2021年7月8日 チンツィア メルリ カンポルミさん Ms. Cinzia Merli Campolmi
唯一の地元農家としてボルゲリのテロワールを世界に轟かす偉大なカンティーナ!いち早くカベルネ フランの可能性を見出し、飽くなき探求心と情熱で躍進し続ける「レ マッキオーレ」突撃インタビュー |
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「レ マッキオーレ」は、大半の地を貴族が所有するボルゲリで、唯一の地元農家としてワイナリーを立ち上げ、ボルゲリの個性を世界に轟かせた造り手です。カンティーナを代表するカベルネ フラン100%の「パレオ ロッソ」、2004年に『ワインスペクテイター』で100点を獲得したメルロー100%で造る「メッソリオ」。気候から醸造、ボルゲリの個性すべてが詰まったワインを単一品種で表現しています。真のボルゲリ人のエウジェニオ氏が築いたカンティーナ、年々エレガントさが増すワイン、レ マッキオーレに参画した2人のご子息について、オーナーのチンツィア メルリ カンポルミさんにオンラインでお話を伺いました。 | ||||||||||
1983年、たった6つの生産者しか存在しなかったボルゲリに畑を購入。
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1983年、当時若干21歳だった初代オーナー、故エウジェニオ カンポルミ氏が、地元ボルゲリに4ヘクタールの畑を購入したことでレ マッキオーレの歴史が始まります。当初、周囲ではサッシカイアのインチーザ デッラ ロッケッタ家やアンティノリ家などがすでにワイン生産をしていたものの、ボルゲリにはわずか6つの造り手しか存在していませんでした。「当時はボルゲリの偉大さを理解する人はほとんどいなかったんです。そんな時代に、夫のエウジェニオは愛する地元ボルゲリの土地を信じてワイン造りを始めました」と、現オーナーのチンツィアさんはワイナリー創設当初を振り返ります。
ちょうど創設から10年、1993年にレ マッキオーレ第一号となるカベルネソーヴィニヨン主体の「パレオ ロッソ’89」がリリースされます。「気候から醸造、テロワールの要素すべてをワインに反映できる“単一品種”こそが、最もボルゲリの個性を表すことができる」という考えのもと、年々畑を拡張しながらメルロー100%の「メッソリオ」、シラー100%の「スクリオ」を続々とリリースします。そして、ボルゲリ地区で初めてカベルネ フランに力を入れた生産者として知られるレ マッキオーレは、新しく「パレオ ロッソ」を世界的にも珍しいカベルネ フラン100%のワインにすることを決意します。 カベルネ フランは、故エウジェニオ氏がボルゲリという土地の可能性を信じ、初めて自社畑に植えた品種でもありました。そして、長い年月をかけ、パレオ ロッソは2001年ヴィンテージからカベルネ フラン100%としてリリースされます。しかし、悲劇は起こります。初代オーナーのエウジェニオ氏は2002年、新生パレオ ロッソの晴れ舞台を見届けることなく、40歳の若さでこの世を去ってしまうのです。2001年ヴィンテージは、彼がボトリングした最初で最後のカベルネ フラン100%のパレオ ロッソとなってしまいました。 以降、レ マッキオーレをともに背負ってきた妻のチンツィアさんが、故エウジェニオ氏の遺志を受け継いで指揮を執るようになります。90年代から評価誌で毎年のように90点台後半を獲得してきたレ マッキオーレですが、チンツィアさんに替わってもなお躍進は続きます。1992年から醸造コンサルタントとして迎え入れたルカダットーマ氏とともに有機栽培を開始するなど、故エウジェニオ氏が手塩にかけた畑やブドウの品質をさらに高めていき高得点を連発します。そして、ついにはメルロー100%で造る「メッソリオ2004」が『ワインスペクテイター』で100点満点を獲得。2008年には『Wine & Spirits』から、2009年にはイタリアソムリエ協会からワイナリーオブザイヤーに選出され、レ マッキオーレは偉大なワイナリーとしての地位を確立しました。 |
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故エウジェニオ氏の情熱を受け継ぎ、飽くなき探求心と創意工夫で造るレ マッキオーレのワイン! |
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現オーナー、チンツィアさんに、現行のヴィンテージについて話を伺いました! 「私たちのワインの特徴は、エレガントさと飲みやすさです」 今回は、4本のワインを試飲させていただきました(残念ながらスクリオは試飲できず…)。年々エレガントになっているという印象をお伝えすると、「少しずつ作り方を変えているんです。樽のニュアンスを抑えてエレガントにしています。マッキオーレのワインはエレガントさと飲みやすさが特徴です」とチンツィアさん。そのチンツィアさんに1本ずつ丁寧に解説をしていただいたため、私たちも十分に理解を深めることができました。と同時に、彼女が持つ「現状に満足せず、さらに品質向上を目指したい」という情熱を感じることができました。 ●パレオ ロッソ 2017 コンクリートタンクにて発酵、オーク樽で熟成をします。実は2011年頃から樽を少し変えています。あらゆる森で取れた木がミックスされた特注の樽を使用していて、トーストの度合いも以前より弱めています。これにより、ワインに繊細さと柔らかさ、複雑さが与えられて、エレガントなワインに仕上がります。協力的なバリック製造会社のおかげで、私たちが目指すワインが実現できています」 ●メッソリオ 2017 2つの畑「プントーネ」と「ヴィニョーネ」で栽培されたメルローを使用しています。プントーネ畑は93年に植樹。かつて川が流れていた場所の横にあり、石が多く含まれた土壌。酸が高いメルローができます。ヴィニョーネ畑は99年に植樹され、粘土、砂質を含んだ土壌です。2つの畑を合わせて10区画に分けられています。それぞれのブドウは最後の最後までブレンドせずに、最後にバランスを見て比率を決めています。つまり、10回に分けて収穫し、10回に分けてワイン造りをしているということです。パレオ ロッソ同様に、ミックスされた木からなる樽を使用しています。それらの工程が完成度の高いエレガントなワインを生み出しています」 ●ボルゲリ ロッソ 2018 2018年もまた難しかったです。冬も春も雨が多く、湿気の多い年でした。ブドウの樹が病気になる恐れもあったので、葉っぱを切り落とし、ひたすら土を掘り起こして、土にまとわりつく湿気を除去することに徹底しました。夏は一転して天候に恵まれ、熟したブドウを収穫することができました。バランスに優れた飲みやすいワインに仕上がったことに私は満足しています。このボルゲリロッソは、肉料理だけでなく魚料理にも合わせることができる万能プレーヤーです」 ●パレオ ビアンコ 2019 ブドウは朝早くに収穫したらすぐに冷蔵室に入れて8度まで冷やします。一晩寝かせたら除梗して、翌日に3時間クリオマセレーション(ドライアイスを用いてブドウを凍らせてプレス)を行います。発酵したら木樽に入れ、それをまた12度に保たれた冷蔵室に入れます。低温発酵をさせる理由は、品種独自の特徴をコントロールするためです。シャルドネは柑橘系の香りを保ち、ソービニヨンブランはハーブと猫の尿の香りが出ないようにしています。この作業は2017年から行っています。それ以前は冷やす技術がなく、早朝にすべてのことを1日でやらなくてはいけませんでした。冷蔵技術を導入して以来、温度設定が可能になったので1日中どの時間帯でも収穫でき、ブドウの選定にも時間を費やすことができます。 実はボルゲリにおけるシャルドネは、レ マッキオーレのみが力を入れている品種です。以前、ヴェルメンティーノも造っていましたが、平均的なものしかできなかったため断念しました。もっと力強さが欲しいという理由でシャルドネに変更した背景があります。」 ●スクリオ レ マッキオーレ初出し情報!以前に断念していたサンジョヴェーゼを新たに植樹! 「実はサンジョヴェーゼも断念した品種の一つなんです。ボルゲリの肥沃な土壌には、どうしてもサンジョヴェーゼはマッチしませんでした。しかし、私たちは常に挑戦しなければいけないワイナリーです。ボルゲリの生産者はまだまだ若く歴史も浅いため、まだ学ぶことも多いんです。初めて公開する情報ですが、4年後(2025年)に使用する予定のサンジョヴェーゼを新たに1ヘクタールの区画に植樹しました。以前植えていた場所とは異なる畑です。非常に飲みやすく興味深いワインになると思います」 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
生まれも育ちもボルゲリである初代オーナー、故エウジェニオ カンポルミ氏は誰よりも故郷を愛し、土地のポテンシャルを信じていたそうです。妻であるチンツィアさんは、そんな“偉大な生産地であるボルゲリが表現されたワインを作ること”を自身の夢として語ります。その言葉通り、「単一品種にすることこそが、最もボルゲリの個性を表すことができる」という考えのもと、マッキオーレがボルゲリで造ったワインは世界的に高評価を得ています。
「私たちボルゲリの生産者はまだまだ若く歴史も浅いため、まだ学ぶことも多いんです。今後進歩するテクノロジーを利用することも大切です」とも話し、インタビューを通じて、チンツィアさんから故エウジェニオ氏由来であろう熱意を感じ取ることができました。また、将来のレ マッキオーレを担うであろうご子息についてもお聞きすると、長男のエリア氏、次男のマッティア氏、お二方ともレ マッキオーレでワイナリー業に携わっているとのこと。エリア氏は、農業高校を卒業後、外国のワイナリーで働いてこられました。畑の責任者を務めるチンツィアさんの弟、マッシモ メルリ氏と同様に畑の責任者を務めています。次男のマッティア氏は、大学でマーケティングを学び、堪能な外国語を生かしてワイナリーで通訳や販売促進の仕事をしています。 ワインそのものだけでなく、そのワインをより向上させるための人的投資も明確に行われている印象です。マッキオーレの意思が故エウジェニオ氏からチンツィアさんへ、チンツィアさんからご子息へと脈々と受け継がれていくことで、いつの時代も輝く“ボルゲリの職人”として君臨し続けるのだろうと思いました。ボルゲリ唯一の地元農家としてテロワールを世界に轟かせるレ マッキオーレのワイン、ぜひお楽しみください。 |
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唯一の地元農家としてボルゲリのテロワールを世界に轟かす「レ マッキオーレ」突撃インタビュー
2021/08/06