュアルに楽しむ白 |
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シャリス 2019 |
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シャルドネとリボッラジャッラの2品種のブレンドで造るリヴィオフェッルーガをカジュアルに楽しむワインです。名前のシャリスはシャルドネとリヴォッラジャッラの合成語です。2019年は素晴らしいヴィンテージになりました。フレッシュ感があり、様々な花や果実の香りが広がります。しっかりとしたテクスチャーでボリュームがありますが、すっきりとした味わいです。
数日間のマセラシオン後、ソフトプレスし、デカンタージュしながら清澄します。ステンレスタンクで発酵、6か月間シュールリーで熟成させています。 |
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試飲コメント:ミモザ、スズラン、ゼラニウムなどの花の香りにアプリコットや桃などの果実、そしてハーブのニュアンスも感じられる、クリーンで甘味のある香り。飲むとフレッシュながらもクリームのようなコクに柑橘系のニュアンスもあるバランスの取れた美味しさ。しっかりとした骨格の中に綺麗な酸がすっと伸びる清々しさも感じられます。 |
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フリウリを象徴する品種フリウラーノで造るボリュームのあるワイン |
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フリウラーノ 2018 |
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フリウラーノはフリウリを代表する品種で、フリウリのワインと言えばフリウラーノがまず出てくると思います。2006年まではトカイという名前でしたがハンガリーのトカイと混合することから使用を禁じられました。決して早飲みのワインではないので、2018年は今ちょうどいい状態になっていますね。
これもシュールリーで6か月間熟成させています。味わいにクリーミーさを感じられるのもこれによります。以前、日本に来た時には鮎の季節だったのですが、鮎料理と非常によく合ったことを覚えています。 |
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試飲コメント:黄色い果実やアーモンド、トマトの葉などの香り高いアロマ。クリーミーな味わいの中に酸やミネラルが調和したエレガントな味わい。リンゴやハーブなどのニュアンスも感じます。余韻には心地よい苦みも。 |
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1956年から造り続けるリヴィオフェッルーガを代表するワイン |
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ピノ グリージョ 2019 |
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ピノグリージョはリヴィオフェッルーガを代表するワインです。1956年に初めて造って以来、ずっと造り続けています。ピノグリージョはローマ時代からフリウリに存在すると考えられていて、「変わった果皮の色のブドウ」という記録があります。現在のドイツのあたりからもたらされたのではないかと思いますが、フリウリは他地域との交流が激しいエリアという地理的要因もあると思います。
醸造はフリウラーノともこの次に飲むソーヴィニョンも同じです。しっかりとしたストラクチャーのある、力強さが感じられ、熟成ポテンシャルがあります。5~6年後にはさらに素晴らしい状態になっています。 |
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試飲コメント:シャリス、フリウラーノに比べても香りも味わいにも濃密で力強さが感じられるワイン。果実やスパイシーなニュアンス、フローラルでリッチな果実感。骨格のしっかりとした力強さの中にクリームやナッツのまろやかさが感じられる、リッチな味わい。 |
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絶妙なアロマ!繊細なソーヴィニョン |
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ソーヴィニヨン 2019 |
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ソーヴィニョンはフランス原産の品種で、ハプスブルク家の統治下の時代にフリウリにもたらされました。アロマティックでグリーンな印象がありますが、ニュージーランドのソーヴィニョンほどには強すぎず、サンセールほどのミネラルが強調されたスタイルとも違う、その中間的な存在だと思います。
トロピカルフルーツ、ショウガやミント、レモングラスなどを感じるワインで、アスパラガスによく合いますし、これも鮎料理と相性がいいですよ。
醸造方法は当初から変わってなく、シュールリーもリヴィオが初めからやっています。近年は部分的にアンフォラにも取り組んでいるのですが、まだ実験段階ですね。 |
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試飲コメント:ライムやサルヴィアのニュアンスの香りにメロンやスパイスのアロマ。熟した果実と綺麗な酸のバランスがとてもエレガントで余韻に感じる美しいミネラルが素晴らしい。 |
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リヴィオ氏85歳の誕生日に子供たちが贈ったイッリーヴィオ |
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イッリーヴィオ 2017 |
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リヴィオの85歳の誕生日に息子、娘たちが贈ったワインがイッリーヴィオです。illivio、つまりil Livio。強さとエレガントさを持つ偉大な父リヴィオをワインで表現したものです。長男のマウリッツィオの発案で始まったプロジェクトで、父に見つからないよう隠しながら仕込んだそうです。
リヴィオは戦争を生き抜いてきました。そして他の人が畑から去って行ってもひとり丘陵地のポテンシャルを信じ続けてワインを造り続けてきました。そんな父親の強さとエレガンスをワインに込めています。品種はピノビアンコ、シャルドネ、ピコリット。ピノビアンコが純正、シャルドネが頑固な強さ、そしてピコリットが優しさをワインにもたらしています。フレンチオークで熟成させていて、バニラやクリーム、はちみつなどの甘さとミネラルと苦みが調和しています。少しブルゴーニュワインを感じさせるかと思います。 |
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試飲コメント:熟した果実やハチミツのニュアンスにクリーミーなエレガントなアロマ。全てが洗練されていて、厚みのある骨格の中に上質な酸とミネラルが完璧に調和している。3品種のバランスの良さに感動を覚えます。 |
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ロサッツォの厳選したブドウで造るフラッグシップ |
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テッレ アルテ 2017 |
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ロサッツォの土地から戦後のワイン造りをスタートさせたリヴィオは、ロサッツォのポテンシャルを確信していました。それが証明されたのが1981年にリリースした「テッレアルテ」です。豊かなアロマ、力強く深みとエレガンスのある味わい。偉大な骨格を持ち、長期熟成によりその真価を発揮するワインです。イタリアの白ワインの中でも最も評価されているワインの一つで、『ガンベロロッソ』で毎年のように最高賞トレビッキエリを獲得しています。
テッレアルテは、ロサッツォの自社畑の中の古い畑のフリウラーノ、ピノビアンコ、ソーヴィニョンの3品種から造られます。ピノビアンコとソーヴィニョンはステンレスタンクで低温発酵、熟成。フリウラーノはバリックで発酵、熟成させます。10~12か月の熟成後、アッセンブラージュし、瓶詰めします。 |
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試飲コメント:ジャスミンやアカシア、ハーブやバルサミコ、そして柑橘系など華やかで複雑な香り。コクとうまみを感じる味わいで熟した果実、さらにクリーミーなニュアンスもあります。フレッシュでありながらしっかりとしたボディ。華やかさと清涼感。複雑味にあふれた圧巻の味わい。 |
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メルローとピノネロで造るしっかりとしたストラクチャーのロゼ |
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ロゼ 2018 |
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2018年が初ヴィンテージです。メルローとピノネロで造っています。そちらで試飲しているのは2018年で、私は2019年を飲んでいますが、色合いが若干2018のほうが濃いかもしれませんね。リリース時はプロヴァンスロゼに近いサーモンピンク色です。早飲みのロゼではなく、しっかりとしたストラクチャーがあるロゼで、ヤギのチーズ、貝類やカキ、ボンゴレ、サーモンやマグロのステーキなど、様々な料理と合わせて頂けます。スパイシーな料理とも合います。
マセラシオンは24時間以内です。ソフトプレス後、デカンタージュで清澄。ステンレスタンクと一部テラコッタで発酵させています。そのまま澱と共に熟成しています。 |
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試飲コメント:パイナップルやパパイアなどのトロピカルフルーツの香り、柑橘系果実にハーブのニュアンスも感じます。飲むと果実の甘みとコクが豊富なミネラルと程よい酸と共にふくよかなボリューム感を伴って口の中に広がります。飲み心地のしっかりとしたロゼワイン。 |
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■インタビューを終えて |
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フリウリワインの歴史を造ったリヴィオ フェッルーガの歴史的背景を知ることができました。印象的な地図のラベルが1956年から使われていたというのも驚きで、知名度のなかったフリウリを知ってもらうための斬新なアイデアだと思います。どのワインもブドウのピュアな個性が表現されていて、リヴィオ氏の実直で素直な性格が現れていると感じました。素晴らしいテロワールとそこで造られるブドウを丁寧に情熱をもってワインにしている、そんな姿が伝わってくるリヴィオフェッルーガをもっと飲んでいただきたいと思います。 |
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