2023年10月2日 アンドレア ダレッシオ氏 Mr. Andrea D’Alessio
カステッリーナ&ラッダで造るフラッグシップ「イル ブルー」と双璧をなす単一畑グランセレツィオーネが新登場!3つの銘醸地で最高品質を追求する「ブランカイア」突撃インタビュー |
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1981年、トスカーナに魅了されたスイス人夫婦が創設した家族経営ワイナリー「ブランカイア」。カステッリーナ イン キャンティ、ラッダ イン キャンティ、マレンマというトスカーナの銘醸地3箇所に畑を所有し、国内外から評価の高いキャンティ クラシコとスーパータスカンを生産しています。その3箇所の畑の融合で生まれた逸品「トレ」もエントリークラスでありながら、『ワインスペクテーター』で年間トップ100に輝いた実績を持ちます。「全ての畑が最高品質」「畑は毎年異なる」「最適なブドウを各ワインに振り分ける」というブドウの本質を見極めるワイン造りによって、全てのラインで最高品質を実現しています。今回は、輸出マネージャーのアンドレア ダレッシオ氏をお招きしてお話を聞きました。 | ||||||||||
トスカーナに魅了されたスイス人夫婦が1981年に創設
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——今日はよろしくお願いいたします。改めてワイナリーの説明をお願いします。
ダレッシオ ブランカイアは1981年、スイス人夫婦が創設したワイナリーです。創設のきっかけは、前年の冬にバカンスでトスカーナを訪れたことでした。現地のワイン、食事、景色、文化などトスカーナの全てに魅了されると、即決でバカンス用の家を購入したのです。 すでにブランカイアと名付けられていたカステッリーナ イン キャンティの農園も購入し、約7ヘクタールの畑でブドウ栽培を始めました。当初は醸造施設がなかったので、友人であるマッツェイ家にブドウを持ち込み、自家消費用としてワインを醸造していました。 それから徐々にワインへの情熱が増していき、趣味の領域を超え、1988年にラッダ イン キャンティに新しく32ヘクタールの畑を取得しました。自身の醸造所も建設して、同年にワインの生産を始めました。 偉大な醸造家を招へいし、ボトリング開始早々に国内外から高い評価を得る ダレッシオ ブランカイアとしてワインをリリースすると決めたと同時に、トスカーナで最高品質のワインを造るんだと決めていました。ちょうどその頃、『ジェームズサックリング』で世界最優秀エノロゴに選ばれたカルロ フェリーニを醸造家として招き入れ、イタリア国内だけでなく世界から高い評価を受けるようになりました。 伝統的ラベルがひしめくトスカーナワインで一際目を引くデザイン ダレッシオ ワインの品質もさることながら、モダンなラベルデザインもブランカイアが世界的に認知される大きな要因となりました。伝統的なラベルが多かった30年前のトスカーナワインにおいて、パッと見ただけで認識できるブランカイアのロゴは衝撃的でした。今でも色あせないデザインです。 1998年に加入した現当主バルバラ氏が最高品質をより追求 ——創業者のご息女で、現当主のバルバラさんはいつ頃ブランカイアに入られたのですか。 ダレッシオ 1990年頃、バルバラは建築家を目指す学生でしたが、バカンスでトスカーナを訪れるとすっかりワインの世界に魅せられ、エノロゴの道へと進み始めました。スイスの醸造学校で勉強した後、ワイナリーで研鑽を積み、本格的にブランカイアに入ったのは1998年からです。以降、1日中ワイナリーと畑で仕事をしています。 ——トスカーナに来る前に、スイスでしっかり勉強してきたということですね。 ダレッシオ そうですね。バルバラによって、最高品質を追求するという方向性がより明確になりました。生産本数に固執することなく、トップワインを造るために妥協はしないんだと。 |
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「カステッリーナ」「ラッダ」「マレンマ」
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——畑や醸造所についても教えてください。最初に醸造所を構えたのはラッダでしたよね。
ダレッシオ そうです。ラッダでの醸造が始まりです。1998年にマレンマの畑も取得し、醸造所も建設して、3箇所目となるワイン生産が始まりました。醸造所はラッダのものより2倍以上の大きさです。キャンティ クラシコはラッダで、マレンマのワインはマレンマで醸造しています。ですので、ご存知の通り畑はカステッリーナ、ラッダ、マレンマに所有しています。 ——畑はそれぞれ何ヘクタールありますか? ダレッシオ キャンティ クラシコ地区は50ヘクタールですが、最近ラッダの近くに13ヘクタールの畑を取得しました。マレンマは40ヘクタールです。畑の図をご覧ください。カステッリーナ、ラッダ、マレンマと同じ農場の中でも場所によって土壌の性質が違うので、各地区に適した品種を植えています。 サンジョヴェーゼの単一畑グランセレツィオーネが造られるカステッリーナ ダレッシオ カステッリーナは非常に品質の高いサンジョヴェーゼが生まれる場所です。これまで私たちは地域や畑のブレンドをして造ってきましたが、2019年に初めて造ったグランセレツィオーネはカステッリーナの単一畑からできています。他には、カベルネ ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨンブラン、メルローが植えてあります。 「イル ブルー」の最高品質メルローが生まれるラッダ ダレッシオ 一方、ラッダはメルローの品質が高いです。フラッグシップのイル ブルーのメルローはラッダで造られています。実はサンジョヴェーゼも素晴らしく、最近取得した13ヘクタールの畑はサンジョヴェーゼが植えられています。その年の出来によってはグランセレツィオーネは、その畑から造られるかもしれません。栽培する品種はその2種類。醸造所がないカステッリーナのブドウは、ここラッダで醸造しています。 スーパータスカン「イラトライア」に使用される国際品種に最適なマレンマ ダレッシオ マレンマの畑も見てみましょう。ご覧の通り、ほぼ国際品種です。キャンティ クラシコ地区と異なり、地中海性気候で海風が常に吹くので、高品質なカベルネ ソーヴィニヨンやプティヴェルドが生まれます。私たちのトップワイン、スーパータスカンの「イラトライア」は、マレンマのプティヴェルド40%、カベルネ ソーヴィニヨン40%、カベルネフラン20%で造られます。『ワインスペクテーター』のTOP20にランクインするようなワインです。 これら3地区の畑から3つの品種(サンジョヴェーゼ、メルロー、カベルネ ソーヴィニヨン)を組み合わせて2000年に誕生したのがエントリーラインの「トレ」です。 |
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ブランカイアの双璧をなす2大巨頭!
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畑ではなくブドウの本質を見極めて行うワイン造り 「“この畑はこのワイン“とは決めていません」 ——畑の振り分けと言いますか、各畑のブドウをどのワインに使用するか決まっているのですか? ダレッシオ まず、畑に対する考え方をお話します。私の故郷でもあるピエモンテでは、畑ごとにワインを造るという考えが根付いています。一方で、ブランカイアが単一畑で造るグランセレツィオーネが生まれたのは2019年です。そのくらい地域で考え方の違いがあります。 これまでブランカイアは、キャンティ クラシコ地区の複数の畑で最高のワイン「イル ブルー」を、マレンマの複数の畑で最高のワイン「イラトライア」を造ってきました。畑は細分化していますが、「この畑はこのワイン」とは決めていません。そのワインに最適なブドウを各ワインに振り分けています。 暑かった2017年を例に出すと、普段使わない畑のブドウをイル ブルーに使用しました。畑は毎年異なるんです。畑自体にセリエA、セリエBがあるわけではなく全ての畑が最高品質です。バリックやトノーに分けられたものを、バルバラがチェックしてどのワインに使用するか決めています。 新たな哲学「単一畑」を導入して誕生! ——では、単一畑で造るグランセレツィオーネは珍しいということですね。 ダレッシオ 新しい挑戦でしたね。最高品質のサンジョヴェーゼを造るという目標のもと生まれました。2012、2013年頃から造ろうとしていましたが、リゼルヴァを超えるサンジョヴェーゼがなく、完成までに時間がかかりました。最終的に使用すると決めたブドウは、カステッリーナの単一畑のサンジョヴェーゼ(100%)、ピサ大学が造った1999年植樹のクローンでした。 ——素晴らしい味わいですね。今までのブランカイアを超越するような印象です。単なるリゼルヴァの延長ではなく、グランセレツィオーネとして抜きん出たクオリティを感じます。別格ですね。 ダレッシオ その通りです。一つ上のランクを目指しているのではなく、最高品質のサンジョヴェーゼというワインの役割を明確に打ち出しています。 ——これぞグランセレツィオーネという立ち位置がはっきり出ていますね。 ダレッシオ 土着品種10%まで混ぜられるグランセレツィオーネの規定の中で、あえて私たちは100%で造っています。同じく単一で造るブルネッロ ディ モンタルチーノと肩を並べる品質に仕上げています。新しくラッダに取得したサンジョヴェーゼの畑が大化けするかもしれないので、来年も含めて将来はどこで造られるかわかりません。 ブランカイアをトップ生産者へと押し上げたフラッグシップ ——フラッグシップの「イル ブルー」が生まれた経緯を教えてください。 ダレッシオ もともとキャンティ クラシコの補助品種としてカナイオーロなどを使用していたのですが、それほど品質が高くなかったんです。その後、幸いなことに品質が非常に優れていることが判明したラッダのメルローをブレンドするようになりました。私たちは土着品種、国際品種問わず、所有する土地を最高レベルで表現することを念頭に置いているので、最高品質のメルローを造ろうという選択に至りました。 最初は、メルローとサンジョヴェーゼを半分ずつブレンドして造っていましたが、徐々にメルローの比率が高くなっていき、2013年からメルローが主要品種になりました。カステッリーナとラッダのブドウをブレンドしています。イル ブルーの存在が、ブランカイアをトスカーナの重要ワイナリーへと押し上げたと言っても過言ではありません。 ——今から18年前、2005年にお話を伺った時もイル ブルーの重要性を話されていました。長い間、ブランカイアの最上級ワインとして君臨し続けるのは素晴らしいですね。 ダレッシオ イル ブルーはずっとフラッグシップです。「ブランカイアのトップはイル ブルーだ」という一貫した考えを持って、バルバラを中心に高品質ワインを造り続けています。もちろん私たち営業が「毎年必ず5万本造ってくれ」とは言わないですし、イル ブルーの実現が難しければ造らない年もあります。それによりイル ブルーになるはずだったブドウがトレに使用されてトレの品質が高くなる効果もありますし、高い水準を超えなければ生産はしません。 2018年に使用した金色の特別ラベルを継続使用 ダレッシオ 前ヴィンテージの2018年は、イル ブルー30周年を記念した金色の特別ラベルを使用していました。本当は2018年だけの予定だったのですが、この金色ラベルを大変気に入ったので2019年以降も継続することを決めたんです(笑)。トレ以外のラベルの紙質も変えました。光が当たった時にエレガントな印象が出るようにしています。 新しく導入したセメントタンクにより柔らかさが向上 ダレッシオ 実は、最近セメントタンクを使用するようになりました。かつてのイル ブルーは、バリックで熟成した後すぐにボトリングをしていました。それをバリックの後に3ヶ月間セメントタンクで休ませるようにしたんです。その結果、熟成ポテンシャルや複雑性は失わず、柔らかな味わいが生まれるようになりました。 ——確かに抜栓直後でも落ち着いた感じがしますね。他のワインも同様に使用しているのですか? ダレッシオ そうです。今までは長い間寝かせないと、このまろやかさは生まれませんでした。今は非常に心地よい味わいがありますよね。 |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
「全ての畑が最高品質」「畑は毎年異なる」「最適なブドウを各ワインに振り分ける」というワイナリーとしての考え方が非常に興味深かったです。「このワインはこの畑」と決めることなくブドウの本質を見極めて、毎年変わらない高い品質を実現させるのは並大抵のことではないと思います。ブランカイアに加入以降、1日中ずっと畑と向き合い続ける当主バルバラさんだからこそなせる業だと感じました。
試飲したワインは、ライン関係なく非常にハイクオリティです。特に印象的だったのは、初リリースのグランセレツィオーネ2019年です。これまでブランカイアは、エリアや畑をブレンドして造っており、そのトップに君臨するのがカステッリーナとラッダが融合したスーパータスカン「イル ブル―」。一方でグランセレツィオーネは、単一畑のサンジョヴェーゼ100%。今までにはない哲学で造られており、これまでのブランカイアを超越するような味わいが表現されていました。 「別格」と感想を述べるスタッフもいたほど。決してリゼルヴァの延長ではない全くの別物です。花や森の果実、ハーブなどが綺麗に調和した味わいで、何段階も熟成を楽しみたいと思わせる逸品でした。ブレンドのトップキュヴェ「イルブル―」、単一畑のトップキュヴェ「グランセレツィオーネ」。双璧をなす2大巨頭の飲み比べも大変おすすめだと思いました。ぜひご堪能ください! |
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3つの銘醸地で最高品質を追求する「ブランカイア」突撃インタビュー
2023/10/31