2024/06/19
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レティツィア パジーニ氏 Ms.Letizia Pasini
アルト アディジェ随一の生産者組合「コルテレンツィオ」の最高峰「ラフォア」、上級「セレクション」シリーズ比較試飲セミナー
白ワイン、そしてピノネロの銘醸地として名高いアルトアディジェ
面積の86%が山岳地帯で、ブドウ畑は0.75%(約5,500ha)ほど、主にボルツァーノ南部に集中しています。画像の赤く塗られたところが畑です。
緯度の高さから寒冷地のイメージをよく持たれますが、北に位置するアルプス山脈が冷たい風を防ぎ、南に位置するガルダ湖・アドリア海からは暖かい風が吹く、程よく暖かい大陸性気候のエリアとなっています。また1年間の内300日は晴れているくらいの日照量があり、昼夜の寒暖差がハッキリしていることも、ぶどう栽培にいい影響を与えてくれます。
土着品種を含む20品種のぶどう栽培を可能にする多様なテロワールがあることも、アルトアディジェの特徴ですね。
1980年代までのアルトアディジェは、いまの様な白ワインの産地ではなく、圧倒的に赤ワインの生産量が多い地域でした。その主体はスキアーヴァやラグレインといった、アルトアディジェの土着品種です。一方で1980年代から、シャルドネやリースリング、ピノグリといった国際品種の植樹が進み、今では白ワインの生産量が大部分を占めています。また、赤ワイン用のブドウ品種も、スキアーヴァからピノネロに、生産量のトップが変化してきています。
アルトアディジェの品質重視のワイン造り、シャルドネ栽培のリーディングカンパニー
アルトアディジェは協同組合が非常に多いエリアです。私たちの様に大きな組合が全部で12社あります。これもアルトアディジェらしい文化になりますが、人と人の結びつきや、協力して何かを一緒に行うという文化があります。
コルテレンツィオにとって大きな転換点になったのが1979年、後に2010年まで代表を務めたルイス ライファー氏の合流です。彼がそれまでは量重視だったワイン造りを、品質重視に転換させました。ライファー氏はパイオニア的存在で、品質重視の方針転換だけではなく、当時アルトアディジェでは一般的でなかったシャルドネの栽培を始めたのも彼でした。
今日試飲する「シャルドネ since 83」は、コルテレンツィオが1983年に初めてシャルドネによるワインをリリースしたことに由来して名づけられています。
80年代からコルテレンツィオもどんどん大きくなり、いまでは300の組合員と一緒に取り組むまでになっていますが、設立当時から1軒1軒は1haほどの小さな生産者たちです。300の組合員、言い換えれば300の家族と、今でもライファー氏の品質へのこだわり、パッションをしっかりと共有し、ワイン造りに取り組んでいます。
また2000年頃からはサステナブルへの取り組みも行ってきました。写真にあるカンティーナは2010年に完成したものですが、太陽光発電と水力発電を組み合わせて、いまではほぼ全ての電力を自社発電のグリーン電力で賄うことができています。
重要な品種であるシャルドネとピノ ネロ!最高峰「ラフォア」と上級レンジ「セレクション」を試飲
今回は「セレクション」からシャルドネとピノネロ、「ラフォア」からシャルドネ、ソーヴィニヨン、ピノネロを試飲していただきます。
シャルドネは、1980年代当時まだアルトアディジェDOCに認められていなかったので、コルテレンツィオがシャルドネを初リリースした1983年はVino da Tavola(テーブルワイン)でした。ライファー氏は、カリフォルニア、フランス、オーストリア、スイス、ドイツと世界各地で積んだ経験から、アルトアディジェの土壌、気候に適した白ブドウはシャルドネだと見定め植樹を始めました。アルトアディジェにおけるシャルドネ栽培のパイオニアです。
また今日試飲する2種のピノ ネロは私たちにとって宝石の様なワインです。黒ぶどうの中で最も重要な品種と言えます。昼夜の寒暖差があるアルトアディジェの気候はピノ ネロに最適で、しっかりとした酸とアロマをもたらしてくれます。そしてアルトアディジェのピノネロの第一人者「ホフスタッター」でエノロゴを務めていたマルキン氏が2005年にコルテレンツィオに合流し、いまでもその手腕を振るってくれています。
では「シャルドネ Since 83」から試飲をしていきましょう。「セレクション」シリーズの「シャルドネ Since 83」、「ピノ ネロ リゼルヴァ サンダニエール」は畑のセレクションに始まり、収量制限も行って高い品質のぶどうを厳選して造られます。
アルトアディジェのシャルドネ栽培の先駆け「コルテレンツィオ」!初リリース年への思いを込めて新たに造る上級樽シャルドネ「since83」新登場! |
シャルドネ since 83 |
今回試飲いただく2022年がファーストヴィンテージ。コルテレンツィオにとって重要なぶどうのひとつであるシャルドネの新しいスタイルです。クラシックレンジの「アルトキルシュ」と最高峰レンジの「ラフォア」の中間に位置するワインで、「アルトキルシュ」のフレッシュさと樽を使った「ラフォア」の複雑さ、そのどちらも楽しむことができます。
ソフトプレス後、大部分は大樽、一部をフレンチトノーで発酵。シュールリーで7ヶ月熟成させています。 |
試飲コメント:熟した果実のアロマとヘーゼルナッツやバニラの繊細な香り、完璧に溶け込んだ酸味が特徴的。 |
ピュアな果実味と上品な樽の風味の絶妙な調和!コルテレンツィオの最高峰シャルドネ |
ラフォア シャルドネ |
コルテレンツィオ最高峰のシャルドネです。1980年代から生産されていた「シャルドネ フォルミガール」に代わって、2015年に生まれたワインです。違いとしては、以前は新樽の比率が高かったのに比べ、2~3年目のバリックも使うことで樽香が前面に出過ぎない造りに変わっています。15年以上の熟成ポテンシャルがあるので、ぜひ垂直試飲してほしいワインですね。
バリックの新樽と旧樽で発酵後(一部はマロラクティック発酵)、10ヶ月間のシュールリー、6ヶ月の瓶内熟成を経てリリースされます。 |
試飲コメント:濃い麦わら色。クルミ、マンゴーやメロンのフルーティな香りに、ほのかな樹の香り。アロマティックでふくよかな味わいで、余韻が長い。ピュアな果実味と上品な樽の風味が絶妙に調和しています。 |
圧倒的存在感!標高430mの最高の日照条件の畑で造るイタリア最高峰ソーヴィニョン |
ソーヴィニヨン ラフォア |
ラフォア ソーヴィニヨンは1993年がファーストヴィンテージ。2005年までは100%樽発酵でしたが、現在は50%ステンレスタンク、50%バリックにて発酵後(バリックのものだけマロラクティック発酵まで行う)、8ヶ月シュールリーで熟成というスタイルに変わっています。2022年ヴィンテージは暑かった年で、ボディーの強さを特に感じる仕上がりになっています。 |
試飲コメント:パイナップルや南国フルーツ、ライムなどの柑橘類、ミネラル、花束の様にとてもアロマティック。コクのあるアタックの後にはすぐにフレッシュな酸とミネラルが広がり、心地よい余韻へと続きます。 |
世界的人気で各国割り当てのピノネロ リゼルヴァ!輸出マネージャーレティツィアさんも一押し! |
ピノ ネロ リゼルヴァ サンダニエール |
St. Danielとは畑の近くにあった小さな教会の名前に由来します。価格とのバランスにおいて非常に品質が高いので、コルテレンツィオの中でも売れ筋の1本です。リゼルヴァは最低2年間の熟成をしています。サンダニエールは1年間の樽熟成、もう1年間を瓶内熟成してからのリリースです。
2020年は夏が非常に暑く、雨が多い珍しい年でした。収穫が遅れるのではと心配した年でしたが、最終的には高い品質のぶどうを収穫することができました。ボディーの強さと酸をしっかり備えたヴィンテージになっています。 |
試飲コメント:ガーネットの鮮やかな色調で、レッドチェリーや西洋スモモ、赤スグリにスパイス、シナモンのブーケが重なる魅惑的なブーケがあります。飲むとスムーズで滑らかなタンニンとしなやかで官能的な味わいが感じられます。 |
コルテレンツィオ ピノネロの最高峰!赤い果実やスパイスが香るエレガントなピノネロ リゼルヴァ |
ラフォア ピノ ネロ リゼルヴァ |
2018年ヴィンテージがファーストヴィンテージです。前身の「ピノ ネロ ヴィッラ ニグラ」がラフォアに格上げされるタイミングで畑のセレクション、醸造方法の見直しを行っています。
以前はボディーの非常に強いスタイルでしたが、現在はドロマイト(苦灰岩)と火山性土壌の「コルナイアーノ」、ピノ ネロにとっては欠かせない石灰を多く含む「モンターニャ」の2区画の畑からぶどうを厳選しブレンドすることで、よりエレガントで、軽やかながら余韻の長いワインとなっています。 25~28度に管理された木樽で約3週間発酵後、バリックの新樽と旧樽に移し、マロラクティック発酵と1年半の熟成、その後1年間の瓶内熟成を経てリリースします。 |
試飲コメント:チェリー、ラズベリーなどの果実のアロマやスパイスのニュアンス。ボディーがあり複雑で力強いタンニンとエレガントな余韻が特徴。仔牛、鶏肉、カモなどのお料理と相性抜群です。 |
インタビューを終えて
「ラフォア」はもちろん、「セレクション」シリーズのシャルドネ since 83、ピノネロ リゼルヴァもとてもリッチな、満足感のある味わいでした。個人的にはクオリティの高さと価格の手ごろさから「ピノネロ リゼルヴァ サンダニエール」が一押しです!ぜひ多くの方にコルテレンツィオの育てるポテンシャルの高いぶどうと考え抜かれたワイン造りの結果生み出されるワインの数々を味わっていただきたいと思います!