新時代を切り拓く若き4代目「アルベルト バラリン」突撃インタビュー

2023/03/31
突撃インタビュー
 
2023年3月6日 アルベルト ヴィベルティ氏 Mr. Alberto Viberti

ラ モッラ村に100年以上根付くバローロの農民「カッシーナ バラリン」の新たな幕開け!新時代を切り拓く若き4代目「アルベルト バラリン」突撃インタビュー

生産者さん
ラ モッラ村に100年以上根付き、自然を敬い堅実にワインを造り続けるバローロの農民「カッシーナ バラリン」から、新たなワイナリーが誕生しました。その名も「アルベルト バラリン」。2022年、3代目ジョルジョ氏と4代目アルベルト氏によって起ち上げられました。「これからはアルベルトの仕事。自分自身のワイナリーに120%の力を注ぎなさい」という父(3代目)の想いもあり、伝統あるバラリンの名を継承した形で「アルベルト バラリン」と命名。生産者としての哲学はカッシーナ バラリンと変わらず、あくまで「ブドウ本来の特性を表現する」ということ。3代目の伝統的手法と、4代目の近代的手法を融合させながら極上のバローロや、造り込まない透明感あるランゲネッビオーロを生産しています。今回は、新ワイナリー誕生の経緯や歴史、ご自身について4代目アルベルト ヴィベルティ氏にお話を聞きました。

極上バローロの造り手「カッシーナ バラリン」が幕を閉じ、
2022年、新ワイナリー「アルベルト バラリン」が誕生

――前回いらしたのが2020年なので、3年振りですね。お久しぶりです。
そうですね。2020年2月に、父のジョルジョと一緒にお邪魔させていただきました。

――カッシーナ バラリンから二つのワイナリーに分かれたと聞きました。
そうなんです。一つは、2022年に私と父が始めたアルベルト バラリン。もう一つは、私の叔父ジャンニが始めたスピリト アグリコロ バラリンです。カッシーナ バラリンの3代目である父と叔父は、ワイン造りに対する情熱があり、お互いが好きなワインを別の醸造所で造ろうということになったのです(両ワイナリーは同じ敷地内に位置)。

カッシーナ バラリンという名前はもう残りませんが、私たちが積み重ねてきた伝統のバラリンという名前は継承していきます。「これからはアルベルトの仕事。自分自身のワイナリーに120%の力を注ぎなさい」という父の言葉もあり、ワイナリー名には自分の名前であるアルベルトをつけました。私と父は協力し合いながら、二つの手法を同時に行ってワインを生産しています。これまで父が培ってきた伝統的手法と、私の近代的手法です。

3代目と4代目

3代目ジョルジョ氏、4代目アルベルト氏

――その二つの手法について具体的に教えてください。
自分たちの土地を守り、全ての畑の特徴を最新技術を用いて表現するということです。収穫、発酵、醸造をアシストするために、最新プレス機などの技術や機械を導入しています。そして、ランゲネッビオーロのようなシンプルなワインは発酵を短くし(5~7日)、木樽を使用しないで現代的な手法で造っています。もちろんバローロには木樽使用の規定があるので本来の伝統的手法で造っています。場合によって二つの手法を使い分けています。

ステンレスタンク、樽

カッシーナ バラリン時代から変わらない哲学「ブドウ本来の特性を表現」

ワイナリーの哲学は“ブドウそのものをワインで表現すること”です。カッシーナ バラリン時代もそうでしたが、私と父はそれ以上にもっとブドウ本来の特性を表現したいと思っています。そのため、ランゲネッビオーロのように無理して樽を使用せずにステンレスだけで造ることもあります。

全て手作業。畑と真摯に向き合い手間暇をかけてきたことが誇り

サスティナブルワイナリーとして持続可能性にも注力しています。もちろん除草剤は使用しません。自然由来の肥料を用いるなど、全ての畑に対して環境に配慮した仕事をしています。剪定時に枝が傷つかないような処理など、全ての作業を手で行っています。畑と真摯に向き合い手間暇をかけてきたことが、私たちの誇りでもあります。

畑仕事

ラ モッラ村で100年以上の歴史を持つヴィベルティ家
偉大な畑、偉大なワイン、偉大な家族によって育まれた4代目アルベルト氏

3つの村「ラ モッラ」「モンフォルテ ダルバ」「ノヴェッロ」に畑を所有

――所有する畑について教えてください。
自社畑は8~9ヘクタール。そのうちラ モッラ村のクリュ、ブリッコロッカが5ヘクタールあります。主にバローロ、ランゲネッビオーロ、バルベーラ、ドルチェットを造っています。

――以前と変わらず、バローロの3つの村にあるのですか?
そうですね。ラ モッラ村、モンフォルテダルバ村、ノヴェッロ村です。スタンダードバローロには、それぞれのクリュであるブリッコロッカ、ブッシア、パネローレ畑のブドウをブレンドして造っています。ラ モッラ村の単一畑ボイオーロにも畑を所有していて、クリュバローロも少量生産しています。

バローロ全体地図

近年、精力的な生産者が参入し始める注目のラ モッラ村の畑「ボイオーロ」

――最近、SNSでボイオーロのワインをよく見ます。新しく畑を購入する人が増えているのですか?
ボイオーロの畑
ボイオーロの80%はブドウ生産者で、彼らは大手ワイナリーにブドウを売ってきた歴史があります。つまり、ボイオーロを所有するワイン生産者はほとんどおらず、5~10年前まではボイオーロを知る人はいませんでした。そこで、私たちのような小規模な家族経営ワイナリーや精力的な若い世代が、優れたボイオーロの畑に着目し、参入し始めています。

――これから注目の畑になりそうですね。
そうですね。まだボイオーロは3000本しか生産していませんし、今後さらに力を入れていきたいと思っている畑の一つです。

ボイオーロ地図

家族の働く姿に影響を受けてワイン造りに情熱を捧げる4代目

――アルベルトさんはラ モッラ村で100年以上もの歴史を持つヴィベルティ家(カッシーナ バラリン)に生まれ、海外ワイナリーでの経験もあります。その中で、特に影響を受けた人物や出来事があれば教えてください。
最初の強いインパクトは家族の存在です。今ある自分の存在意義は家族なしでは語れません。生まれた家の目の前に畑があり、家族が働いている姿を見ながら育ちました。みんな格好良かったんです。畑仕事で生計を立てていることも、子どもの頃から理解していました。

次のインパクトは、自分がワインを愛していると気づいたことです。第三者からの影響ではなく自分自身です。自分が造ったワインがどう飲まれているのか、どういう評価がされているのか常に気になります。試飲をして少しでも難しいと思ったら、調整をしながらワインとの対話が始まります。私にとってワイン造りは人生で最大の楽しみの一つです。ワインへの想いがエネルギーになっているのです。

3代目と4代目
 

4代目アルベルト氏によるワイン解説

アルベルト バラリンの当主アルベルト氏にワイン解説をしていただきながら、ワインを試飲しました。

2020年からステンレスタンク100%!華やかで優美、バランスに優れたな味わい
アルベルト バラリン
ランゲ ネッビオーロ 2020
ランゲ ネッビオーロ 2020


アルベルト氏
「標高250メートルの丘の樹齢20~25年の若いネッビオーロ100%で造られたランゲネッビオーロです。若い時から楽しめるフレッシュな味わいで、5~6年の熟成も可能です。2020年は2016年と似ていて、とても素晴らしいヴィンテージです。春夏秋冬と規則正しく季節がやってきて、冬には雨が降り、夏は風通しが良く、昼夜の寒暖差も大きく、アロマティックなワインに仕上がりました。2020年からは、樽を使わずにステンレスタンクのみで造っています。

バラやスミレなど花の要素が大きいワインで、少し甘美な後味を感じられると思います。タンニンが前面に出ていて、綺麗な酸がありバランスに優れています。造り込まい結果、澄んだワインになりました。私と父にとっては、このような軽やかだけど最後にほろ苦さが残るワインを造っていきたいと思っています」

試飲コメント:輝きを持った明るく淡いルビー色。繊細で華やかな明るい香りで、やや厚みのあるピュアな果実香があります。ミネラルも感じます。フレッシュで活気のある味わい。ジューシーな赤系果実、ミネラル、旨味。鮮やかな酸味のフィニッシュ。あとから滑らかなタンニンが現れ、余韻をさらに持続させます。

50%小樽、50%大樽の24ヶ月熟成で造られる芳醇なバローロ
アルベルト バラリン
バローロ 2017
バローロ 2017


アルベルト氏
「木樽で18ヶ月熟成が規定されるバローロですが、このバローロは半分をバリック、半分を大樽で24ヶ月熟成させています。2017年はとても暑かったです。そのため、アルコール度数が高く、パワフルなタンニンがあります。そして、豊かな果実味が感じられます。グラスを揺らすと花の香りがとても引き立ちます。そして、タバコやバニラなどのスパイス、リコリスなど、樽由来の香りも出てきます。芳醇なバローロに間違いないですね。2017年は、今飲んでも楽しめますが、まだ長期熟成できますね。次のヴィンテージ、2018年も非常に美味しくすぐに完売してしまいました」
試飲コメント:ガーネット色がかったやや深みのあるルビー色。力強く複雑な香り。繊細な凝縮果実、ドライフラワー、ドライフルーツ、枯れ葉、スパイス。口当たりは柔らかく、香りに感じたドライフラワー、ドライフルーツ、たる由来の甘み、胡椒、シナモンなどのスパイスが口中に広がり、じわっと余韻が長く長く持続します。全体的に華やかで奥行きのある風味。バニラのニュアンスがあとからやってきます。

バルサミックな風味と華やかさが際立つラ モッラ村の単一畑ブリッコロッカ
カッシーナ バラリン
バローロ ブリッコ ロッカ 2017
バローロ ブリッコ ロッカ 2017


アルベルト氏
「ラ モッラ村の単一畑ブリッコロッカの樹齢35~55年のブドウで造られたワインです。標高は280メートル。選りすぐりのブドウを手摘みで収穫し発酵、15ヘクトリットルの大樽で熟成を行います。ブリッコロッカの特徴は、バルサミックな風味と第一アロマが非常にアロマティックであることです。スパイシーでハーブも感じられます。柔らかいタンニンも特徴の一つで、樽を使うことでよりまろやかさが増します」
試飲コメント:深みのあるガーネット色。力強く複雑、そして華やかな香り。ドライフルーツ、ドライフラワー、シナモン、甘やかな綺麗な香りが層になってやってきます。香り同様に力強く複雑な味わいが、存在感あるタンニンとともに口の中に広がっていきます。花やバルサミコの風味もあり華やかさも際立っています。様々な要素が複雑に絡み合い、ボリューム感と優美さを兼ね備えています。
インタビューを終えて
ヴィベッティ家には、ワイン生産に対する愛と情熱を感じました。先代のジョルジョさんとジャンニさんが偉大なワイナリー「カッシーナ バラリン」を築き上げたことも、二つのワイナリーに分かれたことも全てワインに対する強い想いがあったからだと思います。その想いは4代目のアルベルトさんにも受け継がれています。自身の名を冠したワイナリー名やワイン(造り)を語る姿からは、先代同様の想いに加え「自分が造るワイン」に対する責任感を感じました。

「何に一番影響を受けたか」という質問に対するアルベルトさんの返答も心に響きました。家族の存在と自分自身のことを挙げていましたが、質問に対して考える間もなく即答で興味深い話をたくさんしていただきました。その姿を見て、「本当に昔から家族の姿に影響を受け、自身とワインのつながりに対する揺るがない考えを持っているのだな」という印象を受けました。常に笑顔で話されていたことも鮮明に覚えています。

バローロの新時代を切り拓く若き4代目「アルベルト バラリン」のワインをぜひご堪能ください。

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