ヴィーノ ノービレの名門一家がプーリアの土着品種で表現するエレガンス!「マッセリア リ ヴェリ」突撃インタビュー

2023/05/02
突撃インタビュー
 
2023年4月19日 アルフレド ファルヴォ氏 Mr. Alfredo Falvo

名門「アヴィニョネージ」創業家がプーリアで表現するフレッシュ&エレガンス!驚愕のコストパフォーマンスを誇る「マッセリア リ ヴェリ」突撃インタビュー

アルフレド氏、宮嶋氏
マッセリア リ ヴェリは、ヴィーノ ノービレの名門「アヴィニョネージ」の創業家がプーリアで手掛けるワイナリーです。「トスカーナやピエモンテより高い潜在力を持つ」という確信のもと、1999年から投資を始め、2008年に現当主アルフレド氏とその兄エドアルド氏が独立してワイナリーを購入しました。同州で彼らは少量生産を行い、品質が高くお手頃価格のワインを生産しています。また、プーリアの土着品種を尊重しながらトスカーナスタイルを持ち込むことで、濃密ながらフレッシュでエレガントな味わいを表現しています。今回は、ワインジャーナリスト宮嶋勲氏に通訳と解説をしていただきながら、オーナー兼醸造家のアルフレド ファルヴォ氏にオンラインでお話を聞きました。

プーリアに参画したヴィーノ ノービレの名門一家「ファルヴォ家」
「この地は、トスカーナやピエモンテよりも高い潜在力を持つ」

トスカーナの名門「アヴィニョネージ」創業家「ファルヴォ家」

――今日はよろしくお願いします。まずはワイナリーの紹介からお願いします。

アルフレド ボンジョルノ。ワイナリーはイタリア最南東プーリア州にあります。ワイン造りの長い歴史を持つプーリアですが、ある意味、最近発見されたワイン産地とも言えます。60~80年代にトスカーナで起きたような(イタリアワイン)ルネッサンスがプーリアで起きています。

私たちファルヴォ家は、トスカーナのヴィーノ ノービレ モンテプルチアーノで、アヴィニョネージとして40年近くワイン造りをしてきました。1999年からプーリアに投資をし始め、2008年にトスカーナから独立してマッセリア リ ヴェリを購入しました。もともとマッセリア リ ヴェリは、1895年に地元の貴族によって創設された長い歴史を持つワイナリーです。

ラベル十字架
エチケットには、4つの十字架が描かれています。これは、かつてワイナリーが農家と畑の賃貸契約をする際に使用していた十字架サイン(※)です。私たちが発見した、1901年当時のマッセリア リ ヴェリの畑の賃貸契約書の中に、たくさんの十字架が書かれていました。その中から4つのサインを選びラベルデザインに使用したのです。
(※)当時読み書きができない農家が、自分の名前の代わりとして独自の十字架をサイン代わりにしていた

ワイナリー

トスカーナの伝統を持ち込みプーリアを偉大な産地へ

――どのような考えや経緯があり、ワイナリー購入に至ったのですか?
創業者ファルヴォ兄弟
アルフレド (もともといた)モンテプルチアーノから独立する時に、モンタルチーノやボルゲリでワインを造る選択肢もありました。しかし、兄のエドアルドと私は、「この地は、トスカーナやピエモンテよりも高い潜在力を持つ」と確信したプーリアに移転を決めました。先ほどお伝えした通り、1999年からアヴィニョネージの子会社として投資を始め、兄弟で独立してワイナリーを購入しました。

私たちが目指しているのは、“トスカーナで蓄積した伝統をプーリアに持ち込み、エレガントなワインを生み出すこと”です。プーリアは非常に大きな潜在力を持つ場所で、興味深い土着品種が多いです。まだ100%の実力は発揮できていないと思っています。私たちのノウハウを取り入れ、プーリアをトスカーナやピエモンテ、フリウリ、ヴェネトのような素晴らしいワイン産地にしていきたいです。

宮嶋 同じトスカーナ出身のアンティノリも、早くからプーリアに移転した造り手の一つですよね。

アルフレド その通りです。アンティノリもプーリアの潜在力に惹きつけられたトスカーナの一家です。彼らは私たちより1年早く、1998年に進出ました。

「プーリアの土着品種」×「トスカーナの醸造技術」
濃密かつフレッシュでエレガントな味わいを表現

あらゆる要素が組み合わさり複雑味を生むサレント半島

――ワイナリーの場所について教えてください。
アルフレド 高品質ワインが生まれる重要産地、サレント半島に位置しています。石灰を含む砂質土壌、海に囲まれた平野、四方から吹く海風、冬に3~4回降る雪など…いくつもの特徴を持つエリアです。これらの要素が組み合わさることで、複雑味を持つワインが生まれます。興味深いテロワールです。

――所有する畑の広さはどれくらいですか?
アルフレド 60ヘクタールです。これはアヴィニョネージ時代と変わらない広さで、ちょうど家族が直接品質を管理するのに適した規模感です。栽培する品種は、プリミティーヴォ、ネグロアマーロ、ススマニエッロ、マルヴァジアネーラ、アレアティコ、ヴェルデーカなど、99%が土着品種です。

地図

伝統ある土着品種と高い醸造技術で造り上げるフレッシュ&エレガンスな味わい

アルフレド プーリアのブドウ栽培の歴史は古代ギリシャ時代からと古く、多くの興味深い土着品種が存在します。そして、気候、土壌、水、全てにおいて恵まれているプーリアでは、多くのワイナリーが大量生産を行ってきました。しかし、醸造に関しては遅れているところがありました。それらの状況を踏まえて、私たちはプーリアの伝統や土着品種を尊重しながら、トスカーナで培った高い醸造技術を持ち込み高品質ワインを生産し始めたのです。つまり、品質とテロワールを追求したワインです。

そのような造り手は、今までプーリアには存在していませんでした。例えば、私たちのプリミティーヴォは品種ならではの甘さやスパイスが感じられますが、同時に酸がありエレガンスが引き出されています。長い歴史を持つプーリアのブドウ栽培と、トスカーナの高い醸造技術が合わさって素晴らしいワインが生まれたのです。とても興味深いことですね。

――ワイン造りに携わるスタッフさんについてもお聞かせください。
アルフレド 私が醸造責任者で、醸造コンサルタントは国際的名声を持つリッカルド コタレッラが2014年から務めています。その他にも若い醸造家もいて、彼らと一緒に毎日作業を行なっています。

樽
 

驚愕のコストパフォーマンス!
マッセリア リ ヴェリ当主兼醸造家アルフレド氏のワイン解説

マッセリア リ ヴェリには、複数のワインシリーズが存在します。今回試飲したのは、契約農家のブドウ100%で作られる「コントラーデ」と、ワイナリー名を冠した「マッセリア リ ヴェリ」。前者は20万本、後者は60万本が生産されています。

アルフレド氏が「エレガントでフレッシュさを引き出しています」と話されるように、どのワインも高品質で非常に洗練されています。特筆すべきは価格。試飲時、そのコストパフォーマンスに驚きの連続でした。アルフレド氏に、それぞれのワインについて解説していただきました。

フレッシュな酸、複雑味を持つお値打ちエントリーシャルドネ
コントラーデ シャルドネ プーリア 2021
コントラーデ シャルドネ プーリア 2021


アルフレド
「コントラーデは、2018年に始めた契約農家のブドウで造るお手頃価格で楽しめるワインブランドです。単一畑や区画のことをコントラーダと言います。複数の地区のブドウを用いていることから、複数形であるコントラーデと名付けています。長年、信頼関係を築く契約農家からブドウを買い、醸造から瓶詰めに至るまで全てマッセリア リ ヴェリで行なっています。

このシャルドネは、エントリーワインにしては、非常に複雑ですし品種ならではの特徴も出ています。プーリアらしいアロマティックな印象も現れています。トスカーナから移ってきて、潜在力の高さに驚いた品種の一つです。8月の半ばに収穫を行い、低温に温度管理されたステンレスタンクで3ヶ月間熟成させて、1月には瓶詰めしています」

試飲コメント:黄金寄りの麦わら色。熟した果実、ジューシーなリンゴ、蜜、少しの柑橘類を感じる香り。口当たりはソフト。リンゴをかじった時のようなフレッシュな酸味、ジューシーさがあります。ライムもあります。

アロマティックでフレッシュ&ミネラリーなプーリアの土着品種フィアーノ ミヌートロ
トッレモッサ フィアーノ 2020
トッレモッサ フィアーノ 2020


アルフレド
「プーリアのフィアーノは、フィアーノ ミヌートロと呼ばれる品種です。DNAに10%のモスカートが入っているんです。そのため、実はカンパーニャ州のフィアーノとは異なる品種になります。より軽くトロピカルフルーツのトーンが感じられるアロマティックな印象があります。非常にフレッシュでミネラルが感じられると思います」

宮嶋
「プーリアでは“ミヌートロ”と呼ばれていますよね」

アルフレド
「その通りです。もともとは、プーリア州中部のロコロトンド(バーリ県)周辺の品種なので、そのエリアではミヌートロだけでも伝わります。それ以外の場所ではミヌートロの名は使用できませんが、そのうち使えるようになると思います。ちなみに、ラベルに記載されているトレモッサとは、フィアーノ ミヌートロの畑の名前です」

試飲コメント:麦わら色。注いですぐに黄色や緑の果実、華やかな香りが広がります。やや繊細で甘やかな印象もあります。口当たりがソフトで、柔らかい酸が口を覆います。様々な要素が繊細かつ複雑に絡み合う丸みを帯びた味わい。口の中に余韻が持続します。

どこかマレンマ産サンジョヴェーゼを感じる複雑かつ親しみのあるネグロアマーロ
コントラーデ ネグロアマーロ 2021
コントラーデ ネグロアマーロ 2021


アルフレド
「シャルドネと同じコンセプトのコントラーデシリーズのネグロアマーロです。複雑であると同時にわかりやすくて飲みやすい味わいに仕上げています。このネグロアマーロは、どこかマレンマのサンジョヴェーゼに似ています。チェリーのアロマ、黒鉛、生肉のトーンが混ざっています」

宮嶋
「プリミティーヴォはサンジョヴェーゼと全く異なりますが、このネグロアマーロはタンニンもしっかり感じますね」

試飲コメント:淡いルビー色。赤い花や果実、キャンディなどの軽やかかつ凝縮感のある香り。甘やかさやリコリスのようなニュアンスも。味わいはシンプルで軽やかですが、濃密感も入り混じる複雑さがあります。

フルーティ&スパイシーですぐに楽しめる複雑で繊細なプリミティーヴォ
コントラーデ プリミティーヴォ 2021
コントラーデ プリミティーヴォ 2021


アルフレド
「最初(プリモ)に収穫される黒ブドウであることから、そう名付けられているプリミティーヴォです。収穫される8月末の段階で、すでにブドウが陰干し状態になりつつあります。果皮が薄いので、マセラシオンを短めに行なっています。フルーティでスパイシー、タンニンが少なくすぐに楽しめる味わいです。プリミティーヴォは最近ワインを好きになられた方に人気で大成功していますよね。プーリアは、ネグロアマーロとプリミティーヴォという対照的な品種が同じ地域で栽培されていることが魅力的ですね」
試飲コメント:ルビー色。柔らかい果実、赤い果実、紫果実、革、甘やかなスパイスを感じるエレガントで奥行きのある香り。土のようなニュアンスもあります。味わいは香り同様でエレガントで複雑。繊細な風味が持続します。

リゼルヴァクラスに使われるクローンを一部使用して造られるサリーチェ サレンティーノ
サリーチェ サレンティーノ 2019
サリーチェ サレンティーノ 2019


アルフレド
「自社畑のネグロアマーロ100%で造るサリーチェ サレンティーノDOCです。マルヴァジア ネーラをブレンドする造り手もいますが、私たちは単一品種で造っています。選別した古いクローンを使って2000年に植えられた樹を10~15%使用しています。そのブドウはリゼルヴァにも使用されています。コントラーデシリーズと比べて、1ヘクトールあたりの収穫量を低く抑えているので、その違いを感じていただけると思います。ステンレスタンクで発酵を行い、旧樽のバリックと大樽で6ヶ月間熟成します。非常に複雑な味わいで今飲んでも美味しく、食べ物とも合わせやすい味わいです。包み込むような甘いトーン、エレガントなタンニンがあります」
試飲コメント:やや濃いルビー色。力強く複雑でクリーンなアロマ。潰した花、赤&黒系の凝縮果実、微かにチョコレートやハーブのニュアンスもあります。香り同様に力強く複雑で丸みを帯びた味わい。甘やかさがありながら、フレッシュかつ複雑な風味が長く持続します。ヴァニラや革の要素も現れます。エレガントで、様々な要素が絶妙に調和しています。

トスカーナのエレガントさが表現されたマッセリア リ ヴェリの代表的プリミティーヴォ
オリオン プリミティーヴォ 2020
オリオン プリミティーヴォ 2020


アルフレド
「自社畑で作るプリミティーヴォです。マッセリア リ ヴェリのスタイルがよくわかる私たちの主要なワインだと言えます。プリミティーヴォは、甘くて酸が少なく、しばしば過熟のトーンが感じられます。しかし、オリオンは、海に近いこともありスパイシーながら酸がしっかりしていてエレガントなワインに仕上がっています」

宮嶋
「トスカーナのエレガントさが出ていますね」

アルフレド
「そうですね。長期熟成能力があることも特徴の一つです。何よりも食事とともに楽しめるワインだと思います。果皮が薄くマセラシオンを長くすると、過熟したり悪い要素が出てきやすいのでデリケートに醸造しています」

――醸造面以外にも工夫していることはありますか。

アルフレド
「もちろん畑も重要です。8月末には陰干し状態になり始めるので、収穫時期を遅らせすぎないようにしています。プリミティーヴォは果皮が薄いので、傷が入るとすぐに腐るし酸化が進みます。時期を逃さないことと早めに収穫するようにしています」

試飲コメント:濃く輝くルビー色。ドライフルーツなどの濃密な果実、ミネラル感、ドライフラワーの香り。口に含むとエレガントでクリーンな風味が広がります。ミネラリー。心地よいタンニンが綺麗な余韻を演出しています。

わずか年産5000本!その年の最良ブドウをブレンドして造る最高級キュヴェ
マッセリア リ ヴェリ 2016
マッセリア リ ヴェリ 2016


アルフレド
「このワインのコンセプトは、ボルドーのシャトーのようにその年の最良ブドウがブレンドされた最高級ワインということです。2016年の比率は、ネグロアマーロ40%、プリミティーヴォ40%、カベルネ ソーヴィニヨン20%です。新樽100%のバリックで18ヶ月熟成させます。生産量はわずか5000本。なぜそんなに少ないかというと、品種ごとに熟成させた後、本当に素晴らしい出来のブドウだけを厳選するからです。

プーリアがいかに偉大な潜在力を持っていて、最良畑のブドウを注意深く醸造すればこれだけエレガントなワインができるかを、このワインが証明してくれると思います。非常に複雑なワインで、アルコール度数も15~15.5%にも関わらず、アルコールを感じさせない優美な味わいに仕上がっています」

試飲コメント:濃いルビー色。遠くからでも伝わってくる力強さと華やかさを兼ね備えた香り。ドライフラワー、ドライフルーツのような濃密感があります。香りと同じ統一感のある味わいです。様々な色の果実が絡み合う力強く複雑、エレガントな風味。バターのようなオイリーさも感じます。数分間持続する非常に長い余韻。
インタビューを終えて
価格に衝撃を受けました。

契約農家のブドウを使用した「コントラーデ」シリーズ、ワイナリーの名を冠した「マッセリア リ ヴェリ」シリーズ、全てのワインが洗練されていてエレガント。特にワイナリーの顔であるという自社畑プリミティーヴォで造るオリオンのコストパフォーマンスには驚きです!

この品質をこの価格で楽しめるのは、プーリア産であることに加え「マッセリア リ ヴェリ」だからなせる業だと思いました。トスカーナであれプーリアであれ、一流の造り手は産地を問わず素晴らしいワインを生み出せるのだと感動しました。

兄のエドアルドさんとお会いした2005年時の写真をお見せし「お会いできてよかったです」と伝えると、「家族はみんな元気です。エドアルドに見せるから写真を送ってね!(笑)」と約束をしてインタビューを終えました。

驚きの価格と高品質な味わいを兼ね備えたマッセリア リ ヴェリのワインをぜひご堪能ください。

生産者さんと
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