2023年5月23日 フェデリコ ロンバルド ディ モンテ イアト氏 Mr. Federico Lombardo di Monte Iato
合計470ヘクタールもの畑でシチリア大陸の多様性を最大限に表現!「高品質×コスパ」を先駆的に手がける現代シチリアの代表格「フィッリアート」突撃インタビュー |
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シチリア西部トラパニにほど近いパチェコに拠点を構える家族経営ワイナリー「フィッリアート」。「シチリア固有のブドウ品種のポテンシャルを十分に引き出す」「シチリアの土地に適した国際品種の活用」という哲学のもと、ヨーロッパ有数のバラエティ豊富な個性を持つシチリア大陸で数々の高品質&コストパフォーマンスに優れたワインを生産しています。その品質の高さから、『ガンベロロッソ』をはじめとする評価誌で最高評価を連続受賞、『ルカマローニ』で年間最優秀生産者を受賞しています。今回は多種多様なワイン9種を試飲しながら、各エリアで存在感を放つ数々の品種、エトナDOC理事として足繁く通うエトナについて2代目フェデリコ ロンバルド ディ モンテ イアト氏にお話を聞きました。 | ||||||||||
バラエティに富む広大なシチリア大陸を網羅
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――本日はよろしくお願いいたします。それでは、ご自身とワイナリーの紹介からお願いします。
私はフィッリアートの2代目、フェデリコ ロンバルド ディ モンテ イアトと申します。ちょっと名前が長いですね(笑)。畑や醸造を担当しています。フィッリアートは1970年代後半に、シチリア西部トラパニ近郊パチェコで創業した家族経営のワイナリーです。エトナDOC組合の理事とアッソヴィーニ シチリア(※)の次期会長(2023年5月現在)でもあります。 海岸、山、丘、島、ヨーロッパ有数のバラエティ豊富な大陸「シチリア」 創業当時、シチリアで生産されたワインはフランスや北イタリアに売られていました。そのため、私たちは創業した時にいくつかの目標を定めました。1つ目は「シチリア大陸の個性を生かしたワインを造ること」。シチリアは州でありながら1つの大陸と捉えています。様々な品種や土壌があるこの地はヨーロッパでも非常に特殊だと言えます。海岸エリア、丘陵地帯、島の周りに小さな島もあります。山のエリアもあります。エトナ山が代表的ですね。 ――小さな島と言えば、トラパニ近郊のファヴィニャーナ島でもブドウを栽培していますよね。 その通りです。私たちはファヴィニャーナ島唯一のワイナリーです。海抜ゼロで、海から3メートルの距離に畑があります。これ以上話すと止まらないのでやめておきますね(笑)。 合計470ヘクタールの畑で数々の高品質ワインを先駆的に生産 シチリアには各地で異なる土壌があり、各地に適した土着品種、国際品種があるということです。シチリアには72の土着品種があると言われています。私たちは、合計470ヘクタールの畑、7つの醸造所でワインを造っています。それにより、シチリアの多種多様なワインを幅広く手がけることができます。2007年にはオーガニック認証を取得しています。 2つ目は「シチリアの土着品種を使って高品質ワインを造ること」。創業当時は高品質なネロ ダヴォラやネレッロ マスカレーゼが造られる時代ではありませんでした。私たちはいち早く高品質な土着品種を造り始めました。そして、サスティナビリティにも取り組んでいます。2014年から持続可能性に関する認証を取得し始めました。2019年には、イタリア初の脱炭素ワイナリーの認証も取得しています。 ――昔から各地に畑を所有されていたのですか? そうです。本拠地であるシチリア西部トラパニのエリアから始まり、古くから各地に畑を所有しています。また、私たちは品種をブレンドして造り始めたシチリアで最初のワイナリーです。そのノウハウを生かしてエトナのワインに着手することができました。今やエトナは有名産地ですが、私たちは1994年から手がけています。そういう意味でもフィッリアートはシチリア高品質ワインの先駆的な存在です。 ――フェデリコさんは、どこでワインを勉強されたのですか? 醸造所の中で学んできました。書物での勉強はたくさんしていますし、アグロノモやエノロゴなど大学の醸造学の方たちと常にコンタクトを取っています。私は好奇心旺盛なので、彼らにたくさん質問をして知識を得てきました。 とあるジャーナリストから「あなたは、詩的な表現をすることなく適切にワインを説明する唯一の生産者だ」と言われたことがあります。これは私が、ワイン“そのもの”に向き合ってきたからだと思います。問題は常に畑や醸造所にあり、ひたすら解決しながらワインを造っています。 |
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ネロ ダヴォラ、ネレッロ マスカレーゼ、ジビッボ、シラーなど…
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ネロ ダヴォラに最適な「ボルゴ グアルディーニ」で造る代表的赤「アルモニウム」
ネロ ダヴォラはシチリアの土着品種で最も有名な品種です。25年ほど様々な研究を重ねた結果、シチリアの他エリアと比べてトラパニの「ボルゴ グアルディーニ」エリアがネロ ダヴォラに最も適した土地だと判明しました。ここは悪い年がない場所です。海に近いエリアで常に風が吹き、雨が少なくブドウに問題が起こることがありません。同エリアの3つの異なるネロ ダヴォラで造るワインが「アルモニウム」です。 ――3つの畑はそれぞれ特徴が異なるのですか? 土壌と畑の向きが異なります。北東向きの畑はフレッシュな酸を生み、南向きの畑は粘土質で凝縮感を生むなど…それらを一緒にブレンドすることで、優れた骨格とエレガンスを兼ね備えたワインに仕上がります。 エトナ北部に所有する14のコントラーダ(クリュ)で造るネレッロ マスカレーゼ ――トラパニ地区だけでなくエトナにも畑を所有しています。具体的な畑の位置を教えてください。 所有する14のコントラーダの畑全てが北部エリアにあり、主に黒ブドウはネレッロ マスカレーゼ、白ブドウはカリカンテを栽培しています。 ――フィッリアートのエトナワインは全て14のコントラーダから造られるのですか? コントラーダ名が明記できるのは「カヴァネーラ」シリーズです。「レ サッビエ」シリーズは様々なコントラーダをブレンドしたクラシックなワインです。 トラパニ地区の丘陵ジビッボ&海岸ジビッボで造る特徴的な白「ジャスミン」 「ジャスミン」はジビッボというアロマティックな土着品種で造る白ワインです。ジビッボは別名モスカート ディ アレッサンドリアと呼ばれ、古代からシチリアで造られる品種です。セージなどの地中海を思わせる香りがあります。 ――ラベルにジビッボ&ジビッボと書いてあります。 丘陵地帯と海岸地帯の2種類のジビッボで造っているという意味です。丘陵地帯はしっかりした酸、海岸地帯は香り高さが特徴です。通常、アロマティックなワインはフレッシュさに欠ける場合がありますが、ジャスミンには酸が備わっています。試飲していただくと、その特徴的な味わいを感じていただけると思います。とても興味深いワインです。 シチリアで最も優れる品種の一つ「シラー」 シチリアで最も優れる品種の一つがシラーです。遺伝子学の研究が進むと、品種の本当の起源が明らかになってきます。これを話すと怒る方がいるかもしれませんが、シラーはシラクーザ(シチリア南東部)が起源だと言われています。私たちがシラーを使用して造るのは「アルタヴィッラ」と「ベイアモーレ」。 「アルタヴィッラ」はトラパニ近郊の標高250メートルの畑で造るシラー100%赤ワインです。スパイスやトマトの葉っぱなど、香りはまさにシラーそのもの。「ベイアモーレ」は、フラッパート、メルロー、シラーの3品種で造る赤ワインです。遅摘みブドウを使用しています。通常のシラーは9月の最後の週に収穫しますが、ベイアモーレのシラーは10月第1、2週に行います。シチリアにおける1週間の違いはものすごいです。 他にも1980年代初頭に植樹したカベルネ ソーヴィニヨンやメルローもあります。いかがですか。いかにシチリアが大陸で様々な品種に適した土地があると、おわかりいただけたでしょうか。 ――すごいですね。バラエティ豊富なシチリアと、各地に畑を所有するフィッリアートさんだからこそできる業ですね。 ワインの個性は全く異なります。私たちがたくさん生産しているということではなく、シチリアが多種多様なワインが生産できるということです。 |
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エトナDOC理事としてコントラーダ分析・調査に尽力
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――エトナDOC組合の理事としての活動内容を教えてください。
土壌の調査を行い、約130あるコントラーダの区分けをしています。エトナは非常に複雑なエリアで土壌も様々です。土地の特徴が確立するまでに長い時間を要しますので、それぞれの栽培状況や土壌の特徴を把握して、将来的に畑が持つ特徴を分析しています。 ――なるほど。多くの生産者が他の州から参画していますし、それだけエトナは可能性を秘めた産地なんですね。 本当にそうですね。エトナワインは成長過程にあります。現在170の生産者と380のワインが存在し、醸造施設を持つ生産者はそのうち70%です。2022年の生産本数は500万と決して多くなく、まだニッチなワインと言えますね。 ――お手頃なワインも多くないイメージです。 なぜならブドウ栽培に費用がかかるからです。山での作業なので機械は導入できませんし、ほぼ全てが手作業です。トラパニとエトナの費用を比較すると約2倍の差が生まれるほどです。 樹齢150年を超えるプレフィロキセラ畑から新品種発見 ――本拠地のトラパニからエトナまで通っているのですか? シチリアを横断する形になります。 車で4時間かかりますが、かなりの頻度で通っていますね。それほどエトナは興味深いんですよ。火山の研究をしている友人がいるので、同行して調査を行うこともあります。実は、そこでまだ知られていない新しい品種を発見したんです。 ――どこで発見したんですか? プレフィロキセラの畑(フィロキセラが発見される前に植えられた古い畑)の中です。データベースで一致しない遺伝子を持つ誰も知らない品種だったんです。黒ブドウも白ぶどうもあります。カターニャ大学と協力してワインを造れないか調査中です。造るワインもそうですが、私自身が命名権を持っているのでどんな名前にしようかワクワクしています(笑)。 なぜそのブドウが(ほぼ)消滅してしまったのか知りたいです。フィロキセラの被害を受けたのか、もしくは美味しくないという理由で栽培しなくなってしまったのか、はたまた単に収量が少なかったからか…。新発見の多いエトナは楽しくて飽きることがないんですよ。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
「エトナは楽しくて飽きることがないんです」と話すフェデリコさんの目はとても輝いていました。お話を聞いた2日前もエトナ山は噴火したそうで、「ドドドン」という音で目が覚めることもあるそうです。フィッリアートをはじめ多くの有名生産者が危険を承知で参画するということは、それだけ興味深い魅力がエトナにはあるからだと改めて実感しました。
ワイン自体も魅力が詰まっていて飽きさせません。畑の場所、品種(ブレンド)、銘柄、本当に多岐にわたるラインナップでした。まさに「一つの大陸」を体感できたと思います。 特に印象的だったのは、単一畑エトナビアンコ「カヴァネーラ」と4つの土着品種で造る「クアテル ヴィティス」。前者はフレッシュさとミネラル感、後者は凝縮感とスパイス感に溢れ、両者ともに素晴らしいバランスの味わいでした。ネロ ダヴォラ100%「アルモニウム」も美味しかったです。 多種多様なシチリアの魅力が詰まった高品質かつコストパフォーマンスに優れた「フィッリアート」のワインを、ぜひご堪能ください。 |
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シチリア大陸の多様性を最大限に表現する現代シチリアの代表格「フィッリアート」突撃インタビュー
2023/06/14