トレッビアーノとサンジョヴェーゼの伝統を守り続ける自然派トスカーナ「カルロ タンガネッリ」突撃インタビュー

2023/06/06
突撃インタビュー
 
2023年3月8日 マルコ タンガネッリ氏 Mr. Marco Tanganelli

アヒルラベルで大人気!トレッビアーノとサンジョヴェーゼの伝統を守り続ける自然派トスカーナ「カルロ タンガネッリ」突撃インタビュー

アヒルにヒヨコ、鶏にクジャク。かわいい鳥のラベルがすっかりおなじみの自然派トスカーナ、「カルロ タンガネッリ」。コロナが落ち着きを見せ始めた2023年の3月、久しぶりに来日されたオーナーのマルコ タンガネッリ氏に現行ヴィンテージを試飲しながらお話を聞かせて頂きました。

古代ローマ時代よりも前から続くトレッビアーノの伝統。どのような状況になっても変わることのない自然な造り

前回のインタビューが2014年でした。あれから9年になりますが、私たちのワイン造りに対する考えや思いは何も変わっていません。自然な造りを忠実に続けています。コロナ禍の間も同じフィロソフィーでワインを造ってきました。

この10年で気候変動を感じます。寒暖差が大きくなり、乾燥している時期が長くなっています。南国的な気候、と言っていいかもしれません。秋と春がなくなり、冬と夏が顕著になっています。トレッビアーノは、このような気候変動に適した品種だと思います。

トレッビアーノはエトルスキの時代にこの地で造られていた品種です。古代ローマ時代より前から造られていたほど適した品種なんですが、1990年代以降、トレッビアーノを栽培する人が少なくなってしまいました。

50年間一度も化学的なものを使用していないからアナトリーノとアナトラーゾの畑はフカフカ

アナトリーノとアナトラーゾは同じ畑のトレッビアーノから造っています。この畑のトレッビアーノは樹齢50年以上です。50年間、一度も化学的なものを使用していません。だから土壌がフカフカです。

アナトラーゾはアナトリーノよりも厳しい選別をしています。幹により近い、果皮が良いものを選んでいますね。長期熟成もできるワインです。今回ご用頂いた2007年は、イタリアでも見つけるのは難しいですが。色は非常に濃い琥珀色になっています。そして輝きを増していますよね。これは時間とともに澱が沈んでいることを示しています。香りにはいわゆる熟成によって生じる第3のアロマを感じます。これはブルネッロやバローロなど、長期熟成させる赤ワインと同様の現象です。このトレッビアーノのようにイタリアの白品種で長期熟成力があるのはリボッラやフィアーノですね。

カルロ タンガネッリのふかふかの畑
 

異なる特徴を持つ7つのサンジョヴェーゼクローンから造る「マンミ」

カルロ タンガネッリ サンジョヴェーゼの畑そこそこ美味しいものはどこでも誰にでも造ることができるかもしれませんが、私は、偉大なワインはいい土地からしかできないと思います。サンジョヴェーゼ100%のワインの「マンミ」からはこの土地のこと、テロワールがわかります。マンミの畑は標高600mのところにあります。モンタルチーノの反対側で、ティレニア海とアドリア海のちょうど中心にあたります。ここに異なる特徴を持つ7つのサンジョヴェーゼクローンを植えています。アルベレッロ アッポッジャートという仕立て方法で栽培していますが、これは土のすぐ近くに房ができるんです。この栽培方法をすると必ず良いブドウができるのです。

カルロ タンガネッリ

トレッビアーノに適した土地であることを証明する大人気アヒルラベル「アナトリーノ」
アナトリーノ トスカーナ ビアンコ 2021
アナトリーノ トスカーナ ビアンコ 2021


2021年は、春が非常に寒く、4月6日にマイナス10度を記録しました。これほど寒いことは過去ありませんでしたが、トレッビアーノは芽吹くのが遅い品種なので、影響はなく、例年通りに育ちました。ここがトレッビアーノに適した土地であることの証明にもなったと思います。収穫も完璧な状態でした。マセラシオンは1週間で、タンニンも理想的で色合いも濃いめです。ノンフィルターデボトリングをしていますが、ボトリングの時期によっては透明感のあるものもありますね。
試飲コメント:濃く深い黄金色。ジューシーなゴールデンアップルや杏を感じるややスパイシーな香り。口当たりは非常に柔らかく綺麗な印象です。香りと同様の味わいが口中にじわじわと広がります。タンニンにより心地の良い余韻が持続します。

樹齢50年以上、より厳しい選別をしたトレッビアーノで造るアナトラーゾ
アナトラーゾ ビアンコ ディ トスカーナ 2020
アナトラーゾ ビアンコ ディ トスカーナ 2020


アナトラーゾはトレッビアーノにマルヴァジア デル キャンティを少しブレンドしています。マセラシオンは1ヶ月で、木樽で2年間熟成させています。畑でもカンティーナでも化学的なものは一切加えていません。アナトリーノとアナトラーゾは同じ畑の樹齢50年以上のトレッビアーノから造っていますが、アナトラーゾのほうはより厳しい選別をしていて、幹に近く、皮がいいものを選んでいます。

(インポーターさん秘蔵の2007年について)2007年なんて、イタリアでも見つけることは難しいです。香りには熟成による第3のアロマがありますね。これはブルネッロとかバローロと同じ現象です。このトレッビアーノ同様、長期熟成できるイタリアの白品種は、リボッラとフィアーノですね。

試飲コメント:アナトリーノよりもより香りに甘みと複雑味が感じられます。茶葉や果皮の風味など深みがあります。甘みのあるしっかりとした味わいで、力強く、まろやかです。一緒にインポーターさん秘蔵の2007年のアナトラーゾも飲ませて頂きました。非常に濃い琥珀色でより輝きを増しています。これは時間とともに澱が沈むことを表しているそう。甘みと凝縮した香りで、コクと厚みがあり、余韻にはキャラメルのニュアンスが感じられます。アナトラーゾの熟成ポテンシャルに驚かされました。

『スローワイン』で“日常のワイン”に選ばれた食卓に欠かさない存在「チブレオ」
チブレオ 2018
チブレオ 2018


チブレオは、スローフードのワインガイド『スローワイン』でヴィーノ クオティディアーノに選ばれました。これは日常のワイン、という賞なのですが、まさにその通りのワインで、食卓に欠かさない存在ですね。サンジョヴェーゼを主体に、コロリーノとマルヴァジア ネーラをブレンドしています。醸造は全てステンレスタンクで、木樽は一切使っていません。早飲みタイプのワインです。
試飲コメント:ルビー色。カシスや黒系果実を感じる綺麗で心地よい香り。味わいは軽やかながらも果実味溢れるミディアムボディ。存在感あるタンニンが果実の余韻を演出しています。時間が経つと甘やかな印象も現れてきました。

メルローの柔らかさとまるみ、サンジョヴェーゼの力強さと硬さの融合「エラ」
エラ ロッソ ディ トスカーナ 2018
エラ ロッソ ディ トスカーナ 2018


エラはメルローを主体に、サンジョヴェーゼをブレンドして造っています。この土地は春が来るのが遅いため、芽吹くのが遅く、早熟なメルローに向いているんです。メルローはフレンチバリックで熟成させています。バニラ香とまるみがメルローのタンニンに調和します。サンジョヴェーゼはスロヴェニア産の大樽で熟成させています。サンジョヴェーゼの力強さや硬さをメルローがカバーしていますね。エラとは、ギリシャ神話の愛の神様。彼女のシンボルがクジャクです。メルローがいろいろな品種を愛してくれるように、エラが愛の神様なので名付けて、ワイナリーの敷地内にいたクジャクをエチケットに書きました。
試飲コメント:紫がかった濃いルビー色。潰した花、紫系果実の香り。味わいは紫系果実、バニラなどのスパイス、黒系果実、黒鉛のニュアンス。爽やかさも感じます。

良年だけに造られるプレミアム サンジョヴェーゼ「マンミ」
マンミ ロッソ 2018
マンミ ロッソ 2018


マンミは本物のサンジョヴェーゼを味わってもらえるワインですが、このワインがどの場所で造られているのかを理解して頂くことが必要です。モンタルチーノの反対側で、標高は600m。ここの単一畑に特徴の異なる7つのクローンのサンジョヴェーゼを植えています。仕立てはアルベレッロ アッポッジャートといって、土のすぐ近くの低い位置に房が付きます。この栽培方法からは必ず良いブドウができます。ボリュームがあり、バランスがとれていてまろやかなタンニンが感じられます。
試飲コメント:甘い果実が広がる凝縮感のある香り。濃厚でボリューム感のある味わいでまろやかなタンニンと果実味のバランスの取れた心地よさを感じる味わい。しっかりとした重心の低さの中にも清涼感も感じられます。
インタビューを終えて
9年ぶりにお会いしましたが、相変わらず穏やかで終始にこにこされているマルコさんの印象は前回と変わらないままでした。自然な造りをまっすぐに貫いているマルコさんの人柄そのものがワインにも表れていると感じます。

そして、樹齢が伸びている分、ワインの味わいにより深みが増したと思います。飲み心地の良さはそのままで、複雑味や旨みが加わり、さらに美味しくなっています。

トレッビアーノとサンジョヴェーゼにこだわり続ける強い想いも、マルコさんの言葉とワインからひしひしと伝わってきました。かわいい鳥たちのラベルのカルロ タンガネッリのやさしい自然な味わいをゆっくり楽しんで頂ければと思います。

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