2023/02/06
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ジョヴァンニ フラスコッラ氏 Mr. Giovanni Frascolla
父から子、そして孫へと受け継がれ、年々進化を遂げる偉大な造り手!ポッジョ アルジェンティエラを手掛けるトゥア リータ3代目ジョヴァンニ フラスコッラ氏突撃インタビュー

創設者ヴィルジリオ氏が築き上げた世界最高峰ワイナリー「トゥア リータ」

ジョヴァンニ まずはお時間をいただきありがとうございます。トゥア リータとポッジョ アルジェンティエラの3代目兼醸造家のジョヴァンニ フラスコッラです。トゥア リータは、1984年に私の祖父母が土地を購入して始めたワイナリーです。初めは1ヘクタールの畑からの、本当に小さな挑戦・冒険でした。カステッロ ディ アマのラッパリータやサッシカイアを参考に、1988年にメルローとカベルネソーヴィニヨンを0.5ヘクタールずつ植えました。
ガレージワインから世界最高峰ワインへとのし上げた創設者ヴィルジリオ氏
その後、祖父のヴィルジリオが、まだ駆け出しだった醸造家ルカ ダットーマと造ったジュスト ディ ノートリ1992年が、いきなり『ガンベロロッソ』でトレビッキエリを受賞しました。これが私たちのスーパートスカンの始まりです。ガレージワインからどんどん国際的なワインとなっていきました。もう一つ、トゥア リータにとって大きなきっかけとなったワインがあります。『ワインアドヴォケイト』で100点を獲得したレディガフィ2000年です(1997年はワインスペクテーター、2015年はジェームズサックリングで100点を獲得)。こうして私たちの存在や立ち位置が確立されたと思います。
偉大な造り手、偉大な畑に囲まれて育った3代目ジョヴァンニ氏
――ジョヴァンニさんは、どういう過程を経て醸造家になられたのですか?
ジョヴァンニ ピサ大学の醸造科を卒業しました。ロックダウンになって初めての卒業生です。4月7日に卒業して、翌日の8日からトゥア リータで働き始めました。
――幼少期から偉大な畑に囲まれて育ったと思います。そういった周囲の環境が「醸造家になろう」と思わせたのですか?
そうですね。私がどういう環境で育ったかがわかる写真をお見せします。これは、レディガフィの畑にいる1歳頃の私です。この環境で育ったことが大きいですね。祖父はいつもこう語りかけていました。
「ブドウの品質はボトルに直結する。どれだけ畑で仕事をしたかにかかってくる」と。この言葉は今でも鮮明に覚えています。そして、2010年、祖父が特別な思いを込めていたシラーの収穫中に彼は亡くなりました。その時期から“自分がやっていくんだ”という思いが芽生えました。
父から子、そして孫へと受け継がれるブドウ造りへの想い
カベルネフランに適した山側の丘陵地帯の最上畑「バチネッロ」
林 ヴィルジリオさんはシラーが非常に好きな方で、シラーと強いつながりがあるんです。
ジョヴァンニ 私たち家族は、全てにおいて好きかどうかという基準でワインを生産しています。例えば、ペルセンプレ(最上級シラー)は、祖父の強い思いで造られたものです。シラーを他のワインに混ぜようという話がありましたが絶対にダメなんだと。
林 ペルセンプレは今やレディガフィと肩を並べるほどのクオリティです。年によっては一番良いと感じることさえあります。ペルセンプレのほうが低価格で生産本数が少ないので、レディガフィのほうがまだ入手しやすいですよね。
ヴィルジリオ氏に敬意を表し、全作業を止めて行う最上級シラー「ペルセンプレ」のボトリング
ジョヴァンニ 私たちにとってもシラーは特別な思いがある品種です。レディガフィやジュスト ディ ノートリとはまた違う感覚があります。センチメンタルとでも言いましょうか。実は、ペルセンプレをボトリングする時は他の仕事を一切しません。生産本数は3000本なので1時間程度で終わる作業ですが、集中して行っています。
林 それは知らなかったです。このワインは特別だというヴィルジリオさんに対するリスペクトがあるのでしょうね。一方で、ジョヴァンニのお父さん、ステファノはカベルネフラン100%のワインが大好きなんです。ポッジョ アルジェンティエラではポッジョラーゾというワインが生まれました。
2代目ステファノが惚れ込んだカベルネフランに適した最上畑「バチネッロ」
――ポッジョラーゾの初ヴィンテージはいつですか?
ジョヴァンニ 2015年です。購入してすぐに造りました。トゥア リータでもカベルネフラン100%は試しましたが、成熟が早くてどうしても緑感が残ってうまくできませんでした。一方でアルジェンティエラではうまく造れています。というのも、バチネッロという内陸部の丘陵地帯の畑で造っていて、昼夜の温度差が激しいためブドウがバランスよく成熟するからです。二つのカンティーナの中で、一番最後に収穫するのはバチネッロの畑です。2019年ヴィンテージは、10月16日に行いました。
林 もはやネッビオーロなどのピエモンテの収穫時期ですよね。そこまでゆっくりとブドウが成熟していくということです。フランの緑感や生野菜的なニュアンスを取ろうとすると、柔らかく甘くなりすぎます。その適度なバランスを表現できるのが山側に位置するバチネッロの畑です。
トゥア リータのレベルに到達する過程を辿る新ワイナリー
品質向上が著しい「ポッジョ アルジェンティエラ」

毎年実験を重ねて、畑の理解を深めているので年々ワインのグレードが上がっています。トゥア リータのレベルに到達する過程を辿っている段階で、まだまだ成長する余地のあるワイナリーですね。かといって、トゥア リータがいくところまでいったとは思わないでくださいね(笑)。トゥア リータも同様に成長を続けています。
林 私はポッジョ アルジェンティエラを初ヴィンテージの2015年から飲ませていただいていますが、今ほどの出来ではありませんでした。初リリースから3~4年で劇的に変わりましたね。2年前くらいからは本当に綺麗なワインになったと思います。(2018年のポッジョラーゾがルカマローニで99点満点を獲得)
トゥア リータで生まれ育った3代目が担うワイナリーのこれから
――若いジョヴァンニさんが率いるワイナリーの今後が楽しみですね。
ジョヴァンニ 私はトゥア リータで生まれ育ち、現場をずっと見てきて、何本ものワインを試飲してきました。プロ醸造家としてデビューしたばかりですが、両ワイナリーの醸造における総責任者マルコ ラマストラを筆頭に、情報共有しながらチーム一丸となって働いています。畑や醸造について、今後さらに理解を深めていけるポッジョ アルジェンティエラもチェックしていただきたいですね。
トゥア リータは、これまで積み重ねてきた知識や経験があるので、毎年クオリティの高いワインを造る生産者として地位を確立しています。しかし、全てを理解しているわけではありません。トライアンドエラーを重ねて、常にいいものを造れるように努力していきます。
林 努力を続けていることは見ていてもわかりますし、昔のワインと比べるとより上品になっています。ファーストヴィンテージから、トレビッキエリをはじめ評価誌でも90点を超えています。ワイナリーによっては評判が一時落ちることもありますが、彼らは当たり前のようにずっと95点以上を取り続けています。それは本当に素晴らしいことだと思います。
左から、醸造総責任者マルコ ラマストラ、ルカ ダットーマ、2代目ステファノ フラスコッラ、3代目ジョヴァンニ フラスコッラ
品種が持つ個性とアロマが抽出されたトスカーナの海岸線で造られるヴェルメンティーノ |
ポッジョ アルジェンティエラ |
ヴェルメンティーノ トスカーナ 2020 |
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ジョヴァンニ氏: 「ヴェルメンティーノはトスカーナの海岸線を代表する典型的な白品種です。非常に親しみやすく、テリトリーを表現しやすいブドウでもあります。収穫後のプレスは非常にソフトに行い、14度に低温度管理されたステンレスタンクのみで醸造しています。品種が持っている個性やアロマを抽出するために、バリック熟成などの重いことはしません」 |
試飲コメント:淡い麦わら色。柑橘系、白い果実、ハーブを感じるフレッシュな香り。味わいは香り同様で、バランスの良さがあります。余韻に柑橘類とその皮のような苦みが持続するエレガントな風味があります。 |
丸みのある酸としなやかな果実感、豊かなミネラルが重なる美しいヴェルメンティーノ |
トゥア リータ |
ペルラート デル ボスコ ヴェルメンティーノ 2021 |
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ジョヴァンニ氏: 「品種が持っている個性やアロマを崩さないように、低温でステンレスタンクだけで醸造しています。ポッジョ アルジェンティエラのヴェルメンティーノとの違いは、ミネラルが豊富な土壌にあります。ペルラートとは、ワイナリー近くにある大理石の採掘場エリアの名から取っています」 |
試飲コメント:やや淡い麦わら色。青リンゴやマスカットなどのフレッシュな香りで、ややアロマティックな印象もあります。口当たりが柔らかく、綺麗な舌触り。エレガントで美しい風味が口中を満たした後、クリーンでフレッシュな酸味が余韻として持続します。 |
毎日飲めるシンプルな飲みやすさが表現されたサンジョヴェーゼ100%モレッリーノ |
ポッジョ アルジェンティエラ |
ベッラマルシリア モレッリーノ ディ スカンサーノ 2020 |
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ジョヴァンニ氏: 「モレッリーノ ディ スカンサーノは、カンティーナの横にある砂地土壌の畑で造っています。毎日飲めるワインというポジションですね。シンプルな飲みやすさをサンジョヴェーゼ100%で表現しています。そのために、醸造前にマセラシオンを行っています。収穫後4度に冷やして一夜置き、潰した後も4度で2日間静置させます。こうすることで、アルコールなどに邪魔されることなく色とアロマ、酸を抽出できて果実風味豊かで飲みやすいワインができるのです」 |
試飲コメント:ルビー色。プルーンなどの紫や黒い凝縮果実、スパイシーさを感じる香り。ややドライフルーツのニュアンスも感じます。エレガントかつ複雑な印象です。黒系果実、黒鉛、スパイスを感じる味わい。タンニンは存在感がありますが、果実味に綺麗に溶け合っています。フィニッシュに繊細な赤い果実。 |
上級キュヴェのポッジョラーゾに使用されるカベルネフラン主体の赤 |
ポッジョ アルジェンティエラ |
マレンマンテ ロッソ トスカーナ 2020 |
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ジョヴァンニ氏: 「上級キュヴェのポッジョラーゾに使われる山側の畑のカベルネフランと、ワイナリー周辺にある砂地の畑のシラーをブレンドして造られています。使用するブドウのほとんどがプレセレクションで収穫したものです。飲んでいただくと、しっかり高品質のブドウで造られていることをわかっていただけると思います」 |
試飲コメント:ルビー色。黒い凝縮果実、スパイシーで甘やかなアロマ。緑っぽさを感じないエレガントで熟した果実味。滑らかで甘やかなタンニンが、凝縮果実の余韻を演出しています。 |
トゥア リータでも成し得なかった高品質カベルネフラン100%で造る上級キュヴェ |
ポッジョ アルジェンティエラ |
ポッジョラーゾ 2019 |
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ジョヴァンニ氏: 「ポッジョラーゾは、山側の奥地の丘陵地にあるバチネッロという畑で造られるカベルネフラン100%のワインです。この畑は、標高1800メートルのアミアータ山から吹きおろしてくる冷たい風の影響で、昼は40度を超えるのに夜は15度まで下がります。じっくりとブドウが成熟していくので、トゥア リータを含めて毎年ポッジョラーゾの畑が最後の収穫となります。2019年の収穫は10月16日でした。バランスよく成熟できることが、この畑の大きな特徴です」 |
試飲コメント:ルビー色。スパイシーで緑感のある力強く複雑な香り。甘やかな印象もあります。果実とスパイスが綺麗に溶け合っていて、バランスに優れた味わいです。チョコレートのような樽由来の甘やかさと、ピュアでフルーティな後味。 |
「これがセカンド?」と思ってしまうほどのポテンシャルを秘めたワイン |
トゥア リータ |
ロッソ デイ ノートリ 2020 |
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ジョヴァンニ氏: 「ロッソデイノートリは、レディガフィ、ペルセンプレ、ジュストディノートリで使わなかったブドウで造られている私たちのベースとなるワインです。同じ畑のブドウを使用しているので、レディガフィやペルセンプレの兄弟と捉えています。飲んでいただくと、ロッソデイノートリの上級に位置するワインが、どれだけのポテンシャルを持っているかをイメージできると思います。“これがセカンド?”と思うのではないでしょうか」 |
試飲コメント:ルビー色。紫や黒など幅の広いフルーティな香り。口当たりは力強く、フレッシュでジューシー。香り同様の豊かな果実味に加え、緑感、甘やかさ、スパイシーさがあります。ふくよかなボディの上に滑かなタンニンやフレッシュな味わいがバランスよく混ざり合った味わいです。 |
トゥア リータ唯一のサンジョヴェーゼ100%赤!海岸線のサンジョヴェーゼ特有の果実風味の良さを表現 |
トゥア リータ |
ペルラート デル ボスコ ロッソ 2020 |
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ジョヴァンニ氏: 「ペルラート デル ボスコはサンジョヴェーゼ100%のワインです。20年ほど前に新しいクローンを植え始めたブドウを使っていましたが、実と実の隙間がある小さい粒のブドウを植え替えました。また、3年前の2020ヴィンテージから、今まで使っていたバリックや大樽から、ペルラートと相性の良い大樽に変更しました。それによって、内陸部とは違う海岸線のサンジョヴェーゼの果実風味の良さが引き出されています。縦に伸びる味わいを感じられるようになり、やっと“これだ”という確信に至りました」 |
試飲コメント:輝くルビー色。スパイシーで凝縮された果実のエレガントな香り。革のニュアンスなど奥行きのある複雑さ。フレッシュな酸味と骨格のあるボリューミーな味わいが口中を覆い、そのままの風味がフィニッシュまで長く持続します。美しさと複雑さが綺麗に溶け合う味わい。 |
「トゥア リータ」にとって特別な品種シラー100%をアンフォラで造り上げた赤 |
トゥア リータ |
ケイル 2019 |
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ジョヴァンニ氏: 「ケイルは、私たちが造る最新の実験的なワインでもあります。最上級シラー“ペルセンプレ”の向かいの単一畑のシラーをアンフォラで造っています。若干の微酸化が促されるように低温で焼いたアンフォラを使用しています。ブドウの40%くらいは除梗せずに発酵させ、5ヶ月間の超長期マセラシオンを行います。その後、木のニュアンスが抽出されない使い古したバリックで3ヶ月間熟成させて瓶詰めをします。生産量は2500本程度で非常に少ないです」 |
試飲コメント:輝くルビー色。凝縮果実とスパイス感、ミネラル感のある複雑な香り。豊かな果実味とスパイシーさを感じる骨格がありながら、キャンディのような軽やかさやジューシーさ、エレガントさもある味わいです。力強さ、エレガントさ、複雑さが綺麗にまとまっています。 |
「トゥアリータ」の名を世界に轟かせた濃密ボディのフラッグシップ |
トゥア リータ |
ジュスト ディ ノートリ 2020 |
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ジョヴァンニ氏: 「私たちは、畑の管理を小区画で行ってそれぞれに合った収穫、栽培をしています。収穫時期に入ると約10日間で担当者が3~5回収穫を行うことで、より良いブドウを収穫できるようにしています。ジュスト ディ ノートリ、ペルセンプレ、レディガフィでは、その中でもより良い1~2房のブドウを使っています」 |
試飲コメント:濃いルビー色。力強さ、複雑さ、果実の凝縮加減、スパイシー感、持続性、全てが突出した香りです。口に含むと、その重厚なボリューム感に圧倒されます。樽由来のチョコレートや黒胡椒のような複雑な風味に加え、フレッシュでクリーンな風味も兼ね備えています。複雑でバランスに優れた風味の余韻が何分も続きます。 |
インタビューを終えて
ジョヴァンニさんは、冷静ながらも明るく気さくな方でした。何よりも、家族愛にあふれており、家族やチームと造り上げることに重きを置いているのだなと感じました。それは、創設者のヴィルジリオさんの想いも含めてです。ジョヴァンニさんとヴィルジリオさんが一緒に写っている写真を見たり、家族同士が想い合うエピソードを聞いて感動してしまいました。
トゥア リータのFacebookページを見て気づいたのですが、ヴィルジリオさんがこだわったシラーの最上級キュヴェ「ペルセンプレ」がカバー画像(プロフィールの一番上にある大画像)でした。ジュスト ディ ノートリでも、レディガフィでもなく。そこからも、家族同士の結びつきや受け継がれる思いを感じることができました。
その強い思いは、3代目のジョヴァンニさんに受け継がれています。2代目がこだわるカベルネフラン100%ワイン「ポッジョラーゾ」は、ポッジョ アルジェンティエラ購入後早々に『ルカマローニ』で99点満点を獲得しています。それでもまだ「アルジェンティエラは発展途上。ポテンシャルの70%くらいしか出せていない」と話し、「年々成長するポッジョ アルジェンティエラを見ていてください」とのこと。
トゥア リータはもちろん、若き3代目ジョヴァンニさん率いるポッジョ アルジェンティエラの今後に大注目です。
