爽やかで旨みあふれるロンバルディアの自然派「テヌータ フォルナーチェ」突撃インタビュー

2024/03/29

2024/03/05

アンドレア ロッシ氏 Mr. Andrea Rossi

菌学(微生物)からアプローチ!生物多様性を尊重したエコシステムによるワイン造り!
あるがままの自然な造りが生む爽やかで旨みあふれるワイン!
日本初上陸で注目のロンバルディア自然派「テヌータ フォルナーチェ」突撃インタビュー

テヌータ フォルナーチェは、ロンバルディア州オルトレポ パヴェーゼで200年の歴史を持つ自然派ワイナリー。SO2を含む添加物の不使用を貫き、「生態系の再構築」の実現を目指しながら自然の力を最大限に引き出したワイン造りを行っています。彼らの畑は一般的な畑よりも何十倍も生物多様性に富んでおり、その特性により自然由来の酸化防止物質が多く抽出され、長期熟成力を持つワインが生まれます。そして、オレンジワインのラインナップも豊富で、マセラシオン期間の異なる複数のキュヴェを造っています。なんとフォルナーチェは、オルトレポ パヴェーゼで初めてオレンジワインを生産した造り手でもあります。今回は6代目当主アンドレア ロッシ氏に、ワイナリーと自身の経歴、自然についてオンラインで聞きました。

美しい自然と共生したナチュラルな造りを徹底!
200年以上の歴史を持つオルトレポ パヴェーゼの自然派

1823年創業、人口40人のロヴェスカーラ村に根付く自然派ワイナリー
――ボンジョルノ。今日はよろしくお願いします。

ボンジョルノ。テヌータ フォルナーチェ6代目のアンドレア ロッシです。私たちが位置するのはロンバルディア州オルトレポ パヴェーゼ地区、人口40人のロヴェスカーラという小さな村です。1823年から約2世紀もの間、先祖代々この地でブドウ栽培を行ってきました。

所有畑は本拠地オルトレポ パヴェーゼに加え、ピエモンテ南のコッリ トルトネージにもあります。広さは合計80ヘクタールです。これらの産地はまだ世界的に知られていませんが、生物多様性に富んでいて自然な造りに適した非常に興味深いエリアだと考えています。

オルトレポ パヴェーゼとコッリ トルトネージの土壌を徹底分析
私は、この両エリアの土壌を分析し、特徴ごとに細分化をして8つの異なるテロワールを発見しました。それをもとに、その土壌に根差した最適な品種を植えています。ブドウ樹の平均樹齢は65年で、100年のものも残っています。テヌータ フォルナーチェは、この多様で美しい自然と共生し、各畑の特性に合わせて醸造方法を変えていくスタイルを持つ自然派ワイナリーです。

SO2無添加、無清澄、無ろ過!
オルトレポ パヴェーゼで初めてオレンジワインを生産

畑ではオーガニック農法とビオディナミ農法を採用し、醸造は全て自然的な製法を行っています。清澄もフィルタリング(ろ過)もしませんし、酸化防止剤と酵母の添加もしません。

フォルナーチェはオルトレポ パヴェーゼで初めてオレンジワインを生産した造り手です。マセラシオン期間が異なるオレンジワインを複数造っていて、8年間ものマセラシオンによるオレンジワインを造るのはコッリ トルトネージで私たちだけです。

オレンジワインをベースとした微発泡ワイン「ブッリチーネ」
肉料理と最適なモスカート ジャッロ100%オレンジワイン「トゥットソーレ」
野外で2年間醸したティモラッソのオレンジワイン「タンタローバ」

通常の何十倍もの生物多様性を有するフォルナーチェの畑

将来の生態系を見据えて取り組むビオディナミ農法
私が目指すのは、ただ自然派ワインを生産することではありません。畑を通じた自然のエコシステム(生態系)を機能させることを目指しています。それにより、将来のワイン界と自然界、ひいては人体にも好循環をもたらすことができると考えています。そのためにビオディナミ農法を用いて、生態系を文字通り自然の状態に戻す活動をしています。

現在、ミラノ大学と協力して調査を行なっているのですが、フォルナーチェの畑には自生する葉っぱの種類がとりわけ多いことがわかりました。ある畑で確認された葉が平方メートルあたり数種類なのに対し、フォルナーチェの畑では100種類以上の葉が確認されました。

なぜ葉の種類に着目しているかというと、種類の数だけそれに適応した虫や鳥が生息しているからです。生物多様性に富んでおり、自然のエコシステムを形成していると言えます。

豊富な生物多様性が自然の酸化防止物質を生む
では、生物多様性を反映させた私たちのワインは他の自然派と何が違うのでしょうか。それはブドウの果皮や種、自生酵母の細胞から抽出される酸化防止物質の量です。生物多様性に富むブドウ(畑)をそのまま表現することで多くの酸化防止物質を引き出すことができます。

そのため、長期熟成ポテンシャルを秘めるワインが生まれます。自然派ワインが長期熟成しないというのは間違いです。自然酵母には何百万もの酵母が存在していますし、マセラシオンとバトナージュを長く行うことでも、一般的なワインよりも8、9倍もの物質を抽出することができるんです。

何もしないのではなく、自然を理解し環境を整えて自然の力を引き出す
――酸化防止物質が多いワインを自然派と言うことができる、ということでしょうか?

そう言えます。また、自然派ワインはエネルギーのようなものだと考えています。ワインは何かを加えて造り上げるものではありません。自然が持つエネルギーをそのままワインにしてあげて出来上がるのです。

何も添加しないというのは決して「何もしない」ということではありません。小さい子どもを育てるように、私たちが環境を整え、自身の力で成長するように見届けるということです。そのためには自然界のシステムを理解しなければなりません。

ワインのラベルには当主の子どもたちが幼少期に描いたものを採用

アンドレア氏が人生の転機となったパヴィア大学への進学
菌学者として自然界の法則を熟知し確立した自然派スタイル

幼少期から畑仕事と醸造に熱中し、高校でビオディナミ、大学で菌学を専攻
――アンドレアさんの経歴を教えてください。どのようにして自然派スタイルを築き上げていったのですか?

祖父の時代は化学薬品が存在しなかったので、その時から自然派だったと言えますね。時代が変わり農薬が流通し始めても、薬品アレルギーだった父の影響もあり使用することはありませんでした。そして、私は中学を卒業するとビオディナミを専門的に学ぶようになり、高校卒業後はアルバ醸造学校への進学を考えていました。

しかし、進学前に父が体調を崩してしまいました。父は畑を手放すと言い出したので「それは絶対にダメだ」と伝え、ピエモンテではなく近くのパヴィア大学で菌学を専攻しながら畑仕事をすることを決心しました。子どもの頃から畑仕事はしていたので苦には思いませんでしたね。今思えば、その決断が大きな転機となりました。

菌学的アプローチで実現させた自然派スタイル
――パヴィア大学で菌学を専攻したことが、ご自身にどのような影響を与えたと考えていますか?

影響は非常に大きかったです。より科学的な根拠に基づいた視点を持てるようになり、醸造と栽培以外の世界が広がりました。先ほど話した生物多様性が生む効果など自然にしか生み出せない事象を理解できたのは、菌学を学び自然界のシステムを理解したからこそだと思います。その結果、自分が目指すスタイルを実現できるようになりました。

――フォルナーチェで自然派ワインを造っていく上で、影響を受けた造り手はいますか?

オレンジワインのスタイルとしては、MOVIA(モヴィア)やSTEKAR(シュテッカー)などスロヴェニアの生産者に影響を受けました。イタリアではラディコンもそうですね。自然派という観点で影響を受けた生産者はいないと思います。

というのも、多くの自然派ワイナリーが所有する小区画の畑では、私が目指す「生物多様性を尊重しながら行うエコシステムの再構築」の実現は難しいからです。広域の畑を所有してこそ、地域一帯に好影響を与えることができると考えています。フォルナーチェでは所有する80ヘクタールの畑で、そのエコシステムの再構築を実践しています。

オルトレポ パヴェーゼにしかない特性を活かした高品質ワイン造り
ピノ ネロに関しては、ブルゴーニュの生産者を参考にしています。しかし、彼らの方法をそのまま導入することはありません。あくまで、ここにしかない土地の特徴を表現するための手法を考え抜く必要があります。

例えば、オルトレポ パヴェーゼのピノ ネロの栽培面積は4300ヘクタールもあり、イタリアで最大(世界第3位)の産地です。私たちはその地域性を生かして、他の品種をブレンドすることなく純粋で高品質なワインを造っています。

造り手としての最大の目標は、オルトレポ パヴェーゼに来たことがない人に、この土地の素晴らしさをワインを通じて届けて実際に足を運んでもらうことです。ラベルに「Provincia di Pavia(パヴィア県)」と表記しているように、飲み手のみなさんに「パヴィアに行ってみたい」と思ってもらいたいです。

「リースリングの丘」と呼ばれる畑で造るリースリング主体白「セッテナーニ」
ピュアな果実味のピノ ネロ100%赤ワイン「ペパリーノ」

個性あふれる自然派ワイナリーとの交流&共生
「今まで見たことないほど特殊な栽培家」

Agricoltori(農家)、Artigiani(職人)、Artisti(芸術家)
自然派ワイナリーの国際的な組合「トリプルA」

――フォルナーチェが加盟している「トリプルA」という組合について教えてください。

約130の生産者が加盟する、自然派ワイナリーが集う先駆的な組合です(イタリアとフランスを中心に各国のワイナリーが加盟)。トリプルAの試飲会に行くと、生産者同士の交流が盛んに行われています。正直に言うと「これは美味しいけど、これはうーん…」と思うような個性的な生産者がたくさんいます。私自身もそう思われてるかもしれませんけどね(笑)。

独自のスタイルを貫き、評価誌からのレビューを受けない
そういった交流から生まれる生産者同士の意見交換は勉強になります。大御所ワイナリーも加盟していて刺激になりますね。トリプルAに加入した当初、「君は今まで見たことないほど特殊な栽培家だ」と組合の代表に言われたことがあります。

優秀な自然派ワインの造り手は、他の生産者を競争相手とは考えていません。お互いに共生して、自然の素晴らしさをどのように伝えていくかを考えて活動しています。

私の根底には「他と同じではつまらない」という考えがあります。自然派ワインの道を切り拓いたのも、独自性あふれた存在でありたいという思いからです。私はこれまで評価誌やガイド本への出品は一度もしたことがありません。

今日のインタビューのように、ふとした出会いから飲み手の「好き嫌い」が発生するものだと考えています。そういった出会いを大切にして、私たちのワインを好んでいただける人たちを増やしていきたいです。

――最後にお客様へメッセージをお願いします。

より多くの方にフォルナーチェのワインを飲んでいただけることを楽しみにしています。美味しいワインに出会う時というのは、どこか一目惚れのような感覚があると思います。理由はわからなくても、フォルナーチェに対して「なんだか心地よい」「なんだか惹かれる」と思っていただけたら光栄です。

その一目惚れからワインを好きになって、フォルナーチェの世界観や自然派に対するアプローチに興味を持っていただけたらなお光栄です。日本のみなさんがオルトレポ パヴェーゼに来るきっかけとなるような美味しいワインを、これからも造っていきます。イタリアでお待ちしています。チャオ。

旨味たっぷりでスッキリした味わいの微発泡オレンジワイン

ブッリチーネ

ブッリチーネ

アンドレア氏:
「ブッリチーネは、オレンジワインをベースとしたペットナットスタイルの微発泡ワインです。モスカートジャッロのオレンジワイン50%とピノ ネロ50%で造っています。各品種の特徴であるアロマとフレッシュな酸が綺麗に融合しています。骨格がありながら飲みやすさもあるスタイルで、地元のパブではビールの代わりに飲む人が増えています。ボトルの底には酵母が溜まっていますが、攪拌して酵母を馴染ませることでクリーミーな味わいに変化します。このまろやかさは若い世代には好まれる味わいだと思います。冷やすと爽快感があって飲みやすいので、夏には冷やすことをお勧めします」
試飲コメント:濃い黄金色。白い果実や黄色い果実を中心とした複雑でフレッシュな香り。杏、バナナ、紅茶を感じます。口に含むと凝縮果実味と酸に満たされます。全体的にフレッシュで軽やかですが、じわじわと旨みや柑橘の皮などの渋みが現れてきます。濃厚さとスッキリさを兼ね備えた後口です。泡は微発泡で心地よくジューシーさがあります。攪拌すると奥行きが生まれて味わいに丸みが現れました。

7つの品種が調和したミネラル豊富なリースリング主体の白ワイン

セッテナーニ

セッテナーニ

アンドレア氏:
「リースリング主体で造る白ワインです。濃い外観ですがオレンジワインではありません。オルトレポ パヴェーゼは13個の丘陵地帯がありますが、セッテナーニは7個目の丘陵地帯にあるリースリングの丘と呼ばれる場所で造られています。樹齢73年のリースリング レナーノ85%に、6種類の土着品種を2、3%加えています。7つの品種が調和することから、ラベルには7人の小人が描かれています。実際は8人描かれていますけどね(笑)。長い間酵母とコンタクトしていたので、ミネラル感豊富でクリーミーな味わいです。このエリアのリースリングの特徴である、地中海のニュアンスを表現しています。米の産地でもあるので、リゾットと相性がいいです。ぜひ食事と合わせながら飲んでいただきたいです」
試飲コメント:輝きを持つ濃い黄金色。凝縮した黄色い果実、果実のコンポート、柑橘、生姜、ミネラルを感じる複雑かつエレガントな香り。口当たりはソフトで、香り同様に繊細かつエレガントな味わいです。レモン、ショウガ、柑橘の皮のニュアンスがあり、まろやなか酸が心地よいです。時間が経つとシナモンのニュアンスが現れます。

地中海の風味が広がるフォルナーチェ人気No.1のオレンジワイン

トゥットソーレ

トゥットソーレ

アンドレア氏:
「トゥットソーレは、フォルナーチェの中で最も人気のあるモスカート ジャッロ100%オレンジワインです。樹齢65年のブドウを75日間果皮を漬けこんでいて、バルサミコ、メントール、ローズマリー、セージなど地中海のニュアンスが口いっぱいに広がる味わいです。様々な国でグラスワインとして楽しまれています。ブルーチーズとの相性は抜群で楽しさが2倍になりますよ。イタリアではお肉屋さんにもいくつか卸しているのですが、お肉とも相性の良い意外性のあるオレンジワインでもあります」
試飲コメント:琥珀色に近い黄金色。杏、ハーブ、紅茶のニュアンスを感じるバランスに優れた香り。非常に柔らかい口当たりがあり、丸みを帯びたフルーティな味わいです。香り同様にバランスが良く、後味は柑橘の皮のような苦みが持続します。

太陽の下で24ヶ月間行うマセラシオン!
ティモラッソとコルテーゼで造る唯一無二のオレンジワイン

タンタローバ

タンタローバ

アンドレア氏:
「ティモラッソとコルテーゼで造るオレンジワインです。ティモラッソだけは唯一、ワイナリーの外にあるステンレスタンクでマセラシオンをしています。野外なので気温差が激しいため外部の影響を強く受けます。私も最初はおかしいなと思いながら24ヶ月間、太陽の下で漬け込んでみました。すると、温度の変化によりタンク内に対流が生まれ、自然にバトナージュが生まれることがわかりました。ティモラッソだからこそ、この素晴らしい酸と柔らかいタンニンが表現されています。これはスペインで行われている手法ですが、ステンレスタンクで行うのは私くらいだと思います」
試飲コメント:オレンジがかった黄金色。主に杏のような要素を持つ繊細で複雑な香りがあります。口に含むとジューシーな果実味と美しい酸が綺麗に調和しています。何か食べたくなるような酸とほどよいタンニンがあります。舌全体に行きわたる酸が最初から最後まで持続します。

ピュアな果実感を堪能できる繊細なピノ ネロ100%赤

ペパリーノ

ペパリーノ

アンドレア氏:
「ペパリーノはピノ ネロ100%で造る赤ワインです。世界有数のピノ ネロ産地であるオルトレポ パヴェーゼの個性を表現するためにブレンドはしません。畑の日照時間が少ない分、繊細な香りやフレッシュさがうまく表現できていると思います。後口には黒胡椒のニュアンスを感じると思います。2020年ヴィンテージは、トノーで6日間アルコール発酵を行い、1年間ステンレスタンクで熟成しています。ピュアなピノ ネロの果実感を楽しんでいただきたいので、ステンレスタンクを使用しています。若いうちは、その果実感をより感じていただけると思います。6、7年熟成させるとリゼルヴァとして、また別の楽しみ方ができるワインでもあります」
試飲コメント:ガーネット色。赤系果実やスパイス、バニラが香るアロマ。赤系果実と際立った酸が口中を満たし、ピュアで繊細な果実味が持続します。徐々にタンニンが現れ、しっかりとしたボディのある味わいです。

インタビューを終えて

3種のオレンジワイン「ブッリチーネ」「トゥットソーレ」「タンタローバ」が秀逸でした。柔らかい口当たりにフルーティで旨みのある味わいで、どんなシチュエーションにも合いそうなワインで素晴らしかったです。ラベルも非常に印象的です。かわいらしい絵と、ワインの明るくチャーミングな味わいがマッチしていると感じました。

「自然派ワインの生産だけでなく生態系の再構築を目指す」「自然派である前に美味しいワインを造る」「他と同じではつまらない」と話すように、6代目当主アンドレアさんが確固たる信念のもと独自のワインを造っていることが伝わってきました。最初はおかしいと思いながらも太陽の下で2年マセラシオンをしてみるなど、様々なことに挑戦して誰もが美味しいと思えるようなワインを生み出していることに感激しました。

それは、ご本人も語っていたように「パヴィア大学への進学」が大きかったのだと思います。一般的な醸造学校ではなく、菌学を学んで他とは違った科学的なアプローチでワイン造りと向き合うことで、フォルナーチェの独自性が生まれているのだと強く感じました。

オルトレポ パヴェーゼ注目の自然派「テヌータ フォルナーチェ」を、ぜひご堪能ください。