2023年8月22日 フランチェスコ コルデーロ氏 Mr. Francesco Cordero
バローロ超名門「ヴィエッティ」コルデーロ家の新しい挑戦!いま大注目のピノ ネーロ産地「オルトレポ パヴェーゼ」にクリュの概念を導入し、創業直後から話題沸騰中の新星「コルデーロ サン ジョルジョ」突撃インタビュー |
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バローロの歴史的名門ヴィエッティを所有し活躍していたコルデーロ家の3兄弟フランチェスコ、ロレンツォ、カテリーナが2019年に起ち上げた家族経営ワイナリー「コルデーロ サン ジョルジョ」。ルーツを持つカスティリオーネ ファレットから、オルトレポ パヴェーゼに拠点を移し、ピノ ネーロを中心にエレガンス溢れるワインを生産しています。同地区は昔からピノ ネーロが根付くエリアで、現在は3000ヘクタールの栽培面積を誇り、欧州ではシャンパーニュ、ブルゴーニュに次ぐピノ ネーロの大産地です(国内では最大)。コルデーロは、オルトレポの潜在力にいち早く気づき、一番乗りでバローロで培ったクリュの概念を導入し、進出後早々に世界屈指とも言える高品質のピノ ネーロを生み出して話題を呼んでいます。今回は、当主のフランチェスコ コルデーロ氏と、輸入元フードライナー取締役の辻本恭三氏にワインを試飲しながら話を聞きました。 | ||||||||||
バローロの歴史的名門がピノ ネーロの大産地に進出!
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2019年、カスティリオーネ ファレット村からオルトレポの一等地へ
――ボンジョルノ。今日はよろしくお願いします。まずは、ワイナリーについてお聞かせください。 フランチェスコ ボンジョルノ。コルデーロ サン ジョルジョは、私と弟のロレンツォ、妹のカテリーナの3人で始めた家族経営ワイナリーです。私たちはピエモンテ出身で、バローロ地区カスティリオーネ ファレット村でヴィエッティというワイナリーを所有していました。 ――いつ頃からオルトレポ パヴェーゼの進出を考えていたのですか? フランチェスコ 私がヴィエッティで働いている間、弟は世界各国で醸造家として修行し、妹はコペンハーゲンの大学でマーケティングを学んでいました。彼らがそれぞれの活動を終えて家に帰ることになったので、3人で新しいプロジェクトを立ち上げようということで、2019年にオルトレポ パヴェーゼに進出しました。 辻本 それもいきなりオルトレポの一等地です。丘陵地帯で、サンジョルジョと言われる1600年代に建てられた塔のあるヴィッラ付きのカンティーナです。また、クリュ ピノ ネーロ「SG 67」に使用される、1967年に植えられた古い畑もあります。 ネッビオーロのスペシャリストが見抜くオルトレポ産ピノ ネーロの潜在力 フランチェスコ 進出した理由は、オルトレポ パヴェーゼのポテンシャルです。最も重要な品種はピノ ネーロ。私たちは長年バローロでネッビオーロを造ってきましたが、ピノ ネーロもネッビオーロ同様にエレガントさを持つ品種です。私たちは、その素晴らしい潜在力を秘める、ここのピノ ネーロに惹かれたのです。 ヴィエッティ哲学のもとで行う、土地とブドウに焦点を当てたワイン造り フランチェスコ オルトレポは決してピノ ネーロだけのエリアではありません。バルベーラ、クロアティーナ、シャルドネ、リースリングなど、多くの品種が長く根付くバラエティ豊富な地域です。それだけ多様な土壌があり、ブドウ栽培に適した土地であるということです。私たちの所有畑を例にとっても、隣同士の畑で全然特徴が異なります。 ワイナリーの基本コンセプトは、その個性の異なる土壌の違いとブドウ品種の価値を表現することです。そのため、全てのワインを単一品種で造ります。ブレンドはしません。私の祖父も言っていましたが、私たちの鍵となる考えは「自分たちが今持っている土地やブドウをより良いものにしていき、未来の子どもたちに託していくこと」です。 |
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大ブーム必至! 絶対見逃せないイタリア随一のピノ ネーロ産地
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イタリア最大の栽培面積を誇るピノ ネーロの大産地
――オルトレポ パヴェーゼと所有畑について教えてください。 フランチェスコ オルトレポ パヴェーゼはロンバルディア州に位置し、バローロ、ミラノともに車で約1時間の場所です。もともとはスプマンテの伝統的なエリアです。自分たち自身でも造りますが、ピエモンテの造り手がオルトレポ産のベースワインを購入してスプマンテを造ってきたという歴史(※)もあります。現在はスティルワインも多く造られており、オルトレポはイタリアで最も大きいピノ ネーロの栽培面積を誇るエリアです。 辻本 総面積は500ヘクタールと、とてつもない広さです。欧州ではシャンパーニュ、ブルゴーニュに次ぐピノ ネーロの大産地です。 多くの名門ワイナリーが熱視線を送るオルトレポ産ピノ ネーロ (※)オルトレポ パヴェーゼは、古くからピエモンテ、ロンバルディア等の偉大な造り手にブドウを供給し、高品質ピノ ネーロ産地として知られています。フォンタナフレッダ、コントラットやベルルッキなど、多くの優良生産者がオルトレポのブドウを用いて最高品質のメトド クラシコを生産してきました。 今もなおブルーノ ジャコーザをはじめ、オルトレポ産のブドウを用いたメトドクラシコが生産されています。2023年8月には、フランチャコルタの先駆者ベルルッキが、8ヘクタールのピノ ネーロの畑を持つオルトレポ のワイナリーを取得したと発表しました。オルトレポ パヴェーゼは、まさに今最も熱い産地なのです。 多種多様な土壌が入り組むオルトレポ パヴェーゼの畑 フランチェスコ 2019年に畑とカンティーナを取得したわけですが、前所有者は1970年代末から取得しており、すでにブドウが植えられている状態でした。畑は合計40ヘクタール。カンティーナ周辺に22ヘクタール、少し離れた涼しい場所に18ヘクタールあります。進出した当初からビオロジック栽培をしています。 土壌とブドウの個性を引き出すという哲学のもと、ビオパスというシステムで土壌の区分けを行っています。これは、単に土壌を調べるのではなく、そこに息づく微生物の活動も含めて分析をします。ビオパスを用いることで土壌に対して敬意を払うことができ、より高品質で素晴らしいワインを生み出す結果につながるのです。 畑を取得した当初、とある区画にリースリングが植えられていました。その区画をよく調べてみると、リースリングは不向きで、同じ区画内でも西側はシャルドネ、東側はピノ ネーロが向いていることがわかり、それぞれ適切な品種に植え替えました。このようにきちんと調べると微妙な違いが判明するので、個性を引き出すために小区画ごとのワイン造りを重視しています。 たったの数年で成果が出る、可能性に満ちた大注目産地 辻本 オルトレポ パヴェーゼは、素晴らしいピノ ネーロができる非常に興味深い場所です。何より、彼の話を聞いていると半端ない可能性を感じるんです。リースリングが向いてないとわかると、すぐに適した品種に植え替えて高品質ワインを造り上げる。オルトレポに来てまだ数年ですよ。 実際に試飲してみるとイタリアのピノ ネーロを飲んでると思わないですよね? しかも、現時点ですでに完璧な出来のピノ ネーロで、非常にピノ ノワール的な美味しさがあります。この味を感じてどこのピノ ネーロかわからないのは、オルトレポ パヴェーゼという名前がまだ無名だからなんです。 ネッビオーロ以上に繊細で配慮が必要なピノ ネーロ ――オルトレポでワインを造ると決めた時、こんなに素晴らしい品質になると想像していましたか? フランチェスコ うーん……想像はしていませんでしたね。始めてまだ時間は経っていませんが、ワインを造る過程で「やっぱりオルトレポは素晴らしい」と満足していきました。しかし、まだまだやらなければいけないことは多々あります。 辻本 彼らが以前バローロで扱っていたネッビオーロは収穫の余地が少なくとも1週間はあったんです。しかし、オルトレポに来てピノ ネーロを栽培してみたら、その余地が3日しかない。ネッビオーロも繊細な品種という認識でやってきましたけど、ピノ ネーロはそれ以上に神経質で皮が薄い。ちょっとでも収穫時期を逃すとダメになってしまうんです。 フランチェスコ そうなんです。高品質のピノ ネーロを造る時には非常に気を使います。例えば、ネッビオーロは1日長くマセラシオンをしても何も変わりませんが、ピノ ネーロは1日でワインそのものを失ってしまいます。それくらいの差があります。 |
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クリュバローロの先駆けヴィエッティで育ったコルデーロ家
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――「土壌とブドウの個性を引き出すという哲学」のお話がありましたが、具体的にはどういうことですか?
フランチェスコ 私たちはピノ ネーロ以外に、ピノ ネロ、シャルドネ、クロアティーナ、ピノ グリージョ、バルベーラを栽培しています。それら全てを小区画ごとに分けて醸造をし、その中から適切なワインを選んでいきます。必ずしもイメージ通りのワインができるわけではないので、その時はボトリングしません。 ゾーニングの考え方がないオルトレポにいち早くクリュ バローロの概念を導入 ――特にピノ ネーロに関して、区画ごとに醸造を行って最終的にブレンドをするという工程は、ヴィエッティのバローロと同じ考え方ですか? フランチェスコ そうです。ヴィエッティのバローロと同じコンセプトです。ちなみに、ブレンドして熟成させるのではなく、熟成させた後にブレンドをします。祖父がよく言っていた「それぞれの土地(区画)に敬意を払って造る」という考え方を私たちは自然と受け継いでいるのだと思います。 この考え方はもともとブルゴーニュから来ていますが、オルトレポ パヴェーゼにも当てはまると考えています。オルトレポはゾーニングの考え方が全く持ち込まれておらず、バローロであれば「この土地はこういう特徴で…」といった明確な区分けがなされていません。そのため、私たちは率先してバローロで培ったクリュの概念を取り入れて、ワインを造り続け、学び続け、オルトレポ パヴェーゼの発展に務めているのです。 世界最高峰のワインの発想と表現が詰まった3種のピノ ネーロ 辻本 彼らはクリュ バローロの先駆けであるヴィエッティと偉大な畑で生まれ育ち、小さい頃から溢れるほどのバローロ、バルバレスコ、ブルゴーニュのグランクリュに囲まれて育ってきたんです。「これはセッラルンガのバローロ」「これはジュヴレ シャンベルタン」などと感覚的にワインを理解し、経験値を得てきた経緯があります。 彼らが造るピノ ネーロは「ティアマット」「パルトゥ」「SG 67」と3種類あります。そのイメージは、ヴィエッティが造ってきたランゲネッビオーロ、バローロ、そしてラッツァリートなどのクリュ バローロそのものです。「ティアマット」はブルゴーニュAOC、「パルトゥ」は村名、「SG 67」はクリュという位置付けです。偉大な造り手としての発想が染み付いているのだと思います。 フランチェスコ イメージは、まさしくその通りです。バローロで培ってきたコンセプトをオルトレポに導入しています。個性を見極めて最大限に発揮させるには、区画ごとのワインをひたすら継続的に試飲をすることが必要です。と同時に、マセラシオンの長さを変えたり試行錯誤を繰り返しています。 例えば、ティアマットはエレガントでフィネスが生まれる砂質土壌の東側にある畑のブドウを使用しています。エレガンスを最大限に引き出すためにステンレスタンクで熟成させます。一方で、リゼルヴァクラスのパルトゥは、優れた骨格が生まれる粘土質の畑のブドウを使い、木樽で熟成させています。SG 67は古樹の単一畑で造るまさにクリュ ワインです。そうやって各ワインの個性を確立させています。来年には1996年に植えられた東側の単一畑、クリュ ピノ ネーロを生産する予定です。 左から、ティアマット、パルトゥ、SG 67 偉大な白ワインに触れてきた桁違いの経験値から造られるシャルドネ 辻本 白ワインにしてもそうです。彼らはモンラッシェやムルソーといったワインをごく普通に飲んでいました。シャルドネもすごく美味しいでしょう。彼らが美味しいシャルドネを頭の中で探した時に、このテイストしかないんです。今まで積み上げてきたバックボーン、経験値は桁が違います。 |
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「12年前に脚光を浴びたエトナと同じ現象が起きている」
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2019年デビュー後早々に世界の各評価誌が高得点を連発
辻本 私は20年前からオルトレポが好きで、このエリアのワインをたくさん飲んできました。白はピノ グリージョ、赤は絶対にピノ ネーロです。あとはボナルダ(クロアティーナ)も素晴らしい。彼らが造るそれらのワインは、デビューした2019年からいきなり各評価誌で90点以上の高得点を連発しています。ティアマットは、2年目で『ガンベロロッソ』最高賞トレビッキエリを獲得しています。ピノ ネーロを造り始めて間もない状態で、これは凄まじいことです。 未開の地オルトレポ パヴェーゼに旋風を巻き起こす予感 辻本 カ デル ボスコのピノ ネーロをはじめ、これまでイタリアでは偉大なピノ ネーロは造られてきましたが、それらはあくまで一部のゾーンで「点」です。一方でオルトレポ パヴェーゼのピノ ネーロは、栽培面積が500ヘクタールととてつもない広さ。未開の地とも言える場所で、コルデーロはヴィエッティの経験値を持ち込んで素晴らしいワインをどんどん造っています。私は坂本龍馬のように「何かを動かすだろう」という予感がしています。 「12年前に脚光を浴びたエトナと同じ現象が起きている」 辻本 12年前に脚光を浴びたエトナと同じ現象が起きていると思います。可能性を秘めたエトナに気づいた多くの生産者が進出しましたが、クリュの考え方はあまり持ち合わせていませんでした。そこで、一番乗りに土壌の分析をしコントラーダ(クリュ)の開発をしたのが、(バローロボーイズを世界中に知らしめた)マルク デ グラツィアのテッレ ネーレです。これは、コルデーロがオルトレポで取り組んでいることと同じで、コルデーロの3兄弟は誰よりも早くその可能性に気づいたんです。 エネルギーと可能性に満ち溢れた3兄弟 辻本 彼らはいつも目をキラキラさせています。例えばフランチェスコと話をしていると、次から次へとロレンツォやカテリーナが割り込んで話をしてくるんです。「今年はこういう造り方で…」と話が絶えません。まだまだオルトレポの潜在力を引き出している最中で、毎年やっていることが違います。ピノ グリージョは6ヶ月間のシュールリーをしたり、シャルドネは3つの容器(アンフォラ、ステンレス、木樽)を使ったり、やっていることが非常に面白いんです。それでいて、この美味しさです。彼らは小さい頃から「美味しい要素とは何か」を理解しているんです。ピノ グリージョもシャルドネもランゲでは造ってこなかったわけですから。 世界屈指のピノ ネーロを造るワインの申し子 辻本 本当に彼らはワインの申し子だと思います。生まれた時から、ネッビオーロ、ピノ ノワール、バルベーラ、ドルチェットが家にゴロゴロしていて自然と飲んでいた。コルデーロのワインを試飲すると、ブルゴーニュのピノ ノワールと品質的に何ら変わりませんが、あくまでオルトレポ パヴェーゼのピノ ネーロです。 ジュヴレ シャンベルタン、モレ サン ドニ、シャンボール ミュジニー…それらと比較するとオルトレポ パヴェーゼの年間日照量は300時間ほど長く、平均気温は3.5度くらい高いし、絶対に皮は厚くなり糖分も上がります。それをブルゴーニュを参考にして造るなんていうことは、「ありえない」の世界です。全く別のものです。しかし、美味しさに対する感覚は一緒なので、造っていく中で思い描く美味しさに辿り着き、独自性がありながら最高品質のワインに仕上げていくのです。 ランゲを卒業し、オルトレポに人生を賭けるコルデーロの未来 辻本 コルデーロのホームページには「Cordero and San Giorgio: from the Langhe to Oltrepo Pavese」と書いてあります。ランゲからオルトレポに来た人間である、と。彼らはもうランゲを卒業しているという認識なんです。バローロで偉大なネッビオーロを造ってきた人間が、今度はオルトレポで偉大なピノ ネーロを造ることに人生を賭けているんです。 これから先、オルトレポ パヴェーゼで更に経験を積んだコルデーロ兄弟の将来が非常に楽しみです。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
「12年前に脚光を浴びたエトナと同じ現象が起きている」 そう話すのは、輸入元フードライナー取締役の辻本恭三さん。実際にお話を聞きながらワインを試飲していくと、味わいとともにワイナリーとしての勢いを強く感じることができました。「どこのピノ ネーロかわからないのは、オルトレポ パヴェーゼという名前がまだ無名だから」という言葉も非常に印象的で、確かに「第二のエトナ」という印象を持ちました。 まだ創業して5年も経っておらず実験段階であるにも関わらず、ワインは超ハイクオリティ。綺麗で繊細、様々な要素が綺麗に溶け合っていて素晴らしかったです。トスカニースタッフは全員「美味しい…すごい…」と驚愕していました。これから先もっともっと凄まじいワインを造り上げていくのだろうと思うと、楽しみで仕方がありません。 特に衝撃を受けたワインは、ステンレスタンク熟成のピノネーロ「ティアマット」。抜栓直後から、フレッシュさと柔らかさが綺麗に融合。2ヴィンテージ目でガンベロロッソのトレヴィッキエーリ受賞も納得の味わい。正直言って安すぎます。 上級のピノネーロ2種「パルトゥ」「SG’ 67」は、今飲んでもおいしいですが、熟成のポテンシャルを感じさせる味わいで今後の成長が楽しみです。3日目、4日目と試飲するたびに、コルデーロに対するワクワク感が止まりませんでした。シャルドネ「リヴォーネ」は、ジューシーな果実感やスパイス、旨味が複雑に絡まり調和の取れた味わいでとても美味しかったです。 世界最高峰のピノ ネーロ産地として大注目の「オルトレポ パヴェーゼ」の新生「コルデーロ サン ジョルジョ」を、ぜひご堪能ください! |
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いま大注目のピノ ネーロ産地「オルトレポ パヴェーゼ」の新星「コルデーロ サン ジョルジョ」突撃インタビュー
2023/08/29